クリス・ロック

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クリス・ロック
Chris Rock
Chris Rock
2012年
本名 Christopher Julius Rock III
生年月日 (1965-02-07) 1965年2月7日(57歳)
出生地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 サウスカロライナ州
職業 コメディアン俳優脚本家映画プロデューサー映画監督
活動期間 1987年 - 現在
主な作品
映画
魔女がいっぱい
スパイラル:ソウ オールリセット
アニメ映画
マダガスカル』シリーズ
ドラマ
FARGO/ファーゴ
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クリス・ロックChris Rock1965年2月7日 - )は、アメリカ合衆国サウスカロライナ(アンドリュース)出身のスタンダップ・コメディアン俳優脚本家プロデューサー映画監督としても活動している。米コメディ専門チャンネル“コメディ・セントラル”が選ぶスタンダップ・コメディアンベスト5位。エミー賞3回、グラミー賞を3回受賞している。

経歴[編集]

1984年、ロックはニューヨークのコメディークラブ“Catch a Rising Star”でスタンダップ・コメディを始める。マイアミ・バイスなどのドラマに出演していたが、とあるナイトクラブで彼の演技を見たエディ・マーフィが、ビバリーヒルズコップ2で映画デビューさせる。

1990年、「サタデーナイトライブ(SNL)」でスケッチ・コメディーシリーズの主要キャストとなり、クリス・ファーレイアダム・サンドラーロブ・シュナイダーデヴィッド・スペードらとともに"バッドボーイズオブSNL"として一躍有名になる。 1993年、サタデーナイトライブを辞めたのちFOXの「イン・リビング・カラー」(ジム・キャリーの出演で有名)などを経て、映画の仕事に集中するが、自身が脚本・製作したモキュメンタリー映画「CB4」が成功せず、再びスタンダップ・コメディーに注力する。

1994年のHBOコメディ特番「Big Ass Jokes」、'96年の「ニガズ対ブラックピープル」を含む番組「Bring the Pain」などが高い評価を得て、それぞれエミー賞を受賞。コメディ・セントラルの政治番組「Politically Incorrect」のコメンテーターで再度エミー賞にノミネート。'97にはHBOで冠番組「The Chris Rock Show」がスタートしたほか、MTV Video Music Awardsのホストを務める。'99年のHBO特番「Bigger & Blancker」や、2003年に首都ワシントンD.C.で行われたライヴ『Never Scared』を収録したコメディアルバムは第48回グラミー賞において最優秀コメディ・アルバム賞を受賞。2005年の第77回アカデミー賞でホストを務め、その発言が物議を醸した。米タイム誌エンターテインメント・ウィークリーで“The funniest man in America(アメリカで最も面白い男)”と評価される。

2016年、第88回アカデミー賞で2度目の司会を務めた[1]

問題発言[編集]

2016年、ロックは第88回アカデミー賞授賞式で「アジア人は数学が得意」といったステレオタイプを強調した寸劇を披露した。(プレゼンターを務めたサシャ・バロン・コーエンもまた、「アジア人は勤勉で性器が小さい」といった内容を含むジョークを披露していた。)これに対し、アジア系アカデミー会員たちが、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーに抗議の手紙を送った。映画芸術科学アカデミーはこれに対し、「アカデミーは懸念を知らせてくださったことに感謝するとともに、どんな要素であっても授賞式が侮辱的なものになってしまったことを遺憾に思っています。今後の授賞式では、もっとそれぞれの文化に配慮できるよう、全力を尽くします」とコメントした[2]

アカデミー賞授賞式でのトラブル[編集]

2022年第94回アカデミー賞授賞式では女優ジェイダ・ピンケット・スミスの短い髪形についてジョークを飛ばし(ジェイダは脱毛症と診断されたことを2018年に告白していた)、その夫でクリスと長年の友人でもあるウィル・スミス平手で殴打された[3][4][5]

Los Angles Timesによると騒動が起きた際、クリスの弟のケニーは米ブルックリンを走る電車に乗っており、ネット上に出回った動画を通して知ったとしている[6]。また、ウィルとクリスは1990年代からの知り合いで、「騒動前までは非常に良い関係だった」と語った[6]

アカデミー側は、式典中にクリス・ロックをステージ上で平手打ちした後、ウィル・スミスが舞台から離れる事を拒否したことを明らかにした[7]。同日夜、ロサンゼルス市警察はスミスを逮捕する準備をしていたが、クリス・ロックは断固として告訴を望まなかった[8]

クリスは同日授賞式に司会者として出演していた女優のワンダ・サイクスに、授賞式後のアフターパーティーで開口一番に謝罪[9]。「あなたたちが主役になるはずの夜だった。あなたと(共同司会者の)エイミー(・シューマー)、レジーナ(・ホール)は素晴らしい仕事をしていた。それが、このような形になってしまって申し訳ない」と述べ謝罪していた[9]

