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'''エアバスA310'''('''Airbus A310''')は[[ヨーロッパ]]の企業連合であるエアバス・インダストリー社(現:[[エアバス]])が開発・製造した中型の双発[[ジェット機]]である。エアバス・インダストリー社の2番目の製品となった[[旅客機]]であり、ボーイングの製品と直接的に競合した初めてのエアバス機と言われた。A310は、エアバスA300の胴体を短縮して標準的な座席数を200席強とした[[ワイドボディ機]]である。A310では、主翼が新設計となり[[揚抗比]]が改善されたほか、システムのデジタル化・自動化を進め、[[ブラウン管|CRT]]ディスプレイを備えた[[グラスコックピット]]が導入され、操縦士2人だけで運航可能なワイドボディ機の先駆けとなった。A310のエンジンは[[ターボファンエンジン]]で、[[GE・アビエーション|ゼネラル・エレクトリック]]社のCF6シリーズと、[[プラット・アンド・ホイットニー]]社のJT9Dシリーズ、PW4000シリーズから選択された。
'''エアバスA310'''('''Airbus A310''')は[[ヨーロッパ]]の国際共同会社のエアバス・インダストリー社(現:[[エアバス]])が製造していた双発の中型[[ジェット機]]である。


A310シリーズには、最大航続距離が異なる2つの旅客型と、貨客コンバーチブル型、旅客型から改造された貨物専用型、さらに、軍や政府向けに要人輸送、貨物輸送、医療救助、空中給油などを行う装備を持つ派生型が存在する。最初に登場したA310-200は、[[ボーイング707]]、[[ボーイング727|727]]、ダグラス[[DC-8]]などの更新需要を見込んで短・中距離路線向けに開発された旅客型であり、1983年に[[ルフトハンザドイツ航空]]と[[スイス航空]]によって初就航した。1985年に初就航した航続距離延長型のA310-300は、機体寸法はA310-200と変わらないが、複合材料の採用拡大などで機体が軽量化され、水平尾翼内に燃料タンクが増設されたほか、燃料を用いた機体重心の制御によって抗力が低減され燃費性能が向上し、オプションの燃料タンクを追加した場合の航続距離が最大で9,600キロメートルとなった。
== 歴史 ==
エアバス・インダストリー社は、同社初の機種である[[エアバスA300|A300]]の次に開発する旅客機として、A300の2人乗務の短胴型を構想し、それに基づいて開発されたのが本機である。そのため当初の仮称はA300B10だった。


1980年代において、A310は欧州域内を結ぶ路線や、欧州と中東・北アフリカを結ぶ路線などに就航したほか、米国のパン・アメリカン航空やアジアのシンガポール航空などでも採用された。1980年代後半以降、[[ETOPS]]と呼ばれる双発機の長距離飛行に関する緩和要件が認められ、欧州と北米を結ぶ大西洋横断路線や、欧州と日本を結ぶ長距離国際線でも運航されるようになった。[[冷戦]]終結後には、A310は旧東側諸国でも採用されるようになり、1991年に西側諸国製の旅客機として初めてロシアの型式証明を取得した。1993年には、フェデックスが主要顧客となって、中古のA310を貨物専用機へ改造する事業が始まった。
[[主翼]]内の燃料タンク容量の差異により、短距離型A310-100([[航続距離]]1,800[[海里]])と中距離型A310-200(航続距離2,600海里)の2機種の開発を行う構想であったが、-100型の受注はなく開発も行われなかった。
1990年代には、欧米の航空会社ではA310の引退が進み、貨物型への改造が進んだほか、開発途上国の航空会社による運用数が増えた。A310の生産は、1998年に初飛行した255号機以降行われなくなり、2006年にエアバスはA310の生産終了を正式に発表した。2014年4月までに、A310の機体損失事故は11件発生し、その内の8件は死亡事故である。


本項では以下、エアバス製旅客機およびボーイング製旅客機については社名を省略して英数字のみで表記する。例えば、「エアバスA300」であれば「A300」、「ボーイング767」であれば「767」とする。
中距離型A310-200は、[[ルフトハンザドイツ航空]]と[[スイス航空]]が[[ローンチカスタマー]]となり、[[1978年]]7月から開発が開始された。初飛行は1982年4月3日、1983年より商業運航を開始した。


== 沿革 ==
-300型は-200型を元に航続距離を延長した型で、大西洋横断飛行や、[[アジア]]から[[ヨーロッパ]]の大陸間の横断無着陸飛行が可能となった。[[水平尾翼]]内および床下貨物室内に燃料タンクを増備し、空力性能向上を目的として主翼端に[[ウイングチップ|ウイングチップフェンス]]を追加している。1985年7月8日に初飛行した。
=== 開発の背景 ===
[[File:Air France Airbus A300B2 1974 Fitzgerald.jpg|thumb|right|1974年の[[ファーンボロー国際航空ショー]]で飛行する[[エアバスA300|A300]]。A300はエアバス・インダストリーが最初に開発した製品で、[[エールフランス]]によって初就航した{{sfn|帆足|2001|p=40}}。]]
アメリカの[[ボーイング]]社や[[ダグラス・エアクラフト|ダグラス]]社(後の[[マクドネル・ダグラス]]社)に販売面や資金力で大きく先行されていたヨーロッパの航空機メーカーは、1970年12月に企業連合「エアバス・インダストリー」を設立し、世界初の双発[[ワイドボディ機]]となるA300を開発した{{sfn|青木|2010|p=123}}{{sfn|帆足|2001|pp=36-40}}。A300の納入は1974年5月に始まり、[[エールフランス]]によって商業運航が開始された{{sfn|帆足|2001|p=40}}。当初、A300の販売は苦戦したが、1977年に40機の注文を獲得して状況が好転し、翌年には[[イースタン航空]]からの受注により念願の米国進出も果たした{{sfn|浜田|2010|p=93}}{{sfn|藤田|2001a|pp=44-45}}。事業存続の見通しが立ったエアバスは、製品ラインナップの拡充を本格的に考え始め、市場調査に取りかかった{{sfn|浜田|2010|p=93}}。1960年代には航空輸送需要は当分拡大し続けるとの見方が一般的だったが、1973年の[[オイルショック]]などをきっかけとして、ジェット旅客機の需要は急減速していた{{sfn|浜田|2010|p=93}}。一方で、1980年代になれば[[ボーイング707|707]]や[[ボーイング727|727]]、[[DC-8]]などの退役が始まり、後継機として座席数200席強の短・中距離路線向けの旅客機需要が高まると予測された{{sfn|青木|2014|p=122}}{{sfn|浜田|2010|p=93}}。エアバスではA300の発展版としていくつかの機体案を検討していたが、その一つにA300B10と名付けられた胴体短縮型があり、先の市場予測で需要が見込まれる機体サイズに合致するものであった{{sfn|浜田|2010|p=93}}。旅客機の発展型の開発において、胴体延長型の成功例に対して短縮型の事例は少なかったが、エアバスは市場調査の結果を踏まえ、胴体短縮型の開発に乗り出すことにした{{sfn|浜田|2010|p=93}}{{sfn|藤田|2001a|p=45}}。


A300B10の当初案では、胴体を単純に切り詰めるだけで、開発経費を抑えるために[[主翼]]やシステム類はA300のものをそのまま用いるとされた{{sfn|青木|2014|p=122}}{{sfn|藤田|2001b|p=58}}{{sfn|青木|2010|p=71}}。しかし、当時、A300B10と同じ市場を狙って、ボーイングが全くの新規開発となる双発ワイドボディ機「7X7」(のちの[[ボーイング767|767]])の研究を行っており、エアバスはこれに対抗するため、新型機構想にできるだけ新しい技術を盛り込むことにした{{sfn|青木|2010|p=71}}。短縮される胴体サイズに合わせて主翼を設計し直すとともに、機体システムのデジタル化・自動化を推進することで、ワイドボディ機として世界で初めて操縦士2人での運航を実現する案がまとめられた{{sfn|青木|2010|p=71}}{{sfn|浜田|2010|p=94}}。この機体案は、A300から胴体を10フレーム短くすることから、A300-(マイナス)10と名付けられ、後に正式名称がA310と決定された{{sfn|青木|2010|p=71}}。
250席クラスの[[ワイドボディ]]を持った中長距離機として、ライバルの[[ボーイング767]]とともに欧米やアジアの[[航空会社]]のみならず、[[中南米]]や[[アフリカ]]、[[中東]]の航空会社からも多数のオーダーを受け受注を伸ばした。生産は[[1998年]]6月に終了し、事実上の後継機材はエアバス[[A330]]となっている。2010年8月の時点で255機のA310が納入され208機が運行中である。


A310案は、[[ルフトハンザドイツ航空]]から50機、[[スイス航空]]から20機の受注を獲得し、さらにその後、エールフランスと[[サベナ・ベルギー航空|サベナ航空]]も発注の意向を示した{{sfn|青木|2010|p=71}}{{sfn|帆足|2001|p=40}}。これを受けてエアバスは、1978年7月7日に、同社の2番目の製品としてA310を開発することを正式決定し、同月13日には[[フランス]]と[[西ドイツ]]の政府が事業認可を与えた{{sfn|青木|2010|p=71}}{{sfn|帆足|2001|p=40}}。これは、A310の直接的な競合機とされたボーイング767の開発が正式決定される1日前のことだった{{sfn|浜田|2010|p=95}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=13}}{{sfn|Learmount|1983|p=589}}。
== 特徴 ==
A300の胴体をキャビン部分でフレーム11個分、[[垂直尾翼]]下方(胴体後部)で2フレーム分、合計6.96m短縮したものであり、双発の[[ワイドボディ機]]である。垂直尾翼はA300と同じであるが、主翼・水平尾翼は新規に設計されている。エンジンは[[ターボファンエンジン]]の[[プラット・アンド・ホイットニーJT9D]]を採用。


また、[[イギリス]]政府は、これまでエアバス・インダストリーへの参加を見合わせていたが、同社が徐々に事業を発展させていく様子を見て方針を転換した{{sfn|青木|2010|pp=125-127}}。[[ホーカー・シドレー]]社{{refnest|group="注釈"|同社は契約受注の形でA300の製造には参加していた{{sfn|青木|2010|p=125}}。}}を初めとする英国の航空機メーカーは1977年4月に統合して[[ブリティッシュ・エアロスペース]](以下、BAe)社を設立し、BAe社は1979年1月にフル・パートナーとしてエアバス・コンソーシアムに加盟した{{sfn|青木|2010|pp=126-127}}。
[[コクピット]]にはA300で成功したFFCCツーマンクルー・コクピットに[[ブラウン管|CRT]][[ディスプレー]]
<!--電子技術をA300のアナログ、FFCCの一部デジタル化を行い-->
を採用、飛行管理装置 (FMS) の導入をおこない、[[電子技術]]・自動化の分野で第4世代のジェット旅客機となった。兄弟型のA300の-600シリーズにはA310のコクピットを流用して2人乗務にしている。


== 派生型 ==
=== 設計の過程 ===
[[File:AP-BGR_Airbus_A310-325ET_PIA_Pakistan_International_Airlines_Lining_Up_for_Take_off_-_Head_On_(8613201670).jpg|thumb|正面から見た[[パキスタン国際航空]]のA310。A310はA300と胴体断面を共有する。]]
[[Image:Bangladesh.a310.arp.750pix.jpg|thumb|220px|[[ビーマン・バングラデシュ航空]] エアバスA310-300型機]]
[[File:British Caledonian A310-203.jpg|thumb|[[ブリティッシュ・カレドニアン航空]]のエアバスA310-200。A300の胴体を切り詰め、尾部の絞り込みも急になった。]]
* A310-100:短距離型。計画のみ。
A310のもともとのコンセプトは、A300の胴体を10フレーム短縮するということだったが{{sfn|青木|2010|p=71}}、具体的な設計を経て、5か所で合計13フレーム分の短縮が行われることになった{{sfn|青木|2014|p=123}}{{sfn|浜田|2010|p=94}}。キャビン部では、主翼の前方で6フレーム、主翼の付け根にあたる中央胴体で2か所から各1フレーム、主翼後方で3フレーム取り除かれた{{sfn|青木|2010|p=71}}{{sfn|浜田|2010|p=94}}。さらに、このままでは機体の重心位置から尾翼までの距離が長くなってしまうので、圧力隔壁の後方にあたるテイルコーン部で2フレーム取り除かれ{{sfn|青木|2010|p=71}}、合わせて尾部の形状をA300よりも急角度で絞り込むように修正された{{sfn|浜田|2010|p=94}}。以上の変更により、全長が6.90メートル短縮された一方で、キャビン長の短縮分は5.91メートルにとどまり、A300と比較して、A310は胴体長に占めるキャビン長の割合が大きい機体となった{{sfn|藤田|2001b|p=59}}{{sfn|浜田|2010|p=94}}。
* A310-200:初期量産型。最大航続距離6,800km(3,670海里)
* A310-200C/-300C:貨客混載/転換型
* A310-200F/-300F:純貨物型(旅客型からの改造のみで新造はなし)
* A310-300:長距離型。最大航続距離9,600km(5,200海里)
* [[エアバス A310 MRTT|A310MRTT]]:軍用多目的[[空中給油機]]。[[EADS]]より提案され、[[カナダ軍|カナダ空軍]]、[[ドイツ空軍]]が採用。


{{Clearright}}
-200型と-300型は翼端に装備された[[ウイングチップ]]フェンスの有無(-300に装備)が相違点であったが、-200型にも後に装備する改修が行われたものが有るため外観による区別は難しくなっている。
{| class="wikitable" style="font-size:91%; text-align:right; float:right; margin-left:1.5em;"
|+ 表1: A300とA310の主翼の主要数値{{sfn|浜田|2010|p=95}}
|-
! !!翼幅 (m)!!翼面積 (m<sup>2</sup>) !! アスペクト比!!後退角(度)
|-
!A300
|44.84|| 260.0 || 7.73 ||28
|-
!A310
|43.90 || 219.0 ||8.80||28
|}
A310の主翼は、7,000キロメートルの航続距離を無理なく実現しつつ、短距離路線での運航経済性を損なわない、という2つの要求を満たすように新たに設計された{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}{{sfn|浜田|2010|p=95}}。[[翼型]]は、A300で採用されたリア・ローディング翼型を洗練させ、翼の後半で得られる[[揚力]]が更に大きくなった{{sfn|浜田|2010|p=95}}。[[翼平面形]]については、A300の主翼と比べて大きなアスペクト比を持つ細長い翼となり、翼面積で16パーセントほど小型化された(表1){{sfn|浜田|2010|p=95}}。A300では、主翼の製造において複雑で大掛かりな外板の加工を避けるため、主翼の翼厚比を一定としたシンプルな形状を採用するとともに、外販を[[翼幅]]方向で2枚に分けて製造し、継ぎ手でつなぎ合わせていた{{sfn|藤田|2001a|p=48}}。これに対してA310の主翼は、翼の付け根を厚く、翼端にいくほど薄くなるように翼厚比が変化する複雑な曲面をもつ設計となった{{sfn|藤田|2001a|p=48}}{{sfn|青木|2014|p=123}}。さらに、生産設備を改修して翼幅方向に継ぎ目のない外板の製造に踏み切り、主翼の構造重量の低減を図りつつ、主翼内に搭載できる燃料を増やした{{sfn|藤田|2001a|p=48}}。[[高揚力装置]]の構成については、前縁はA300と変わらないが、後縁のフラップはA300よりも簡略化され、フラップを動作させるトラックレールのフェアリングもA300より1つ少なくなった{{sfn|浜田|2010|p=95}}{{sfn|藤田|2010|p=71}}。また、A300の主翼で設けられていた外翼部の低速用[[補助翼|エルロン]]も廃止された{{sfn|浜田|2010|p=95}}。一方で、動翼の操作系に電気的信号を介する、いわゆる[[フライ・バイ・ワイヤ]]方式を採用し、スポイラーを左右非対称に展開可能にすることでロール運動の制御にも用いるようにした{{sfn|藤田|2001a|p=49}}{{sfn|Kjelgaard|1983|p=951}}。以上のように洗練されたA310の主翼は、巡航速度域での[[揚抗比]]がA300よりも高くなり{{sfn|浜田|2010|p=95}}、大まかに言うと、同じ揚力を得るのに必要とする推力が小さくて済むようになった<ref name=jet>{{Citation |和書 |last=中村 |first=寛治 |title=カラー図解でわかるジェット旅客機の秘密 |date=2010-01-25 |edition=電子第1 |publisher=ソフトバンククリエイティブ |series=サイエンス・アイ新書 |isbn=978-4-7973-5257-3}}</ref> 。

[[File:Airbus A310-221, Swissair AN0521293.jpg|thumb|[[スイス航空]]のA310-200。ローンチカスタマーの1社となった同社は[[プラット・アンド・ホイットニー|P&W]]社のJT9Dエンジンを選択した。]]
尾翼はA300と同じく胴体に直接配置する一般的な構成とし、[[垂直尾翼]]はA300のものが流用されたが、[[水平尾翼]]は再設計され翼面積が8パーセントほど小さくなった{{sfn|浜田|2010|pp=94-95}}。[[降着装置]]も新規に設計されたが、配置や構成はA300と変わらない{{sfn|青木|2010|p=71}}。

