アルジャーノンに花束を
『アルジャーノンに花束を』(アルジャーノンにはなたばを、Flowers for Algernon)は、アメリカ合衆国の作家ダニエル・キイスによるSF小説。1959年に中篇小説として発表し、1966年に長篇小説として改作された。本作を原作として映画、同名のテレビドラマ、舞台作品などが制作されている。日本での出版は早川書房からなされており、翻訳権独占であった。なお、ハヤカワ文庫版の発売まで10年以上の期間があった。
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[編集] 概要
アメリカの雑誌『ファンタジイ・アンド・サイエンス・フィクション』1959年4月号で中編小説が発表され、翌年のヒューゴー賞を受賞[1]。アイザック・アシモフ編の『ヒューゴー賞傑作選 No.2』にも収録された[1]。1966年に長編小説化され、ネビュラ賞を受賞[1]。また、ヒューゴー賞 長編小説部門候補にも挙げられた[1]。過去の受賞作と同内容のものが候補となることは異例である[1]。
それまでのSFが宇宙や未来などの舞台を前提とした作品であったことに比べ、本作は知能指数を高める手術とそれに付随する事柄という限定した範囲での前提でSFとして成立している[2]。ジュディス・メリルは、本作をSFの多様性をあらわす作品のひとつとして位置づけている[2]。
[編集] 日本語版
日本語訳は早川書房が独占翻訳権を獲得した。中編小説版を稲葉由紀(いなば ゆき)訳で『S-Fマガジン』1961年2月号に掲載、『世界SF全集』32巻に収録された。長編小説版は1978年に小尾芙佐(おび ふさ)訳で出版、1989年に改訂された。いずれの訳でも、はじめは滅茶苦茶だった英語の綴り・句読法や文法がチャーリーの知能の向上に連れて徐々に正しくなっていく(後半ではでたらめになってゆく)原文の表現を、日本語の漢字・句読点やテニヲハに移し変えた名訳と言われている。
[編集] 受賞
- 1960年 ヒューゴー賞 中篇小説部門(中篇版)[1]
- 1966年 ネビュラ賞 長篇小説部門(長篇版)[1]
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。
[編集] あらすじ
主人公である「彼(チャーリイ・ゴードン)」自身の視点による一人称で書かれており、主に「経過報告」として綴られている。最初の頃は簡単な言葉や単純な視点でのみ、彼の周囲が描かれる。
精神遅滞の青年チャーリイは、他人を疑うことを知らず、周囲に笑顔を振りまき、誰にでも親切であろうとする、大きな体に小さな子供の心を持ったおとなしい性格の青年だった。しかし彼には子供の頃、正常な知能の妹に性的な乱暴を働いたと家族に誤解され、母親に見捨てられた過去があった。
ある日、彼は仕事のかたわら通う精神遅滞者専門の学習クラスで、監督者である大学教授から、開発されたばかりの脳手術を受けるよう勧められる。先んじて動物実験で対象となったハツカネズミの「アルジャーノン」は、驚くべき記憶・思考力を発揮し、チャーリーの目の前で難関の迷路実験で彼に勝ってしまう。この手術の人間に対する臨床試験の被験者第1号として、彼が選ばれたのだった。
手術は成功し、チャーリイのIQは68から徐々に上昇。ついには185に達し、彼は超知能を持つ天才となった。チャーリイは大学で学生に混じって勉強することを許され、知識を得る喜び・難しい問題を考える楽しみを満たしていく。だがいっぽうで、頭が良くなるに連れ、これまで友達だと信じていた仕事仲間に騙されいじめられていたこと、母親に捨てられたことなど、知りたくもない事実の意味を理解するようになる。
一方で、チャーリイの感情は未発達な幼児のままだった。突然に急成長を果たした天才的な知能とのバランスが取れず、妥協を知らないまま正義感を振り回し、自尊心が高まり、知らず知らず他人を見下すようになっていく。誰もが笑いを失い、周囲の人間が遠ざかっていく中で、チャーリイは手術前には抱いたことも無い孤独感を抱くのだった。また、忘れていた記憶の未整理な奔流がチャーリイを苦悩の日々へと追い込んでいく。
