完全数

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完全数(かんぜんすう,: perfect number)とは、その数自身を除く約数の和が、その数自身と等しい自然数のことである。例えば 6 (= 1 + 2 + 3)、28 (= 1 + 2 + 4 + 7 + 14) や 496 が完全数である。『聖書』の研究者は、最初の完全数が 6 なのは「神が6日間で世界を創造した」こと(天地創造)、次の完全数が 28 なのは「公転周期が28日である」ことと関連があると考えていたとされる[1]。2014年11月の時点で、発見されている完全数はメルセンヌ素数と同じく48個である。紀元前より考察されている対象であるにもかかわらず、「偶数の完全数は無数に存在するか?」、「奇数の完全数は存在するか?」、「一の位が 6 か 8 以外の完全数は存在するか?」という問題は未解決である。

完全数の定義より、完全数の正の約数の総和は元の数の2倍に等しい。すなわち、n が完全数であるとは、約数関数 σ に対して σ(n) = 2n を満たすことであると表現できる。また、正の約数の逆数和が 2 であると表現することもできる。

概要[編集]

完全数はメルセンヌ素数と関係が深く、Mn (= 2n − 1) が素数ならば 2n−1Mn が完全数であることが、ユークリッドによって証明されている[注釈 1]。このことから、紀元前には、21(22 − 1) = 6, 22(23 − 1) = 28, 24(25 − 1) = 496, 26(27 − 1) = 8128 が完全数であることが知られていた。また、メルセンヌ素数 2n − 1 に対応する完全数 2n − 1(2n − 1) は 2n − 1 番目の三角数でもある。

その後、オイラーが登場するまでは、212(213 − 1) = 33550336, 216(217 − 1) = 8589869056, 218(219 − 1) = 137438691328 が完全数であることが発見されただけであった。オイラーは、全ての偶数の完全数が、メルセンヌ素数に対応するものであることを示した[注釈 2]。これによって、偶数の完全数を探すことは、メルセンヌ素数を探すことと同等であることが分かった。また、オイラーは 231 − 1 が素数であることを確かめ、その結果 230(231 − 1) が完全数であることを示した。

リュカは19年かけて39桁の自然数 2127 − 1 が素数であることを確かめ、その結果、77桁の完全数を発見した。2127 − 1 は、手計算で発見された素数のうち、最大のものである。現代においては、メガ素数の発見にはコンピュータが用いられる。特に、メルセンヌ素数の発見においては、分散コンピューティングによるプロジェクト GIMPS が有名であり、35個目以降の完全数の発見は全て GIMPS によるものである。

完全数は、小さい順に

6, 28, 496, 8128, 33550336, 8589869056, …(オンライン整数列大辞典の数列 A000396

である。知られている完全数の一覧についてはメルセンヌ数を参照のこと。 またこれらの完全数の約数の和は

12, 56, 992, 16256, 67100672, 17179738112, …(オンライン整数列大辞典の数列 A139256

で、隣り合う完全数の差は

22, 468, 7632, 33542208, 8556318720,…(オンライン整数列大辞典の数列 A139228)

である。

  • 6 以外の完全数は奇数の立方和で表せることが知られている。これは より証明可能である。(例:28 = 13 + 33, 496 = 13 + 33 + 53 + 73)
  • 完全数であることと、約数の逆数の総和が 2 であることは同値である。
  • 完全数の和の数列は、6, 34, 530, 8658, 33558994, … である(オンライン整数列大辞典の数列 A092336)。

偶数の完全数[編集]

Mn = 2n − 1 が素数のとき、2n−1Mn の正の約数は 1, 2, 4, …, 2n−2, 2n−1, Mn, 2Mn, 4Mn, …, 2n−2Mn, 2n−1Mn である。これらのうち 2n−1Mn 自身を除く総和

となる。したがって 2n−1Mn は完全数である。このタイプが無数に存在するか否か、すなわち Mn = 2n − 1 が素数となる n が無数に存在するか否かは未解決である。

オイラーの証明[編集]

また逆に偶数の完全数が 2n−1Mn の形に限られることもオイラーによって以下のように証明されている[注釈 2]

奇数の完全数[編集]