A310の設計当時、ワイドボディ機の運航には、[[機長]]、[[副操縦士]]、[[航空機関士]]の3名の乗務を必要としていたが、A310では機長と副操縦士の2人だけで運航することを前提として設計された{{sfn|浜田|2010|p=95}}。操縦士の作業負担を低減するため、機体のシステムの一部が自動化されたほか、従来の機械式計器に代えて6基の[[ブラウン管|CRT]]ディスプレイに計器情報を統合的に提示するコックピットが開発された{{sfn|藤田|2001a|p=49}}{{sfn|浜田|2010|p=95}}。また、電気信号によって指令を送るフライ・バイ・ワイヤによる操縦システムが、先に述べたスポイラーのほかにスラットやフラップにも採用された<ref name=FI-1984-0474>{{Citation |title=Pioneering FBW controls |journal=Flight International |date=1984-03-24 |page=736 |format=PDF |language=English |url=http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1984/1984%20-%200474.html |accessdate=2014-05-20}}</ref>。操縦システムのデジタル化・自動化といった技術革新は軍用機で先行して行われ、旅客機へも波及し始めた時期であり、エアバスでは2人乗務化を見据えてA300のコックピットの改良を行っていたが、A310では当初から2人乗務が可能なコックピットの開発・試験が行われた{{sfn|藤田|2001a|p=49}}{{sfn|浜田|2010|p=95}}。A310と同時期にボーイングが開発を進めていた757/767でも2人乗務のコックピットを準備していたが、大型機の2人乗務化の是非を巡って議論があったことから、3人の乗務を必要とするコックピットに変更して試験が行われていた{{sfn|青木|2014|p=123}}。しかし、A310が2人乗務で欧州の型式証明を取得出来る見込みがたったことで、ボーイングは対抗するため、急遽、757/767を2人乗務仕様に戻している{{sfn|青木|2014|p=123}}。

エンジンは高バイパス比のターボファンエンジンを採用し、[[GE・アビエーション|ゼネラル・エレクトリック]](以下、GE)社のCF6シリーズ、[[プラット・アンド・ホイットニー]](以下、P&W)社のJT9Dシリーズ、[[ロールス・ロイス plc|ロールス・ロイス]](以下、{{nowrap|R-R}})社のRB211シリーズの3種類を装備する仕様が用意された{{sfn|青木|2010|p=72}}。ローンチ・カスタマーのルフトハンザ航空はCF61シリーズ、スイス航空はJT9Dシリーズを選択した{{sfn|浜田|2010|p=95}}。{{nowrap|R-R}}社のRB211エンジン装備仕様については、以降も選択する航空会社が現れず、結局生産されなかった{{sfn|青木|2010|p=72}}。

A310の胴体断面はA300と共通であるため、客室内の幅、高さ、そして座席配置なども基本的には変わらず{{sfn|青木|2010|p=73}}{{sfn|浜田|2010|p=94}}、LD-3航空貨物コンテナを横2列で収納可能な床下の貨物室も引き継がれた{{sfn|阿施|2001|p=114}}。内装ではオーバーヘッド・ビン(座席上の荷物棚)が新しくなり、棚の下端部には通路を移動する乗客のための手すりが設けられた{{sfn|青木|2014|p=123}}。


A310では複合材料の採用範囲が拡大された。A300の設計当時は、ガラス繊維強化プラスチック (GFRP) を除く複合材料は、戦闘機などで採用が始まったばかりであり、A300での複合材料の使用はごく一部にとどまっていた{{sfn|青木|2010|p=96}}{{sfn|藤田|2001a|p=49}}。これが、1970年代末になると[[炭素繊維強化プラスチック]] (CFRP) などが民間機でも普及し始めており、A310では[[カウル|フェアリング]]など一部の2次構造部材{{refnest|group="注釈"|name=structure|1次構造部材とは、飛行荷重・地上荷重・与圧加重の伝達を主要に受持つ構造部材であり<ref>{{Citation|和書 |last1=中田 |first1=守 |last2=北原 |first2=靖久 |last3=畑口 |first3=宏之 |title=航空機用アルミニウム鋳物の動向 |journal=R&D神戸製鋼技報 |publisher=神戸製鋼所 |date=2005-12 |volume=55 |number=3 |pages=87-90}}</ref>、主翼の桁間構造の部材などが相当し<ref name=encyclopedia>{{Citation|和書 |last=青木 |first=隆平 |contribution=翼の構造 |editor= 飛行機の百科事典編集委員会 |title=飛行機の百科事典 |date=2009-12 |page=346 |isbn=978-4-621-08170-9}}</ref>、構造材の中でも最も安全上の信頼性が要求される<ref>{{Citation|和書 |last=前田 |first=豊 |title=炭素繊維の応用と市場 |date=2008-06 |isbn=978-4-7813-0006-1 |page=103}}</ref>。一方、2次構造部材は、主たる荷重を伝達しない部材<ref>{{Cite web |title=航空実用事典 機体全般 |publisher=日本航空 |url=http://www.jal.com/ja/jiten/dict/p077.html |accessdate=2014-06-13}}</ref>で、空力機能を発揮し、風圧などの局部荷重を1次構造部分に伝える主翼の前縁および後縁などが相当する<ref name=encyclopedia/>。}}に採用された{{sfn|青木|2010|p=96}}{{sfn|藤田|2001a|p=49}}。使用された炭素繊維は、日本の東レ社から供給された<ref>{{Citation|和書 |title=炭素繊維及びその複合材料の品質保証に関する研究 |last=松井 |first=醇一 |publisher= 東京大学 |series=博士論文(乙10117、第10117号) |date=1991-03-15 |page=246 }}</ref>。
== 仕様 ==
* 全幅:43.90m
* 全長:46.66m
* 全高:15.80m
* 乗員・乗客:210~280名


当初のA310の開発計画では、航続距離が異なる2つのタイプが検討されていた{{sfn|青木|2014|p=122}}。A310-100は燃料タンクを主翼の[[インテグラルタンク]]のみとした短距離型、A310-200は中央翼内にもタンクを加えて燃料搭載量を増やした中距離型である{{sfn|青木|2014|p=122}}。A310-100の航続距離は約3,400キロメートルで欧州域内や米国内の路線向け、一方でA310-200は航続距離が6,500キロメートルほどで北米大陸の横断も可能な仕様であった{{sfn|青木|2014|p=122}}。この2タイプが航空会社に提案されたが、航空会社からの発注はA310-200型に集中し、エアバスではA310-100も受注があれば生産可能としていたが、結局1機も注文がなく製造されなかった{{sfn|青木|2014|p=122}}{{sfn|藤田|2001b|p=58}}。
== 運航者(一部)==
=== 航空会社 ===
[[File:Fedex.a310-200.n420fe.arp.jpg|thumb|220px|[[フェデラル・エクスプレス]]のエアバスA310-200型機]]
[[File:Flugzeug; Luftwaffe Airbus (447459573).jpg|thumb|220px|[[ドイツ空軍]]のエアバスA310-300型機(元[[インターフルーク]]所有機)]]
*[[ブリティッシュ・カレドニアン航空]]
*[[ルフトハンザ航空]]
*[[KLMオランダ航空]]
*[[TAPポルトガル航空]]
*[[アエロフロート・ロシア航空]]
*[[シベリア航空]]
*[[MIATモンゴル航空]]
*[[タイ国際航空]]
*[[シンガポール航空]]
*[[ニューギニア航空]]
*[[中国国際航空]]
*[[MIATモンゴル航空]]
*[[エア・インディア]]
*[[ビーマン・バングラデシュ航空]]
*[[パキスタン国際航空]]
*[[アリアナ・アフガン航空]]
*[[イラン航空]]
*[[トルコ航空]]
*[[ロイヤルヨルダン航空]]
*[[エミレーツ航空]]
*[[リビアン・アラブ航空]]
*[[スーダン航空]]
*[[パンアメリカン航空]]
*[[デルタ航空]]
*[[イエメニア]]
*[[フェデラル・エクスプレス]]


===政府、軍===
=== 製造と試験 ===
[[File:Lufthansa_and_Swissair_A310-200.jpg|thumb|right|156px|A310-200のプロトタイプ。ローンチカスタマーの2社に敬意を表し、左半分に[[スイス航空]]、右半分に[[ルフトハンザドイツ航空|ルフトハンザ航空]]の塗装が施された{{sfn|青木|2010|p=72}}。1982年、[[デュッセルドルフ国際空港]]にて。]]
*[[カナダ空軍]]
A310の生産は、A300と同じく国際分業体制によって行われ、エアバスへの出資各社の分担は表2の通りに割り当てられた{{sfn|帆足|2001|p=42}}。このほかにも、オランダのフォッカー社とベルギーのベルエアバス社もエアバスとの契約に基づきA310の生産に参加した{{sfn|帆足|2001|pp=40-41}}。最終組み立てと試験飛行は、A300と同様にフランスの[[トゥールーズ]]で行われた{{sfn|帆足|2001|p=42}}。
*[[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|ドイツ空軍]]
*[[ベルギー]]
*[[タイ王国]]
*[[スペイン空軍]]


A310の1号機はA300の162号機を改造して作られ、1982年2月16日にロールアウトし、同年4月3日に初飛行した{{sfn|帆足|2001|pp=40-42}}{{sfn|青木|2010|p=72}}。A310の製造番号はA300からの通し番号でつけられており{{sfn|青木|2010|p=72}}、本項では以後、この製造番号を括弧内で示す。A310の初号機はロールアウト時には、[[ローンチカスタマー]]となったスイス航空とルフトハンザ航空の両社に敬意を表して、右半分にスイス航空、左半分にルフトハンザ航空の塗装が施された{{sfn|青木|2010|p=72}}。A310の1号機と2号機(製造番号172)は、P&Wのエンジンを搭載しており、GE製エンジンを装備した最初の機体は3号機(製造番号191)で1982年8月5日に初飛行した{{sfn|青木|2010|p=72}}。
=== 生産 ===
A310は全部で255機が生産され納入された。


型式証明を取得するための試験には、1号機から5号機が投入された{{sfn|青木|2010|p=72}}。試験は順調に進み、燃費性能や航続距離などで計画値を上回る性能が確認された{{sfn|Learmount|1983|p=590}}。1983年3月11日に、フランスと西ドイツの航空当局によってA310の最初の型式証明が発行された{{sfn|青木|2010|p=72}}<ref>{{Citation |title=A310 on time |journal=Flight International |date=1983-03-19 |page=702 |format=PDF |language=English |url=http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1983/1983%20-%200462.html |accessdate=2014-05-18}}</ref>。同月29日に、ローンチカスタマーであるルフトハンザ航空とスイス航空への引き渡しセレモニーが執り行われ、納入が始まった<ref name=FI-1983-0632/>。
{| class="wikitable" border="1" style="text-align:right; font-size:96%"
{| class="wikitable" style="font-size:91%; float:left;"
|+ {{nowrap|表2: A310の主な生産分担と1979年時点でのエアバス・インダストリーへの出資比率}}
|-
|-
!国名・企業名!!{{nowrap|出資比率}} !!{{nowrap|生産分担部位}}
! !!合計!!1998!!1997!!1996!!1995!!1994!!1993!!1992!!1991!!1990!!1989!!1988!!1987!!1986!!1985!!1984!!1983
|-
|-
|style="text-align:center;"|{{Flagicon|FRA}}フランス {{nowrap|[[アエロスパシアル]] }}
!納入
|style="text-align:right;"| 37.9% ||
|255||1||2||2||2||2||22||24||19||18||23||28||21||19||26||29||17
機首部、胴体中央下部、中央翼、主翼動翼の一部、パイロン、最終組み立て、試験飛行
|-
|style="text-align:center;"|{{Flagicon|GER}}ドイツ<sup>†1</sup> {{nowrap|ドイチェ・エアバス<sup>†2</sup>}}
|style="text-align:right;"| 37.9% ||
胴体前方・後方・中央上部、テイルコーン、垂直尾翼、主翼動翼の一部、貨物室ドア、非常口ドア、主翼の最終組み立て、客室内装、塗装
|-
|style="text-align:center;"|{{Flagicon|GBR}}イギリス [[ブリティッシュ・エアロスペース|BAe]]
|style="text-align:right;"| 20.0% ||
主翼本体、主翼動翼の一部
|-
|style="text-align:center;"|{{Flagicon|ESP}}スペイン {{仮リンク|コンストルクシオネス・アエロナウティカス|label=CASA|en|Construcciones Aeronáuticas SA}}
|style="text-align:right;"| 4.2% ||
水平尾翼、前脚格納扉、前方乗客ドア
|-
| colspan=3 style="text-align:left; font-size:90%;"|
†1: 1990年の[[ドイツ再統一]]までは西ドイツ。
†2: [[メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム|MBB]]社とVFW社の合弁企業{{sfn|細谷|2007|p=208}}{{refnest|group="注釈"|MBB社は1981年にVFW社を吸収合併し、1998年に[[ダイムラークライスラー・エアロスペース|DASA]]社に買収される{{sfn|細谷|2007|p=237}}。}}。
|}
|}
{{clear}}


=== 就航開始・運用の拡大 ===
[[File:Airbus A310-203, Lufthansa AN2217471.jpg|thumb|[[ルフトハンザドイツ航空]]のA310-200。同社は、[[GE・アビエーション|GE]]製のCF6エンジン仕様を選択した。]]
ルフトハンザ航空は1983年4月10日、[[フランクフルト]]から[[シュトゥットガルト]]ならびに[[ロンドン]]を結ぶ2路線にA310を就航させた<ref name=FI-1983-0710>{{Citation |title=Lufthansa succeeds in '82 |journal=Flight International |date=1983-04-23 |page=1098 |format=PDF |language=English |url=http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1983/1983%20-%200710.html |accessdate=2014-05-18}}</ref>。スイス航空も同月21日にA310の商業運航を開始し、[[チューリッヒ]]および[[ジュネーヴ]]からロンドン、[[パリ]]、フランクフルトを結ぶ各線に就航した{{sfn|Kjelgaard|1983|p=955}}。


ローンチカスタマーの2社では、新型機につきものの小さなトラブルのほか、A310のデジタル化・自動化されたコックピットに関連して、それまで経験したことのない問題への対処が必要となったが、これらは航空会社が予測していたほどではなく、A310への信頼や評判を落とすほどの大きな技術的問題は見られなかった{{sfn|Kjelgaard|1983|p=951}}。1週間および1か月あたりの出発信頼度{{refnest|group="注釈"|機材トラブル等による遅延や飛行中止がなく有償飛行に出発した割合<ref>JIS W 0131:1991</ref>}}は両社とも97パーセントを超え、数ヶ月の運用経験を経てさらに上昇した{{sfn|Kjelgaard|1983|p=951}}。初期の運用で明らかになったインタフェースやソフトウェアなどに関する問題点はエアバスにフィードバックされ、改善策が施された{{sfn|Kjelgaard|1983|pp=952-953}}。また、最初の数ヶ月は、スペアパーツや消耗品が不足したり、装置やソフトウェアの改修に伴う説明書等の供給が遅いといった問題もあったが、メーカー側による改善の努力がなされた{{sfn|Kjelgaard|1983|p=954}}。また、A310の17号機(製造番号267)は、最大離陸重量を138,600キログラムに増やした改良型となり、1983年9月にフランスの型式証明を取得したことで、以降はこのタイプが標準型とされた{{sfn|藤田|2010|p=72}}。
== 事故概略 ==
[[File:S7 Siberia AL A310-200 VP-BSZ.jpg|thumb|220px|シベリア航空(現[[S7航空]])のエアバスA310-300型機]]
* 機体損失事故:6回、総計518人死亡。
* ハイジャック:10回、総計5人死亡。


A310は、欧州の航空会社ではルフトハンザ航空とスイス航空のほかに[[KLMオランダ航空|KLM]]、サベナ航空やエールフランスなどでも採用され、ヨーロッパの各都市を結ぶ路線のほか、ヨーロッパと北アフリカや[[中東]]を結ぶ路線にも就航した{{sfn|Kjelgaard|1983|p=955}}{{sfn| 「懐かしのマーキング・アルバム」|p=82}}。欧州以外で最初にA310を導入したのは[[クウェート航空]]で、1983年9月に初引き渡しが行われた。また、翌年には[[キプロス航空]]や、アフリカの[[アルジェリア航空]]、{{仮リンク|ナイジェリア航空|en|Nigeria Airways}}でもA310の導入が始まり、これらの航空会社では欧州線などに就航させた<ref name=WAC1983/>{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|pp=84-85}}{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|pp=24-25}}。アジアで最初にA310を導入したのは[[シンガポール航空]]で、同社は1984年11月に最初の機体を受領してアジア路線を中心に就航させ、続いて翌年6月にはアジアで2番目の運航者となった[[中国民用航空局]]への引き渡しも行われた<ref name=WAC1985/>{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|p=28}}{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|p=85}}。
=== 主な事故 ===
*[[1992年]][[7月31日]]に、[[ネパール]]の[[カトマンズ]]で[[タイ国際航空]]の311便が、[[トリブバン国際空港]]への着陸をやり直そうとして北部の山間部に迷い込み、墜落。乗員14名、乗客99名の全員が死亡([[タイ国際航空311便墜落事故]])。


[[File:Airbus_A310-222,_Pan_American_World_Airways_-_Pan_Am_AN0070120.jpg|thumb|[[パンアメリカン航空]]のA310-200。同社は米国で最初にA310を導入した<ref name=WAC1985/>{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|2001|p=81}}。|alt=パンアメリカン航空のマーキングが施されたA310-200を左から見た写真。]]
*[[1994年]][[3月22日]]に、[[アエロフロート航空]]の593便が機長が操縦資格の無い息子に操縦させたことが原因で墜落。乗員12名、乗客63名の全員が死亡([[アエロフロート航空593便墜落事故]])。
この頃、A310-200をベースに貨客コンバーチブル型のA310-200Cも開発された{{sfn|青木|2010|p=73}}。A310-200Cは、メインデッキ(機体上半分の客席を設ける部分)に貨物と乗客の両方を収容可能にする設備を有するモデルで、1984年11月27日に型式証明を取得し、同月29日に1号機が[[マーティンエアー]]に納入された{{sfn|藤田|2001b|p=60}}{{sfn|EASA|2014|p=31}}<ref>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.3.0 p. 2</ref>。さらに、A310-200について、最大離陸重量をもう一段階引き上げたオプションが設定され、1984年11月に型式証明を取得した{{sfn|藤田|2010|p=72}}。