そんなある日、自分より先に脳手術を受け、彼が世話をしていたアルジャーノンに異変が起こる。チャーリイは自身でアルジャーノンの異変について調査を始め、手術に大きな欠陥があった事を突き止めてしまう。手術は一時的に知能を発達させるものの、性格の発達がそれに追いつかず社会性が損なわれること、そしてピークに達した知能は、やがて失われる性質のものであることが明らかとなり、彼は失われ行く知能の中で、退行を引き止める手段を模索する。だが、もはや知能の退行を止めることはできず、ついにはチャーリイは元の幼児並の知能を持った知的障害者に戻る。
彼は経過報告日誌の最後に、正気を失ったまま寿命が尽きてしまったアルジャーノンの死を悼み、これを読むであろう大学教授に向けたメッセージとして、「うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください」と締め括る。
[編集] 主な登場人物
- チャーリイ・ゴードン(Charlie Gordon)
- 主人公。32歳だが、知能は6歳児並みの精神遅滞者。頭が良くなりたいと強く願っており、脳手術を受けて超天才となる。
- アルジャーノン(Algernon)
- チャーリイの前に同じ脳手術を受け、超知能を得たハツカネズミ。
- アリス・キニアン(Alice Kinnian)
- チャーリイが通う精神遅滞者専門の学習クラスの女教師。チャーリイの学習意欲を見込んで、脳手術を勧める。
- ハロルド・ニーマー教授(Professor Harold Nemur)
- プロジェクトの研究主任で心理学者。
- ジェイ・ストラウス博士(Doctor Jay Strauss)
- 精神科医にして脳神経外科医。チャーリイの脳手術を執刀した。
- バート・セルドン(Burt Seldon)
- 大学院生で心理学の専攻学生。プロジェクトの助手を務めており、アルジャーノンの世話をしている。
- フェイ・リルマン(Fay Lillman)
- 女流画家。超天才となったチャーリイに興味を持つ。
- アーサー・ドナー(Arthur Donner)
- チャーリイが勤めるパン屋の主人。亡き親友ハーマンに頼まれ、その甥であるチャーリイの面倒を見ている。
- マット(マシュウ)・ゴードン(Matt Gordon)
- チャーリイの父。息子の精神遅滞を受け入れており、妻と口論することが多かった。
- ローズ・ゴードン(Rose Gordon)
- チャーリイの母。いつまでも知能的に成長しないチャーリイを嫌っていた。
- ノーマ・ゴードン(Norma Gordon)
- チャーリイの妹。正常な知能の持ち主で、母の影響でチャーリイを嫌っていた。
[編集] 映画
- 『まごころを君に』(原題"Charly")、アメリカ、1968年
- 監督:ラルフ・ネルソン
- 主演:クリフ・ロバートソン - アカデミー主演男優賞受賞[3]
- 出演:クレア・ブルーム、レオン・ジャニー、リリア・スカラほか
- 『まごころを君に』(原題"Flowers for Algernon")、カナダ、2000年
- 監督:ジェフ・ブレックナー
- 主演:マシュー・モディン
- 出演:ケリー・ウィリアムズ、ボニー・ベデリア、ロン・リフキンほか
- 『アルジャーノンに花束を』(原題"DES FLEURS POUR ALGERNON")、フランス、2006年
- 監督:デビッド・デルリエフ
- 主演:ジュリアン・ボワスリエ
- 出演:エレーヌ・ド・フジュロールほか
[編集] テレビドラマ
| ドラマ |
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関連項目
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2002年、小説版をもとにしたテレビドラマが、関西テレビで製作され、10月8日~12月17日にフジテレビ系の火曜22時枠で放送された。全11回、平均視聴率11.1%。
この作品では、主人公チャーリー・ゴードンは藤島ハルと名前を変え、舞台も日本に変更され、主人公が恋する先生にも恋人がいるなど、一部変更されている。また結末-主人公の行く末も原作より大きく変更されている。
脚本の岡田惠和、音楽の寺嶋民哉など、スタッフ、キャストに名作ドラマ『イグアナの娘』のメンバーが集結している。
海外に著作権があったため、ドラマ化をするにあたり交渉に3年かかった。その労苦にもかかわらず、視聴率は振るわなかった。
