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'''{{lang|en|AMBAC}}'''(アンバック、{{lang-en-short|active mass balance auto control}}能動的質量移動による自動姿勢制御)とは、[[アニメ]]『[[ガンダムシリーズ一覧|ガンダムシリーズ]]』において登場する作品中の[[架空]]の技術の名称。
'''{{lang|en|AMBAC}}'''(アンバック、{{lang-en-short|Active Mass Balance Auto Control}}=能動的質量移動による自動姿勢制御)とは、[[アニメ]]『[[ガンダムシリーズ一覧|ガンダムシリーズ]]』において登場する作品中の[[架空]]の技術の名称。
<!--SEEDはガンダムシリーズの一部なのでこれで十分でしょう-->


==概要==
== 概要 ==
===作品世界での経緯===
=== 作品世界での経緯 ===
AMBACは、[[宇宙空間]]においての一部を高速で動かすことで発生する[[運動の第3法則|反作用]]を、[[モビルスーツ]]や[[モビルアーマー]]の機体全体の[[姿勢制御]]に利用するものである。[[バーニ|バーニア]]や[[スラスター]]のように[[ロケットエンジンの推進剤|推進剤]]の消費ないことから、宇宙空間ではデッドウェイトになると考えられていたモビルスーツの可動肢(腕部や脚部)が、有用な[[姿勢制御システム]]として働くことになった。
AMBACシステムは、[[宇宙空間]]において腕や脚の振りにより[[姿勢制御]]を行う方式である。従来方式の[[宇宙戦闘機]]は[[バーニアスラスタ|バーニア・ロケット]]で[[ロケットエンジンの推進剤|推進剤]]を噴射して、その[[運動の第3法則|反作用]]で姿勢を制御する必要があるが、この推進剤の消費量は極めて大きく、従来型の宇宙戦闘機の場合、180度の姿勢変化を2.5秒で行うと30回程度で推進剤切れとなった。方のAMBACシステムでは可動肢(腕や脚部)を高速で動かすことで発生する反作用によって、[[モビルスーツ]]や[[モビルアーマー]]の機体全体の姿勢制御に利用するものである。[[バーニアスラスタ|バーニア]]や[[スラスター]]と異なり、AMBACシステムでは推進剤を全く消費ないため、宇宙空間では[[重し#死重|デッドウェイト]]になると考えられていたモビルスーツの可動肢が、有用な[[姿勢制御システム]]として働くことになった<ref name="CENTURY">『GUNDAM CENTURY』, pp. 34-35.</ref>


[[一年戦争]]終結後、四肢とは別に可動肢を設け、テールスタビレーターやフレキシブルバインダーとして、積極的に機体の姿勢制御を行う形に発展した。
[[一年戦争]]終結後、四肢とは別に可動肢を設け、テールスタビレーターやフレキシブルバインダーとして、積極的に機体の姿勢制御を行う形に発展した。


しかし、実際のガンダムシリーズの劇中では[[動画 (アニメーション)|作画]]が複雑になりすぎるためほとんど描写されておらず、ほぼすべての作品でモビルスーツやモビルアーマーはバーニア噴射によって(時にそれさえなしで)空間機動や飛行を行なっている。例外として、短編[[コンピュータグラフィックス]]作品『[[GUNDAM EVOLVE|{{lang|en|GUNDAM EVOLVE II RX-178 GUNDAM Mk-II}}]]』にて、[[ガンダムMk-II]]の空間戦闘シーンにおいてAMBACによる姿勢制御の表現が行われている。
しかし、実際のガンダムシリーズの劇中では[[動画 (アニメーション)|作画]]が複雑になりすぎるためほとんど描写されておらず、ほぼすべての作品でモビルスーツやモビルアーマーはバーニア噴射によって(時にそれさえなしで)空間機動や飛行を行なっている。例外として、短編[[コンピュータグラフィックス]]作品『[[GUNDAM EVOLVE|GUNDAM EVOLVE II RX-178 GUNDAM Mk-II]]』にて、[[ガンダムMk-II]]の空間戦闘シーンにおいてAMBACによる姿勢制御の表現が行われている。