奇数の完全数が存在するか否かは未解決であるが、約数関数が乗法的: multiplicative)であることから、二平方数の和である事が古くから知られていた。もし奇数の完全数 N が存在すれば、N は以下の各条件を満たさなければならないことが知られている。

計算機を用いないで得られた条件[編集]

  • N素因数分解qαp12e1pk2ek の形である。ここで q, p1 < p2 < … < pk は相異なる素数で q ≡ α ≡ 1 (mod 4) を満たす[注釈 3]
    • N < 24k+1 である[4]
    • p1 < 2/3k + 2 である[5]。また、2 ≤ i ≤ 6 のとき pi < 22i−1(ki + 1) である[6]
    • e1e2 ≡ … ≡ ek ≡ 1 (mod 3) ではない[7]
    • e1 = e2 = … = ek = β とすると、k ≤ 4β2 + 2β + 2 である[8]
    • N ≡ 1 (mod 12) もしくは N1/2 ・ 32e1(32e1+1 − 1) (mod 2・32e1(32e1+1 − 1)) である[9][10][11][12]

計算機を用いて得られた条件[編集]

  • N > 10300 である[13]
  • N は少なくとも9個の相異なる素因数を持つ[14]
    • これは2006年に発表されたものであるが、「7個」の場合は1972年までにカール・ポメランスによって示され、「8個」の場合は1980年頃に Chein[15]と Hagis[16]によってほぼ同時に示されており、その後多くの数学者の努力[17]にもかかわらず、26年もの間「9個」の場合は示されなかった。
  • N が 3 で割り切れない場合は、少なくとも12個の素因数を持つ[14]。3 でも 5 でも割り切れない場合は15個以上の、3 でも 5 でも 7 でも割り切れない場合は27個以上の相異なる素因数を持つ[18]
  • N は重複も数えて少なくとも75個の素因数を持つ[19]
  • N は 108 より大きい素因数を持つ[20]
    • これは2006年に発表されたものであるが、より古い下界としては2003年の 107[21]や、1998年の 106[22]などがある。
  • N の2番目に大きな素因数は 104 より大きい[23]
  • N の3番目に大きな素因数は 100 より大きい[24]
  • 上記で e1 = e2 = … = ek = β とすると、β は 1, 2, 3, 5, 6, 8, 11, 12, 14, 17, 18, 24, 62 ではない[25][26]

関連する数[編集]

  • 偶数の完全数はすべて 2n−1(2n − 1) の形である。この形の数は
1, 6, 28, 120, 496, 2016, 8128, 32640, … である。(オンライン整数列大辞典の数列 A006516
この数列で完全数にならない数の数列は オンライン整数列大辞典の数列 A144858 を参照
  • 完全数が 2n−1(2n − 1) の形で表せることから n × σ(n) が完全数になる場合がある。ただし σ は約数関数である。この数列は
1, 6, 12, 28, 30, 72, 56, 120, 117, 180, 132, 336, 182, 336, 360, 496, 306, 702, 380, 840, … である。(オンライン整数列大辞典の数列 A064987
  • 現在見つかっている完全数はすべて偶数の三角数である。この偶数の三角数は
6, 10, 28, 36, 66, 78, 120, 136, 190, 210, 276, 300, 378, 406, 496, 528, 630, 666, 780, 820, 946, 990, … である。(オンライン整数列大辞典の数列 A014494
  • 偶数の完全数は全て奇数番目の三角数でもあるので、知られている完全数は全て六角数でもある。六角数は
1, 6, 15, 28, 45, 66, 91, 120, 153, 190, 231, 276, 325, 378, 435, 496, 561, … である。(オンライン整数列大辞典の数列 A000384
  • 六角数n(2n − 1) で表されるので偶数の六角数は 2n(4n − 1) で表すことができる。この偶数の六角数は
6, 28, 66, 120, 190, 276, 378, 496, 630, 780, 946, … である。(オンライン整数列大辞典の数列 A014635
  • 6 以外の完全数は奇数の立方和で表されることが知られている。奇数の立方和で表せる数は
1, 28, 153, 496, 1225, 2556, 4753, 8128, … である。(オンライン整数列大辞典の数列 A002593
1, 10, 28, 55, 91, 136, 190, 253, 325, 406, 496, 595, 703, 820, 946, … である。(オンライン整数列大辞典の数列 A060544
約数の和が元の数の倍数に等しい数を倍積完全数という。特に、それがk倍に等しいものをk倍完全数という。完全数とは2倍完全数のことである。
1, 6, 28, 120, 496, 672, 8128, 30240, …(オンライン整数列大辞典の数列 A007691
n = 1 + k (σ(n) − n − 1)
ただしk は自然数、σ(n) は約数関数である。ハイパー完全数は自然数 k を用いて k -ハイパー完全数と表す。完全数は 1-ハイパー完全数である。
k -ハイパー完全数は 6, 21, 28, 301, 325, 496, 697, 1333, 1909, 2041, 2133, 3901, 8128, … である。(オンライン整数列大辞典の数列 A034897
σm(n) = kn
m -超完全数とは上の数式を満たす n で、(m, k)-完全数という。ただし σ は約数関数で、k は自然数である。(m, k)-完全数の表記において, 完全数は (1, 2)-完全数、倍積完全数は (1, k)-完全数、超完全数は (2, 2)-完全数となる。