2日後の29日の米テレビ内で、主催者のゲイル・キングが「スミス以外の他の聴衆が歩いて行ってそれをしたとしたら、彼らは警備員に付き添われたり、逮捕されたりしただろう」と推測。同番組に出演していたジム・キャリーは「彼(スミス)はそうであるべきであった」とし、「聴衆から怒鳴り、不満を示したり、ツイッターで何かを言いたいのなら、ステージに上がって誰かを顔に叩きつける権利はない」と付け加え、「もしも私がクリスであれば、彼(スミス)を訴える」とスミスを批判[10][11]

3日後の30日に米NBCテレビのトーク番組「エレンの部屋」に出演したワンダ・サイクスはクリスの謝罪を「なぜ謝るの?」という感じだったとし、一連の出来事について「気分が悪くなった。今もまだ少しトラウマを抱えている」と語り、スミスが平手打ち後も会場にとどまって残りの授賞式を楽しむことが許されたことは世間に対する間違ったメッセージになったと主催者を批判した。「誰かが暴力を振るえば、建物の外にエスコートされて追い出されるだけのこと。それをしなかったことはとても不快だった」と語った[12]

理事会の会議後に発表された声明により、「不適切な身体的接触、虐待的または脅迫的な行動、アカデミーの完全性の侵害を含む」というアカデミーの行動基準に違反しているとされ、アカデミーはウィル・スミスに対する懲戒手続きを発表した[13]。アカデミーは、「直接目撃された方、およびテレビの視聴者の皆さまに深いショックとトラウマを与えた」とウィル・スミスを断じ、クリスに対しては「我々のステージでの出来事を謝罪申し上げます。あの瞬間、即座に持ち直していただき感謝いたします」と声明文で伝えている[7]

アカデミー側は、式典中にクリス・ロックをステージ上で平手打ちした後、スミスが舞台から離れる事を拒否したことを明らかにした。理事会の会議後に発表された声明により、「不適切な身体的接触、虐待的または脅迫的な行動、アカデミーの完全性の侵害を含む」というアカデミーの行動基準に違反しているとされ、アカデミーはウィル・スミスに対する懲戒手続きを発表した[13]。アカデミーは、「直接目撃された方、およびテレビの視聴者の皆さまに深い衝撃とトラウマを与えた」と断じ、クリスに対しては「我々のステージでの出来事を謝罪申し上げます。あの瞬間、即座に持ち直していただき感謝いたします」と声明文で伝えている[7]

米メディアによると、調査機関ブルー・ローズ・リサーチが2000人以上に「どちらがより間違っていたか」をネットアンケートしたところ、所得層別で大きな違いがあり、年収15万ドル(約1800万円)以上では54.2%がスミスと回答したのに対し、2万5000ドル以下では63.4%がロックと答えた。また、高学歴層ほどスミスに否定的な傾向も顕著となった[14]

日本では「家族を侮辱されたのだからウィル・スミスがビンタしたのも理解できる」という意見が多いのに対し、アメリカでは「手を出したウィル・スミスが完全に悪い」という声が多い理由として、権力と富がある人、政治家やセレブリティーをコメディアンがネタにする「スタンダップコメディ」の文化がアメリカにはあり、また「許される暴力」という考え方がアメリカには存在しない事があげられる[15][16]

女性政治評論家のミカ・ブルゼジンスキーは、「ジェイダは私がこれまで見てきた中でもっとも人を勇気づけ、女性を助けてくれる女性だ」と事件に言及[17]。ジェイダは自身の番組『レッド・テーブル・トーク』で夫婦関係や病気、セックスライフなどについて赤裸々に語り、視聴者の共感を集めてきた。ブルゼジンスキーは続けて「彼女は誰も行く勇気を持っていないところに立ち向かい、自分で自分の面倒を見られる人だ」とし、夫に守ってもらう必要はないとブルゼジンスキーは主張[17][18]。このコメントをきっかけに、ウィルが事件を起こしたためにジェイダが自分で自分の名誉のために発言するチャンスが奪われてしまったという意見が増えた[17][18]

2022年4月1日、ウィル・スミスは「私は多くの人を傷つけ、アカデミーの信頼を裏切った。私はアカデミーから退会するとともに、今後のアカデミーの判断を受け入れる」と述べ、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)から退会する意向を示し、AMPASもその申し出を受理したことを同日発表した[19]

ウィルの今後のキャリアを懸念する声が各地で上がる中、『天使にラブ・ソングを…』シリーズでも知られる俳優・コメディアンのウーピー・ゴールドバーグは、「彼は戻ってきます。心配いりません」と私見を述べた[6]