『[[ガンダムSEED MSV]]』では、[[M1アストレイ#M1Aアストレイ|M1Aアストレイ]]など宇宙戦用のモビルスーツで、機能がAMBACに特化した可動肢が使用されている。『[[機動戦士ガンダムAGE]]』では、[[小太刀右京]]によるノベライズ版に{{lang|en|AMBAC}}への言及がある。
『[[ガンダムSEED MSV]]』では、[[M1アストレイ#M1Aアストレイ|M1Aアストレイ]]など宇宙戦用のモビルスーツで、機能がAMBACに特化した可動肢が使用されている。『[[機動戦士ガンダムAGE]]』では、[[小太刀右京]]によるノベライズ版にAMBACへの言及がある。


===現実世界での経緯===
=== 現実世界での経緯 ===
この技術は、日本のテレビ放送終了後の[[1981年]]、[[みのり書房]]の[[ムック (出版)|ムック]]『[[ガンダムセンチュリー|宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY]]』の記事内で発表された。当時のアニメの制作スタッフとは無関係に、宇宙空間における人型兵器の存在を合理化できる作品世界に存在する技術として、(後にガンダムシリーズの設定考証を担当することとなる)[[森田繁]]が学生時代に考案した(本来は)非公式の設定である。この記事では[[宇宙世紀の企業#ジオニック|ジオニック]]社による発とされ、[[核融合炉]]と四肢を稼働させる流体パルスシステムの組み合わせにより巨大な機体の姿勢制御が可能、腕を先端の加速100[[重力加速度|G]]以上でことで、180度旋回に3と要しない、とされている。
この技術は、日本の[[テレビアニメ]]『[[機動戦士ガンダム]]』放送終了後の[[1981年]]、[[みのり書房]]の[[ムック (出版)|ムック]]『[[ガンダムセンチュリー|宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY]]』の記事内で発表された<ref name="CENTURY"/>。当時のアニメの制作スタッフとは無関係に、宇宙空間における人型兵器の存在を合理化できる作品世界に存在する技術として、(後にガンダムシリーズの設定考証を担当することとなる)[[森田繁]]が学生時代に考案した(本来は)非公式の設定である。この記事では[[宇宙世紀の企業#ジオニック|ジオニック]]社の技術陣による発とされ、軍用の強力なジェネレーター(初期は通常型[[原子炉]]、後に超小型[[核融合炉|熱核反応炉]]と四肢を稼働させる流体パルスシステムの組み合わせにより「モビルスーツのような巨大兵器でも、腕を先端の加速一〇〇[[重力加速度|G]]以上で運動させで、以内で一八〇度の姿勢変化がさせられる」とされている<ref name="CENTURY"/>


