木村草太

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
木村 草太
(きむら そうた)
人物情報
生誕 1980年????
神奈川県横浜市
国籍 日本の旗 日本
出身校 東京大学法学部
配偶者
学問
研究分野 憲法学
研究機関 東京都立大学
学位 学士(法学)(東京大学)
テンプレートを表示

木村 草太(きむら そうた、1980年 - )は、日本法学者。専門は憲法学東京都立大学大学院法学政治学研究科法学政治学専攻・法学部教授高橋和之門下。

来歴[編集]

学歴[編集]

職歴[編集]

  • 2003年 - 東京大学大学院法学政治学研究科の助手(学士助手[注釈 1][1])、憲法学専攻(2006年まで)
  • 2006年 - 首都大学東京(「東京都立大学」に名称変更)大学院社会科学研究科法学政治学専攻・都市教養学部都市教養学科法学系の助教授、のち准教授
  • 2016年 - 首都大学東京大学院社会科学研究科法学政治学専攻・都市教養学部都市教養学科法学系の教授
  • 2018年 - 首都大学東京大学院法学政治学研究科法学政治学専攻・法学部法学科法律学コースの教授
  • 2020年 - 東京都立大学大学院法学政治学研究科法学政治学専攻・法学部法学科法律学コースの教授(現職)

人物[編集]

東京大学助手時代は高橋和之に師事[3]。また、学部生時代には長谷部恭男のゼミにも属していた。

TOKYO MXテレビの「田村淳の訊きたい放題」のコメンテーターや テレビ朝日2016年3月まで「報道ステーション」でコメンテーター[4]沖縄タイムスでの連載「憲法の新手」の他[5]、その他ラジオ番組等[注釈 2]、マスメディアでの活動も多い。

趣味の一つに、将棋がある。東京都立大学法学系において木村は、各大学の法学部において一般的に開講されている「憲法」(人権論、統治機構論など)や「情報法」のような科目、及び憲法学のゼミの他に、将棋の戦法に関する知識を生かした「将棋で学ぶ法的思考・文書作成」など特色のある講義も担当している[6]。メディアに出演する際は法学者としての出演が主であるが、名人戦竜王戦などの各棋戦に関する話題、電王戦などコンピュータ将棋に関する話題など、将棋関係の事柄に言及するためにラジオ出演などをすることもある他、プロ棋士へのインタビューを行ったこともある[7][8][9]

見解[編集]

安全保障[編集]

立憲主義の擁護を標榜し、解釈改憲(憲法改正を伴わない)による集団的自衛権の行使容認などに反対している「立憲デモクラシーの会」に、樋口陽一長谷部恭男小林節ら著名な憲法学者とともに、呼びかけ人の一人として参加している[10]。集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案(第3次安倍内閣による平和安全法制整備法案)については、2015年7月13日、衆議院の中央公聴会において公述人(野党維新の党による推薦)として発言し、日本に対する「武力攻撃の着手」がない段階での武力行使は憲法違反である[要出典]こと、日本国憲法第9条の例外たる「必要最小限度の武力行使」の根拠となる明文の規定とされてきた日本国憲法第13条は政府に「国内の安全を確保する義務」を課しているのみであり、政府に「外国を防衛する義務」を課す規定は存在しないため、他国防衛を日本国憲法第9条の例外として認めることはできないこと、「防衛行政」として「行政権」に含みうる個別的自衛権の行使または「外交協力」として「外交権」に含みうるPKO等への協力とは異なり、集団的自衛権による他国防衛は行政権・外交権にとどまらない明らかな軍事権の行使であって、政府に軍事権を与えていない(行政権と外交権しか与えていない)日本国憲法においては政府による「越権行為」であり憲法違反であること、政府提出法案は日本国憲法第9条違反である以前にそもそも曖昧不明確ゆえに憲法違反であること、現行憲法の下で認められる自衛権の行使は個別的自衛権の範囲にとどまり、個別的自衛権を超える集団的自衛権の行使には国民投票による憲法改正が必須であること、政府は憲法を通じて国民から負託された権限しか行使ができないこと[要出典]、等々を述べ、政府提出法案に反対の意を表明している[11]。また、木村が報道機関などで解説しているとおり、従来の個別的自衛権の枠組みにおいても、日本に対する武力攻撃の「発生」を待たず、日本に対する武力攻撃の「着手」の段階で、武力行使(反撃)は可能であり、外国軍隊への武力攻撃が発生した場合であっても[要出典]、それが同時に日本に対する武力攻撃の着手である場合には、武力行使(反撃)は可能である[12]