主な出演作品[編集]

映画[編集]

公開年 邦題
原題
役名 備考
1987 ビバリーヒルズ・コップ2
Beverly Hills Cop II
プレイボーイマンションのボーイ
1988 ゴールデン・ヒーロー 最後の聖戦
I'm Gonna Git You Sucka
売春宿の客
1991 ニュー・ジャック・シティ
New Jack City
ポーキー
1992 ブーメラン
Boomerang
ボニー・T
1993 CB4
CB4
アルバート 兼脚本・共同製作
1995 パンサー
Panther
ヤック・マウス
ギャングスターズ/野獣死すとき
The Immortals
ディーク・アンソニー
1996 スティーブ・マーティンのSGT.ビルコ/史上最狂のギャンブル大作戦
Sgt. Bilko
オスター
1997 ビバリーヒルズ・ニンジャ
Beverly Hills Ninja
ジョーイ
1998 ドクター・ドリトル
Doctor Dolittle
ロドニー(モルモット) 声の出演
リーサル・ウェポン4
Lethal Weapon 4
リー・バターズ刑事
1999 ドグマ
Dogma
ルーファス
2000 ふたりの男とひとりの女
Me, Myself & Irene
テレビのスタンドアップコメディアン ノンクレジット
ベティ・サイズモア
Nurse Betty
ウェズリー
2001 天国からきたチャンピオン 2002
Down to Earth
ランス・バートン 兼脚本・製作総指揮
A.I.
A.I.
コメディアン 声の出演
プーティ・タン
Pootie Tang
JB / ラジオDJ / プーティの父
バクテリア・ウォーズ
Osmosis Jones
オスモシス・ジョーンズ 声の出演
ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲
Jay and Silent Bob Strike Back
チャカ・ルーサー・キング
2002 9デイズ
Bad Company
ジェイク・ヘイズ
ボウリング・フォー・コロンバイン
Bowling for Columbine
本人役
2003 ヒップホップ・プレジデント
Head of State
メイズ・ギリアム 兼監督・脚本・製作
2004 パパラッチ
Paparazzi
ピザの配達員
2005 ロンゲスト・ヤード
The Longest Yard
ケアテイカー
マダガスカル
Madagascar
マーティ 声の出演
2007 セックス・アンド・ザ・バディ
I Think I Love My Wife
リチャード・クーパー 兼監督・脚本・製作
ビー・ムービー
Bee Movie
Mooseblood 声の出演
2008 エージェント・ゾーハン
You Don't Mess with the Zohan
タクシー運転手
マダガスカル2
Madagascar 2
マーティ 声の出演
2009 ブラック・コメディ 〜差別を笑いとばせ!〜
Why We Laugh: Black Comedians on Black Comedy
- ドキュメンタリー
グッド・ヘアー 〜アフロはどこに消えた?〜
Good Hair
- ドキュメンタリー
兼脚本・製作総指揮
2010 お葬式に乾杯!
Death at a Funeral
アーロン 兼製作
アダルトボーイズ青春白書
Grown Ups
カート・マッケンジー
2011 映画と恋とウディ・アレン
Woody Allen: A Documentary
- ドキュメンタリー
2012 ニューヨーク、恋人たちの2日間
2 Days in New York
ミンガス
恋愛だけじゃダメかしら?
What to Expect When You're Expecting
ヴィク
マダガスカル3
Madagascar 3: Europe's Most Wanted
マーティ 声の出演
2013 アダルトボーイズ遊遊白書
Grown Ups 2
カート・マッケンジー
2014 トップ・ファイブ
Top Five
アンドレ・アレン ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 (2014年)・スポットライト賞[20]
2015 ビル・マーレイ・クリスマス
A Very Murray Christmas
本人役 Netflixで配信
2018 ウィーク・オブ・ウェディング
The Week Of
カービー・コーダイス Netflixで配信
クレイジー・グッド
Nobody's Fool
ローレンス クレジットなし
2019 ルディ・レイ・ムーア
Dolemite Is My Name
ダディ・ファッツ
2020 魔女がいっぱい
The Witches
年上のヒーロー・マウス 声の出演
2021 スパイラル:ソウ オールリセット
Spiral
エゼキエル・"ジーク"・バンクス刑事

テレビ番組[編集]

放映年 邦題
原題
役名 備考
1993-1993 サタデー・ナイト・ライブ
Saturday Night Live
N/A 計53話
1996 ホミサイド/殺人捜査課
Homicide: Life on the Street
Carver Dooley 第4シーズン第18話「アディーナへの鎮魂歌」
2015 Empire 成功の代償
Empire
フランク・ギャザーズ 第2シーズン第1話にゲスト出演
2018 クリス・ロックのタンバリン Netflixオリジナル・スタンドアップ・コメディ
2020 ファーゴ
Fargo
ロイ・キャノン 第4シーズン