約数の和を考えることで特徴付けられる数の種類には他にも次のようなものがある。完全数と併せて、これらの名称には古代ギリシャの数秘学の影響が見られる。

不完全数 (imperfect number)
完全数以外の全ての自然数を不完全数という。
不足数 (deficient number)[28]
その数を除いた約数の和がその数より小さいとき、この数を不足数という。
過剰数 (abundant number)[29]
その数を除いた約数の和がその数より大きなとき、過剰数という。
友愛数 (amicable pair)[30]
その数を除いた約数の和が互いに等しいような2つの数の組を友愛数という。
社交数 (sociable numbers)[31]
友愛数と同様の関係が、2つよりも多くの数の組で成立しているとき、その組を社交数という。
準完全数 (quasiperfect number)[32]
準完全数とは、約数の和が 2n + 1 に等しい数 n である。これは過剰数である。そのような数はいまだに見つかっていないが、存在するならばそれは奇数の平方数で 1035 より大きく、少なくとも7つの約数を持つということが示されている。
概完全数 (almost perfect number)[33]
概完全数とは約数の和が 2n - 1 に等しい数 n である。これは不足数である。2k (1, 2, 4, 8, 16, …) の形をした自然数はこの条件を満たしているが、この形で表される自然数以外でこの条件を満たすものが存在するのかどうかは知られていない。
乗法的完全数 (multiplicative perfect number)[34]
約数の積が元の数 n の自乗(2乗)n2 に等しい数を乗法的完全数という。乗法的完全数は、小さい順に、1, 6, 8, 10, 14, 15, 21, 22, …(オンライン整数列大辞典の数列 A007422)である。

エピソード[編集]

小川洋子の小説『博士の愛した数式』(2003年)では登場人物の「博士」が阪神タイガースの江夏豊投手のファンであったことの理由として江夏の背番号が28であったことを挙げ、その際に完全数の説明がなされている。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ ユークリッド原論』第9巻、命題36は

    もし単位から始まり順次に1対2の比をなす任意個の数が定められ、それらの総和が素数になるようにされ、そして全体が最後の数にかけられてある数を作るならば、その数は完全数であろう。

    エウクレイデス、『ユークリッド原論』第9巻、命題36

    すなわち
    が素数ならば は完全数である。
  2. ^ a b 1849年、オイラーの死後に発表された論文で証明が示された[2]
  3. ^ オイラーが証明した[3]

出典[編集]