米国の[[連邦航空局]](Federal Aviation Administration、以下FAA)からA310-200の型式証明が交付されたのは、欧州から2年ほど遅れて1985年2月21日であった{{sfn|FAA|2012|p=54}}。同年5月、[[パンアメリカン航空]]に対して米国の航空会社として第1号となる引き渡しが行われ、同社は727の後継機としてA310を就航させた<ref name=WAC1985/>{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|2001|p=81}}。
*[[2006年]][[7月9日]]に、[[ロシア]]の[[イルクーツク空港]]で[[シベリア航空]]の778便が着陸に失敗して[[コンクリート]]壁に激突し124人が死亡([[シベリア航空778便着陸失敗事故]])。<ref name=BBCNews5163270>
{{Cite news
|url=http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/5163270.stm
|title=Russian plane's 'brakes failed'
|publisher=BBC News
|date=9 July 2006
|accessdate=10 April 2007}}
</ref><ref name=NYTimes060710>
{{Cite news
|url=http://www.nytimes.com/2006/07/10/world/europe/10russiacnd.html?ex=1310184000&en=928c64e05d14da10&ei=5088&partner=rssnyt&emc=rss
|title=Russian Plane Lost Control Upon Landing
|work=New York Times |date=10 July 2006
|accessdate=11 April 2007}}
</ref>


=== 発展型A310-300の開発 ===
*[[2008年]][[6月10日]]に、[[スーダン]]の[[ハルツーム国際空港]]で[[スーダン航空]]機が砂嵐の天候の最中着陸に失敗、94名が死亡の事故を起こしている。
A310-200の開発が決定した当時、双発機の飛行ルート設定に際して、安全上の理由により60分以内に着陸可能な飛行場があることが求められ、大陸間路線などの長距離路線には3発機や4発機が用いられていた{{sfn|浜田|2010|p=96}}<ref name=yoneya/>。しかし、エンジンなどの信頼性や性能が向上したことにより、1980年代に入ると、双発機の飛行経路に関する制限を緩和する検討が本格化した<ref name=yoneya/>。また、A310-200の納入が始まる頃には、航空会社は、以前よりも機材の航続距離の長さを重視するようになっていた{{sfn|Learmount|1983|p=588}}。このような状況下で、エアバスは、A310の航続距離をさらに延ばした発展型として、A310-300を開発することにした{{sfn|藤田|2010|p=72}}{{sfn|Learmount|1983|p=588}}。A310-300のローンチカスタマーはスイス航空に決まり、1983年3月29日に行われたA310-200の引き渡しセレモニーの場で発表された<ref name=FI-1983-0632/>。


[[File:PIA Airbus A310-300 Asuspine-5.jpg|thumb|[[パキスタン国際航空]]のA310-300。主翼の翼端にはウイングチップ・フェンスが装着されている。]]
*[[2009年]][[6月30日]]に、[[イエメニア]]の626便が、[[コモロ]]付近の[[インド洋]]上に墜落した([[イエメニア626便墜落事故]])。
A310-300は機体の寸法はA310-200と変わらず、航続距離を伸ばすために、水平安定板の内部にも燃料タンクを設けて燃料搭載量を増やすことになった{{sfn|青木|2010|p=72}}{{sfn|浜田|2010|p=96}}。また、尾翼と主翼の燃料タンクの間で燃料を移送し、機体の重心位置を制御するシステムが搭載された{{sfn|浜田|2010|p=96}}。このシステムによって機体の姿勢を一定に保つのに必要なトリム抵抗を最小限に抑えられ、運航経済性の向上が図られた{{sfn|浜田|2010|p=96}}。燃料を移動してトリム調整を行う技術は超音速旅客機機[[コンコルド]]で開拓されたもので、水平尾翼内に燃料タンクを設けて重心の制御を行った旅客機はA310-300が初めてであった{{sfn|藤田|2001b|p=60}}{{sfn|浜田|2010|p=96}}。さらに、燃料搭載量を増やすオプションとして、LD-3貨物コンテナ2個分のサイズで貨物室内に取り外しできるようにした補助中央タンク (Auxiliary Center Tanks、以下ACT) が用意された{{sfn|藤田|2001b|p=60}}{{sfn|青木|2014|pp=122-123}}。


A310-200では2次構造部材として使われていた複合材料の適用範囲がA310-300ではさらに拡大され、量産旅客機として初めて垂直安定板の1次構造部材<ref group="注釈" name=structure/>にもCFRPが用いられ、機体の軽量化が図られた{{sfn|浜田|2010|p=96}}{{sfn|藤田|2001a|p=49}}{{sfn|Hofton|1986|p=37}}<ref name=FI-1985-2520/>。そのほか、A310-300では、主翼の翼端渦を抑えて揚抗比を向上させるため、翼端にウイングチップ・フェンスと名付けられた矢尻状の板が追加され、後にA310-200でもウイングチップ・フェンス追加改修が行われた{{sfn|藤田|2001b|p=60}}{{sfn|浜田|2010|p=96}}。エンジンは、A310-200と同様に{{nowrap|R-R}}社、P&W社、GE社の製品から選択できるようにしたが、{{nowrap|R-R}}社のエンジンを選択した発注はなかった{{sfn|青木|2010|p=73}}。
== 要目 ==

{| class=wikitable style="text-align: center;"
A310-300の初号機となったのはJT9Dエンジンを装備した製造番号378号機で、1985年7月8日に初飛行した{{sfn|青木|2014|p=123}}。同年12月5日にA310-300として最初の型式証明を取得、17日にはスイス航空に初引き渡しが行われ、商業運航が開始された{{sfn|青木|2014|p=123}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}。また、A310-300にはP&W社の新型エンジン、PW4000シリーズを装備したモデルも登場し、1987年5月27日に型式証明を取得した{{sfn|青木|2014|p=123}}{{sfn|EASA|2014|p=33}}。

A310-300の開発と時期を同じくして、規制当局や機体メーカー、航空会社らによって双発機の長距離運航を認める要件がまとめられ、1985年に[[ETOPS]]と呼ばれる規格が策定された<ref name=yoneya/><ref>{{Citation |title=Extended Operations (ETOPS and Polar Operations) <AC 120-42B> |date=2008-06-13 |publisher=Federal Aviation Administration |page=4 |format=PDF |language=English |url=http://www.faa.gov/regulations_policies/advisory_circulars/index.cfm/go/document.information/documentID/73587 |accessdate=2014-06-03}}</ref>。当時、ETOPS認証を取得するためには一定時間以上の飛行実績を必要とし{{refnest|group="注釈"|後に、ボーイング777が就航した際には、初就航と同時にETOPSを認められるようになった<ref name=yoneya/>。}}、1986年4月10日にA310で初めての120分ETOPS(飛行ルート中に120分以内に着陸可能な空港があれば良い)が認められた<ref name=yoneya/>。ETOPSはエンジンとの組み合わせで認証されるものであり、各エンジン搭載型の認証日ならびに、後に許容時間が180分に延長された「180分ETOPS」の認証取得日は後述の表3に示した通りである<ref name=yoneya/>。航続距離が伸びたこととETOPSの要件を満たしたことで、A310は大西洋横断路線のような長距離洋上路線や、アジアとヨーロッパを結ぶ大陸横断路線へも就航可能となった{{sfn|浜田|2010|p=96}}。パンアメリカン航空や[[オーストリア航空]]は、欧州と米国を結ぶ北大西洋横断航路にA310を投入した{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|pp=81}}{{sfn|青木|2010|p=154}}。また、[[トルコ航空]]とオーストリア航空はそれぞれトルコ、オーストリアと日本を結ぶ長距離国際線にもA310-300を就航させた{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|p=83}}{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|p=29}}{{sfn|青木|2010|p=154}}。そのほか、1985年6月にはシンガポール航空がA310を[[シンガポール]] - [[モーリシャス]]線に就航させており、これは4,000海里(約7,400キロメートル)近い飛行ルートの大半が洋上となる路線であった<ref name=FI-1985-1850>{{Citation |title=Pan Am goes firm on 28 Airbuses |journal=Flight International |date=1985-06-08 |page=6 |format=PDF |language=English |url=http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1985/1985%20-%201850.html |accessdate=2014-06-03}}</ref>。

=== その後の展開 ===
[[File:Airbus A310-308-ET, Aeroflot AN0448072.jpg|thumb|[[アエロフロート・ロシア航空|アエロフロート・ロシア国際航空]]のA310-300。A310は、ロシアの型式証明を取得した初めての西側諸国製の旅客機となった。]]
1989年代末から1990年代初頭にかけて[[冷戦]]の集結、東西ドイツの統一といった動きがあり、A310は旧[[東側諸国]]でも導入されるようになった{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|p=83}}{{sfn|青木|2014|p=123}}。1989年6月に、[[ドイツ民主共和国|旧東ドイツ]]の[[インターフルーク]]は同社初のワイドボディ機としてA310を受領した{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|p=83}}。また、1991年10月に[[ロシア]]でA310の型式証明が交付され、これは[[西側諸国]]製の旅客機がロシアの証明を得た最初の事例となった{{sfn|青木|2014|p=123}}。[[アエロフロート・ロシア航空|アエロフロート・ロシア国際航空]]は1992年8月にA310-300を導入し日本路線の主力機に用いたほか、[[ウズベキスタン航空]]や[[タロム航空]]でもA310を採用し、旧[[ソビエト連邦|ソ連邦]]諸国や欧州を結ぶ路線のほか、長距離国際線に投入した{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|pp=21-22}}。

[[Image:Bangladesh.a310.arp.750pix.jpg|thumb|[[ビーマン・バングラデシュ航空]]のエアバスA310-300]]
1980年代の後半には、A310は毎年20機前後の受注を得ていた{{sfn|浜田|2010|p=95}}。1991年時点で、A310を最も多く運用していたのはパンアメリカン航空でその数は21機であった<ref name=WAC1991/>。そのほか、ルフトハンザ航空、KLM、エールフランス、シンガポール航空、トルコ航空が10機以上のA310を運航していた<ref name=WAC1991/>。ところが、1990年代に入ると売れ行きが急減速し、1993年に22機を納入したのを最後に、1994年以降は年間の生産・納入数が2機ずつとなった{{sfn|浜田|2010|p=95}}<ref name=WAC1991/>。1990年代初頭にパンアメリカン航空が倒産し、路線と機材の一部を引き継いだデルタ航空はA310を手放しつつあったほか、ルフトハンザ航空でもA310の運用数を減らす動きが見られた<ref name=WAC1991/><ref name=WAC1994/>。一方で、アジアや中南米などの[[開発途上国]]では、1990年代に入ってからA310を導入する会社も見られ、[[ビーマン・バングラデシュ航空]]、[[MIATモンゴル航空]]、[[アルゼンチン航空]]、[[エア・ジャマイカ]]、[[エミレーツ航空]]、[[イエメニア]]などで採用された{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|p=29}}{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|pp=20-21}}。

エアバスでは開発プログラムの早い時期からA310の貨物専用型を提案していたが、これまで、実際に発注を行う航空会社は現れていなかった{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}。1993年の9月になって、エアバス社のパートナー企業であったドイツの[[ダイムラークライスラー・エアロスペース|DASA]]社は[[フェデックス]]からの注文を受けて、A310の貨物機改造事業を開始した{{sfn|Kingsley-Jones|1997|p=28}}。この発注は、フェデックスがルフトハンザ航空から中古のA310-200を購入し、13機の改造を行うというものであった{{sfn|Kingsley-Jones|1997|p=28}}。貨物型改造機は、貨客コンバーチブル型と同様に左舷前方に大型の貨物扉が設置され、メインデッキに貨物を搭載するための設備が追加された<ref name=FI-1994-1765/>。1994年7月にFAAからの認証を取得し、最初の引き渡しが行われた{{sfn|Kingsley-Jones|1997|p=28}}。その後もフェデックスは、スイス航空やKLMからA310を引き取り、貨物機への転用を進めた{{sfn|Kingsley-Jones|1997|p=28}}。また、A310をベースに、要人輸送機や多目的[[空中給油機]]などの軍用機への改造も行われるようになった{{sfn|Aman|Dimic|2011}}<ref name=FI-1994-0162/>。

年産2機という状態が数年続いた後、ついに、1998年4月6日に初飛行した255号機(製造番号706)を最後にA310の製造は行われなくなった{{sfn|青木|2010|p=73}}。もともとA310は、短・中距離路線向け旅客機として設計され、A300から小型化された主翼も短・中距離用に最適化されていた{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}。この主翼の小型化によって、結果的に、搭載できる燃料の容量が限られてしまい、これ以上航続距離を伸ばした発展型を開発する余地は少なかった{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}。結局、2006年の3月に、エアバスはA300-600とともにA310の生産を終了することを発表し、総生産数255機で正式に生産を終えた{{sfn|青木|2010|p=73}}。

A310と同時期にボーイングが開発した767は、200席程度の座席数、2本の通路を持つ客室、双発ターボファンエンジン、操縦士2人で運航可能なグラスコックピットといったA310と共通する特徴を持ち、A310は、ボーイングの製品に直接的に競合した初めてのエアバス機と言われた{{sfn|浜田|2010|p=95}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=13}}{{sfn|Learmount|1983|p=589}}。A310の255機という販売数は、767の販売数の半分にも満たないが{{refnest|group="注釈"|A310の生産が実質的に終了した1998年の時点で、767の総納入数は700機を超えている<ref name=JADC-data2/>。}}、当機種によって開拓された新技術を用いてA300の第2世代とも言われるA300-600が開発され、1984年3月に最初の型式証明を取得している{{sfn|青木|2010|p=75}}{{sfn|浜田|2010|p=96}}。A300-600のコックピットは、A310とほぼ共通となる2人乗務のコックピットとなり、パイロットは1つの操縦資格で両機を運航できるようになった{{sfn|浜田|2010|p=96}}。また、水平尾翼内の燃料タンクを用いたトリム調整システムや、貨物コンテナ規格に合わせた追加式燃料タンクACT、手すり付きのオーバーヘッド・ビンなどは、A300-600以降に開発されるエアバス機にも引き継がれている{{sfn|青木|2014|p=123}}{{sfn|青木|2010|p=36}}。
{{clear}}

== 機体の特徴 ==
=== 形状・構造 ===
[[File:Biman Airbus A310 Lofting-1.jpg|thumb|left|[[ビーマン・バングラデシュ航空]]のA310-300を上から見下ろす。]]
A310は後退翼の主翼を低翼に配置した単葉機である<ref name=manual-2.2.0-1/>{{sfn|Aman|Dimic|2011|p=27}}。左右の主翼下に高バイパス比のターボファンエンジンを1基ずつ備える{{sfn|浜田|2010|p=95}}<ref name=manual-2.2.0-1/>。通常の尾翼配置を採用し、水平尾翼と垂直尾翼は胴体尾部に直接取り付けられている<ref name=manual-2.2.0-1/>{{sfn|Aman|Dimic|2011|p=27}}。垂直尾翼の形状はA300から引き継がれたが、水平尾翼は再設計され、A300と比べて翼幅が4パーセント、面積は8パーセント小さくなった{{sfn|浜田|2010|pp=94-95}}。A310の胴体はA300と同じ胴体断面を用い、合計13フレーム分短縮されて全長は46.66メートルである{{sfn|青木|2014|p=123}}{{sfn|浜田|2010|p=94}}。降着装置は前輪式配置<ref group="注釈">機首部に前輪、左右の主翼付近に主脚を配置する方式。</ref>で、前脚が2輪、主脚は4輪である<ref>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 7.2 pp.=1-9</ref>。

[[File:Airbus A310-324 - Air Plus Comet - EC-GMU - LEMD - 200504101410.jpg |thumb|[[エア・コメット (スペイン)|エア・コメット]]のA310-300を見上げる。降着装置を下ろし、主翼の動翼を展開している。]]
[[File:Wing.slat.600pix.jpg|thumb|right|156px|A310-300の左主翼を翼端側からみた写真。翼端(写真の手前側)に付いている矢尻状の小型の翼がウイングチップ・フェンス。]]
A310の主翼の翼型は、A300で採用されたリア・ローディング翼型に改良が加えられ、衝撃波の発生位置が一段と後方になったことで、翼の後半で得られる揚力が大きくなった{{sfn|浜田|2010|p=95}}。翼厚比は翼の付け根で最も大きく、翼端にいくほど小さく変化し、複雑な表面形状を持つ翼である{{sfn|青木|2014|p=123}}。翼平面形についての主な寸法は表1に示した通りで、A300の主翼と翼幅はさほど変わらないが、アスペクト比が大きく細長い翼である{{sfn|浜田|2010|p=95}}。[[高揚力装置]]は、前縁にはスラットとクルーガーフラップがあり、後縁には外翼部に1枚式のファウラー・フラップ、内翼部にベーン付きのダブル・スロッテッド・フラップを備え、フラップを動作させるトラックレールのフェアリングは4つである{{sfn|青木|2010|p=71}}。そのほかの動翼として、後縁のフラップ間に全速度エルロン、片翼当たり7枚のスポイラーを備える{{sfn|青木|2010|p=71}}。スポイラーはエアブレーキとグラウンドスポイラーの役割を持つほか、外側の3枚はロール操縦にも用いられる{{sfn|青木|2010|p=71}}。A310-300では、翼端渦を制御して揚抗比を改善するため、ウイングチップ・フェンスと名付けられた矢尻状の小さい板が翼端に追加され、後にA310-200でも追加改修された機体が登場している{{sfn|浜田|2010|p=96}}{{sfn|藤田|2001b|p=60}}。

