新疆ウイグル再教育キャンプ

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新疆ウイグル収容所
中国語
繁体字 再教育[1]
簡体字 再教育
職業技能教育訓練センター
繁体字 職業技能教育培訓中心
簡体字 职业技能教育培训中心
英文表記
(意味)
Vocational Education and Training Centers
ウイグル語
ウイグル語
قايتا تەربىيەلەش لاگېرلىرى

新疆ウイグル再教育キャンプ中国語: 新疆维吾尔再教育营英語: Xinjiang re-education camps)は、中華人民共和国新疆ウイグル自治区収容所である。2014年のウルムチ駅爆発事件以降、「テロとの人民戦争」(厳打暴恐活動専項行動英語版)としてウイグル人ムスリム教育するために習近平総書記の核心体制において設置された[2][3][4][5][2][6]

中国政府は職業訓練センター(中国語: 職業技能教育培訓中心英語: Vocational Education and Training Centers)と呼んでいる[7][8][9]

2016年8月に新疆ウイグル自治区の首長にあたる共産党委員会書記に陳全国中国語版が就任してから公共安全危害罪に問われたウイグル人の投獄件数が急増し、2007年に1710人だった逮捕件数は2017年に6万510人となった[10]。多数のウイグル人らが令状なしで逮捕されていると報告されており[11][12][13]、ウイグル人のほか、カザフ人、キルギス人回族などの中国のイスラム教徒、キリスト教徒なども勾留されているともみられている[14][15][16][17][18][19]

2019年7月には、オーストラリアフランスドイツ日本イギリスなど22国の国連大使が中国のウイグル人大量勾留と人権蹂躙を非難し、収容所の閉鎖を要求したが[20][21][22][23][24]、一方でシリアロシアエジプトアラブ首長国連邦サウジアラビアパキスタン北朝鮮ミャンマーフィリピンなど50ヵ国は、中国のウイグル人テロ対策を承認するとの声明を発表し[25][20][26][21]、中国における人権問題の著しい成果を称賛した[26]

概要[編集]

当初中国政府はキャンプの存在を否定していたが、2017年からジャーナリスト学者などが衛星写真、目撃証言をもとにフェンス監視塔に囲まれた秘密施設を指摘し、翌2018年10月に新疆ウイグル自治区主席のショホラト・ザキル英語版は「職業訓練学校」として存在を認め、1990年代から2016年まで度々起きてきたテロ事件の撲滅と根絶に成功したとアピールした[27]。また、ウイグル人を裁判なしに収監したキューバグアンタナモ湾収容キャンプと同様のテロとの戦いに必要な措置であるとも主張した[28]

2019年11月16日、ニューヨーク・タイムズがXinjiang Papers(新疆文書)として中国政府の内部リークを報じた[29][30]。これによれば、キャンプは2014年ウルムチ駅爆発事件後に「対テロ人民戦争[31][32][33]を掲げた習近平総書記国家主席が同年5月の新疆工作座談会での秘密演説で「人民民主独裁の武器を躊躇なく行使せよ、情け容赦は無用だ」と指示したことを受けて設置された[29][30]。特に2016年に陳全国が新疆ウイグル自治区の党委書記、朱海侖中国語版が党委副書記兼政法委員会書記にそれぞれ就任して翌2017年2月に武装警察公安部民兵を集めた決起大会で朱海侖が「人民民主独裁の強力な拳で、全ての分離主義者とテロリストは粉砕する」と演説して以降に大規模な勾留が始まり、「再教育」と称した洗脳政策が行われているとみられる[34]

ニューヨーク・タイムズのリーク直後の24日、BBCパノラマや英紙ガーディアンなど17の報道機関が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が内部文書を基に収容所の運営や拘束法などを「チャイナ・ケーブル英語版」として報じた[35]

チャイナ・ケーブルには2017年に新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安局長の朱海侖が、収容施設責任者らに宛てた9ページの連絡文書も含まれている[35]。中国側は文書は偽物だと反論した[35]

その連絡文書では収容施設を高度に警備された刑務所として運営するよう指示し、収容者は「思想変革、学習と訓練、規律の遵守」について点数がつけられる[35]。文書に記された命令には以下のようなものがあった[35]

