グアンタナモ湾収容キャンプ

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エックスレイ・キャンプに到着間際の収監者たち。2002年1月11日。
David Hicks収監されていた独房。左上は読書室と言う名前の部屋(ただし本は存在しない)。2006年11月。
飛行機でグァンタナモ基地へ輸送されている途中の収監者たち。
監視塔

グアンタナモ湾収容キャンプ(グアンタナモわんしゅうようキャンプ、: Guantanamo Bay detention camp, Guantánamo, G-Bay, Gitmo, GTMO)は、キューバグアンタナモ湾グァンタナモ米軍基地に設置されているアメリカ南方軍グアンタナモ共同機動部隊運営の収容キャンプ。 2002年ジョージ・W・ブッシュ政権時に設立されアフガニスタン紛争およびイラク戦争の過程でアメリカ軍によってテロに関与しているか何らかの情報を持っていると疑われて強制連行ないし逮捕された数多くの人物が収容監禁拘禁されているが、法の適正プロセスを規定したアメリカ合衆国憲法修正第5条修正第14条に違反する違法な拘束であると批判を受けており、キューバ政府は同基地の返還を求めている。

施設[編集]

略史[編集]

  • 1970年代以降、グアンタナモ湾海軍基地キューバおよびハイチからの難民居住として使用。
  • 2001年アフガニスタン紛争による被収容者が到着。
  • 2002年、設立。
  • 2002年1月11日、最初の20名被収容者を搬送。
  • 2003年イラク戦争による被収容者を搬送。以来、被収容者は増加、パキスタン系イギリス人(後に釈放)、イラクカナダ人(後に釈放)、イギリス人オーストラリア人がテロ容疑者または関係者として収容されたが、これらの容疑者はテロリストと見なされれば裁判にかけられることもなく逮捕・長期勾留されるようであり、“犯罪者”と“捕虜”の処遇を使い分けるアメリカ政府の都合で無期限に勾留されるので問題となっていた(捕虜であればジュネーヴ条約を適用する義務があるが犯罪者にその必要はなく、また当地はアメリカではないので合衆国憲法権利章典の効力は及ばないなど国内法国際法が適用されないことで有名である。しかしそもそも軍人ではない一般の犯罪者を、軍施設に拘禁する事が人道的に問題がある可能性をはらんでいる)。
  • 2004年9月22日アフガニスタンから10名を搬送。
  • 2004年11月、米軍は被収容者に対して心理的、時に物理的な強制を加えており、拷問に等しいとする赤十字国際委員会の報告書がリーク[1]2006年5月にはアムネスティ・インターナショナルからも「世界の人権状況に関する年次報告書」によって、「対テロ戦争を口実にした収容所での人権侵害」と告発された。2008年12月から2009年4月にかけて発表されたアメリカ合衆国上院軍事委員会の報告書によれば、尋問方法は朝鮮戦争時代に中国が米軍の捕虜に行った洗脳を取り入れたものであった[2][3]
  • 2008年11月、アメリカ大統領に当選したバラク・オバマは、同施設の閉鎖を支持しておりアメリカ連邦裁判所は一部の収容者の釈放を命令している(この時点の収容者は約250人)。
  • 2009年1月22日、バラク・オバマは対テロ特別軍事裁判所の運用停止と1年以内の収容所閉鎖を命令(大統領令13492号)。
  • 2009年同年11月にはオバマ政権の法律顧問で就任1年以内の閉鎖を強く支持しているとされたグレッグ・クレイグが解任[4][5]
  • 2010年9月、バラク・オバマ大統領は「引き続き収容所の早期閉鎖」を目指すと発表。
  • 2010年12月、ジェームズ・クラッパー国家情報長官がグアンタナモ空軍基地からの釈放者の最大25%がテロ活動に復帰していると発表。その際の報道によれば、この時点で170人以上がなお収容されている[6]
  • 2013年4月11日(アメリカ時間)、収容所の即時閉鎖を求めるデモや集会がアメリカ各地で行われ、25の人権団体から連名でオバマ大統領宛に書簡が送られた。収容所では2月から収容者がハンガーストライキを行っている。
  • 2014年12月7日、グアンタナモ湾収容キャンプに収容されている6人を受け入れる方針を示していたウルグアイに、アメリカ軍機に輸送され、その6人がウルグアイに到着した[7]。これに関してウルグアイ政府は、「ウルグアイは世界中から移民を受け入れて成り立ってきた国であり、また平和のための国際的手段の世界の前衛として、歴史的に多くの難民などを受け入れてきた。グアンタナモ収容者の受け入れは、このようなウルグアイの歴史の延長線上にあり、人道的な理由によるものである。ウルグアイ政府は難民申請に応じ、彼らに対し、国際的人権保護の基準を厳密に維持するものである。また、兄弟国キューバへの封鎖の解除、プエルトリコ独立の闘志で政治的囚人のオスカル・ロペス・リベラ及びキューバ人囚人アントニオ・ゲレロ、ラモン・ラバニーニョ、ヘラルド・エルナンデスの釈放を改めて要求する」という見解を表明した[7]
  • 2016年9月、アメリカ国家情報長官室は報告書を発表し、2009年1月以降に釈放された収容者161人のうちが9人がテロ支援活動に復帰し、11人が復帰した可能性があるとした[8]
  • 2018年段階の収容者は40人。同時多発テロの実行者など大物も含まれるが、大半(40人中26人)は釈放するには危険すぎるとの理由だけで拘束が続けられている[9]
  • 2021年2月12日ジョー・バイデン大統領は、記者から「任期中に収容キャンプを閉鎖するのか」との質問を受け、「それを私たちが目指していることは確かだ」と述べた[10]
  • 2022年4月2日、収容されていた男1人が母国アルジェリアへと移送され、収容者は残り37人となった[11]