A310では2次構造部材としてCFRPとGFRPのほか、アラミド繊維([[ケブラー]])強化複合プラスチック(AFRP)が用いられている{{sfn|Airbus|2007|p=1}}{{sfn|藤田|2001|p=49}}{{sfn|浜田|2010|p=96}}。各部材の主な使用部位は、CFRPが[[方向舵]]、[[昇降舵]]、降着装置の格納扉、キャビン床の支持材、GFRPが垂直安定板の前縁と後縁、水平安定版の翼端部、機首の[[レドーム]]、AFRPが主翼のトラック・フェアリングやパイロンカバーの一部などである{{sfn|藤田|2001|p=49}}{{sfn|Airbus|2007|p=1}}{{sfn|Learmount|1983|p=591}}。また、A310-300からは垂直尾翼の1次構造部材としてもCFRPが採用されている{{sfn|浜田|2010|p=96}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}。主翼燃料タンクのアクセスパネル<ref group="注釈">点検などのために、開閉や取り外しが可能な外装部。</ref>のほかエンジンからの高温空気を通すダクトには[[チタン]]合金も使用されている{{sfn|Learmount|1983|p=591}}。

=== 飛行システム ===
[[File:Airbus A310-204, S7 - Siberia Airlines AN1455269.jpg|thumb|left|[[S7航空]]のA310-200のコックピット。CRTは、左右の操縦桿の奥に縦に2基ずつ、中央のコンソールに2基配置されている。中央のCRTの間に並ぶダイアル式計器がエンジン計器類である{{sfn|阿施|2001|p=116}}。]]
A310の操縦室は、カラーCRTディスプレイ上に計器情報を提示する、いわゆるグラスコックピットである{{sfn|藤田|2010|p=60}}{{sfn|青木|2014|p=123}}。A310のシステムは一部がデジタル化され、コンピュータによってタスクが部分的に自動化されたほか、CRTディスプレイによる統合的な情報提示と、入力インタフェースの統合・簡素化によって乗務員の作業負担の低減が図られ、機長と副操縦士の2名で運航することが可能である{{sfn|青木|2010|p=73}}{{sfn|阿施|2001|p=115-117}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}。A310に続いて開発されたA300-600は、A310とほぼ共通化されたコックピットを持ち、パイロットの操縦資格も両機で共通化されている{{sfn|浜田|2010|p=96}}。

コックピットのCRTディスプレイは、左右の操縦席に各2面、中央に2面の計6面配置され、操縦席側のディスプレイには飛行情報や航法情報が表示され、中央のディスプレイには燃料、油圧、空調などのモニタリング情報が表示される{{sfn|阿施|2001|p=115-117}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}。エンジン関連計器については、開発当時の法規制への対応のため、前面コンソールの中央に従来型のダイヤル式計器が残された{{sfn|青木|2010|p=73}}{{sfn|阿施|2001|p=117}}。

スラット、フラップ、スポイラーといった主翼の動翼の操縦には、電気信号によって指令を伝達するフライ・バイ・ワイヤ方式が導入され、左右の翼で別々に展開可能となったスポイラーは、ロール運動の制御にも用いられる{{sfn|藤田|2001|p=49}}{{sfn|Kjelgaard|1983|p=951}}<ref name=FI-1984-0474/>。

=== 客室・貨物室 ===
{{Multiple image|align=right|direction=vertical|footer_align=left|footer=ルフトハンザ航空による運航当時のA310-300の客室。通路が2本配置され、ビジネスクラスで2-2-2、エコノミークラスで2-4-2の座席配置である。|image1=Airbus_A310-304,_Lufthansa_AN0422292.jpg|caption1=<div style="text-align:center;">ビジネスクラス</div>|alt1=A310-300のビジネスクラスの客室内を前方から見た写真。2本の通路を挟んで2-2-2の配置で青い座席が並んでいる。|image2=Airbus_A310-304,_Lufthansa_AN0422291.jpg|caption2=<div style="text-align:center;">エコノミークラス</div>|alt2=A310-300のエコノミークラスの客室内を前方から見た写真。2本の通路を挟んで2-4-2の配置で黄色い座席が並んでいる。|width=210}}
A310の客室内は胴体断面を共有するA300とほぼ同じ幅と高さで、通路を2本持ち、通常のエコノミークラスで2-4-2の8アブレストである{{sfn|青木|2010|p=73}}{{sfn|Hofton|1986|p=37}}。キャビン長は33.24メートルで、エアバスが示した標準的な座席数は、2クラス構成で205から234席、ファーストクラスを設ける3クラス構成で187席である{{sfn|青木|2010|p=73}}{{sfn|藤田|2001|p=59}}。また、3-3-3の9アブレスト配置とすることも可能で、単一クラスとして座席間隔を詰めた場合、280席程度まで設置できる{{refnest|group=注釈|最大座席数を280席としている文献{{sfn|青木|2010|p=73}}{{sfn|藤田|2001|p=59}}と、279席としている文献{{sfn|浜田|2010|p=94}}<ref>{{Citation |title=Directory: world airliners |journal=Flight International |date=2004-10-26/11-01 |page=51 |format=PDF |language=English |url=http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/2004/2004-09%20-%202164.html |accessdate=2014-06-22}}</ref>がある。}}。手荷物を収納する頭上のオーバーヘッド・ビンは、窓側と中央の各座席ブロックに設けられている{{sfn|阿施|2001|p=114}}。オーバーヘッド・ビンの下端部には溝状の手すりが設けられ、通路を移動する乗客は、体を支えるために他人の座席の背もたれを掴まずに済むようになっている{{sfn|青木|2014|p=123}}。客室扉は片側あたり3か所設けられ、客室の最前部と最後部に乗降用ドア、主翼上にあたる位置に非常口が配置されている<ref name=manual-2.4.1-1-2/>。

[[File:SATA International Airbus A310-304; CS-TGV@PDL;10.07.2011 605iv (5939329499).jpg|thumb|left|駐機中のA310-300。タラップが接続され、前方床下の貨物扉が開いている。]]
胴体床下には、LD-3航空貨物コンテナを2個並列に搭載可能な貨物室が設けられ、最後部には、ばら積み貨物を搭載するスペースが用意されている{{sfn|浜田|2010|p=94}}<ref name=manual-2.6.1-1/>。貨物室は主翼取付部を挟んで前方と後方に分かれており、前方の貨物室にコンテナを8個、後方貨物室に6個まで搭載可能である{{sfn|浜田|2010|p=94}}<ref name=manual-2.6.1-1/>。また、ばら積み貨物スペースにコンテナを1個搭載できるようにするオプションも用意された<ref name=manual-2.6.1-1/>。コンテナ用の貨物扉は右舷下部の前方と後方に設置され、さらに後方に、ばら積み貨物用のドアも設けられている<ref name=manual-2.6.1-1/><ref name=manual-2.7.5-1-2/>。

{{clear}}
== シリーズ構成 ==
A310シリーズは、まず旅客型のA310-200が開発され、その後、発展型としてコンバーチブル型のA310-200C、長距離型のA310-300が開発された{{sfn|青木|2010|pp=71-74}}。また、旅客型からの派生型として、貨物専用型への改造機のほか{{sfn|藤田|2001|pp=60-61}}、政府や軍向けに多目的輸送機、多目的[[空中給油機]]なども作られた{{sfn|Aman|Dimic|2011|p=27}}。

A310の型式名は、装備エンジンごとに下2桁が細分化されている(表3)。{{nowrap|R-R}}製エンジン仕様の採番も計画されていたが、実際には生産されなかった{{sfn|青木|2014|p=122}}。
{| class="wikitable" style="font-size:91%; text-align:center;"
|+ 表3: 採用エンジンごとの型式名
|-
! 機種 !! エンジン !! 型式証明取得 !! 120分[[ETOPS]]<sup>†1</sup> !! 180分ETOPS<sup>†1</sup>
|-
| A310-203 || [[ゼネラル・エレクトリック CF6|GE CF6-80A3]] || 1983年3月11日 || 1986年4月10日 || 1990年7月27日
|-
| A310-203C || GE CF6-80A3 || 1984年11月27日 || N/A || N/A
|-
| A310-204 || GE CF6-80C2A2 || 1986年4月23日 || 1987年9月14日 || 1990年7月27日
|-
| A310-221 || [[プラット・アンド・ホイットニーJT9D|P&W JT9D-7R4D1]] || 1983年3月11日 || 1986年4月10日 || 1990年7月27日
|-
| A310-222 || P&W JT9D-7R4E1 || 1983年9月22日 || 1986年4月10日 || 1990年7月27日
|-
| A310-304 || |GE CF6-80C2A2 || 1986年3月11日 || 1987年9月14日 || 1990年7月27日
|-
| A310-308 || GE {{nowrap|CF6-80C2A8}} または {{nowrap|CF6-80C2A2}} || 1991年6月5日 || N/A || 1991年9月3日<sup>†2</sup>
|-
| A310-322 || P&W JT9D-7R4E1 || 1985年12月5日 || 1986年4月10日 || 1990年7月27日
|-
| A310-324 || [[プラット・アンド・ホイットニーPW4000|P&W PW4152]] || 1987年5月27日 || 1989年10月30日 || 1991年9月3日
|-
| A310-325 || P&W PW4156A || 1992年3月6日 || N/A || 1992年3月11日
|-
| colspan=5 style="text-align:left; font-size:90%;" |
* 出典:{{harvnb|EASA|2014|pp=7, 29, 31, 33}}
* GE: ゼネラル・エレクトリック、P&W: プラット・アンド・ホイットニー
*†1: ETOPSの認証交付日
*†2: CF6-80C2A8エンジン装備機
|}

=== A310-200 ===
[[File:Airbus A310-203, Iran Air AN0732037.jpg|thumb|[[イラン航空]]のA310-200。]]
A310シリーズで最初に開発されたモデルで、ルフトハンザドイツ航空とスイス航空によって、1983年の4月に初就航した{{sfn|Kjelgaard|1983|p=955}}。エンジンは、GE社のCF6シリーズまたはP&W社のJT9Dシリーズを装備する{{sfn|青木|2014|p=122}}。A310-200は短・中距離路線向けに開発され、就航当初は欧州各国を結ぶ路線や、欧州と中東・北アフリカを結ぶ路線などで用いられた{{sfn|Kjelgaard|1983|p=955}}{{sfn| 「懐かしのマーキング・アルバム」|pp=82-85}}。その後、アジアや米国などの航空会社でも導入され{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|p=28}}{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|pp=81, 85}}、ETOPSの認証交付の動きと前後して、長距離洋上路線への就航事例も見られるようになった<ref name=FI-1985-1850/>。

=== A310-200C ===
[[File:Martinair Airbus A310-200 Aragao.jpg|thumb|[[マーティンエアー]]のA310-200C。最前部の乗降扉の後ろに貨物扉がある(写真では辛うじて扉の輪郭が見える)。]]
A310-200Cは、メインデッキに旅客と貨物を収容できるようにした貨客コンバーチブル型で、胴体左舷の前方乗降扉と主翼の間にあたる部分に大型の貨物扉を有する{{sfn|青木|2010|p=73}}{{sfn|藤田|2001|p=60}}<ref name=manual-2.3.0-2/>。マーティンエアーからの発注を受けて生産され、1984年11月27日に型式証明を取得し{{sfn|EASA|2014|p=31}}、同月29日に納入された{{sfn|青木|2014|p=259}}。最初からコンバーチブル型として製造されたのは1機のみだが、旅客型から改造された機体もある{{sfn|青木|2010|p=73}}。

=== A310-300 ===
A310-200と寸法は変わらず、航続距離を延長した発展型で、1985年12月にスイス航空によって初就航した{{sfn|青木|2010|p=72}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=14}}。水平安定版内に燃料タンクを設け、主翼のタンクとの間で燃料を移送させることで、機体重心位置を制御するシステムを旅客機として初めて採用した{{sfn|浜田|2010|p=96}}。A310-300では機体の軽量化のため、複合材料の使用範囲が拡大され、使用量は合計6.2トンとなり、量産旅客機として初めて、1次構造材として垂直安定版の主構造にCFRPが採用された{{sfn|浜田|2010|p=96}}。床下貨物室に追加装備が可能な補助燃料タンクACTが採用された{{sfn|青木|2014|pp=122-123}}{{sfn|Airbus|2007|p=1}}。ACTはLD-3貨物コンテナ2個分の寸法で、容量が7,200リットルあり、最大2個まで搭載可能である{{sfn|青木|2014|pp=122-123}}{{sfn|Airbus|2007|p=1}}。エンジンは、GE社のCF6シリーズまたはP&W社のJT9Dシリーズを装備し、後に、A310-300についてはP&W社のPW4000シリーズ装備機も登場した{{sfn|青木|2010|pp=72-73}}{{sfn|青木|2014|p=123}}。A310-300もETOPS認証を取得し、航続距離の長さを活かして、欧州と米国を結ぶ大西洋横断路線や、欧州と日本を結ぶ大陸横断路線といった長距離路線へも就航した{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|pp=81}}{{sfn|青木|2010|p=154}}。

=== A310-200F/-300F ===
[[File:N420FE-A310-0164.jpg|thumb|[[フェデックス]]のA310-200F。左舷前方に設けられたメインデッキの貨物扉を開いている。|alt=左舷前方に設けられたメインデッキの貨物扉を上に開いているA310Fを左前方から見た写真。]]
メインデッキに貨物を搭載できるようにした貨物専用型である。エアバスではA310の貨物専用型の生産の用意をしていたが、最初から貨物型として受注・生産された機体はなく、現在運用されている貨物型は、旅客型からの改造機である{{sfn|Kingsley-Jones|1997|p=28}}{{sfn|青木|2014|p=259}}。型式名のA310-200F、-300Fは、改造元となった旅客型の型式名の末尾にそれぞれ「F」を付けたものである{{sfn|藤田|2001|pp=60-61}}。A310-200Cと同様に、左舷前方に大型の貨物ドアが設置され、メインデッキの床などが強化されたほか、煙探知・火災検知装置が追加されている<ref name=FI-1994-1765/><ref name=FI-1994-0162/>。また、当型式では、ほとんどの客室窓が塞がれているほか、後部乗降扉も閉鎖されている<ref name=FI-1994-1765/>。貨物室の仕様はA310-200Fと-300Fでほぼ同様で、メインデッキ貨物室には、2.235×3.174メートル(88×125インチ)の貨物パレットまたはコンテナを16個搭載できる{{sfn|藤田|2001|p=61}}<ref name=ac/>。貨物型への改造事業はDASA社が行っており、1994年7月に、A310-200から改造された最初のA310-200Fがフェデックスに納入された{{sfn|Kingsley-Jones|1997|p=28}}。A310-300Fについてもフェデックスからの発注により改造が行われており、ベースの旅客型の性能を引き継ぎ、A310-200Fよりも最大離陸重量と航続距離が大きい{{sfn|藤田|2001|p=61}}。

=== 政府専用機・軍用機 ===
A310からは政府専用機や軍用機といった派生型への改造も行われ、要人輸送、兵員や物資・装備品の輸送、医療救助などを行う多目的機のほか、空中給油を行う設備を加えた多目的空中給油機 [[エアバス A310 MRTT|A310 MRTT]] (multi-role tanker transport) も開発された{{sfn|Aman|Dimic|2011|p=27-28}}<ref name=FI-1994-0162/>。

[[File:A Royal Canadian Air Force CC-150 Polaris aircraft, left, assigned to the 437 Transport Squadron conducts an aerial refueling with two CF-18 Hornet aircraft assigned to the 409 Tactical Fighter Squadron over 130828-O-ZZ999-003-CA.jpg|thumb|[[CF-18 ホーネット]]に空中給油を行う[[カナダ空軍]]のA310 MRTT。カナダ空軍のA310は、CC150「Polaris」と命名されている{{sfn|Aman|Dimic|2011|p=27}}。]]
'''A310 MRTT'''は、旅客型からの改造機であり、政府や軍の要人輸送、兵員や物資・設備の輸送、医療救助、そして、空中給油を実施する装備を備える{{sfn|Norris|2004|p=32}}<ref name=FI-1994-0162/>。メインデッキには、貨物機と同様の大型貨物扉などの設備を備え、軍用の物資や装備品を搭載可能である<ref name=FI-1994-0162/>。前後の床下貨物室には燃料タンクが増設され、他機への給油のほか、自機の燃料としても供給可能なシステムを持つ<ref name=FI-1994-0162/>。空中給油のためのアーム付き給油口は、左右の主翼下にそれぞれ1基ずつ備える<ref name=FI-1994-0162/>。給油システムの操作席は、コックピットの後ろに設けられている<ref name=FI-1994-0162/>。A310 MRTTへの改造は、[[エアバス・グループ]]子会社のEADS EFW社とルフトハンザ航空子会社のルフトハンザ・テクニック社との共同事業として行われた{{sfn|Norris|2004|p=32}}。A310旅客型から改造された最初の機体は2004年3月に初飛行し{{sfn|Norris|2004|p=32}}、同年9月に[[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|ドイツ空軍]]と[[カナダ空軍]]が発受領している<ref>{{Citation |title=MRTT delivery milestone fuels Airbus ambitions |journal=Flight International |date=2004-10-05/11 |page= 21 |format=PDF |language=English |url=http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/2004/2004-09%20-%201904.html |accessdate=2014-06-24}}</ref>。

