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ジョアン・ミル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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ジョアン・ミル
2023年
国籍 スペインの旗 スペイン
生年月日 (1997-09-01) 1997年9月1日(27歳)
バレアレス諸島マヨルカ島
パルマ・デ・マヨルカ
現在のチーム レプソル・ホンダ
ゼッケン 36
ウェブサイト MIR 36
レースでの経歴
ロードレース世界選手権 MotoGPクラス
活動期間2019 -
マニファクチャラースズキホンダ
チャンピオン1 (2020)
2023年 順位22位 (26 pts)
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
82 1 13 0 1 591
ロードレース世界選手権 Moto2クラス
活動期間2018年
マニファクチャラーカレックス
チャンピオン0
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
18 0 4 0 1 155
ロードレース世界選手権 Moto3クラス
活動期間2015年 - 2017年
マニファクチャラーKTMホンダ
チャンピオン1 (2017)
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
37 11 16 2 5 485

ジョアン・ミル・マイラタ (Joan Mir Mayrata, 1997年9月1日 - ) は、スペインバレアレス諸島パルマ・デ・マヨルカ出身のオートバイレーサー。身長181 cm、体重68 kg[1]

2015年よりロードレース世界選手権に参戦。2017年のMoto3クラスチャンピオン。2019年よりMotoGPクラスにチーム・スズキ・エクスターから参戦し、2020年にMotoGPクラスチャンピオンを獲得した。

経歴

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初期の活動

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ミルは6歳の頃、初めて小型オートバイに乗ったが、同世代のライバルたちに比べ、レースキャリアの始まりは遅かった[1]。父親はマヨルカ島でローラースケートショップを営んでおり[1]、ミルの少年時代はローラースケートやスケートボードキックスクーターと共にあった[2]。やがて、世界GP125ccクラスのライダーだった叔父のジョアン・ペレロ英語版に影響され、10歳の頃からレースに取り組むようになった。チーチョ・ロレンソ(ホルヘ・ロレンソの父親)が運営するスクールや、バレアレス・モーターサイクル連盟のスクールでライディングの基礎を学び、バレアレス選手権やバンキアカップで経験を積んだ[2]

2013年より若手ライダーの登竜門、レッドブルMotoGPルーキーズカップ英語版に参戦。2014年は3勝を挙げ、ホルヘ・マルティンに次ぐランキング2位を獲得した。2015年はFIM CEVレプソルMoto3ジュニア世界選手権に参戦し、4勝を挙げてランキング4位。同年のMotoGP第16戦オーストラリアGP尾野弘樹の代役として出場し、世界選手権Moto3クラスにデビューした[3]

ロードレース世界選手権参戦

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Moto3クラス

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2016年、レオパード・レーシングよりMoto3クラスにレギュラー参戦を開始。前半戦は苦戦するも、第10戦オーストリアGPで初ポールポジションからポール・トゥ・ウィンで初優勝。後半戦はコンスタントに上位を走り、2位1回・3位1回を加え年間ランキング5位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。

2017年はマシンをKTMからホンダ・NSF250RWにスイッチ。接戦でアクシデントの多いMoto3において全18戦中17戦でポイント獲得、うち優勝10回・2位2回・3位1回という卓越した成績を収め、ランキング2位に93点差をつけMoto3クラスチャンピオンを獲得した[3]。軽量クラスで年間2桁勝利を記録したのは、125 cc時代のバレンティーノ・ロッシ(1997年11勝)とマルク・マルケス(2010年10勝)以来となる。

Moto2クラス

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2018年はMoto2クラスにステップアップし、2017年王者フランコ・モルビデリの後継としてマークVDSレーシングチームに加入。4度の表彰台(2位2回・3位2回)、ランキング6位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。

シーズン前半の第5戦フランスGP後に、早くも2019年からMotoGPクラスにステップアップすることを発表した[4]。ミルはホンダと仮契約を交わしていたが、スズキから好条件のオファーを受け、Moto2クラスのタイトルを狙うよりも、最高峰のMotoGPクラスにファクトリーライダーとして昇格するチャンスを選択した [5]