  • 「絶対に脱走を許すな」
  • 「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」
  • 「悔い改めと自白を促せ」
  • 「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」
  • 「生徒には悔い改めと自白を促し、彼らの過去の活動が違法で犯罪的で危険な性質のものであることを深く理解させよ」
  • 「浅い理解や悪い態度、反抗心すらうかがえる人には(中略)教育改革を実行し、確実に結果を達成しろ」

世界ウイグル会議顧問でイギリス勅選弁護士のベン・エマーソンはこの政策は「ひとつの民族コミュニティー全体を対象に作られ実行されている、巨大な集団洗脳計画」であり、「新疆ウイグル自治区にいるイスラム教徒のウイグル人を、個別の文化集団として、地球上から消滅させようとしている。

そのために彼らを完全に作り変えることを意図した取り組みだ」と述べる[35]

劉暁明駐英大使は、収容所は新疆ウイグル自治区の人々を守るためであり、過去3年間テロ攻撃が起きていないと反論した[35]

中国語名の「再教育营」はベトナム共産党政府が行なっていた再教育キャンプでも使われている。

新疆は中国からユーラシア大陸を横断してヨーロッパまでを結ぶ一帯一路(シルクロード経済ベルト)構想において重要な要衝でもある[36][37]

収容人数[編集]

ウイグル人ムスリムなど、中国国内外の数百万人の人間が収容されているとされる[38][39]

2018年5月、ランドール・シュライバー米国防次官補は「少なくとも100万人、しかし、おそらくは300万人の市民」が強制収容所に勾留されていると述べた[40][41]

2018年夏、国際連合人権委員は多数の信頼できる報告書から、100万人のウイグル人市民が収容されていると述べた[42][43]

エドリアン・ゼンズの2019年の推定では毎年最大150万が勾留されている[34]

当局は過激テロリストを中国化するために数十万人と主張している[44][45][46][47][48][49]

人工知能によるプレディクティブ・ポリシング[編集]

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した中国政府の内部文書によれば監視カメラスマートフォンなどから個人情報を収集してアルゴリズム解析する「一体化統合作戦プラットフォーム」によるAI機械学習を利用したプレディクティブ・ポリシング英語版で選別されたウイグル人が法的手続きを経ずに予防拘禁されるようになって2017年6月時点で約1万5千人がこのシステムで収容所に投獄されたとされ[27][50]ノッティンガム大学の新疆研究者であるリアン・トゥムは「コンピュータが人間を強制収容所に送る例は他にない」と評している[51]

また、同文書には携帯電話にファイル共有アプリZapya(快牙)を入れていることだけを理由に180万人が要注意人物とされ、そのうち4万557人の調査を命じ、容疑を晴らすことができない者には強制訓練を受けさせると記されていた[35]

施設[編集]

2018年11月と12月にBitter Winter誌は、グルジャ地区にある2か所の強制収容所で撮影されたされる3本の動画を公開した。動画に移る施設は軍事刑務所のような特徴がみられ、同誌はこの施設を中国政府が主張するような「学校」「職業訓練施設」ではなく、「強制収容所」であると記している[52][53][54]Business Insiderによると、2本目の「Bitter Winterの動画は、新疆で以前勾留されていた者や目撃者の証言と合致する」という[55]

各国の反応[編集]

2019年7月10日、国際連合人権理事会日本イギリスフランスドイツオーストリアベルギーカナダデンマークエストニアフィンランドアイスランドアイルランドラトヴィアリトアニアルクセンブルクオランダニュージーランドノルウェースペインスウェーデンスイスの22カ国が共同書簡を公開してこの政策を非難し[56]、12日にはイタリアも批判に加わって23カ国となった[57]