上述の安全保障関連法案については、法的には憲法違反であり、また国民の不支持によって政策的にも不要である、と木村は結論付けている[13]。また憲法改正そのものについても、改正が成立しないということであれば、国民がそれを望んでいないということである、としている[11]

この木村の主張について、井上達夫は「戦力という最も危険な国家暴力に対する9条2項の明示的な禁止を、それについて何ら言及していない人権規定に勝手に読み込んで解除するなんて、法解釈の枠を越えた暴論であり、立憲主義の公然たる破壊行為」「憲法学者による『無血限定クーデタ』の試み」「13条の人権規定で9条が禁止する戦力が解禁されるというなら、専守枠内どころか安倍政権の集団的自衛権行使だって容認されてしまう」と強く批判しており、木村の主張するような「13条代用論」は、護憲派にとって自爆的であると論じている[14]

米軍基地[編集]

沖縄タイムスの連載等では、沖縄県アメリカ軍基地問題(普天間基地移設問題)についても論じている。辺野古への基地移設は「国政の重要事項」[要出典]であり、日本国憲法第41条に定められる「立法」の管轄事項であって、辺野古の基地設置は法律により決定されるべきであり、法律を制定する場合は日本国憲法第95条により法的拘束力のある住民投票を行う必要がある、と木村は主張し、行政の判断により住民投票なく進められている辺野古基地移設については違憲の疑いがあるとしている[15][16][17]日米地位協定について、日本国憲法第73条内閣に与えた外交権で日米安保条約、日米地位協定があり、憲法の上に日米安保条約、日米地位協定があるのではないから、日本の主権である外交権で日米地位協定は改定できるとしている。[要出典]

平等条項[編集]

助手論文は『平等なき平等条項論』であり、憲法学者としては、特に権利論の専門家として出発している。

「両性」という文言を以て「異性婚」について定めている日本国憲法第24条の内容は、あくまでも「両性の合意のみに基づいて成立」として「異性婚における男女の平等原則」を定めている(特に制定当時の日本においては家長の判断により女性の意思表示が尊重されない事例が見られたため、明文の規定が盛り込まれた)に過ぎず、同性婚を禁じる条文としては法解釈上絶対に読めないこと、そして、そもそも婚姻に関するその他の問題についても同性婚についてもその権利を制限する規定は日本国憲法上に存在せず、日本国憲法が保護[注釈 3]する基本的権利[注釈 4]として同性婚を含む婚姻の権利を考える[要出典]ならば、日本国憲法の下において同性婚は保護されるべきであること、等々と説明し、日本国憲法第24条により同性婚が認められないという俗説を解消する活動も行っている。日本国憲法第14条及びアメリカ合衆国憲法修正第14条の研究は木村にとって助手論文『平等なき平等条項論』以来の研究テーマであり、アメリカ合衆国において同性婚が全面的に認められた(基本的権利としての同性婚の権利が保護されていなかったことについてアメリカ合衆国憲法違反とされた)合衆国最高裁判所の判決に際しては、ビデオニュース・ドットコムで判例法理の解説を行うとともに、基本的権利としての同性婚と日本国憲法(特に第13条と第14条)との関係について改めて論じた[18]

自民党憲法草案[編集]

自民党が2012年に作成した『日本国憲法改正草案』について、国民や野党に支持を呼びかけるというよりは、ごく一部の人たちの願望が表現されているだけであり「同人誌」のような印象を受けると批判している[19]

選択的夫婦別姓制度[編集]

選択的夫婦別姓制度導入に賛同している。2015年12月16日になされた最高裁大法廷同姓義務合憲判決民集69巻8号2586頁)について、実は選択的夫婦別姓制度に対する理解を示しているものと解している[20]

離婚後共同親権[編集]

世界で採用されている離婚後共同親権には反対している。日本の離婚後単独親権制度について、「日本の家族法は、結構良く考えられた制度だと思うよ」と発言している[21]

同性結婚[編集]

2020年、同性婚の合憲性を問う集団訴訟(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)において、原告側の主張を支持する立場の意見書を裁判所に提出。「国は、第2準備書面(注・2019年10月16日作成)[22]で、婚姻が生殖関係保護のための制度であることを繰り返し強調するのみで、生殖とは結び付かない法律婚の効果について、異性間・同性間で区別する理由を全く説明していない。説明できる理由があれば、すでに、国は準備書面でそれを述べていたはずだろう。そうすると、被告国の準備書面は、親密関係保護に関する効果の区別を正当化できないことの証拠の一つとなっている」と述べた[23]。2021年3月17日、札幌地方裁判所が、婚姻に関する民法戸籍法の規定は法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとの判決を下すと[24]、これを受け、同年4月19日、「札幌地裁判決を踏まえた意見書」と題する意見書を作成し裁判所に提出した。その中で「札幌地裁判決の判断のうち、(中略)婚姻は自然生殖関係保護のためだけにあるのではなく、共同生活を保護するための制度でもあることを認めた点は、非常に意義深く、憲法14条1項の趣旨を十分に踏まえたものであり、控訴審においても維持されるべきであり、他の裁判所も同様に判断すべきである」と述べた[25]