==備考==
== 備考 ==
<!--*アンバックは人型兵器を合理化するための、大変ユニークかつリアルな設定であるが[[フィクション]]である。実際にロボットが宇宙空間で腕を振り回すことを考えると、[[角運動量保存の法則]]により、自然に活動できる姿勢を保持するのは困難である。例を挙げると、右回りに回転しているガンダムが右腕を右に振り回せば、確かに胴体は瞬間的に停止する。しかし、腕が後ろを向いてしまっているためになんら有効な活動は行えず、また、腕が回りきった段階で胴体もつられて元の方向に回りだしてしまう。-->
<!--*アンバックは人型兵器を合理化するための、大変ユニークかつリアルな設定であるが[[フィクション]]である。実際にロボットが宇宙空間で腕を振り回すことを考えると、[[角運動量保存の法則]]により、自然に活動できる姿勢を保持するのは困難である。例を挙げると、右回りに回転しているガンダムが右腕を右に振り回せば、確かに胴体は瞬間的に停止する。しかし、腕が後ろを向いてしまっているためになんら有効な活動は行えず、また、腕が回りきった段階で胴体もつられて元の方向に回りだしてしまう。-->
<!--*モビルスーツの動きを鈍らせるには可動肢への攻撃が有効ということになる。-->
<!--*モビルスーツの動きを鈍らせるには可動肢への攻撃が有効ということになる。-->
<!--*実際の姿勢制御では、腕のように稼動範囲が限定されていない、何らかの物体を動かした方が有効である。-->
<!--*実際の姿勢制御では、腕のように稼動範囲が限定されていない、何らかの物体を動かした方が有効である。-->
* 実際の[[宇宙機]]などでも、姿勢制御にスラスターを使うことには複数の問題があるので(推進剤を消費する、噴射機構は比較的複雑でありトラブルの可能性が高い、姿勢だけでなく軌道に影響する)、[[モーメンタムホイール]]等と呼ばれる角運動量を保存させる一種のフライホイールを併用して姿勢制御を行っている。
* 実際の[[宇宙機]]などでも、姿勢制御にスラスターを使うことには複数の問題があるので(推進剤を消費する、噴射機構は比較的複雑でありトラブルの可能性が高い、姿勢だけでなく軌道に影響する)、[[モーメンタムホイール]]等と呼ばれる[[角運動量]]を保存させる一種の[[フライホイール]]を併用して姿勢制御を行っている。
* さらに複雑な形状(たとえば、ヒト型)における、手を用いた姿勢制御自体は、現実に[[宇宙飛行士]]が[[宇宙遊泳|船外活動]]においてよく使っている操作手法であるが、「AMBAC」はあくまで架空の呼称であり、現実のそれを指して(専門用語として)使われることは通常はない。
* さらに複雑な形状(たとえば、ヒト型)における、手を用いた姿勢制御自体は、現実に[[宇宙飛行士]]が[[船外活動]]においてよく使っている手法であるが、「AMBAC」はあくまで架空の呼称であり、現実のそれを指して(専門用語として)使われることは通常はない。
* なお、AMBACについて、力学的な、さらに実際の技術にもとづき検討や考察を行った例はあり、[[計測自動制御学会]]の学誌『計測と制御』43巻1号8 - 9頁に紹介されている。
* なお、AMBACについて、力学的な、さらに実際の技術にづき検討や考察を行った例はあり、[[計測自動制御学会]]の[[術雑]]『計測と制御』43巻1号に紹介されている{{Sfn|岩田敏彰|2004|pp=8-9}}


==参考文献==
== 脚注 ==
{{Reflist}}
* みのり書房[[月刊OUT|月刊{{lang|en|OUT}}]]別冊『[[ガンダムセンチュリー|宇宙翔ける戦士達 {{lang|en|GUNDAM CENTURY}}]]』(1981年発行。2000年、樹想社より再版)ISBN 4-87777-028-3


==関連項目==
== 参考文献 ==
* みのり書房 [[月刊OUT|OUT]]別冊『[[ガンダムセンチュリー|宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY]]』(1981年発行。2000年、樹想社より再版 ISBN 4-87777-028-3)

== 関連項目 ==
* [[慣性モーメント]]
* [[慣性モーメント]]
* [[リアクションホイール]] &mdash;{{lang|en|AMBAC}}に代わり現実に用いられている技術
* [[リアクションホイール]] - AMBACに代わり現実に用いられている技術


==外部リンク==
== 外部リンク ==
* {{Cite journal|和書|author=岩田敏彰 |date=2004-01-10 |title=小説・漫画・映画に登場した先端科学技術 AMBAC[Active Mass Balance Auto Control(System)]-手足の運動を利用した方向制御機能- |journal=計測と制御 |volume=43 |issue=1 |pages=8-9 |publisher=[[計測自動制御学会]] |doi=10.11499/sicejl1962.43.8 |accessdate=2020-11-26 |ref=harv}}
* [http://www.aist.go.jp/RRPDB/system/Koukai.detail?comUketsuke=2003017833 産業技術総合研究所のデータベースに見える紹介]
* [http://www.robonable.jp/ 日刊工業新聞社 {{lang|en|Robonable}}]
* [http://www.robonable.jp/ 日刊工業新聞社 {{lang|en|Robonable}}]
* [http://robonable.typepad.jp/roboist/2009/02/1-ambac-1d2e.html 第1回「モビルスーツの力学と制御 -AMBACシステム、ガンダムハンマーの制御を分析-(前編)」]
** {{Wayback |url=http://robonable.typepad.jp/roboist/2009/02/1-ambac-1d2e.html |title=第1回「モビルスーツの力学と制御 -AMBACシステム、ガンダムハンマーの制御を分析-(前編)」|date=20090208173911}}
* [http://robonable.typepad.jp/roboist/2009/02/2-ambac-aef6.html 第2回「モビルスーツの力学と制御 -AMBACシステム、ガンダムハンマーの制御を分析-(後編)」]
** {{Wayback |url=http://robonable.typepad.jp/roboist/2009/02/2-ambac-aef6.html |title=第2回「モビルスーツの力学と制御 -AMBACシステム、ガンダムハンマーの制御を分析-(後編)」|date=20090221204727}}


