スイセン属

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スイセン属
Narcissus
Narcissus
(2005年5月)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: クサスギカズラ目 Asparagales
: ヒガンバナ科 Amaryllidaceae
亜科 : ヒガンバナ亜科 Amaryllidoideae
: スイセン連 Narcisseae
: スイセン属 Narcissus
学名
Narcissus
L. (1753)
タイプ種
N. poeticus L.

スイセン属(スイセンぞく、学名: Narcissus)は、ヒガンバナ科クロンキスト体系ではユリ科)ののひとつ。この属にはニホンズイセンラッパズイセンなど色や形の異なる品種が多くあるが、この属に含まれるものを総称してスイセンと呼んでいる。

狭義には、学名 Narcissus tazetta や、その変種であるニホンズイセンNarcissus tazetta var. chinensis)をスイセンということも多い。しかし、本記事では特に明記しない限り「スイセン」をスイセン属の総称の意味で用いる。

形態・生態[編集]

多年草で、からにかけて白や黄のを咲かせるものが多い。草丈は、品種・環境によるが、15 - 50cm程度である。

は、黒い外皮に包まれた鱗茎の内部にある。そのため切断しない限り人の目に触れることはない。葉身は、若干厚みがあり扁平で細長く、つや消しのような表面をしている。

葉の間からつぼみをつけた花茎が伸び、伸びきるとつぼみが横向きになり、成熟するとつぼみを覆っていたを破って花が開く。典型的なスイセンの花の場合、雌蕊(しずい)は1本、雄蕊(ゆうずい)は6本。6枚に分かれた花びらと、中心に筒状の花びらを持つが、6枚に分かれている花びらのうち、外側3枚は(がく)であり、内側3枚のみが花弁である。二つをあわせて花被片(かひへん)と呼ぶ。一方、中心にある筒状の部分は副花冠(ふくかかん)という。花被片・副花冠の形状と花の着き方により、品種を区分する。

分布[編集]

Narcissus bulbocodium bulbocodium 原種の一つ

原産地は主にスペインポルトガルを中心に地中海沿岸地域、アフリカ北部まで広がり、原種は30種類ほど知られている。また、園芸用に品種改良されたものが広く栽培されている。

日本においては、ニホンズイセンが古くに中国を経由して渡来したといわれている。分布は、本州以南の比較的暖かい海岸近くで野生化し、群生が見られる。越前海岸の群落が有名であり、福井県県花ともなっている。

群生地[編集]

人間との関わり[編集]

毒性[編集]

有毒植物成分はリコリン (lycorine) とシュウ酸カルシウム (calcium oxalate) など。全草が有毒だが、鱗茎に特に毒成分が多い。スイセンの致死量は10gである。食中毒症状と接触性皮膚炎症状を起こす。中毒は初期に強い嘔吐があり摂取物の大半が吐き出されるため症状が重篤に到ることは稀であるが、鱗茎を浅葱(あさつき)と間違えて食べ死亡した例がある。

葉がニラととてもよく似ており、ニラと間違えて食べ中毒症状を起こすという事件がときどき報告・報道される[6]。ニラとの大きな違いは次の通りである。

  • 葉からの臭いがない(ニラは葉からニラ独特の強い臭いを放つ)。
  • 鱗茎がある(ニラは髭(ひげ)根で鱗茎はない)。

品種改良[編集]

原種は花弁が細くねじれており、それを平たい花弁にするのに50年ほどかかった。その後、八重咲きなどの花容の品種改良、および、白と黄色以外の色を出すための品種改良がなされ、副花冠が赤、ピンクのものが加わった。品種改良の中心地は栽培に気候が適しているイギリスが草分けである。現在ではオランダ、日本がそれに続いている。

増え方と育て方[編集]