参考文献[編集]

  1. ^ 来年のアカデミー賞司会はクリス・ロック!”. シネマトゥデイ (2015年10月22日). 2015年10月22日閲覧。
  2. ^ アカデミー賞授賞式でのアジア人差別ジョークが波紋…アン・リー監督らが抗議”. シネマトゥデイ (2016年3月17日). 2019年6月30日閲覧。
  3. ^ アカデミー賞で放送事故、ウィル・スミスが妻ジェイダをジョークにされ激怒のガチビンタ - フロントロウ -海外セレブ&海外カルチャー情報を発信” (日本語). front-row.jp. 2022年3月28日閲覧。
  4. ^ ウィル・スミス氏、アカデミー賞授賞式でプレゼンターを平手打ち 生放送中に放送禁止語も」『BBCニュース』。2022年3月28日閲覧。
  5. ^ ウィル・スミスがクリス・ロックに強烈ビンタ!! 二人は共演者であり長年の友人同士!? アカデミー賞授賞式から一夜明けてスミスが謝罪文を公開” (日本語). BANGER!!!. 2022年3月31日閲覧。
  6. ^ a b c クリス・ロック弟、ウィル・スミスの謝罪を「受け入れない」 ─ 脱毛症の事実を「兄は知らなかった」と証言” (日本語). THE RIVER (2022年4月6日). 2022年4月6日閲覧。
  7. ^ a b c ビンタされたクリス・ロックが初コメント ─ ウィル・スミス、アカデミー追放処分の危機” (日本語). THE RIVER (2022年3月31日). 2022年3月31日閲覧。
  8. ^ 警察がウィル・スミスさんの逮捕準備もクリス・ロックさん告訴望まず” (日本語). CNN.co.jp. 2022年4月1日閲覧。
  9. ^ a b ウィル・スミスにビンタされたクリス・ロック、授賞式後に司会者に謝罪していた - ハリウッド : 日刊スポーツ” (日本語). nikkansports.com. 2022年4月6日閲覧。
  10. ^ Jim Carrey says he would have sued Will Smith for $200m over Oscar slap incident” (英語). The Independent (2022年3月30日). 2022年3月31日閲覧。
  11. ^ Jim Carrey says Will Smith should have been arrested over Oscars slap” (英語). FOX 4 Kansas City WDAF-TV | News, Weather, Sports (2022年3月29日). 2022年3月31日閲覧。
  12. ^ ウィル・スミスにビンタされたクリス・ロック、授賞式後に司会者に謝罪していた - ハリウッド : 日刊スポーツ” (日本語). nikkansports.com. 2022年3月31日閲覧。
  13. ^ a b Verhoeven, Beatrice (2022年3月30日). “Academy Begins Disciplinary Proceedings Against Will Smith, Says He Refused to Leave Ceremony” (英語). The Hollywood Reporter. 2022年3月31日閲覧。
  14. ^ アカデミー賞での平手打ち 賛否にアメリカの格差が反映 高所得、高学歴ほどウィル・スミスさんに否定的:東京新聞 TOKYO Web” (日本語). 東京新聞 TOKYO Web. 2022年3月31日閲覧。
  15. ^ 【深い】日本に伝わりづらい「ウィル・スミスがビンタした件」について / アメリカ在住日本人の話が目からウロコだった” (日本語). ロケットニュース24 (2022年3月30日). 2022年3月31日閲覧。
  16. ^ ウィル・スミス、「妻の外見へのジョークに平手打ち」に日米で反応が分かれる理由(東洋経済オンライン)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2022年4月1日閲覧。
  17. ^ a b c Archive, View Author (2022年3月28日). “Mika Brzezinski slams Will Smith’s Oscar smack: Jada ‘can take care of herself’” (英語). New York Post. 2022年4月1日閲覧。
  18. ^ a b Nagasaka, Yoko (2022年3月28日). “「ジェイダ・ピンケット・スミスは自分で名誉を守れる女性」ウィル・スミスの平手打ち事件に人気テレビ司会者がコメント” (日本語). ELLE. 2022年4月1日閲覧。
  19. ^ 日本放送協会 (2022年4月2日). “ウィル・スミスさん 映画芸術科学アカデミーを退会の意向”. NHKニュース. 2022年4月3日閲覧。
  20. ^ “ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞発表”. 映画.com. (2014年12月3日). http://eiga.com/news/20141203/15/ 2014年12月5日閲覧。 

関連文献[編集]

外部リンク[編集]