MotoGPクラス

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2021年

2019年はチーム・スズキ・エクスターへ加入し、アレックス・リンスのチームメイトとしてスズキ・GSX-RRをライディングする[6]。第10戦チェコGP後のブルノテストで転倒し、肺挫傷のため2戦を欠場[7]。復帰後は7戦連続ポイントを獲得し、オーストラリアGPでシーズン最高5位を記録。初年度をランキング12位で終える。2019年のルーキー・オブ・ザ・イヤーにはファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)が選ばれ、ミルの3クラス連続受賞はならなかった。

2020年も同じ体制で2年目のシーズンを迎えた。新型コロナウイルス感染症によるカレンダー再編、王者マルク・マルケス(レプソル・ホンダ)の長期欠場という混迷のシーズンにおいて、ミルは優勝争いに浮上する。序盤3戦で2度の転倒リタイアを喫したが、第5戦オーストリアGPで2位初表彰台を獲得。続くスティリアGPではレース中盤までトップを快走するも、赤旗中断・再スタートの時点で新品のフロントタイヤが残っておらず、4位に後退した。その後も表彰台の常連に定着し、アラゴンGP終了時点でクアルタラロを抜きポイントリーダーに立つ。第13戦ヨーロッパGP(バレンシア)ではMotoGPクラス初優勝をリンスとのワンツーフィニッシュで達成[8]。続く第14戦バレンシアGPでシリーズチャンピオン獲得が決定した[9][10]。グランプリレギュラー参戦開始から5年目、23歳75日での最高峰クラス制覇は史上7番目の若さ[11]。また、2000年のGP500 ccクラスのケニー・ロバーツJr.以来20年ぶりにスズキのチャンピオンライダーとなり、同社の創業100周年・世界GP参戦60周年に花を添えた[12]

2021年はチャンピオンとして3年目のシーズンを迎えた。第9戦スティリアGPでファステストラップをマークする活躍を見せるが、王者ながらも未勝利のままランキング3位でシーズンを終えた。

2022年も同じ体制で4年目のシーズンを迎えた。しかし、スズキの撤退に伴って来シーズンのシートは不明のままになっていた。第13戦オーストリアGP時点では契約締結は近いと明かしていたが、8月30日にホンダと2年契約締結を発表。ワークスチームであるレプソル・ホンダにマルケスとの体制で戦っていくことが決まった[13]。第14戦サンマリノGPではオーストリア戦の決勝レース時に右足首の距骨の小さな骨折と距骨靭帯を損傷し15日間の安静を要することとなったため欠場。渡辺一樹が代走することが決まった。

人物

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スペイン語の"J"の発音から「ホアン・ミル[14]」と表記される場合もあったが、本人は「ジョアン」が正しいとのこと[15]

出身地はホルヘ・ロレンソと同じマヨルカ島だが、憧れのライダーはバレンティーノ・ロッシだった[2]。また、母国スペインのテニス選手ラファエル・ナダルがコート内外で見せるふるまいを尊敬している[2]

レース前の準備では必ず新品の青いパンツを履き、靴下やライディングスーツを右から着るというルーティンを通じて集中力を高めていく[15]

ステップアップの過程で苦戦する選手も多いなか、ミルは1年目に環境に慣れ、2年目にはチャンピオンを争うという適応力を示しており、「クレバーでハイレベルなライディングをコンスタントにできるライダー」と評価されている[16]。2017年のMoto3タイトルを制したときは、ポールポジション1回ながら優勝10回を記録した。2020年は最高峰クラスでは史上最も少ないシーズン1勝でチャンピオンを獲得した(それまでの最少記録は2勝が4回)[11]。ポールポジション0回でのチャンピオンは1992年ウェイン・レイニー以来28年ぶり[11]