== 運用の状況・特徴 ==
[[File:Fedex.a310-200.n420fe.arp.jpg|thumb|[[フェデラル・エクスプレス]]のエアバスA310-200]]
[[File:Luftwaffe Airbus A310-300 Manteufel.jpg|thumb|[[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|ドイツ空軍]]によって運用されている要人輸送仕様のA310-300。ドイツ空軍は[[インターフルーク]]が解散した後、同社からA310を引き継いだ{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|2001|pp=23}}。]]

A310は255機が製造・納入されたが、運用数は1990年代をピークに退役が進み<ref name=JADC-data1/>、2013年7月現在では84機が運用されている<ref name=WAC2013/>。A310の最大の運用者はフェデックスで合計30機(310-200F:16機、310-300F:14機)を運用している<ref name=WAC2013/>。2013年7月現在、旅客型の運用数が最も多いのはカナダの[[エア・トランザット]]でA310-300を9機運用し、続いて[[パキスタン国際航空]]がA310-300を7機運用している<ref name=WAC2013/>。A310-200の旅客型については、[[ヨルダン・アビエーション]]の1機を残して全て退役している<ref name=WAC2013/>。

かつて、A310は欧米や中東の航空会社を中心に採用され、新造機を10機以上受領した航空会社(括弧内は納入数)は、シンガポール航空 (23)、ルフトハンザ航空 (20) 、パンアメリカン航空 (18)、トルコ航空 (14)、カナダの{{仮リンク|ワードエア|en|Wardair}} (12)、エールフランス (11)、クウェート航空 (11)、KLM (10) であった{{sfn|青木|2010|p=156}}。スイス航空はA310-200とA310-300のローンチカスタマーとなったものの、1996年のサベナ航空との提携後に経営状況が悪化して2001年に経営破綻してしまい<ref>{{Cite news |last=Olson|first=Elizabeth |title=Brussels Sues Swissair In Move to Aid Sabena |newspaper=The New York Times |date=2001-07-04 |url=http://www.nytimes.com/2001/07/04/business/brussels-sues-swissair-in-move-to-aid-sabena.html |accessdate=2014-06-22}}</ref><ref>{{Citation|和書 |last=橋本 |first=安男 |last2=屋井 |first2=鉄雄 |date=2011-06-18 |title=リージョナル・ジェットが日本の航空を変える |publisher=[[成山堂書店]] |isbn=978-4425861910 |page=55}}</ref>、A310の納入数は合計9機にとどまった{{sfn|青木|2010|p=156}}。フェデックスは中古のA310を買い集め、2008年から2009年にかけての運用数は70機(A310-200Fを49機、A310-300Fを17機、旅客型A310-300を4機)に達し、最多運用者となった<ref name=WAC2008/><ref name=WAC2009/>。

日本では、A310を発注する航空会社は現れなかった{{sfn|青木|2010|p=156}}。
A310が開発された同時期に、直接的な競合機となるボーイング767が開発され{{sfn|浜田|2010|p=95}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=13}}、767は登場後間もない1980年代前半から急速に日本での導入が進んだ{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=13}}<ref name="htj-119-131">{{Cite journal|和書|title=日本のボーイング767|journal=旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767|year=2000|month=9|pages=119-131|publisher=イカロス出版|isbn=4871492974}}</ref>。当時、導入機材の候補にA310も入っていたが、日本の航空会社が767を選択した主な理由の1つとして、767の開発・製造に日本の航空工業界が参画していたことが挙げられている<ref name="htj-119-131"/><ref>{{Cite web |url=http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1983/1983%20-%200420.html|title= Airbus woos Japan |date=1983-03-12 |work= Flight International |accessdate=2014-06-18}}</ref>。

2013年末の時点で、政府専用機・軍用機としてA310の派生型を運用しているのは、ドイツ空軍、フランス空軍、カナダ空軍であり、そのうちドイツ空軍の4機とカナダ空軍の2機はMRTTで、残りは輸送機仕様(要人輸送、兵員・装備輸送など)である<ref name=WAF2014/>。カナダ空軍のA310はCC150「Polaris」と名付けられている{{sfn|Aman|Dimic|2011|p=27}}。過去には、[[スペイン空軍]]、[[ベルギー空軍]]、[[タイ王国空軍]]・タイ王室、クウェート政府、カタール政府、ブルネイ政府でも要人輸送機などとしてA310が運用されていた{{sfn|青木|2010|p=161}}{{sfn|「Airbus A310-200/300 series」|2001|pp=23-28}}{{sfn|「懐かしのマーキング・アルバム」|p=86}}。

=== 受注・納入数 ===
A310は全部で255機が生産・納入された。
{| class="wikitable" style="text-align:right; font-size:91%;"
|+ 表4: 年ごとの受注・納入数<ref name=JADC-data1/>
|-
! 年!!合計!!1998!!1997!!1996!!1995!!1994!!1993!!1992!!1991!!1990!!1989!!1988!!1987!!1986!!1985!!1984!!1983!!1982!!1981!!1980!!1979

|-
! 受注数
|'''255'''||0||1||0||4||0||3||15||12||21||22||21||27||17||25||14||7||2||4||12||48

|-
! 納入数
|'''255'''||1||2||2||2||2||22||24||19||18||23||28||21||19||26||29||17||0||0||0||0
|}
{{clear}}

== 主な事故・事件 ==
[[File:S7 Siberia AL A310-200 VP-BSZ.jpg|thumb|シベリア航空(現[[S7航空]])のエアバスA310-300]]
2014年4月現在、A310の機体損失事故は11件発生しており合計825名が亡くなっているほか、A310で9件のハイジャックが発生し、合計5名が死亡している(死亡者にはハイジャック犯も含まれる)<ref name=ASN-statistics/><ref>{{Cite web |title=MINDEF - History - 1991 - SQ 117 Rescue (Volume 3 Issue 3) |url=http://www.mindef.gov.sg/imindef/about_us/history/maturing_saf/v03n03_history.html |date=1999-03-07, last updated 2010-05-04 |publisher=シンガポール政府 |archiveurl=http://archive.today/2lSk |archivedate=2012-08-05 |accessdate=2014-06-24}}</ref>。以下、死亡者が発生した機体損失事故を発生順に挙げる。

*[[1992年]][[7月31日]]、[[ネパール]]の[[カトマンズ]]にある[[トリブバン国際空港]]へアプローチ中だった[[タイ国際航空]]の311便が、フラップに問題が発生したために着陸をやり直そうとしていたところ、空港の北北東に位置する山中に墜落した<ref name=ICAO-1993>{{cite journal|title=Conclusions from report on CFIT accident near Kathmandu|journal=ICAO Journal|date=1993-09|volume=48|issue=7|pages=23–26|url=http://www.icao.int/publications/journalsreports/1993/4807.djvu||accessdate=2014-05-14 |publisher=International Civil Aviation Organization|language=English|format=DjVu|issn=0018-8778}}</ref>。乗員14名、乗客99名の全員が死亡した<ref name=ICAO-1993/>。[[CFIT]] (Controlled Flight Into Terrain) 事故とされる<ref name=ICAO-1993/>。
{{main|:en:Thai Airways International Flight 311}}
*[[1994年]][[3月22日]]に、[[アエロフロート航空]]の593便が[[シベリア]]の森林に墜落し、乗員12名、乗客63名の全員が死亡した<ref>{{cite news|title= 75 Dead in a Crash Of a Russian Airbus On Hong Kong Run|url= http://www.nytimes.com/1994/03/23/world/75-dead-in-a-crash-of-a-russian-airbus-on-hong-kong-run.html|publisher= [[The New York Times]]|date=23 March 1994|archiveurl= http://www.webcitation.org/66aN78TLV|archivedate=31 March 2012|accessdate=31 March 2012|accessdate=2014-04-14}}</ref>。この事故では、飛行中に機長が16歳の息子を操縦席に座らせたことを発端として、いくつかの条件が重なり、機体の姿勢が崩れ墜落に至った<ref>{{ASN accident|id= 19940323-0|title=ASN Aircraft accident Airbus A310-304 F-OGQS Mezhduretshensk|accessdate=2014-04-14}}</ref>。
{{main|アエロフロート航空593便墜落事故}}
*[[1995年]][[3月31日]]、[[タロム航空]]の371便がオトペニ空港(後に改名され[[アンリ・コアンダ国際空港]])を離陸後、左エンジンの推力の低下に引き続いて徐々に機体の姿勢を崩し、空港の3キロメートル北の地点に墜落した<ref name=ASN-19950331>{{ASN accident |id=19950331-0|title=ASN Aircraft accident Airbus A310-324 YR-LCC Bucharest-Otopeni International Airport (OTP)|accessdate=2014-04-14}}</ref>。乗員11名と乗客60名全員が死亡した<ref name=ASN-19950331/>。
{{main|:en:TAROM Flight 371}}
*[[1998年]][[12月11日]]、タイ国際航空の261便が大雨の中[[スラートターニー空港]]へ着陸しようとし、2回の[[着陸復行]]の後、3度目の進入中に空港から約4キロメートル南西のゴム農園に墜落した<ref name=ASN-19981211>{{ASN accident|id=19981211-0|title=ASN Aircraft accident Airbus A310-204 HS-TIA Surat Thani Airport (URT)|accessdate=2014-04-14}}</ref>。この事故により、搭乗者146名のうち101名が死亡した<ref name=ASN-19981211/>。
{{main|タイ国際航空261便墜落事故}}
*[[2000年]][[1月30日]]21時に、ケニア航空の430便は[[コートジボワール]]・[[アビジャン]]の[[フェリックス・ウフエ・ボワニ国際空港]]を離陸後、間もなくして[[失速警報装置]]が作動したため操縦士が機体を降下させたが、実際には失速しておらず、高度が下がりすぎて海上に墜落した<ref>{{ASN accident|id=20000130-1|title=ASN Aircraft accident Airbus A310-304 5Y-BEN Abidjan-Felix Houphouet Boigny Airport (ABJ)|accessdate=2014-05-15}}</ref>。
{{main|ケニア航空431便墜落事故}}
*[[2006年]][[7月9日]]に、ロシアの[[イルクーツク空港]]で[[S7航空]]の778便が着陸に失敗してコンクリート壁に激突し、乗客・乗員合わせて203人のうち125人が死亡した<ref>{{ASN accident|id=20060709-0|title=ASN Aircraft accident Airbus A310-324 F-OGYP Irkutsk Airport (IKT)|accessdate=2014-04-14}}</ref>。
{{main|シベリア航空778便着陸失敗事故}}
*[[2008年]][[6月10日]]に、[[スーダン]]の[[ハルツーム国際空港]]で[[スーダン航空]]の109便が着陸時に[[オーバーラン]]して炎上し、乗客・乗員合わせて214名のうち30名が死亡した<ref>{{ASN accident|id=20080610-0|title=ASN Aircraft accident Airbus A310-324 ST-ATN Khartoum-Civil Airport (KRT)|accessdate=2014-04-14}}</ref><ref>{{cite news|title=スーダン旅客機炎上、死者30人に |publisher=AFPBB News |date=2008-06-12 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/2403759?pid=3023175 |accessdate=2014-05-14}}</ref>。
{{main|:en:Sudan Airways Flight 109}}
*[[2009年]][[6月30日]]に、[[イエメニア]]の626便が[[コモロ諸島]]沖の[[インド洋]]上に墜落し、乗員・乗客合わせて153人のうち152人が死亡し、唯一の生存者である乗客が10時間以上漂流した後に救助された<ref>{{ASN accident|id=20090630-0|title=ASN Aircraft accident Airbus A310-324 7O-ADJ Mitsamiouli|accessdate=2014-04-14}}</ref><ref>{{cite news|title=イエメン航空機墜落事故、少女は10時間以上漂流 |publisher=AFPBB News |date=2009-07-02 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/2617153?pid=4324767 |accessdate=2014-05-14}}</ref>。
{{main|イエメニア626便墜落事故}}

== 主要諸元 ==
{| class="wikitable" style="font-size:91%; text-align:center;"
|+ 表5: 各モデルの主要諸元
|-
|-
!
! &nbsp;<ref name="A310 Specifications">[http://www.airbus.com/en/aircraftfamilies/a300a310/a310/specifications.html Aircraft Family – A310 Specifications] ''[http://www.airbus.com www.airbus.com]''</ref>
! A310-200
! A310-200
! A310-200F
! A310-200F
! A310-300
! A310-300
! A310-300F
! A310-300F
|-
| 操縦士
| colspan="4"| 2名
|-
| 全長
| colspan="4"| {{Convert|46.66|m|ftin}}
|-
| 全高
| colspan="4"| {{Convert|15.8|m|ftin}}
|-
| 翼幅
| colspan="4"| {{Convert|43.9|m|ft}}
|-
|-
! 運航乗務員数
| 翼面積
|colspan="4"| {{Convert|219|m2|sqft}}
| colspan=4 | 2名
|-
|-
! {{nowrap|標準座席数}} {{nowrap|(2クラス)}}
| 後退角
| 220席{{sfn|青木|2014|p=123}}
| colspan="4"| 28 °
|-
| N/A
| 220席{{sfn|青木|2014|p=123}}
| 断面積
| N/A
| colspan="4"| {{Convert|5.64|m|ftin}}
|-
| 旅客 (2-クラス)
| 240名
| 33[[トン|t]] 貨物
| 240名
| 33[[トン|t]] 貨物
|-
| [[最大離陸重量]]
| colspan="2" |141,974&nbsp;kg (312,342&nbsp;lb)
| colspan="2" |164,000&nbsp;kg (361,600&nbsp;lb)<nowiki>*</nowiki>
|-
| 非積載時重量
| 80,142&nbsp;kg <br> (176,312&nbsp;lb)
| {{Convert|72,400|kg|lb}}
| 83,100&nbsp;kg <br> (183,300&nbsp;lb)
| 73,900&nbsp;kg
|-
| 最大燃料積載量
| colspan="2" | 55,200 [[リットル|l]] (14,603 [[ガロン|US g]])
| colspan="2" | 75,470 l (19,940 US g)
|-
| 巡航速度 ([[マッハ数|M]])
| colspan="4" | 0.80 (850&nbsp;km/h.)
|-
| 最大速度 (M)
| colspan="4" | 0.84 (901&nbsp;km/h.)
|-
|-
! {{nowrap|標準座席数}} {{nowrap|(1クラス)}}
| 巡航高度
| 237席<ref name=manual-2.1.1-1-2/>
| colspan="4" | 12,500 m (41,000&nbsp;ft)
| N/A
| 243席<ref name=manual-2.1.1-3-4/>
| N/A
|-
|-
! 床下貨物室容積
| 推力 (×2)
| colspan=4 | 112.2&nbsp;[[立方メートル|m<sup>3</sup>]]<ref name=manual-2.1.1-1-4/>
| colspan="2" |{{convert|50000|lbf|kN}}から{{convert|53200|lbf|kN}}
| colspan="2" |{{convert|56000|lbf|kN}}から{{convert|59000|lbf|kN}}
|-
|-
! 全長
| エンジン
| colspan=4 | 46.66&nbsp;[[メートル|m]]<ref name=manual-2.2.0-1/>
| colspan="2" |[[プラット・アンド・ホイットニーJT9D|PWJT9D-7R4]]または[[ゼネラル・エレクトリック CF6|CF6-80C2A2]]
| colspan="2" |&nbsp;&nbsp; [[プラット・アンド・ホイットニーPW4000|PW4156A]]またはCF6-80C2A8 &nbsp;&nbsp;
|-
| 航続距離
|6,800&nbsp;km <br> (3,670&nbsp;nm)<br/>大陸横断
|{{Convert|5,550|km|nmi}}
|9,600&nbsp;km <br> (5,200&nbsp;nm)<br/>大西洋横断
|{{Convert|7,330|km|nmi}}
|}