これに対して14日に中国の新疆政策を支持する共同書簡をサウジアラビアエジプトパキスタンカタールアラブ首長国連邦バーレーンクウェートオマーントルクメニスタン南スーダンスーダンアルジェリアナイジェリアアンゴラトーゴブルキナファソブルンジコモロコンゴ共和国コンゴ民主共和国エリトリアガボンラオスソマリアカメルーンボリビアタジキスタンフィリピンカンボジアベラルーシベネズエラジンバブエミャンマーキューバ北朝鮮シリアロシアの37カ国は公開し[58][59][60][61][62]、26日にイランイラクジブチスリランカパレスチナなどの13カ国も署名に参加して50カ国となった[25][63][64]トルコは「100万人を超えるウイグル族が収容所で拷問や洗脳を受けている」としてキャンプを同年2月の国連人権理事会で批判した唯一のイスラム教国だったが[65]イスラーム諸国が集まるイスラム協力機構(OIC)は翌3月にムスリムに対する中国の措置への「称賛」を決議しており[28][66]、同年7月に中国を非難した共同書簡に名を連ねず、同時期に訪中したトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も一転して批判しなかった[67][68][69]。しかし、翌8月20日にトルコと親密なカタールは中国を支持する共同書簡への署名を撤回した[57]

11月24日のICIJによるチャイナ・ケーブル報道について中華人民共和国外交部報道局耿爽は同日、新疆ウイグル自治区の問題は国内問題であると述べ、在英大使はフェイクニュースだと述べた[70]

ICIJによるチャイナ・ケーブル報道に協力した南ドイツ新聞によれば、レポートは中国当局に検閲され、ICIJによるの国のインターネット検索のほとんどすべての参照先が消去された[71]

11月25日、イギリス外務省は「国連による収容所への即時かつ自由なアクセス」を求めた[72]。同日、ドイツ外相はウイグル族の抑留を非難し、収容所へのアクセスを行うために中国政府と交渉すると述べた[71]

10月8日に米中貿易協議でアメリカ合衆国国務長官 マイク・ポンペオは、ウイグル人、カザフ人等への不当勾留や虐待に責任がある、また共謀していると考えられる中国高官や役人にビザ制限をすると表明していた[73]が、チャイナ・ケーブル報道後の11月26日、ポンペオ国務長官は報道された文書によって、中国が新疆で重大な人権侵害を意図的に行っていることが確認できたと述べた[74]

2019年11月29日国際連合総会の第3委員会では、国連人権理事会を脱退していたアメリカ合衆国を含む日米欧などの23カ国が共同声明でキャンプなど新疆政策の撤回を求めるもこれに対抗してベラルーシとロシアやエジプトなどの54カ国は共同声明で中国の措置を支持した[75]

2019年12月3日、ウイグル人をはじめとする中国のイスラム教徒への人権侵害を非難し、党委書記の陳全国への制裁を求めたウイグル人権政策法案が米国下院で407対1の圧倒的賛成多数で可決された[76][77]

2019年12月6日、中国の華春瑩報道官はグアンタナモ収容所の報告書を引き合いに「人権問題で米国は偽善である」と述べた[78][79]。なお、グアンタナモでのウイグル人被収容者の尋問には中国当局が参加していたとアメリカ合衆国司法省などは報告しており[80][81][82][83]、グアンタナモなどで問題となった強化尋問技術英語版は朝鮮戦争時代の中国共産党の洗脳技法からつくられたことがアメリカ合衆国上院軍事委員会で報告されている[84]

関連企業[編集]

2019年5月時点で少なくとも68のヨーロッパの企業が新疆ウイグル自治区と提携している[85]。その内十数社がドイツ企業で、抑圧に関係しているかどうかに関わらず、公的監視を受けている。

フォルクスワーゲンは2013年からウルムチに工場を設置し、650人を雇用しているが、これは利益になっておらず、政治的思惑からのものとみられている[86]

シーメンスは国営企業中国電子科技集団公司 (CETC)と協力し、ウイグル族の追跡と評価に使用されるAI監視システム「一体化統合作戦プラットフォーム」の開発に携わっている[87]

化学メーカーBASFコルラ市で2つの生産拠点を合弁事業を展開しており、少数民族を含む120人がブタンジオールポリテトラヒドロフラン生産工場で勤務しているが、監禁事例はない[88]Boschは当局に従業員の抑留をしないよう警告し、社内にイスラム教礼拝室を提供すると発表した[88]

アメリカの民間軍事会社であるブラックウォーターUSAの創業者だったエリック・プリンスが設立したフロンティア・サービス・グループは新疆ウイグル自治区で対テロ訓練施設の建設などを行ってる[89][90]

脚注[編集]

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外部リンク[編集]

Xinjiang Papers(新疆文書)[編集]

チャイナ・ケーブル(中国電報)[編集]

記事[編集]

関連項目[編集]