解放された収容者の動向[編集]

2013年にまとめられたアメリカの報告書では、グアンタナモから解放された収容者のうち16.6%が再びテロ活動に戻ったとのデータがある[12]。2007年に解放されたアブドゥル・カユム・ザキールは、ターリバーンに復帰後に組織内で頭角を現し、2021年のカブール陥落で司令官として活動した。また、2018年に解放されたアブドゥル・ガニ・バラダルはターリバーンのナンバー2となった。反政府組織などで活躍する人物が存在する一方、ロシアや中華人共和国ではグアンタナモ出身者に少なからずCIAに取り込まれた人物がいるとの推測もされている[13]。なお、バラダルについてはCIAとの関与の有無は別にして、アフガニスタンの政権崩壊前後にアメリカとの交渉窓口役を担った実績がある[14]

脚注[編集]

  1. ^ 赤十字報告書、CIAの尋問を「拷問」と記述 ロイター2009年3月17日
  2. ^ “China Inspired Interrogations at Guantánamo”. ニューヨーク・タイムズ. (2008年7月2日). https://www.nytimes.com/2008/07/02/us/02detain.html 2020年1月4日閲覧。 
  3. ^ Chaddock, Gail Russell (2009年4月22日). “Report says top officials set tone for detainee abuse”. クリスチャン・サイエンス・モニター. https://www.csmonitor.com/USA/Politics/2009/0422/report-says-top-officials-set-tone-for-detainee-abuse 2020年1月4日閲覧。 
  4. ^ White House counsel poised to give up post”. ワシントン・ポスト (2009年11月13日). 2010年2月4日閲覧。
  5. ^ オバマ大統領の法律担当顧問を「解任」へ、グアンタナモ問題で CNN.co.jp 2009年11月14日
  6. ^ グアンタナモの元収容者、25%がテロ復帰(CNN.News.2010.12.08)2010年12月10日閲覧
  7. ^ a b “定期報告(ウルグアイ内政・外交:2014年12月)” (PDF). 外務省. (2015年1月). オリジナルの2021年8月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210810160036/https://www.uy.emb-japan.go.jp/japones/Info%20Uruguay/naisei%20gaiko/Naisei%20Diciemb%202014.pdf 
  8. ^ グアンタナモ収容所の4人をサウジに移送、残り55人に”. CNN.co.jp (2017年1月6日). 2017年1月7日閲覧。
  9. ^ グアンタナモ湾米軍収容所、被収容者の高齢化進む”. AFP (2018年6月5日). 2018年6月5日閲覧。
  10. ^ バイデン大統領、任期中にグアンタナモ収容所閉鎖の意向 報道官”. AFP (2021年2月13日). 2021年2月13日閲覧。
  11. ^ グアンタナモ収容者1人移送 残り37人に 米(時事通信)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2022年4月3日閲覧。
  12. ^ 米グアンタナモ施設から移送の100人、テロ前線に復帰”. CNN (2013年9月15日). 2021年8月30日閲覧。
  13. ^ 「タリバン核心に米CIA要員存在」…中国で広がる陰謀説”. 中央日報 (2021年8月31日). 2021年8月30日閲覧。
  14. ^ 米CIA長官とタリバン幹部がカブールで秘密会談=米報道”. BBC (2021年8月25日). 2021年8月25日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯19度54分8秒 西経75度5分56秒 / 北緯19.90222度 西経75.09889度 / 19.90222; -75.09889