<nowiki>*</nowiki> 推力157,000&nbsp;kgの仕様は−300の標準で、推力164,000&nbsp;kgの仕様はオプションである。

=== 航空機モデルの指定 ===
''出典: フランス DGAC 滞空証明データーシート No. 145''
{| class=wikitable style="text-align: center;"
|-
|-
! 全幅
! 機種 !! 滞空証明取得 !! エンジン
| colspan=4 | 43.90&nbsp;m<ref name=manual-2.2.0-1/>
|-
|-
! 全高
| A310-203 || 1983年3月11日 || [[ゼネラル・エレクトリック CF6|ゼネラル・エレクトリック CF6-80A3]]
| colspan=4 | 15.81&nbsp;m
|-
|-
! 翼面積
| A310-203C|| 1984年11月27日 || ゼネラル・エレクトリック CF6-80A3
| colspan=4 | 219&nbsp;[[平方メートル|m<sup>2</sup>]]
|-
|-
! 胴体直径
| A310-204 || 1986年4月23日 || ゼネラル・エレクトリック CF6-80C2A2
| colspan=4 | 5.64&nbsp;m<ref name=manual-2.2.0-2/>
|-
|-
! 降着装置ホイールベース
| A310-221 || 1983年3月11日 || [[プラット・アンド・ホイットニーJT9D|プラット & ホイットニー JT9D-7R4D1]]
| colspan=4 | 15.22&nbsp;m<ref name=manual-7.2.0-1-9/>
|-
|-
! 客室幅
| A310-222 || 1983年9月22日 || [[プラット・アンド・ホイットニーJT9D|プラット & ホイットニー JT9D-7R4E1]]
| 5.29&nbsp;m<ref name=manual-2.5.0-1/>
| N/A
| 5.29&nbsp;m<ref name=manual-2.5.0-1/>
| N/A
|-
|-
! 客室長
| A310-304 || 1986年3月11日 || |ゼネラル・エレクトリック CF6-80C2A2
| 33.25&nbsp;m{{sfn|青木|2010|p=73}}
| N/A
| 33.25&nbsp;m{{sfn|青木|2010|p=73}}
| N/A
|-
|-
! 無燃料重量 (ZFW)
| A310-308 || 1991年6月5日 || ゼネラル・エレクトリック CF6-80C2A8 または CF6-80C2A2
| colspan=2 | 108,500 - 112,000&nbsp;[[キログラム|kg]]{{sfn|EASA|2014|pp=29-31}}
| colspan=2 | 113,000 - 116,500&nbsp;kg{{sfn|EASA|2014|pp=33-34}}
|-
|-
! 最大離陸重量 (MTOW)
| A310-322 || 1985年12月5日 || [[プラット・アンド・ホイットニーJT9D|プラット & ホイットニー JT9D-7R4E1]]
| colspan=2 | 125,000 - 144,000&nbsp;kg{{sfn|EASA|2014|pp=29-31}}
| colspan=2 | 134,000 - 164,000&nbsp;kg{{sfn|EASA|2014|pp=33-34}}
|-
|-
! 離陸滑走距離
| A310-324 || 1987年5月27日 || [[プラット・アンド・ホイットニーPW4000|プラット & ホイットニー PW4152]]
| colspan=4 | 2,410&nbsp;m{{sfn|青木|2014|p=123}}
|-
|-
! 最大巡航速度
| A310-325 || 1992年3月6日 || [[プラット・アンド・ホイットニーPW4000|プラット & ホイットニー PW4156A]]
| colspan=4 | [[マッハ数|マッハ]]0.84
|-
! 航続距離
| 6,940&nbsp;[[キロメートル|km]]
| 5,735&nbsp;km
| 9,600&nbsp;km
| 8,050&nbsp;km
|-
! エンジン (x2)
| colspan=2 | {{nowrap|GE CF6-80A3}}, {{nowrap|GE CF6-80C2}}, {{nowrap|P&W JT9D-7R4D1}}, {{nowrap|P&W JT9D-7R4E1}}{{sfn|EASA|2014|pp=29, 31}}
| colspan=2 | {{nowrap|GE CF6-80C2}}, {{nowrap|P&W JT9D-7R4E1}}, {{nowrap|P&W PW4000}}{{sfn|EASA|2014|pp=33}}
|-
! 推力 (x2)
| colspan=2 | 214&nbsp;[[ニュートン|kN]] - 233&nbsp;kN{{sfn|EASA|2014|p=36}}
| colspan=2 | 233&nbsp;kN - 257&nbsp;kN{{sfn|EASA|2014|p=36}}
|-
| colspan=5 style="text-align:left; font-size:90%;" |
* 出典:特に記載のないものは {{harvnb|藤田|2001b|p=61}} による。
* GE: ゼネラル・エレクトリック、P&W: プラット・アンド・ホイットニー
|}
|}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Portal box|航空}}
{{Portal box|航空}}
* [[ボーイングとエアバス]]
* [[:en:Airbus Executive and Private Aviation|エアバスエグゼクティブとプライベート航空(英語版)]]
* [[:en:Competition between Airbus and Boeing|エアバスとボーイングの競争(英語版)]]
* [[エアバスA300]]:原型機
* [[エアバス A310 MRTT]]:[[給油機]]
* [[:en:Airbus CC-150 Polaris|CC-150 ポラリス]]:[[カナダ空軍]]の[[輸送機]]。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
;脚
===釈===
{{reflist|group=Nb}}
{{Reflist|group="注釈"}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
<ref name=yoneya>{{Citation|和書 |last=米谷 |first=豪恭 |title=ETOPSの歴史とエアラインの取り組み |journal=航空技術 |date=2002-12 |issue=573 |pages=23-29 |issn=0023284X |naid=40005429737}}</ref>
<ref name=JADC-data1>{{harvnb|日本航空機開発協会|2013}} pp. II-4, II-8</ref>
<ref name=JADC-data2>{{harvnb|日本航空機開発協会|2013}} p. II-7</ref>
<ref name=manual-2.1.1-1-4>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.1.1 pp. 1-4</ref>
<ref name=manual-2.1.1-1-2>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.1.1 pp. 1-2</ref>
<ref name=manual-2.1.1-3-4>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.1.1 pp. 3-4</ref>
<ref name=manual-2.2.0-1>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.2.0 p. 1</ref>
<ref name=manual-2.2.0-2>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.2.0 p. 2</ref>
<ref name=manual-2.3.0-2>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.3.0 p. 2</ref>
<ref name=manual-2.4.1-1-2>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.4.1 pp. 1-2</ref>
<ref name=manual-2.5.0-1>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.5.0 p. 1</ref>
<ref name=manual-2.6.1-1>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.6.0 p. 1</ref>
<ref name=manual-2.7.5-1-2>{{harvnb|Airbus|2009}} Chapter 2.7.5 pp. 1-2</ref>
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== 外部リンク ==
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2014年6月30日 (月) 12:42時点における版

エアバスA310

イエメニアのA310-300

イエメニアのA310-300

エアバスA310Airbus A310)はヨーロッパの企業連合であるエアバス・インダストリー社(現:エアバス)が開発・製造した中型の双発ジェット機である。エアバス・インダストリー社の2番目の製品となった旅客機であり、ボーイングの製品と直接的に競合した初めてのエアバス機と言われた。A310は、エアバスA300の胴体を短縮して標準的な座席数を200席強としたワイドボディ機である。A310では、主翼が新設計となり揚抗比が改善されたほか、システムのデジタル化・自動化を進め、CRTディスプレイを備えたグラスコックピットが導入され、操縦士2人だけで運航可能なワイドボディ機の先駆けとなった。A310のエンジンはターボファンエンジンで、ゼネラル・エレクトリック社のCF6シリーズと、プラット・アンド・ホイットニー社のJT9Dシリーズ、PW4000シリーズから選択された。

A310シリーズには、最大航続距離が異なる2つの旅客型と、貨客コンバーチブル型、旅客型から改造された貨物専用型、さらに、軍や政府向けに要人輸送、貨物輸送、医療救助、空中給油などを行う装備を持つ派生型が存在する。最初に登場したA310-200は、ボーイング707727、ダグラスDC-8などの更新需要を見込んで短・中距離路線向けに開発された旅客型であり、1983年にルフトハンザドイツ航空スイス航空によって初就航した。1985年に初就航した航続距離延長型のA310-300は、機体寸法はA310-200と変わらないが、複合材料の採用拡大などで機体が軽量化され、水平尾翼内に燃料タンクが増設されたほか、燃料を用いた機体重心の制御によって抗力が低減され燃費性能が向上し、オプションの燃料タンクを追加した場合の航続距離が最大で9,600キロメートルとなった。

1980年代において、A310は欧州域内を結ぶ路線や、欧州と中東・北アフリカを結ぶ路線などに就航したほか、米国のパン・アメリカン航空やアジアのシンガポール航空などでも採用された。1980年代後半以降、ETOPSと呼ばれる双発機の長距離飛行に関する緩和要件が認められ、欧州と北米を結ぶ大西洋横断路線や、欧州と日本を結ぶ長距離国際線でも運航されるようになった。冷戦終結後には、A310は旧東側諸国でも採用されるようになり、1991年に西側諸国製の旅客機として初めてロシアの型式証明を取得した。1993年には、フェデックスが主要顧客となって、中古のA310を貨物専用機へ改造する事業が始まった。 1990年代には、欧米の航空会社ではA310の引退が進み、貨物型への改造が進んだほか、開発途上国の航空会社による運用数が増えた。A310の生産は、1998年に初飛行した255号機以降行われなくなり、2006年にエアバスはA310の生産終了を正式に発表した。2014年4月までに、A310の機体損失事故は11件発生し、その内の8件は死亡事故である。

本項では以下、エアバス製旅客機およびボーイング製旅客機については社名を省略して英数字のみで表記する。例えば、「エアバスA300」であれば「A300」、「ボーイング767」であれば「767」とする。

沿革

開発の背景

1974年のファーンボロー国際航空ショーで飛行するA300。A300はエアバス・インダストリーが最初に開発した製品で、エールフランスによって初就航した[4]

アメリカのボーイング社やダグラス社(後のマクドネル・ダグラス社)に販売面や資金力で大きく先行されていたヨーロッパの航空機メーカーは、1970年12月に企業連合「エアバス・インダストリー」を設立し、世界初の双発ワイドボディ機となるA300を開発した[5][6]。A300の納入は1974年5月に始まり、エールフランスによって商業運航が開始された[4]。当初、A300の販売は苦戦したが、1977年に40機の注文を獲得して状況が好転し、翌年にはイースタン航空からの受注により念願の米国進出も果たした[7][8]。事業存続の見通しが立ったエアバスは、製品ラインナップの拡充を本格的に考え始め、市場調査に取りかかった[7]。1960年代には航空輸送需要は当分拡大し続けるとの見方が一般的だったが、1973年のオイルショックなどをきっかけとして、ジェット旅客機の需要は急減速していた[7]。一方で、1980年代になれば707727DC-8などの退役が始まり、後継機として座席数200席強の短・中距離路線向けの旅客機需要が高まると予測された[9][7]。エアバスではA300の発展版としていくつかの機体案を検討していたが、その一つにA300B10と名付けられた胴体短縮型があり、先の市場予測で需要が見込まれる機体サイズに合致するものであった[7]。旅客機の発展型の開発において、胴体延長型の成功例に対して短縮型の事例は少なかったが、エアバスは市場調査の結果を踏まえ、胴体短縮型の開発に乗り出すことにした[7][10]

A300B10の当初案では、胴体を単純に切り詰めるだけで、開発経費を抑えるために主翼やシステム類はA300のものをそのまま用いるとされた[9][11][12]。しかし、当時、A300B10と同じ市場を狙って、ボーイングが全くの新規開発となる双発ワイドボディ機「7X7」(のちの767)の研究を行っており、エアバスはこれに対抗するため、新型機構想にできるだけ新しい技術を盛り込むことにした[12]。短縮される胴体サイズに合わせて主翼を設計し直すとともに、機体システムのデジタル化・自動化を推進することで、ワイドボディ機として世界で初めて操縦士2人での運航を実現する案がまとめられた[12][13]。この機体案は、A300から胴体を10フレーム短くすることから、A300-(マイナス)10と名付けられ、後に正式名称がA310と決定された[12]

A310案は、ルフトハンザドイツ航空から50機、スイス航空から20機の受注を獲得し、さらにその後、エールフランスとサベナ航空も発注の意向を示した[12][4]。これを受けてエアバスは、1978年7月7日に、同社の2番目の製品としてA310を開発することを正式決定し、同月13日にはフランス西ドイツの政府が事業認可を与えた[12][4]。これは、A310の直接的な競合機とされたボーイング767の開発が正式決定される1日前のことだった[14][15][16]

また、イギリス政府は、これまでエアバス・インダストリーへの参加を見合わせていたが、同社が徐々に事業を発展させていく様子を見て方針を転換した[17]ホーカー・シドレー[注釈 1]を初めとする英国の航空機メーカーは1977年4月に統合してブリティッシュ・エアロスペース(以下、BAe)社を設立し、BAe社は1979年1月にフル・パートナーとしてエアバス・コンソーシアムに加盟した[19]

設計の過程

正面から見たパキスタン国際航空のA310。A310はA300と胴体断面を共有する。
ブリティッシュ・カレドニアン航空のエアバスA310-200。A300の胴体を切り詰め、尾部の絞り込みも急になった。

A310のもともとのコンセプトは、A300の胴体を10フレーム短縮するということだったが[12]、具体的な設計を経て、5か所で合計13フレーム分の短縮が行われることになった[20][13]。キャビン部では、主翼の前方で6フレーム、主翼の付け根にあたる中央胴体で2か所から各1フレーム、主翼後方で3フレーム取り除かれた[12][13]。さらに、このままでは機体の重心位置から尾翼までの距離が長くなってしまうので、圧力隔壁の後方にあたるテイルコーン部で2フレーム取り除かれ[12]、合わせて尾部の形状をA300よりも急角度で絞り込むように修正された[13]。以上の変更により、全長が6.90メートル短縮された一方で、キャビン長の短縮分は5.91メートルにとどまり、A300と比較して、A310は胴体長に占めるキャビン長の割合が大きい機体となった[21][13]

表1: A300とA310の主翼の主要数値[14]
翼幅 (m) 翼面積 (m2) アスペクト比 後退角(度)
A300 44.84 260.0 7.73 28
A310 43.90 219.0 8.80 28

A310の主翼は、7,000キロメートルの航続距離を無理なく実現しつつ、短距離路線での運航経済性を損なわない、という2つの要求を満たすように新たに設計された[22][14]翼型は、A300で採用されたリア・ローディング翼型を洗練させ、翼の後半で得られる揚力が更に大きくなった[14]翼平面形については、A300の主翼と比べて大きなアスペクト比を持つ細長い翼となり、翼面積で16パーセントほど小型化された(表1)[14]。A300では、主翼の製造において複雑で大掛かりな外板の加工を避けるため、主翼の翼厚比を一定としたシンプルな形状を採用するとともに、外販を翼幅方向で2枚に分けて製造し、継ぎ手でつなぎ合わせていた[23]。これに対してA310の主翼は、翼の付け根を厚く、翼端にいくほど薄くなるように翼厚比が変化する複雑な曲面をもつ設計となった[23][20]。さらに、生産設備を改修して翼幅方向に継ぎ目のない外板の製造に踏み切り、主翼の構造重量の低減を図りつつ、主翼内に搭載できる燃料を増やした[23]高揚力装置の構成については、前縁はA300と変わらないが、後縁のフラップはA300よりも簡略化され、フラップを動作させるトラックレールのフェアリングもA300より1つ少なくなった[14][24]。また、A300の主翼で設けられていた外翼部の低速用エルロンも廃止された[14]。一方で、動翼の操作系に電気的信号を介する、いわゆるフライ・バイ・ワイヤ方式を採用し、スポイラーを左右非対称に展開可能にすることでロール運動の制御にも用いるようにした[25][26]。以上のように洗練されたA310の主翼は、巡航速度域での揚抗比がA300よりも高くなり[14]、大まかに言うと、同じ揚力を得るのに必要とする推力が小さくて済むようになった[27]

スイス航空のA310-200。ローンチカスタマーの1社となった同社はP&W社のJT9Dエンジンを選択した。

尾翼はA300と同じく胴体に直接配置する一般的な構成とし、垂直尾翼はA300のものが流用されたが、水平尾翼は再設計され翼面積が8パーセントほど小さくなった[28]降着装置も新規に設計されたが、配置や構成はA300と変わらない[12]

A310の設計当時、ワイドボディ機の運航には、機長副操縦士航空機関士の3名の乗務を必要としていたが、A310では機長と副操縦士の2人だけで運航することを前提として設計された[14]。操縦士の作業負担を低減するため、機体のシステムの一部が自動化されたほか、従来の機械式計器に代えて6基のCRTディスプレイに計器情報を統合的に提示するコックピットが開発された[25][14]。また、電気信号によって指令を送るフライ・バイ・ワイヤによる操縦システムが、先に述べたスポイラーのほかにスラットやフラップにも採用された[29]。操縦システムのデジタル化・自動化といった技術革新は軍用機で先行して行われ、旅客機へも波及し始めた時期であり、エアバスでは2人乗務化を見据えてA300のコックピットの改良を行っていたが、A310では当初から2人乗務が可能なコックピットの開発・試験が行われた[25][14]。A310と同時期にボーイングが開発を進めていた757/767でも2人乗務のコックピットを準備していたが、大型機の2人乗務化の是非を巡って議論があったことから、3人の乗務を必要とするコックピットに変更して試験が行われていた[20]。しかし、A310が2人乗務で欧州の型式証明を取得出来る見込みがたったことで、ボーイングは対抗するため、急遽、757/767を2人乗務仕様に戻している[20]

エンジンは高バイパス比のターボファンエンジンを採用し、ゼネラル・エレクトリック(以下、GE)社のCF6シリーズ、プラット・アンド・ホイットニー(以下、P&W)社のJT9Dシリーズ、ロールス・ロイス(以下、R-R)社のRB211シリーズの3種類を装備する仕様が用意された[2]。ローンチ・カスタマーのルフトハンザ航空はCF61シリーズ、スイス航空はJT9Dシリーズを選択した[14]R-R社のRB211エンジン装備仕様については、以降も選択する航空会社が現れず、結局生産されなかった[2]

A310の胴体断面はA300と共通であるため、客室内の幅、高さ、そして座席配置なども基本的には変わらず[30][13]、LD-3航空貨物コンテナを横2列で収納可能な床下の貨物室も引き継がれた[31]。内装ではオーバーヘッド・ビン(座席上の荷物棚)が新しくなり、棚の下端部には通路を移動する乗客のための手すりが設けられた[20]

A310では複合材料の採用範囲が拡大された。A300の設計当時は、ガラス繊維強化プラスチック (GFRP) を除く複合材料は、戦闘機などで採用が始まったばかりであり、A300での複合材料の使用はごく一部にとどまっていた[32][25]。これが、1970年代末になると炭素繊維強化プラスチック (CFRP) などが民間機でも普及し始めており、A310ではフェアリングなど一部の2次構造部材[注釈 2]に採用された[32][25]。使用された炭素繊維は、日本の東レ社から供給された[37]