  1. ^ 淡中忠郎「メルセンヌ数物語」『数学セミナー』、1973年9月号。数学セミナー編集部(1982)、65-67頁に再録されている。
  2. ^ Dickson (2005, p. 19)
  3. ^ Dickson (2005, p. 98)
  4. ^ P. P. Nielsen, "An upper bound for odd perfect numbers", Integers, 3 (2003), A14, 9 pp. (electronic).
  5. ^ O. Grün, "Über ungerade vollkommene Zahlen", Math. Z. 55 (1952), 353-354.
  6. ^ M. Kishore, "On odd perfect, quasiperfect, and odd almost perfect numbers", Math. Comp. 36 (1981), 583-586.
  7. ^ W. L. McDaniel, "The non-existence of odd perfect numbers of a certain form", Arch. Math. (Basel) 21 (1970), 52-53.
  8. ^ T. Yamada, "Odd perfect numbers of a special form", Colloq. Math. 103 (2005), 303-307.
  9. ^ J. Touchard, "On prime numbers and perfect numbers", Scripta Math. 19 (1953), 53-59.
  10. ^ M. Satyanarayana, "Odd perfect numbers", Math. Student 27 (1959), 17-18.
  11. ^ J. A. Holdener, "A theorem of Touchard on the form of odd perfect numbers". Amer. Math. Monthly, 109 (2002), 661-663.
  12. ^ T. Roberts, "On the Form of an Odd Perfect Number", Australian Mathematical Gazette, 35:4 (2008), 244
  13. ^ R. P. Brent, Graeme L. Cohen, H. J. J. te Riele, "Improved techniques for lower bounds for odd perfect numbers", Math. Comp. 57 (1991), 857-868
  14. ^ a b P. P. Nielsen, "Odd perfect numbers have at least nine different prime factors", Math. Comp. 76 (2007), 2109-2126. preprint
  15. ^ J. E. Z. Chein, "An odd perfect number has at least 8 prime factors", Doctoral Thesis, Pennsylvania State University, 1979.
  16. ^ P. Hagis Jr., "Outline of a proof that every odd perfect number has at least eight prime factors", Math. Comp. 35 (1980) 1027-1032.
  17. ^ G. L. Cohen, R. M. Sorli, "On the number of distinct prime factors of an odd perfect number", J. Discrete Algorithms 1 (2003), 21-35.
  18. ^ K. K. Norton, "Remarks on the number of factors of an odd perfect number", Acta Arith., 6 (1960/1961), 365-374.
  19. ^ K. G. Hare, "New techniques for bounds on the total number of prime factors of an odd perfect number", Math. Comp. 76. (2007), 2241-2248. preprint
  20. ^ T. Goto and Y. Ohno, "Odd perfect numbers have a prime factor exceeding 108", Math. Comp. 77 (2008), 1859-1868. "奇数の完全数の最大素因子について" - preprint を入手可能。
  21. ^ P. M. Jenkins, "Odd perfect numbers have a prime factor exceeding 107", Math. Comp. 72 (2003), 1549-1554.
  22. ^ P. Hagis, Jr. and G. L. Cohen, "Every odd perfect number has a prime factor which exceeds 106", Math. Comp. 67 (1998), 1323-1330.
  23. ^ D. E. Iannucci, "The second largest prime divisor of an odd perfect number exceeds ten thousand", Math. Comp. 68 (1999), 1749-1760.
  24. ^ D. E. Iannucci, "The third largest prime divisor of an odd perfect number exceeds one hundred", Math. Comp. 69 (2000), 867-879.
  25. ^ W. L. McDaniel and P. Hagis Jr., "Some results concerning the non-existence of odd perfect numbers of the form paM", Fibonacci Quart. 13 (1975), 25-28.
  26. ^ G. L. Cohen, R. J. Williams, "Extensions of some results concerning odd perfect numbers", Fibonacci Quart. 23 (1985), 70-76.
  27. ^ Weisstein, Eric W., "Multiperfect Number" - MathWorld.(英語)
  28. ^ Weisstein, Eric W., "Deficient Number" - MathWorld.(英語)
  29. ^ Weisstein, Eric W., "Abundant Number" - MathWorld.(英語)
  30. ^ Weisstein, Eric W., "Amicable Pair" - MathWorld.(英語)
  31. ^ Weisstein, Eric W., "Sociable Numbers" - MathWorld.(英語)
  32. ^ Weisstein, Eric W., "Quasiperfect Number" - MathWorld.(英語)
  33. ^ Weisstein, Eric W., "Almost Perfect Number" - MathWorld.(英語)
  34. ^ Weisstein, Eric W., "Multiplicative Perfect Number" - MathWorld.(英語)

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]