{{ガンダムシリーズ}}
{{ガンダムシリーズ}}

2020年11月27日 (金) 18:20時点における版

AMBAC(アンバック、: Active Mass Balance Auto Control=能動的質量移動による自動姿勢制御)とは、アニメガンダムシリーズ』において登場する作品中の架空の技術の名称。

概要

作品世界での経緯

AMBACシステムは、宇宙空間において腕や脚の振りにより姿勢制御を行う方式である。従来方式の宇宙戦闘機バーニア・ロケット推進剤を噴射して、その反作用で姿勢を制御する必要があるが、この推進剤の消費量は極めて大きく、従来型の宇宙戦闘機の場合、180度の姿勢変化を2.5秒で行うと30回程度で推進剤切れとなった。一方のAMBACシステムでは可動肢(腕部や脚部)を高速で動かすことで発生する反作用によって、モビルスーツモビルアーマーの機体全体の姿勢制御に利用するものである。バーニアスラスターと異なり、AMBACシステムでは推進剤を全く消費しないため、宇宙空間ではデッドウェイトになると考えられていたモビルスーツの可動肢が、有用な姿勢制御システムとして働くことになった[1]

一年戦争終結後、四肢とは別に可動肢を設け、テールスタビレーターやフレキシブルバインダーとして、積極的に機体の姿勢制御を行う形に発展した。

しかし、実際のガンダムシリーズの劇中では作画が複雑になりすぎるためほとんど描写されておらず、ほぼすべての作品でモビルスーツやモビルアーマーはバーニア噴射によって(時にそれさえなしで)空間機動や飛行を行なっている。例外として、短編コンピュータグラフィックス作品『GUNDAM EVOLVE II RX-178 GUNDAM Mk-II』にて、ガンダムMk-IIの空間戦闘シーンにおいてAMBACによる姿勢制御の表現が行われている。

ガンダムSEED MSV』では、M1Aアストレイなど宇宙戦用のモビルスーツで、機能がAMBACに特化した可動肢が使用されている。『機動戦士ガンダムAGE』では、小太刀右京によるノベライズ版にAMBACへの言及がある。

現実世界での経緯

この技術は、日本のテレビアニメ機動戦士ガンダム』放送終了後の1981年みのり書房ムック宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY』の記事内で発表された[1]。当時のアニメの制作スタッフとは無関係に、宇宙空間における人型兵器の存在を合理化できる作品世界に存在する技術として、(後にガンダムシリーズの設定考証を担当することとなる)森田繁が学生時代に考案した(本来は)非公式の設定である。この記事ではジオニック社の技術陣による開発とされ、軍用の強力なジェネレーター(初期は通常型原子炉、後に超小型熱核反応炉)と四肢を稼働させる流体内パルスシステムの組み合わせにより「モビルスーツのような巨大兵器でも、腕を、先端の加速一〇〇G以上で運動させる事で、三秒以内で一八〇度の姿勢変化がさせられる」とされている[1]

備考

  • 実際の宇宙機などでも、姿勢制御にスラスターを使うことには複数の問題があるので(推進剤を消費する、噴射機構は比較的複雑でありトラブルの可能性が高い、姿勢だけでなく軌道に影響する)、モーメンタムホイール等と呼ばれる角運動量を保存させる一種のフライホイールを併用して姿勢制御を行っている。
  • さらに複雑な形状(たとえば、ヒト型)における、手足を用いた姿勢制御自体は、現実に宇宙飛行士船外活動においてよく使っている手法であるが、「AMBAC」はあくまで架空の呼称であり、現実のそれを指して(専門用語として)使われることは通常はない。
  • なお、AMBACについて、力学的な、さらに実際の技術に基づき検討や考察を行った例はあり、計測自動制御学会学術雑誌『計測と制御』第43巻第1号に紹介されている[2]

脚注

  1. ^ a b c 『GUNDAM CENTURY』, pp. 34-35.
  2. ^ 岩田敏彰 2004, pp. 8–9.

参考文献

関連項目

外部リンク