当初のA310の開発計画では、航続距離が異なる2つのタイプが検討されていた[9]。A310-100は燃料タンクを主翼のインテグラルタンクのみとした短距離型、A310-200は中央翼内にもタンクを加えて燃料搭載量を増やした中距離型である[9]。A310-100の航続距離は約3,400キロメートルで欧州域内や米国内の路線向け、一方でA310-200は航続距離が6,500キロメートルほどで北米大陸の横断も可能な仕様であった[9]。この2タイプが航空会社に提案されたが、航空会社からの発注はA310-200型に集中し、エアバスではA310-100も受注があれば生産可能としていたが、結局1機も注文がなく製造されなかった[9][11]

製造と試験

A310-200のプロトタイプ。ローンチカスタマーの2社に敬意を表し、左半分にスイス航空、右半分にルフトハンザ航空の塗装が施された[2]。1982年、デュッセルドルフ国際空港にて。

A310の生産は、A300と同じく国際分業体制によって行われ、エアバスへの出資各社の分担は表2の通りに割り当てられた[38]。このほかにも、オランダのフォッカー社とベルギーのベルエアバス社もエアバスとの契約に基づきA310の生産に参加した[39]。最終組み立てと試験飛行は、A300と同様にフランスのトゥールーズで行われた[38]

A310の1号機はA300の162号機を改造して作られ、1982年2月16日にロールアウトし、同年4月3日に初飛行した[40][2]。A310の製造番号はA300からの通し番号でつけられており[2]、本項では以後、この製造番号を括弧内で示す。A310の初号機はロールアウト時には、ローンチカスタマーとなったスイス航空とルフトハンザ航空の両社に敬意を表して、右半分にスイス航空、左半分にルフトハンザ航空の塗装が施された[2]。A310の1号機と2号機(製造番号172)は、P&Wのエンジンを搭載しており、GE製エンジンを装備した最初の機体は3号機(製造番号191)で1982年8月5日に初飛行した[2]

型式証明を取得するための試験には、1号機から5号機が投入された[2]。試験は順調に進み、燃費性能や航続距離などで計画値を上回る性能が確認された[41]。1983年3月11日に、フランスと西ドイツの航空当局によってA310の最初の型式証明が発行された[2][42]。同月29日に、ローンチカスタマーであるルフトハンザ航空とスイス航空への引き渡しセレモニーが執り行われ、納入が始まった[43]

表2: A310の主な生産分担と1979年時点でのエアバス・インダストリーへの出資比率
国名・企業名 出資比率 生産分担部位
フランスの旗フランス アエロスパシアル 37.9%

機首部、胴体中央下部、中央翼、主翼動翼の一部、パイロン、最終組み立て、試験飛行

ドイツの旗ドイツ†1 ドイチェ・エアバス†2 37.9%

胴体前方・後方・中央上部、テイルコーン、垂直尾翼、主翼動翼の一部、貨物室ドア、非常口ドア、主翼の最終組み立て、客室内装、塗装

イギリスの旗イギリス BAe 20.0%

主翼本体、主翼動翼の一部

スペインの旗スペイン CASA英語版 4.2%

水平尾翼、前脚格納扉、前方乗客ドア

†1: 1990年のドイツ再統一までは西ドイツ。 †2: MBB社とVFW社の合弁企業[44][注釈 3]

就航開始・運用の拡大

ルフトハンザドイツ航空のA310-200。同社は、GE製のCF6エンジン仕様を選択した。

ルフトハンザ航空は1983年4月10日、フランクフルトからシュトゥットガルトならびにロンドンを結ぶ2路線にA310を就航させた[3]。スイス航空も同月21日にA310の商業運航を開始し、チューリッヒおよびジュネーヴからロンドン、パリ、フランクフルトを結ぶ各線に就航した[46]

ローンチカスタマーの2社では、新型機につきものの小さなトラブルのほか、A310のデジタル化・自動化されたコックピットに関連して、それまで経験したことのない問題への対処が必要となったが、これらは航空会社が予測していたほどではなく、A310への信頼や評判を落とすほどの大きな技術的問題は見られなかった[26]。1週間および1か月あたりの出発信頼度[注釈 4]は両社とも97パーセントを超え、数ヶ月の運用経験を経てさらに上昇した[26]。初期の運用で明らかになったインタフェースやソフトウェアなどに関する問題点はエアバスにフィードバックされ、改善策が施された[48]。また、最初の数ヶ月は、スペアパーツや消耗品が不足したり、装置やソフトウェアの改修に伴う説明書等の供給が遅いといった問題もあったが、メーカー側による改善の努力がなされた[49]。また、A310の17号機(製造番号267)は、最大離陸重量を138,600キログラムに増やした改良型となり、1983年9月にフランスの型式証明を取得したことで、以降はこのタイプが標準型とされた[50]

A310は、欧州の航空会社ではルフトハンザ航空とスイス航空のほかにKLM、サベナ航空やエールフランスなどでも採用され、ヨーロッパの各都市を結ぶ路線のほか、ヨーロッパと北アフリカや中東を結ぶ路線にも就航した[46][51]。欧州以外で最初にA310を導入したのはクウェート航空で、1983年9月に初引き渡しが行われた。また、翌年にはキプロス航空や、アフリカのアルジェリア航空ナイジェリア航空英語版でもA310の導入が始まり、これらの航空会社では欧州線などに就航させた[52][53][54]。アジアで最初にA310を導入したのはシンガポール航空で、同社は1984年11月に最初の機体を受領してアジア路線を中心に就航させ、続いて翌年6月にはアジアで2番目の運航者となった中国民用航空局への引き渡しも行われた[55][56][57]

パンアメリカン航空のマーキングが施されたA310-200を左から見た写真。
パンアメリカン航空のA310-200。同社は米国で最初にA310を導入した[55][58]

この頃、A310-200をベースに貨客コンバーチブル型のA310-200Cも開発された[30]。A310-200Cは、メインデッキ(機体上半分の客席を設ける部分)に貨物と乗客の両方を収容可能にする設備を有するモデルで、1984年11月27日に型式証明を取得し、同月29日に1号機がマーティンエアーに納入された[59][60][61]。さらに、A310-200について、最大離陸重量をもう一段階引き上げたオプションが設定され、1984年11月に型式証明を取得した[50]

米国の連邦航空局(Federal Aviation Administration、以下FAA)からA310-200の型式証明が交付されたのは、欧州から2年ほど遅れて1985年2月21日であった[62]。同年5月、パンアメリカン航空に対して米国の航空会社として第1号となる引き渡しが行われ、同社は727の後継機としてA310を就航させた[55][58]

発展型A310-300の開発

A310-200の開発が決定した当時、双発機の飛行ルート設定に際して、安全上の理由により60分以内に着陸可能な飛行場があることが求められ、大陸間路線などの長距離路線には3発機や4発機が用いられていた[63][64]。しかし、エンジンなどの信頼性や性能が向上したことにより、1980年代に入ると、双発機の飛行経路に関する制限を緩和する検討が本格化した[64]。また、A310-200の納入が始まる頃には、航空会社は、以前よりも機材の航続距離の長さを重視するようになっていた[65]。このような状況下で、エアバスは、A310の航続距離をさらに延ばした発展型として、A310-300を開発することにした[50][65]。A310-300のローンチカスタマーはスイス航空に決まり、1983年3月29日に行われたA310-200の引き渡しセレモニーの場で発表された[43]

パキスタン国際航空のA310-300。主翼の翼端にはウイングチップ・フェンスが装着されている。

A310-300は機体の寸法はA310-200と変わらず、航続距離を伸ばすために、水平安定板の内部にも燃料タンクを設けて燃料搭載量を増やすことになった[2][63]。また、尾翼と主翼の燃料タンクの間で燃料を移送し、機体の重心位置を制御するシステムが搭載された[63]。このシステムによって機体の姿勢を一定に保つのに必要なトリム抵抗を最小限に抑えられ、運航経済性の向上が図られた[63]。燃料を移動してトリム調整を行う技術は超音速旅客機機コンコルドで開拓されたもので、水平尾翼内に燃料タンクを設けて重心の制御を行った旅客機はA310-300が初めてであった[59][63]。さらに、燃料搭載量を増やすオプションとして、LD-3貨物コンテナ2個分のサイズで貨物室内に取り外しできるようにした補助中央タンク (Auxiliary Center Tanks、以下ACT) が用意された[59][66]

A310-200では2次構造部材として使われていた複合材料の適用範囲がA310-300ではさらに拡大され、量産旅客機として初めて垂直安定板の1次構造部材[注釈 2]にもCFRPが用いられ、機体の軽量化が図られた[63][25][67][68]。そのほか、A310-300では、主翼の翼端渦を抑えて揚抗比を向上させるため、翼端にウイングチップ・フェンスと名付けられた矢尻状の板が追加され、後にA310-200でもウイングチップ・フェンス追加改修が行われた[59][63]。エンジンは、A310-200と同様にR-R社、P&W社、GE社の製品から選択できるようにしたが、R-R社のエンジンを選択した発注はなかった[30]

A310-300の初号機となったのはJT9Dエンジンを装備した製造番号378号機で、1985年7月8日に初飛行した[20]。同年12月5日にA310-300として最初の型式証明を取得、17日にはスイス航空に初引き渡しが行われ、商業運航が開始された[20][22]。また、A310-300にはP&W社の新型エンジン、PW4000シリーズを装備したモデルも登場し、1987年5月27日に型式証明を取得した[20][69]

A310-300の開発と時期を同じくして、規制当局や機体メーカー、航空会社らによって双発機の長距離運航を認める要件がまとめられ、1985年にETOPSと呼ばれる規格が策定された[64][70]。当時、ETOPS認証を取得するためには一定時間以上の飛行実績を必要とし[注釈 5]、1986年4月10日にA310で初めての120分ETOPS(飛行ルート中に120分以内に着陸可能な空港があれば良い)が認められた[64]。ETOPSはエンジンとの組み合わせで認証されるものであり、各エンジン搭載型の認証日ならびに、後に許容時間が180分に延長された「180分ETOPS」の認証取得日は後述の表3に示した通りである[64]。航続距離が伸びたこととETOPSの要件を満たしたことで、A310は大西洋横断路線のような長距離洋上路線や、アジアとヨーロッパを結ぶ大陸横断路線へも就航可能となった[63]。パンアメリカン航空やオーストリア航空は、欧州と米国を結ぶ北大西洋横断航路にA310を投入した[71][72]。また、トルコ航空とオーストリア航空はそれぞれトルコ、オーストリアと日本を結ぶ長距離国際線にもA310-300を就航させた[73][74][72]。そのほか、1985年6月にはシンガポール航空がA310をシンガポール - モーリシャス線に就航させており、これは4,000海里(約7,400キロメートル)近い飛行ルートの大半が洋上となる路線であった[75]

その後の展開

アエロフロート・ロシア国際航空のA310-300。A310は、ロシアの型式証明を取得した初めての西側諸国製の旅客機となった。

1989年代末から1990年代初頭にかけて冷戦の集結、東西ドイツの統一といった動きがあり、A310は旧東側諸国でも導入されるようになった[73][20]。1989年6月に、旧東ドイツインターフルークは同社初のワイドボディ機としてA310を受領した[73]。また、1991年10月にロシアでA310の型式証明が交付され、これは西側諸国製の旅客機がロシアの証明を得た最初の事例となった[20]アエロフロート・ロシア国際航空は1992年8月にA310-300を導入し日本路線の主力機に用いたほか、ウズベキスタン航空タロム航空でもA310を採用し、旧ソ連邦諸国や欧州を結ぶ路線のほか、長距離国際線に投入した[76]

ビーマン・バングラデシュ航空のエアバスA310-300

1980年代の後半には、A310は毎年20機前後の受注を得ていた[14]。1991年時点で、A310を最も多く運用していたのはパンアメリカン航空でその数は21機であった[77]。そのほか、ルフトハンザ航空、KLM、エールフランス、シンガポール航空、トルコ航空が10機以上のA310を運航していた[77]。ところが、1990年代に入ると売れ行きが急減速し、1993年に22機を納入したのを最後に、1994年以降は年間の生産・納入数が2機ずつとなった[14][77]。1990年代初頭にパンアメリカン航空が倒産し、路線と機材の一部を引き継いだデルタ航空はA310を手放しつつあったほか、ルフトハンザ航空でもA310の運用数を減らす動きが見られた[77][78]。一方で、アジアや中南米などの開発途上国では、1990年代に入ってからA310を導入する会社も見られ、ビーマン・バングラデシュ航空MIATモンゴル航空アルゼンチン航空エア・ジャマイカエミレーツ航空イエメニアなどで採用された[74][79]

エアバスでは開発プログラムの早い時期からA310の貨物専用型を提案していたが、これまで、実際に発注を行う航空会社は現れていなかった[22]。1993年の9月になって、エアバス社のパートナー企業であったドイツのDASA社はフェデックスからの注文を受けて、A310の貨物機改造事業を開始した[80]。この発注は、フェデックスがルフトハンザ航空から中古のA310-200を購入し、13機の改造を行うというものであった[80]。貨物型改造機は、貨客コンバーチブル型と同様に左舷前方に大型の貨物扉が設置され、メインデッキに貨物を搭載するための設備が追加された[81]。1994年7月にFAAからの認証を取得し、最初の引き渡しが行われた[80]。その後もフェデックスは、スイス航空やKLMからA310を引き取り、貨物機への転用を進めた[80]。また、A310をベースに、要人輸送機や多目的空中給油機などの軍用機への改造も行われるようになった[82][83]

年産2機という状態が数年続いた後、ついに、1998年4月6日に初飛行した255号機(製造番号706)を最後にA310の製造は行われなくなった[30]。もともとA310は、短・中距離路線向け旅客機として設計され、A300から小型化された主翼も短・中距離用に最適化されていた[22]。この主翼の小型化によって、結果的に、搭載できる燃料の容量が限られてしまい、これ以上航続距離を伸ばした発展型を開発する余地は少なかった[22]。結局、2006年の3月に、エアバスはA300-600とともにA310の生産を終了することを発表し、総生産数255機で正式に生産を終えた[30]

A310と同時期にボーイングが開発した767は、200席程度の座席数、2本の通路を持つ客室、双発ターボファンエンジン、操縦士2人で運航可能なグラスコックピットといったA310と共通する特徴を持ち、A310は、ボーイングの製品に直接的に競合した初めてのエアバス機と言われた[14][15][16]。A310の255機という販売数は、767の販売数の半分にも満たないが[注釈 6]、当機種によって開拓された新技術を用いてA300の第2世代とも言われるA300-600が開発され、1984年3月に最初の型式証明を取得している[85][63]。A300-600のコックピットは、A310とほぼ共通となる2人乗務のコックピットとなり、パイロットは1つの操縦資格で両機を運航できるようになった[63]。また、水平尾翼内の燃料タンクを用いたトリム調整システムや、貨物コンテナ規格に合わせた追加式燃料タンクACT、手すり付きのオーバーヘッド・ビンなどは、A300-600以降に開発されるエアバス機にも引き継がれている[20][86]

機体の特徴

形状・構造

ビーマン・バングラデシュ航空のA310-300を上から見下ろす。

A310は後退翼の主翼を低翼に配置した単葉機である[87][88]。左右の主翼下に高バイパス比のターボファンエンジンを1基ずつ備える[14][87]。通常の尾翼配置を採用し、水平尾翼と垂直尾翼は胴体尾部に直接取り付けられている[87][88]。垂直尾翼の形状はA300から引き継がれたが、水平尾翼は再設計され、A300と比べて翼幅が4パーセント、面積は8パーセント小さくなった[28]。A310の胴体はA300と同じ胴体断面を用い、合計13フレーム分短縮されて全長は46.66メートルである[20][13]。降着装置は前輪式配置[注釈 7]で、前脚が2輪、主脚は4輪である[89]

エア・コメットのA310-300を見上げる。降着装置を下ろし、主翼の動翼を展開している。
A310-300の左主翼を翼端側からみた写真。翼端(写真の手前側)に付いている矢尻状の小型の翼がウイングチップ・フェンス。

A310の主翼の翼型は、A300で採用されたリア・ローディング翼型に改良が加えられ、衝撃波の発生位置が一段と後方になったことで、翼の後半で得られる揚力が大きくなった[14]。翼厚比は翼の付け根で最も大きく、翼端にいくほど小さく変化し、複雑な表面形状を持つ翼である[20]。翼平面形についての主な寸法は表1に示した通りで、A300の主翼と翼幅はさほど変わらないが、アスペクト比が大きく細長い翼である[14]高揚力装置は、前縁にはスラットとクルーガーフラップがあり、後縁には外翼部に1枚式のファウラー・フラップ、内翼部にベーン付きのダブル・スロッテッド・フラップを備え、フラップを動作させるトラックレールのフェアリングは4つである[12]。そのほかの動翼として、後縁のフラップ間に全速度エルロン、片翼当たり7枚のスポイラーを備える[12]。スポイラーはエアブレーキとグラウンドスポイラーの役割を持つほか、外側の3枚はロール操縦にも用いられる[12]。A310-300では、翼端渦を制御して揚抗比を改善するため、ウイングチップ・フェンスと名付けられた矢尻状の小さい板が翼端に追加され、後にA310-200でも追加改修された機体が登場している[63][59]

A310では2次構造部材としてCFRPとGFRPのほか、アラミド繊維(ケブラー)強化複合プラスチック(AFRP)が用いられている[90][91][63]。各部材の主な使用部位は、CFRPが方向舵昇降舵、降着装置の格納扉、キャビン床の支持材、GFRPが垂直安定板の前縁と後縁、水平安定版の翼端部、機首のレドーム、AFRPが主翼のトラック・フェアリングやパイロンカバーの一部などである[91][90][92]。また、A310-300からは垂直尾翼の1次構造部材としてもCFRPが採用されている[63][22]。主翼燃料タンクのアクセスパネル[注釈 8]のほかエンジンからの高温空気を通すダクトにはチタン合金も使用されている[92]