おもな戦績

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世界選手権

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シーズン別

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クラス マシン チーム 出走回数 勝利数 表彰台数 PP FL ポイント ランキング
2015年 Moto3 ホンダ・NSF250R レオパード・レーシング 1 0 0 0 0 0 NC
2016年 Moto3 KTM・RC250GP レオパード・レーシング 18 1 3 1 2 144 5位
2017年 Moto3 ホンダ・NSF250RW レオパード・レーシング 18 10 13 1 3 341 1位
2018年 Moto2 カレックス EG 0,0 Marc VDS 18 0 4 0 1 155 6位
2019年 MotoGP スズキ・GSX-RR チームスズキエクスター 17 0 0 0 0 92 12位
2020年 MotoGP スズキ・GSX-RR チームスズキエクスター 14 1 7 0 0 171 1位
2021年 MotoGP スズキ・GSX-RR チームスズキエクスター 18 0 6 0 1 208 3位
2022年 MotoGP スズキ・GSX-RR チームスズキエクスター 16 0 0 0 0 87 15位
2023年 MotoGP ホンダ・RC213V レプソル・ホンダ 15 0 0 0 0 26 22位
2024年 MotoGP ホンダ・RC213V レプソル・ホンダ 14 0 0 0 0 20* 20位*
合計 149 12 33 2 7 1244

クラス別

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クラス デビュー戦 初表彰台 初勝利 出走回数 勝利数 表彰台数 PP FL ポイント タイトル
Moto3 2015-2017 2015年オーストラリア 2016年オーストリア 2016年オーストリア 37 11 16 2 5 485 1
Moto2 2018 2018年カタール 2018年フランス 18 0 4 0 1 155 0
MotoGP 2019-現在 2019年カタール 2020年オーストリア 2020年ヨーロッパ 94 1 13 0 1 604 1
合計 2015-現在 149 12 33 2 7 1244 2

年別

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クラス マシン 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 順位 ポイント
2015年 Moto3 ホンダ QAT AME ARG SPA FRA ITA CAT NED GER IND CZE GBR RSM ARA JPN AUS
Ret
MAL VAL NC 0
2016年 KTM QAT
12
ARG
5
AME
Ret
SPA
6
FRA
25
ITA
7
CAT
8
NED
8
GER
Ret
AUT
1
CZE
8
GBR
9
RSM
3
ARA
5
JPN
9
AUS
Ret
MAL
Ret
VAL
2
5位 144
2017年 ホンダ QAT
1
ARG
1
AME
8
SPA
3
FRA
1
ITA
7
CAT
1
NED
9
GER
1
CZE
1
AUT
1
GBR
5
RSM
2
ARA
1
JPN
17
AUS
1
MAL
1
VAL
2
1位 341
2018年 Moto2 カレックス QAT
11
ARG
7
AME
4
SPA
11
FRA
3
ITA
3
CAT
Ret
NED
5
GER
2
CZE
Ret
AUT
8
GBR
C
RSM
5
ARA
6
THA
Ret
JPN
11
AUS
2
MAL
10
VAL
Ret
6位 155
2019年 MotoGP スズキ QAT
8
ARG
Ret
AME
17
SPA
Ret
FRA
16
ITA
12
CAT
6
NED
8
GER
7
CZE
Ret
AUT
GBR
RSM
8
ARA
14
THA
7
JPN
8
AUS
5
MAL
10
VAL
7
12位 92
2020年 SPA
Ret
ANC
5
CZE
Ret
AUT
2
STY
4
RSM
3
EMI
2
CAT
2
FRA
11
ARA
3
TER
3
EUR
1
VAL
7
POR
Ret
1位 171
2021年 QAT
4
DOH
7
POR
3
SPA
5
FRA
Ret
ITA
3
CAT
4
GER
9
NED
3
STY
2
AUT
4
GBR
9
ARA
3
RSM
6
AME
8
MAL
Ret
ALG
2
VAL
4
3位 208
2022年 QAT
6
INA
6
ARG
4
AME
4
POR
Ret
SPA
6
FRA
Ret
ITA
Ret
CAT
4
GER
Ret
NED
8
GBR
Ret
AUT
Ret
RSM
ARA
DNS
JPN
THA
AUS
18
MAL
19
VAL
6
15位 87
2023年 ホンダ POR
11
ARG
DNS
AME
Ret
SPA
Ret
FRA
Ret
ITA
DNS
GER NED GBR
Ret
AUT
Ret
CAT
17
RSM
Ret
IND
5
JPN
12
INA
Ret
AUS
Ret
THA
12
MAL
Ret
QAT
12
VAL
DNS
22位 26
2024年 QAT
13
POR
12
AME
Ret
SPA
12
FRA
Ret
CAT
15
ITA
Ret
NED
Ret
GER
18
GBR
Ret
AUT
17
ARA
14
RSM
WD
EMI
11
INA
Ret
JPN
Ret
AUS
Ret
THA
15
MAL VAL 20位* 21*

