メトロポリス (漫画)

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メトロポリス』は、手塚治虫漫画

1949年昭和24年)に発表され、1948年の『ロスト・ワールド』、1951年の『来るべき世界』とともに、手塚の「初期SF三部作」の一つとなっている。文明の絶頂期にある人類が発達し過ぎた科学の力に逆襲される様子を描いた。

フリッツ・ラングによる同名のSF映画『メトロポリス』(1927年)が、執筆のヒントのひとつになっている[1]。デビュー前の学生時代に描いた習作である『幽霊男』の一部が使われている。

本作を原作として製作されたアニメーション映画メトロポリス』が2001年に劇場公開された。

あらすじ[編集]

「頭脳の力」を限りなく発達させた人類によって、文明の絶頂期にある近未来の大都市メトロポリス。秘密組織レッド党の台頭を町中が警戒する中、突如として太陽に無数の黒点が現れ始めた。人工生命の創造を研究テーマとしていた科学者ロートン博士は、黒点からでる放射線の影響で、人造タンパク質に生命の片鱗が見えたことに大喜びする。

しかし、それに目をつけたレッド党の首領、レッド公に脅され、天使のように美しい姿と、恐るべき悪魔のような能力を合わせ持った人造人間を作ってしまう。悪用を恐れたロートン博士は事故と見せかけて研究所に火をつけ、失踪する。

数ヵ月後。人造人間はロートン博士の下で、ごく普通の人間「ミッチィ」として密かに育てられていた。しかし、ひょんなことからレッド党に所在を知られ、博士は殺されてしまう。

現場に居合わせた私立探偵ヒゲオヤジは、博士の遺言どおりミッチィを引き取り、甥のケンイチが通う学校に通わせるが、両親の姿を追い求めるミッチィはケンイチの元を密かに抜け出し、両親を探したい一心で外国へ行く客船アトランチス号に乗り込む。

しかし、その船はレッド党の所有物であり、ミッチィはついに捕まってしまう。レッド公を実の父と思い抱きついたミッチィにレッド公は冷徹に真実を突きつけた。自分が人間の手によって作られた人造人間であることを知らされ、ミッチィは怒りのあまり船上のロボット達を率いて反乱を起こす。全人類に対する憎しみと怒りに囚われたミッチィは、ロボット達を率いてメトロポリスに進攻。親友だったケンイチの言葉にも耳を貸さず、時計塔の頂上で彼と決闘を始める。人造人間の恐るべき力でケンイチを圧倒し追い詰めるが、命の源であった黒点の消滅に伴い、突如体から煙が噴き出し、火に包まれて落下する。

病院に訪れたケンイチが見たものは、全身が溶け崩れ変わり果てたミッチィの姿だった。命尽きる時は訪れ、ケンイチや学校の同級生が見守る中ついに心臓が溶け、ミッチィは短く悲しい生涯を終えるのだった。

そしてベル博士は読者に問いかける。現実に発達した科学の力が、いずれ我々の身をも滅ぼしていくのではないかと……。

主な登場人物[編集]

ケンイチ
メトロポリスに住むヒゲオヤジの甥。町で出会ったミッチィの素性を知り、レッド党から守るために奮戦する。
ミッチィ
人造細胞を用いて生み出された人造人間。天使のごとき美しさと悪魔の力を持つが、本人は知らない。のどの隠しスイッチを押すと、少年にも少女にも姿を変えられる。
ヒゲオヤジ
本名:伴俊作。ケンイチの叔父で、レッド公逮捕のために日本からやって来た私立探偵。
レッド公
世界的規模の犯罪組織・レッド党の首領。残忍で冷酷。大きく目立つカギ鼻を隠すための変装が得意。最期は反乱したロボット達の手によって殺害される。
ロートン(演:ブタモ・マケル
人造生命の誕生に腐心していた優秀な科学者。ミッチィの生みの親。ミッチィの悪用を恐れてレッド公に逆らったため、殺される。
エンミイ
スラムの花売り娘。ならず者の姉と2人暮らし。ミッチィを連れてくるよう、ある人物に命令される。
グレーシー
エンミイの姉。金に汚く、妹に辛く当たる。終盤ではならず者仲間とドサクサ紛れの空き巣狙いをして悲惨な目に遭う。
ノタアリン
メトロポリス市警警視総監。レッド公逮捕に腐心するが、かなりマヌケでやすやすと欺かれてしまう。
ガニマール
パリから来た警部。レッド公逮捕に協力するが、ノタアリンと一緒にレッド党に捕まってしまう。
シャーロック・ホームズ
イギリスの名探偵。レッド公逮捕のためヒゲオヤジとノタアリンに協力するが…
フイフイ
レッド党の地下本部で機械労働に従事させられているロボットの1人。
ヨークシャー・ベル博士(演:花丸先生
ロートン博士の親友。本作のナビゲーターでもあり、科学技術の発達に対する彼の警告で本作は幕をあけ、そして幕を下ろす。

単行本[編集]

この作品は上記に記されている通り、手塚作品の中でも1949年(昭和24年)に発表された、極めて初期の作品である。古書店街で有名な神田中野書店(漫画部)では2002年に、この昭和24年刊行の初版を950,000円の高値で販売していた[2]

脚注[編集]

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  1. ^ 「この人工人間は、戦前のドイツ映画の名作『メトロポリス』のロボット女性のイメージをもとにしたのです。といっても、ぼくはこの映画をそれまで観たことはありませんし、内容も知りません。ただ、戦時中の『キネマ旬報』かなにかに、この映画のスチールが一枚載っていて、ロボット女性が誕生するシーンだったのです。それをおぼえていてヒントにしたまでです。『メトロポリス』というひびきがたいへん気に入って、同じタイトルを使ったので、別に映画とはなんのかかわりもありません。」(手塚治虫『メトロポリス』講談社〈手塚治虫漫画全集〉、1979年、あとがきより引用)
  2. ^ 但し、レジ横のショーケースに入られているので、半ば店の広告・看板的な扱いである

外部リンク[編集]