飛行システム

S7航空のA310-200のコックピット。CRTは、左右の操縦桿の奥に縦に2基ずつ、中央のコンソールに2基配置されている。中央のCRTの間に並ぶダイアル式計器がエンジン計器類である[93]

A310の操縦室は、カラーCRTディスプレイ上に計器情報を提示する、いわゆるグラスコックピットである[94][20]。A310のシステムは一部がデジタル化され、コンピュータによってタスクが部分的に自動化されたほか、CRTディスプレイによる統合的な情報提示と、入力インタフェースの統合・簡素化によって乗務員の作業負担の低減が図られ、機長と副操縦士の2名で運航することが可能である[30][95][22]。A310に続いて開発されたA300-600は、A310とほぼ共通化されたコックピットを持ち、パイロットの操縦資格も両機で共通化されている[63]

コックピットのCRTディスプレイは、左右の操縦席に各2面、中央に2面の計6面配置され、操縦席側のディスプレイには飛行情報や航法情報が表示され、中央のディスプレイには燃料、油圧、空調などのモニタリング情報が表示される[95][22]。エンジン関連計器については、開発当時の法規制への対応のため、前面コンソールの中央に従来型のダイヤル式計器が残された[30][96]

スラット、フラップ、スポイラーといった主翼の動翼の操縦には、電気信号によって指令を伝達するフライ・バイ・ワイヤ方式が導入され、左右の翼で別々に展開可能となったスポイラーは、ロール運動の制御にも用いられる[91][26][29]

客室・貨物室

A310-300のビジネスクラスの客室内を前方から見た写真。2本の通路を挟んで2-2-2の配置で青い座席が並んでいる。
ビジネスクラス
A310-300のエコノミークラスの客室内を前方から見た写真。2本の通路を挟んで2-4-2の配置で黄色い座席が並んでいる。
エコノミークラス
ルフトハンザ航空による運航当時のA310-300の客室。通路が2本配置され、ビジネスクラスで2-2-2、エコノミークラスで2-4-2の座席配置である。

A310の客室内は胴体断面を共有するA300とほぼ同じ幅と高さで、通路を2本持ち、通常のエコノミークラスで2-4-2の8アブレストである[30][67]。キャビン長は33.24メートルで、エアバスが示した標準的な座席数は、2クラス構成で205から234席、ファーストクラスを設ける3クラス構成で187席である[30][97]。また、3-3-3の9アブレスト配置とすることも可能で、単一クラスとして座席間隔を詰めた場合、280席程度まで設置できる[注釈 9]。手荷物を収納する頭上のオーバーヘッド・ビンは、窓側と中央の各座席ブロックに設けられている[31]。オーバーヘッド・ビンの下端部には溝状の手すりが設けられ、通路を移動する乗客は、体を支えるために他人の座席の背もたれを掴まずに済むようになっている[20]。客室扉は片側あたり3か所設けられ、客室の最前部と最後部に乗降用ドア、主翼上にあたる位置に非常口が配置されている[99]

駐機中のA310-300。タラップが接続され、前方床下の貨物扉が開いている。

胴体床下には、LD-3航空貨物コンテナを2個並列に搭載可能な貨物室が設けられ、最後部には、ばら積み貨物を搭載するスペースが用意されている[13][100]。貨物室は主翼取付部を挟んで前方と後方に分かれており、前方の貨物室にコンテナを8個、後方貨物室に6個まで搭載可能である[13][100]。また、ばら積み貨物スペースにコンテナを1個搭載できるようにするオプションも用意された[100]。コンテナ用の貨物扉は右舷下部の前方と後方に設置され、さらに後方に、ばら積み貨物用のドアも設けられている[100][101]

シリーズ構成

A310シリーズは、まず旅客型のA310-200が開発され、その後、発展型としてコンバーチブル型のA310-200C、長距離型のA310-300が開発された[102]。また、旅客型からの派生型として、貨物専用型への改造機のほか[103]、政府や軍向けに多目的輸送機、多目的空中給油機なども作られた[88]

A310の型式名は、装備エンジンごとに下2桁が細分化されている(表3)。R-R製エンジン仕様の採番も計画されていたが、実際には生産されなかった[9]

表3: 採用エンジンごとの型式名
機種 エンジン 型式証明取得 120分ETOPS†1 180分ETOPS†1
A310-203 GE CF6-80A3 1983年3月11日 1986年4月10日 1990年7月27日
A310-203C GE CF6-80A3 1984年11月27日 N/A N/A
A310-204 GE CF6-80C2A2 1986年4月23日 1987年9月14日 1990年7月27日
A310-221 P&W JT9D-7R4D1 1983年3月11日 1986年4月10日 1990年7月27日
A310-222 P&W JT9D-7R4E1 1983年9月22日 1986年4月10日 1990年7月27日
A310-304 GE CF6-80C2A2 1986年3月11日 1987年9月14日 1990年7月27日
A310-308 GE CF6-80C2A8 または CF6-80C2A2 1991年6月5日 N/A 1991年9月3日†2
A310-322 P&W JT9D-7R4E1 1985年12月5日 1986年4月10日 1990年7月27日
A310-324 P&W PW4152 1987年5月27日 1989年10月30日 1991年9月3日
A310-325 P&W PW4156A 1992年3月6日 N/A 1992年3月11日
  • 出典:EASA 2014, pp. 7, 29, 31, 33
  • GE: ゼネラル・エレクトリック、P&W: プラット・アンド・ホイットニー
  • †1: ETOPSの認証交付日
  • †2: CF6-80C2A8エンジン装備機

A310-200

イラン航空のA310-200。

A310シリーズで最初に開発されたモデルで、ルフトハンザドイツ航空とスイス航空によって、1983年の4月に初就航した[46]。エンジンは、GE社のCF6シリーズまたはP&W社のJT9Dシリーズを装備する[9]。A310-200は短・中距離路線向けに開発され、就航当初は欧州各国を結ぶ路線や、欧州と中東・北アフリカを結ぶ路線などで用いられた[46][104]。その後、アジアや米国などの航空会社でも導入され[56][105]、ETOPSの認証交付の動きと前後して、長距離洋上路線への就航事例も見られるようになった[75]

A310-200C

マーティンエアーのA310-200C。最前部の乗降扉の後ろに貨物扉がある(写真では辛うじて扉の輪郭が見える)。

A310-200Cは、メインデッキに旅客と貨物を収容できるようにした貨客コンバーチブル型で、胴体左舷の前方乗降扉と主翼の間にあたる部分に大型の貨物扉を有する[30][106][107]。マーティンエアーからの発注を受けて生産され、1984年11月27日に型式証明を取得し[60]、同月29日に納入された[108]。最初からコンバーチブル型として製造されたのは1機のみだが、旅客型から改造された機体もある[30]

A310-300

A310-200と寸法は変わらず、航続距離を延長した発展型で、1985年12月にスイス航空によって初就航した[2][22]。水平安定版内に燃料タンクを設け、主翼のタンクとの間で燃料を移送させることで、機体重心位置を制御するシステムを旅客機として初めて採用した[63]。A310-300では機体の軽量化のため、複合材料の使用範囲が拡大され、使用量は合計6.2トンとなり、量産旅客機として初めて、1次構造材として垂直安定版の主構造にCFRPが採用された[63]。床下貨物室に追加装備が可能な補助燃料タンクACTが採用された[66][90]。ACTはLD-3貨物コンテナ2個分の寸法で、容量が7,200リットルあり、最大2個まで搭載可能である[66][90]。エンジンは、GE社のCF6シリーズまたはP&W社のJT9Dシリーズを装備し、後に、A310-300についてはP&W社のPW4000シリーズ装備機も登場した[109][20]。A310-300もETOPS認証を取得し、航続距離の長さを活かして、欧州と米国を結ぶ大西洋横断路線や、欧州と日本を結ぶ大陸横断路線といった長距離路線へも就航した[71][72]

A310-200F/-300F

左舷前方に設けられたメインデッキの貨物扉を上に開いているA310Fを左前方から見た写真。
フェデックスのA310-200F。左舷前方に設けられたメインデッキの貨物扉を開いている。

メインデッキに貨物を搭載できるようにした貨物専用型である。エアバスではA310の貨物専用型の生産の用意をしていたが、最初から貨物型として受注・生産された機体はなく、現在運用されている貨物型は、旅客型からの改造機である[80][108]。型式名のA310-200F、-300Fは、改造元となった旅客型の型式名の末尾にそれぞれ「F」を付けたものである[103]。A310-200Cと同様に、左舷前方に大型の貨物ドアが設置され、メインデッキの床などが強化されたほか、煙探知・火災検知装置が追加されている[81][83]。また、当型式では、ほとんどの客室窓が塞がれているほか、後部乗降扉も閉鎖されている[81]。貨物室の仕様はA310-200Fと-300Fでほぼ同様で、メインデッキ貨物室には、2.235×3.174メートル(88×125インチ)の貨物パレットまたはコンテナを16個搭載できる[110][111]。貨物型への改造事業はDASA社が行っており、1994年7月に、A310-200から改造された最初のA310-200Fがフェデックスに納入された[80]。A310-300Fについてもフェデックスからの発注により改造が行われており、ベースの旅客型の性能を引き継ぎ、A310-200Fよりも最大離陸重量と航続距離が大きい[110]

政府専用機・軍用機

A310からは政府専用機や軍用機といった派生型への改造も行われ、要人輸送、兵員や物資・装備品の輸送、医療救助などを行う多目的機のほか、空中給油を行う設備を加えた多目的空中給油機 A310 MRTT (multi-role tanker transport) も開発された[112][83]

ファイル:A Royal Canadian Air Force CC-150 Polaris aircraft, left, assigned to the 437 Transport Squadron conducts an aerial refueling with two CF-18 Hornet aircraft assigned to the 409 Tactical Fighter Squadron over 130828-O-ZZ999-003-CA.jpg
CF-18 ホーネットに空中給油を行うカナダ空軍のA310 MRTT。カナダ空軍のA310は、CC150「Polaris」と命名されている[88]

A310 MRTTは、旅客型からの改造機であり、政府や軍の要人輸送、兵員や物資・設備の輸送、医療救助、そして、空中給油を実施する装備を備える[113][83]。メインデッキには、貨物機と同様の大型貨物扉などの設備を備え、軍用の物資や装備品を搭載可能である[83]。前後の床下貨物室には燃料タンクが増設され、他機への給油のほか、自機の燃料としても供給可能なシステムを持つ[83]。空中給油のためのアーム付き給油口は、左右の主翼下にそれぞれ1基ずつ備える[83]。給油システムの操作席は、コックピットの後ろに設けられている[83]。A310 MRTTへの改造は、エアバス・グループ子会社のEADS EFW社とルフトハンザ航空子会社のルフトハンザ・テクニック社との共同事業として行われた[113]。A310旅客型から改造された最初の機体は2004年3月に初飛行し[113]、同年9月にドイツ空軍カナダ空軍が発受領している[114]

運用の状況・特徴

フェデラル・エクスプレスのエアバスA310-200
ドイツ空軍によって運用されている要人輸送仕様のA310-300。ドイツ空軍はインターフルークが解散した後、同社からA310を引き継いだ[115]

A310は255機が製造・納入されたが、運用数は1990年代をピークに退役が進み[116]、2013年7月現在では84機が運用されている[1]。A310の最大の運用者はフェデックスで合計30機(310-200F:16機、310-300F:14機)を運用している[1]。2013年7月現在、旅客型の運用数が最も多いのはカナダのエア・トランザットでA310-300を9機運用し、続いてパキスタン国際航空がA310-300を7機運用している[1]。A310-200の旅客型については、ヨルダン・アビエーションの1機を残して全て退役している[1]

かつて、A310は欧米や中東の航空会社を中心に採用され、新造機を10機以上受領した航空会社(括弧内は納入数)は、シンガポール航空 (23)、ルフトハンザ航空 (20) 、パンアメリカン航空 (18)、トルコ航空 (14)、カナダのワードエア英語版 (12)、エールフランス (11)、クウェート航空 (11)、KLM (10) であった[117]。スイス航空はA310-200とA310-300のローンチカスタマーとなったものの、1996年のサベナ航空との提携後に経営状況が悪化して2001年に経営破綻してしまい[118][119]、A310の納入数は合計9機にとどまった[117]。フェデックスは中古のA310を買い集め、2008年から2009年にかけての運用数は70機(A310-200Fを49機、A310-300Fを17機、旅客型A310-300を4機)に達し、最多運用者となった[120][121]

日本では、A310を発注する航空会社は現れなかった[117]。 A310が開発された同時期に、直接的な競合機となるボーイング767が開発され[14][15]、767は登場後間もない1980年代前半から急速に日本での導入が進んだ[15][122]。当時、導入機材の候補にA310も入っていたが、日本の航空会社が767を選択した主な理由の1つとして、767の開発・製造に日本の航空工業界が参画していたことが挙げられている[122][123]

2013年末の時点で、政府専用機・軍用機としてA310の派生型を運用しているのは、ドイツ空軍、フランス空軍、カナダ空軍であり、そのうちドイツ空軍の4機とカナダ空軍の2機はMRTTで、残りは輸送機仕様(要人輸送、兵員・装備輸送など)である[124]。カナダ空軍のA310はCC150「Polaris」と名付けられている[88]。過去には、スペイン空軍ベルギー空軍タイ王国空軍・タイ王室、クウェート政府、カタール政府、ブルネイ政府でも要人輸送機などとしてA310が運用されていた[125][126][127]

受注・納入数

A310は全部で255機が生産・納入された。

表4: 年ごとの受注・納入数[116]
合計 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 1989 1988 1987 1986 1985 1984 1983 1982 1981 1980 1979
受注数 255 0 1 0 4 0 3 15 12 21 22 21 27 17 25 14 7 2 4 12 48
納入数 255 1 2 2 2 2 22 24 19 18 23 28 21 19 26 29 17 0 0 0 0

主な事故・事件

シベリア航空(現S7航空)のエアバスA310-300

2014年4月現在、A310の機体損失事故は11件発生しており合計825名が亡くなっているほか、A310で9件のハイジャックが発生し、合計5名が死亡している(死亡者にはハイジャック犯も含まれる)[128][129]。以下、死亡者が発生した機体損失事故を発生順に挙げる。

  • 1994年3月22日に、アエロフロート航空の593便がシベリアの森林に墜落し、乗員12名、乗客63名の全員が死亡した[131]。この事故では、飛行中に機長が16歳の息子を操縦席に座らせたことを発端として、いくつかの条件が重なり、機体の姿勢が崩れ墜落に至った[132]

主要諸元

表5: 各モデルの主要諸元
A310-200 A310-200F A310-300 A310-300F
運航乗務員数 2名
標準座席数 (2クラス) 220席[20] N/A 220席[20] N/A
標準座席数 (1クラス) 237席[141] N/A 243席[142] N/A
床下貨物室容積 112.2 m3[143]
全長 46.66 m[87]
全幅 43.90 m[87]
全高 15.81 m
翼面積 219 m2
胴体直径 5.64 m[144]
降着装置ホイールベース 15.22 m[145]
客室幅 5.29 m[146] N/A 5.29 m[146] N/A
客室長 33.25 m[30] N/A 33.25 m[30] N/A
無燃料重量 (ZFW) 108,500 - 112,000 kg[147] 113,000 - 116,500 kg[148]
最大離陸重量 (MTOW) 125,000 - 144,000 kg[147] 134,000 - 164,000 kg[148]
離陸滑走距離 2,410 m[20]
最大巡航速度 マッハ0.84
航続距離 6,940 km 5,735 km 9,600 km 8,050 km
エンジン (x2) GE CF6-80A3, GE CF6-80C2, P&W JT9D-7R4D1, P&W JT9D-7R4E1[149] GE CF6-80C2, P&W JT9D-7R4E1, P&W PW4000[69]
推力 (x2) 214 kN - 233 kN[150] 233 kN - 257 kN[150]
  • 出典:特に記載のないものは 藤田 2001b, p. 61 による。
  • GE: ゼネラル・エレクトリック、P&W: プラット・アンド・ホイットニー

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 同社は契約受注の形でA300の製造には参加していた[18]
  2. ^ a b 1次構造部材とは、飛行荷重・地上荷重・与圧加重の伝達を主要に受持つ構造部材であり[33]、主翼の桁間構造の部材などが相当し[34]、構造材の中でも最も安全上の信頼性が要求される[35]。一方、2次構造部材は、主たる荷重を伝達しない部材[36]で、空力機能を発揮し、風圧などの局部荷重を1次構造部分に伝える主翼の前縁および後縁などが相当する[34]
  3. ^ MBB社は1981年にVFW社を吸収合併し、1998年にDASA社に買収される[45]
  4. ^ 機材トラブル等による遅延や飛行中止がなく有償飛行に出発した割合[47]
  5. ^ 後に、ボーイング777が就航した際には、初就航と同時にETOPSを認められるようになった[64]
  6. ^ A310の生産が実質的に終了した1998年の時点で、767の総納入数は700機を超えている[84]
  7. ^ 機首部に前輪、左右の主翼付近に主脚を配置する方式。
  8. ^ 点検などのために、開閉や取り外しが可能な外装部。
  9. ^ 最大座席数を280席としている文献[30][97]と、279席としている文献[13][98]がある。

出典

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参考文献

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オンライン資料

外部リンク

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