著作[編集]

単著[編集]

監修[編集]

  • 『CD付 現代語訳でよむ 日本の憲法』(アルク、2015年)

共著[編集]

論文[編集]

出演[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 東京大学法学部では学部で一定の成績要件を満たした特に優秀な学生を学部卒業後すぐに助手として採用し、3年間の任期中に論文(「助手論文」と呼ばれる)を作成させ、研究者として養成するという仕組みがあった。その数は法学部1学年約400人の中で多くて10人程度、少ない年は3、4人である。第29代東京大学総長の濱田純一JICA理事長の北岡伸一などは、学士助手になれなかったことをバネに発奮したという[2]
  2. ^ 荻上チキ・Session-22ビデオニュース・ドットコム「マル激トーク・オン・ディマンド」への複数回のゲスト出演など
  3. ^ : equal protection
  4. ^ : fundamental rights

出典[編集]

  1. ^ a b c 若き憲法学者・木村草太先生に、「法学のマインド」を学ぶ!【前編】”. ジセダイ. 星海社 (2012年2月14日). 2018年12月7日閲覧。
  2. ^ 究極の偏差値エリート集団・東大教授の「凄まじい階級社会」”. 現代ビジネス. 講談社 (2018年3月21日). 2018年9月9日閲覧。
  3. ^ 審査基準と三段階審査(5・完)”. 木村草太の力戦憲法 (2011年8月10日). 2018年12月7日閲覧。
  4. ^ 木村草太の記事一覧 プレジデント社
  5. ^ 沖縄タイムス「木村草太」
  6. ^ 首都大学東京シラバス照会「法律学政治学特殊講義(将棋で学ぶ法的思考・文書作成)」
  7. ^ 日本将棋連盟、11月14日TBSラジオ「木村草太・Session-22」に島朗九段、中村太地六段が出演
  8. ^ 日本将棋連盟、3/27(金)TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」に永瀬六段・片上六段が出演します
  9. ^ 日本将棋連盟、4/23(木)TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」は名人戦特集
  10. ^ 立憲デモクラシーの会「呼びかけ人」
  11. ^ a b 衆議院ビデオライブラリ2015年7月13日(月)平和安全特別委員会公聴会
  12. ^ ビデオニュース・ドットコム「現在の政府答弁では安保法制に正当性は見いだせない」
  13. ^ ダイヤモンド・オンライン「木村草太氏に聞く 安保法案はなぜ批判されるのか(下)」2015年7月27日
  14. ^ 石川智也 (2019年9月4日). “護憲派は国民を信じていない 井上達夫インタビュー(下)立憲的改憲こそ安倍改憲への対抗策だ”. 朝日新聞. https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019083000002.html 2019年9月6日閲覧。 
  15. ^ 沖縄タイムス「憲法の新手」
  16. ^ 沖縄タイムス「辺野古新基地で住民投票を 憲法学者・木村草太氏講演」2015年4月1日
  17. ^ ビデオニュース・ドットコム「辺野古問題は住民投票にかけなければならない」2015年4月18日
  18. ^ 「結婚は個人の尊厳に関わる基本的な権利」米最高裁の同性婚合憲判断の法理を読み解く
  19. ^ 「自民党憲法草案には何が書かれているのか? - 木村草太×荻上チキ」、SYNODOS, 2015年11月25日。
  20. ^ 「憲法学者の木村草太氏が「同姓合憲」判決を解説」、VideoNews、2015年12月19日
  21. ^ SotaKimuraのツイート(979662557945278465)
  22. ^ 被告第2準備書面”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー) (2019年10月16日). 2023年6月3日閲覧。
  23. ^ 木村草太 (2020年4月3日). “意見書”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月3日閲覧。
  24. ^ “同性婚の不受理、初の違憲判断 札幌地裁「差別的扱い」”. 朝日新聞. (2021年3月17日). https://www.asahi.com/articles/ASP3K3F63P3JIIPE02H.html 2021年3月17日閲覧。 
  25. ^ 木村草太 (2021年4月19日). “札幌地裁判決を踏まえた意見書”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月3日閲覧。

外部リンク[編集]