ばるぼら

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ばるぼら』は、手塚治虫の大人向け漫画である。『ビッグコミック』(小学館)で昭和48年7月10日号から昭和49年5月25日号まで連載された。『ビッグコミック』での連載としては、『奇子』の後、『シュマリ』の前となる。

あらすじ[編集]

小説家・美倉洋介は耽美派の天才として名声を得ていたが、異常性欲の持ち主であることに日々悩まされていた。ある日、新宿駅で彼はアルコール依存症のフーテン娘・バルボラと出会い、彼女をマンションに居候させることとなる。バルボラはことある毎に美倉のマンションを出るが、そのたびにまた彼の家に居ついてしまうのだった。やがて美倉は、ミューズの末妹かつ現代の魔女であるバルボラと、彼女の母ムネーモシュネーを通じて、黒魔術世界とかかわりを持つようになっていく。

バルボラの魅力を認識するようになった美倉は、黒ミサ式の結婚式を挙げようとするが、儀式の途中で警察に踏み込まれて美倉は逮捕され、バルボラは行方不明となる。大阪でバルボラを見かけたという話を聞き、会いに行くが、バルボラそっくりの女は美倉を覚えておらず、ドルメンと名乗った。

5年が経ち、結婚して子供もできた美倉だったが、小説のほうはさっぱりだった。ついには、画家の元にいたドルメン(バルボラ)を誘拐し逃走するが、バルボラが交通事故にあってしまう。瀕死のバルボラを連れ、作家仲間である筒井の別荘に姿を隠すが、バルボラはそのまま死ぬ。美倉はその状況で長編「ばるぼら」を書きあげる。

更に数年が経ち、美倉が残した「ばるぼら」は大ベストセラーとなっていた。 しかし、美倉の姿はどこにもなかった。

主な登場人物[編集]

美倉洋介 (みくら ようすけ)
本作の主人公。売れっ子耽美派小説家。作中の自称では「耽美主義をかざして文壇にユニークな地位をきずいた流行作家」。出版社の社長から娘との結婚を望まれていたり(その出版社での作品の独占出版も含む)、父と同郷の代議士から娘との結婚を望まれていたり(後々は後継の政治家に望まれている)するが、異常性欲に悩まされている。
著作は海外翻訳もされており、海外の作家とも交友を持っている。
中盤、バルボラからインスピレーションを得て「狼は鎖もて繋げ」を執筆、これが大々的にヒットし映画化もされる。
終盤、「ばるぼら」を執筆。「ホフマンの幻想小説の現代版」と評される。
バルボラ
本作のヒロイン。冒頭の美倉の説明では「都会が何千万という人間をのみ込んで消化し、たれ流した排泄物のような女」とされる。アルコール依存症で自堕落な性格のフーテン女。
新宿駅で柱の陰にうずくまっていたところを美倉に拾われる。
ムネーモシュネー
バルボラの母親を自称する女。新宿の裏通りで骨董屋を営んでいるが、店は扉ごと姿を消していることもある。
ギリシア神話で芸術を司るミューズたちの母親ムネーモシュネー記憶を神格化した女神であることが作中でも説明されている。
甲斐 (かい)
美倉の小説を出版している甲斐出版の社長。上述のように娘の可奈子を美倉と結婚させ、美倉の作品を独占出版しようと目論んでいる。
美倉からバルボラと結婚式を挙げることを聞き、それをトップ屋に漏らしたため、美倉とバルボラの黒ミサ式結婚式に警察が踏み込むことになる。
里見権八郎 (さとみ ごんぱちろう)
美倉の父親と同郷の衆議院議長。娘の志賀子を美倉洋介と結婚させようとしていた。都知事選挙に立候補する際には、美倉作品読者の票を見込んで後援会会長就任を依頼する。出馬直前に脳溢血で死亡。
里見志賀子 (さとみ しがこ)
里見権八郎の娘。バルボラが行方不明になった後に美倉と結婚する。結婚後は美倉を政治の世界に引っ張り出そうとする。
筒井隆康 (つつい たかやす)
美倉洋介の作家仲間。美倉とバルボラが結婚式を挙げようとした際に立会人として招待され、黒ミサ式ということで興味津々にこれを受ける。結婚式の黒ミサ儀式中に警察に踏み込まれた際には、美倉と一緒に逮捕された。後に、大阪でバルボラを目撃したことを美倉に伝える。
バルボラ(ドルメン)誘拐に逃走資金獲得のため強盗などを行っていた美倉に、阿蘇山にある自分の別荘を提供する。
松本麗児 (まつもと れいじ)
最終話に登場する漫画家。書籍の収集家でもあり、美倉作品のファン。

特色[編集]

手塚は本作を『デカダニズムと狂気にはさまれた男の物語』と形容している。

草野真一は、本作を「手塚治虫の表現論・芸術論であり、手塚の人間観を披瀝した作品」と評している[1]

クラウドファンディング[編集]

デジタルマガジン社は2012年に本作の英語版出版に対しクラウドファンディングを行った。本作は手塚作品の中ではメジャー作品とは言い難いが、353人のサポーターが付き、目標額の262%となる17032ドルの調達に成功した[2]

2013年アイズナー賞の最優秀アジア作品部門(アメリカで翻訳出版されたアジア作品の部門)に、デジタルマガジン社から敢行された『ばるぼら』がノミネートされている[3]

単行本[編集]

出典・脚注[編集]

  1. ^ 草野真一 (2016年6月11日). “テヅカは異常性欲者だ!──手塚治虫が人間観を披瀝した怪作”. 講談社. 2017年10月5日閲覧。
  2. ^ 板越ジョージ 「クラウドファンディングに未来を見る」『結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?』 ディスカヴァー・トゥエンティワン2013年
  3. ^ 米国アイズナー賞 日本作品ノミネートはアジア部門4作品「テルマエ・ロマエ」など”. アニメ!アニメ! (2013年4月27日). 2017年10月5日閲覧。

外部リンク[編集]