チューリップヒヤシンスなどと同様に典型的な球根植物。市販の球根を買って花壇や鉢に植えて育てる。一定の寒さに当たらないと開花しない性質を有する。晩秋に球根が市場に出回るのでそれを植えて育てる。ニホンズイセンだと初春には開花するが、西洋スイセンは4月ごろに開花する。春先には開花株が出回り、それを観賞することもできる。

開花後は葉と茎が枯れるまで切らずに置いておくと、球根が太る。チューリップと異なり、子株が育っても親株も残る(チューリップは子株が育つと、親株が衰える)。被子植物である以上、結果し、種でも増えるが、開花までには数年かかるため、育種(品種改良)を目的とする場合を除けば一般には行われない。球根を分球させて増やす。

スイセンは日本の気候と相性が良いので、植え放しでも勝手に増える。球根が細分化するばかりで、開花しない場合は、土壌の窒素過多か、植え付けが浅すぎることが原因である。夏場は地表面を別の植物で覆うと、温度が上がり過ぎず、地中の球根に適した環境を維持できる。

文化[編集]

水仙紋

Narcissus という学名は、ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスに由来する。神話によると、ナルキッソスは、その美しさにさまざまな相手から言い寄られたものの、高慢にはねつけ恨みを買った。ついには、そんな彼への呪いを聞き入れた復讐の女神ネメシスにより、水鏡に映った自分自身に恋してしまった。水面の中の像は、ナルキッソスの想いに決して応えることはなく、彼はそのまま憔悴して死ぬ。そして、その体は水辺でうつむきがちに咲くスイセンに変わった、というものである。だからこそスイセンは水辺であたかも自分の姿を覗き込むかのように咲くのである。

「スイセン」という名は、中国での呼び名「水仙」を音読みしたもの。「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典に由来する。水辺で咲く姿を仙人にたとえたのであろう。 別名に雪中花、雅客。方言ではチチロ、キンデバナ、キンデ、シイセン、ハルダマなどの呼び名がある。

また、ラッパスイセン (Daffodil) はウェールズ国章であり、ウェールズでは3月1日の聖ダビデの日 (Saint David's Day) に、ラッパスイセンかリーキを身につける習慣がある。

ウイリアム・ワーズワースは "I Wandered Lonely as a Cloud" という著名なを、またE・E・カミングスは "in a time of daffodils" という詩をそれぞれ遺している。

海外では水仙は「希望」の象徴であり、ガン患者をサポートする団体の多くで、春の訪れと共に咲くこの水仙が「希望」のシンボルとして募金活動のキャンペーンに用いられている。

地方公共団体などの花[編集]

下位分類[編集]

スイセン Narcissus tazetta
ニホンズイセン Narcissus tazetta var. chinensis
和名はニホンズイセン(日本水仙)であるが、原産地は地中海沿岸。室町時代以前に、中国を経由して日本に入ったと考えられている。園芸作家の柳宗民はニホンズイセンは中国から球根が海流にのって漂着したものが、野生化していったのではないかとの説をとっている。
ラッパズイセン Narcissus pseudonarcissus
クチベニズイセン Narcissus poeticus
ギリシア神話では、学名の由来ともなっているナルキッソスの生まれ変わりといわれている。
キズイセン Narcissus jonquilla
カンランズイセン Narcissus x odorus
キズイセンとラッパズイセンとの雑種

花の形による分類[編集]

ここでは西洋スイセンの花容の説明をする。

  • ラッパ咲き - 副冠の長さが花弁の長さと同じかそれ以上のもの。
  • カップ咲き - 副冠の長さが花弁の長さより1/3より長く花弁全体より短いもの。
  • 小カップ咲き - 副冠の長さが花弁の長さより1/3より短く花弁全体より短いもの。
  • 八重咲き - 花弁や副冠が八重咲きになるもの。
  • トリアンドロス咲き - 下向きに咲くもの。
  • シクラメネウス咲き - 花弁がシクラメンの花のように反転するもの。
  • スプリットコロナ咲き - 副冠が1/3以上裂けているもの。

画像集[編集]

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]