* 現在進行中

脚注

[編集]
  1. ^ a b c Joan Mir” (英語). Team SUZUKI. SUZUKI Motor Corporatin (2020年). 2020年11月12日閲覧。
  2. ^ a b c d Biography”. MIR36 (2020年). 2020年11月12日閲覧。
  3. ^ a b ジョアン・ミル、2017年Moto3クラスチャンピオン”. MotoGP.com (2017年10月22日). 2020年11月12日閲覧。
  4. ^ “MotoGP:スズキ、未決の1席に2017年Moto3王者ジョアン・ミルの起用を発表。2019年から2年契約結ぶ”. autosport web. (2018年6月11日). https://www.as-web.jp/bike/378830?all 2020年11月12日閲覧。 
  5. ^ “ジョアン・ミル「ホンダよりもスズキのオファーの方が充実していた」”. motorsport.com日本版. (2018年7月12日). https://jp.motorsport.com/motogp/news/joanmir-motogp/3139727/ 2020年11月12日閲覧。 
  6. ^ スズキ、MotoGPの2019年シーズン参戦体制を発表”. スズキ (2019年2月4日). 2020年11月12日閲覧。
  7. ^ “ジョアン・ミル、善戦見せるも裏では“呼吸に苦戦”。完全回復はまだ先?”. motorsport.com日本版. (2019年12月20日). https://jp.motorsport.com/motogp/news/mir-had-breathing-problems-following-brno-crash/4615168/ 2020年11月12日閲覧。 
  8. ^ MotoGP 第13戦 ヨーロッパGP 決勝”. スズキレーシングレポート. スズキ株式会社 (2020年11月8日). 2020年11月18日閲覧。
  9. ^ MotoGP 第14戦 バレンシアGP 決勝”. スズキレーシングレポート. スズキ株式会社 (2020年11月15日). 2020年11月18日閲覧。
  10. ^ “2020年MotoGPチャンピオンシップ優勝 ジョアン・ミル 「スズキでのタイトル獲得は、他のメーカーでのタイトル獲得より価値がある」”. 気になるバイクニュース. (2020年11月16日). https://kininarubikenews.com/archives/52560 2020年11月18日閲覧。 
  11. ^ a b c ジョアン・ミルのチャンピオンナンバー”. MotoGP.com (2020年11月15日). 2020年11月18日閲覧。
  12. ^ “ジョアン・ミルがMotoGPチャンピオンに。スズキ20年ぶりのタイトル”. RIDING SPORT. (2020年11月16日). https://www.ridingsport.com/news_detail.html?code=2266 2020年11月18日閲覧。 
  13. ^ “ホンダMotoGP、2023年からジョアン・ミルとの2年契約を締結。2020年王者がマルク・マルケスのチームメイトに”. motorsport.com日本版. (2022年8月30日). https://jp.motorsport.com/motogp/news/honda-signs-2020-motogp-champion-joan-mir-for-2023/10360367/ 2022年8月30日閲覧。 
  14. ^ HONDA Riders Close UP Moto3 ホアン・ミル Leopard Racing”. 本田技研工業 (2017年). 2020年11月15日閲覧。
  15. ^ a b MotoGPライダー ジョアン・ミルInterview 一旗揚げてやるぜ!の気概を感じさせた好青年「ジョアン」ミル選手”. Web Mr.Bike (2019年3月4日). 2020年11月16日閲覧。
  16. ^ “最高峰クラス参戦2年目にして才能開花。チャンピオンシップをリードするジョアン・ミル/MotoGP第13戦レビュー”. autosport web. (2020年11月11日). https://www.as-web.jp/bike/644143?all 2020年11月16日閲覧。 

関連項目

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外部リンク

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