るつぼ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
白金製るつぼと溶融石英製マッフルおよびるつぼハサミ
加熱中のるつぼ

るつぼ坩堝cruciblemelting pot)は、理化学実験や鉱工業において、高熱を利用して物質の溶融・合成を行う際に使用する湯のみ状の耐熱容器である。るつぼを保持する道具としてるつぼはさみ(トング)がある。同じ材質のフタをかぶせることが多い。

素材と使用分野[編集]

るつぼの素材には目的に応じてさまざまなものが用いられる。実験室では一般に容量20ml程度の磁器製のものが用いられ、金属を溶融混合して合金としたり、イオン性結晶を溶融したり、試料を熱分解する際に使用される。

工業的には安価な黒鉛製のものが用いられることがある。特に高温(1600から2000℃)が必要な場合は、アルミナマグネシアジルコニアなどのセラミックを素材としたるつぼが使用される。

分析化学で無機化合物を強熱する際に、るつぼの成分が溶融混入するのを防止する目的で白金製(融点約1800℃)やイリジウム製(融点約2500℃)のものが使用されることもある。また石英ガラスやテフロン加工の物などもある。

半導体工場用は、石英製の石英るつぼが用いられている。大型のるつぼでは、人が入れるほどのサイズの物もある。

光学ガラスの融解にはかつてセラミックス製のものが用いられたが、微量不純物の混入を嫌って現在では白金製のものが用いられている[1]。金製や白金製のるつぼは非常に高価で、特に白金製るつぼの価格は科学実験機器のカタログで通例「時価」と掲載されているがこれは材料費が価格のうちの多くを占め、かつ貴金属市場における相場に大きく影響されるためである。

このように、選定にあたっては用途、加熱温度、るつぼ素材からの不純物の影響、耐蝕性、価格などが考慮される。

加熱[編集]

実験室レベルでの加熱にはブンゼンバーナー・小型電気炉などを用いる。

金属製としてはニッケルジルコニウム白金が使われ、セラミックス製としてはアルミナジルコニアマグネシアカルシアシリカなどが使われる。金属製やシリカ製、チタン酸アルミナ製のるつぼは急な温度変化を受けても割れにくいとされる。

一般のるつぼはガスバーナーで加熱するが、高温になると赤外線の放射量が多くなり、なかなか昇温しないため、マッフルという覆いをつけることが多い。また、電気るつぼ炉(5万円程度から)という物も存在し、電力によって内部のるつぼを加熱する。


注意点[編集]

るつぼは高温になると膨張するため、材質によっては割れることがある。特に水で急冷するなどは避けるべきである。

白金るつぼ
分析化学や特殊セラミック製造などの不純物を嫌う分野では白金るつぼが好んで使用されるが、高温下の白金は意外にも化学的安定性に欠けることに留意する必要がある。
フッ素塩素の雰囲気下で白金を強熱するとハロゲン化合物を生成し、損傷する。また希塩酸と希硝酸の混合物を白金るつぼ中で加熱すると王水と同様の反応が生じ、るつぼが腐食される。
さらに、白金るつぼを還元炎で直接加熱した場合は炎中の炭素が白金に溶け込み劣化させることが知られている。同様に、重金属の単体が生じるような反応を加熱させながら行うと白金が合金化して損傷を受ける。
白金るつぼは素材の性質上、再生・修理は高額となるので十分注意する必要がある[2]
金るつぼ
金は化学的に安定に安定だが、融点が1064℃と低い。
アルミナるつぼ
アルミナ熱膨張率が大きいため急激に加熱すると破損しやすい。また融液と反応しやすい。

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 図解 レンズがわかる本 永田信一 日本実業出版社 2002年 ISBN4-534-03491-1 P61
  2. ^ http://www.techno-qanda.net/dsweb/Get/Document-9870/ 産業技術総合研究所 Technoknowledge network 白金器具の取り扱いについて(白金るつぼの使用上の注意点が簡潔かつ網羅的に掲載されている)[リンク切れ]

外部リンク[編集]