[編集] キャスト
()は原作での該当人物
- 藤島ハル(チャーリイ・ゴードン) - ユースケ・サンタマリア
- 遠矢エリナ(アリス・キニアン) - 菅野美穂
- 高岡晴彦 - 吉沢悠
- 桜井恭子(アーサー・ドナー) - 中島知子(オセロ)
- 小林留美子 - 石橋けい
- 蓮見冬美(ノーマ・ゴードン) - 山口あゆみ
- 原田文彦 - 井澤健
- 柳元啓輔 - 岡本竜汰
- 建部真一郎(ジェイ・ストラウス博士) - 益岡徹
- 徳永篤(バート・セルドン) - 田口浩正
- 田代ミキ - 榎本加奈子
- 蓮見佐智代(ローズ・ゴードン) - いしだあゆみ
[編集] テーマソング
- 主題歌
- ジェニファー・ウォーンズ「ソング・オブ・バーナデット」(BMG FUNHOUSE)
- 挿入歌
- ラブハンドルズ「スピード」(Sony Records)
[編集] スタッフ
[編集] 韓国でのリメイク
2006年、韓国放送公社(KBS)で『おはよう、神様!』(안녕하세요 하느님(アンニョンハセヨ ハヌニム))のタイトルでリメイクされている。主人公の名は日本版ドラマと同じ「ハル」であるが、パン屋に勤務しているのではなく養護学校にいることや、女詐欺師が登場するなど日本版とは違う設定になっている。出演はユ・ゴン、キム・オクビン、イ・ジョンヒョクなど。
[編集] 翻案
1971年にフジテレビで放送された『スペクトルマン』の第48話「ボビーよ怪獣になるな!!」、第49話「悲しき天才怪獣ノーマン」のストーリーは「アルジャーノンに花束を」の翻案である。
[編集] ラジオドラマ
1995年8月7日~11日 NHKFM青春アドベンチャー枠で放送された本作品のラジオドラマ版。奇抜な演出も大きな改変もなく、原作小説の内容がほぼ忠実に再現されていた。なお、それ以前にNHKラジオ第一放送で中編版を原作としてラジオドラマ化されたこともある。
[編集] キャスト
[編集] スタッフ
[編集] 舞台
様々な形で舞台化されている。
[編集] 1990年
9月21日〜10月7日まで三百人劇場にて上演 劇団昴公演 脚本・演出菊池准
[編集] キャスト
- チャーリー・ゴードン - 牛山茂
- アリス・キニアン - 相沢恵子
- ストラウス博士 - 西沢利明
- ニーマー教授 - 小山武宏
- バート・セルドン - 伊藤和晃
- フェイ・リルマン - 土井美加
- 父親マット - 金尾哲夫
- 母親ローズ - 石井ゆき
- 妹ノーマ - 望木祐子
- パン屋の主人ドナー - 久保田民絵
[編集] 2005年
6月9日〜7月1日まで三百人劇場にて上演 劇団昴公演 脚色菊池准 演出三輪えり花
[編集] キャスト
[編集] 2006年
2月22日〜3月10日まで博品館劇場、静岡市民文化会館、大阪厚生年金会館、愛知厚生年金会館にて上演。
[編集] キャスト
- チャーリィ・ゴードン - 浦井健治
- アリス・キニアン - 安寿ミラ
- ハロルド・ニーマー教授 - 戸井勝海
- バート・セルドン - 永山たかし
- フェイ・リルマン - 小野妃香里
- ヒルダ - 朝澄けい
- ルシル - 小田島クリスティン
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
[編集] 出典
- ^ a b c d e f g 谷口高夫 「解説」『アルジャーノンに花束を』 早川書房、1991年5月15日、改訂25版、321ページ。ISBN 4-15-203393-2。
- ^ a b 谷口高夫 「解説」『アルジャーノンに花束を』 早川書房、1991年5月15日、改訂25版、322ページ。ISBN 4-15-203393-2。
- ^ 谷口高夫 「解説」『アルジャーノンに花束を』 早川書房、1991年5月15日、改訂25版、323ページ。ISBN 4-15-203393-2。
| フジテレビ系(関西テレビ制作) 火曜22時枠の連続ドラマ | ||
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天体観測
(2002.7.2 - 2002.9.17) |
アルジャーノンに花束を
(2002.10.8 - 2002.12.17) |
僕の生きる道
(2003.1.7 - 2003.3.18) |