第94回アカデミー賞

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第94回アカデミー賞
開催日 2022年3月27日 (2022-03-27)
会場 カリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッド
ドルビー・シアター
司会 レジーナ・ホール
エイミー・シューマー
ワンダ・サイクス
プロデューサー ウィル・パッカー
ディレクター グレン・ウェイス
ハイライト
作品賞 コーダ あいのうた
最多部門受賞 DUNE/デューン 砂の惑星』(6)
最多部門
ノミネート
パワー・オブ・ザ・ドッグ』(12)
TV放映
放送局 ABC
開催時間 3時間40分[1]
視聴率
 < 第93回 アカデミー賞 第95回 > 

第94回アカデミー賞は、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が主催する賞であり、2021年の映画(3月1日から12月31日まで)を対象とし、2022年3月27日にカリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッドドルビー・シアターで午後5時(PDT)より授賞式が行われた。通常より1ヶ月延期。

ノミネート[編集]

第94回アカデミー賞のノミネートは2022年2月8日5時18分PST(13時18分UTC)にトレイシー・エリス・ロス英語版レスリー・ジョーダンにより発表され、ストリーミング配信された。

受賞者は各項目最上段に太字でダブルダガー (double-dagger) 付きのものである。

  • The Long Goodbye』 - アニール・カリア、リズ・アーメッド double-dagger
    • Ala Kachuu - Take and Run』 - マリア・ブレンドル英語版、ナディーン・リュチンガー
    • The Dress』 - タデウシュ・ウイッチャク、マチェイ・シレシツキ
    • On My Mind』 - マルティン・ストレンジ・ハンセン、キム・マグナソン
    • Please Hold』 - K・D・ダビラ、レヴィン・メネクセ

複数の部門での受賞・ノミネート作品[編集]

複数の部門でのノミネートされた作品
ノミネート数 作品
12 パワー・オブ・ザ・ドッグ
10 DUNE/デューン 砂の惑星
7 ベルファスト
ウエスト・サイド・ストーリー
6 ドリームプラン
4 ドント・ルック・アップ
ドライブ・マイ・カー
ナイトメア・アリー
3 愛すべき夫妻の秘密
コーダ あいのうた
ミラベルと魔法だらけの家
FLEE フリー
リコリス・ピザ
ロスト・ドーター
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
マクベス
2 クルエラ
タミー・フェイの瞳
Parallel Mothers
Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!
わたしは最悪。

ガヴァナーズ賞[編集]

アカデミーは2021年6月24日、第12回ガヴァナーズ賞授賞式で授与される名誉賞等を発表した[2]

アカデミー名誉賞
ジーン・ハーショルト友愛賞

授賞式情報[編集]

前年の視聴率が史上最低だったことを受け、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)は放送時間を3時間に収めるため、一部の賞の発表(ドキュメンタリー短編映画、編集、メイクアップ&ヘアスタイリング、作曲、美術、アニメーション短編映画、実写短編映画、音響)を事前に行うことを明らかにした。この決定について、一部の映画関係者から批判があがる事態となった[3][4]。また、Twitterの投票でお気に入り映画とシーンを発表するとし、最多得票は授賞式で放映される。これは日本アカデミー賞の話題賞に相当する。なお、今授賞式の視聴者数は過去2番目に少ない約1540万人だった[5]

作品賞にノミネートされている『ウエスト・サイド・ストーリー』のヒロイン役を務めたレイチェル・ゼグラーが本授賞式に招待されておらず、家で授賞式を見守ることを自身のInstagramで明らかにした。ゼグラーは主演女優賞にノミネートされていないため、配給会社に割り当てられている招待枠から出席することになるが、新型コロナウイルス感染予防対策に伴う出席者数制限で配給会社のウォルト・ディズニー・カンパニーによる判断でゼグラーが外された可能性が指摘されている[6]。その後、AMPASはゼグラーを授賞式に招待すると共にプレゼンターも担当させることを明らかにした[7]

放送局[編集]

アメリカではアメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー(ABC)、日本ではWOWOWにおいて、生中継が行われた[8][9]中華人民共和国(中国)では例年中国中央電視台(CCTV)がライブ配信並びにダイジェスト版を放送していたが、2年連続で授賞式の放送を見合わせた。放送中止の理由について、ハリウッド・リポーター長編ドキュメンタリー賞に中国経済のからくりをテーマとした『アセンション』がノミネートされていることや授賞式において、ウクライナ支援やロシア批判が予想されたことが要因として挙げられている[10]

ウクライナ支援[編集]

2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻を受けて、授賞式ではゲストとして女優のミラ・クニス(ウクライナ出身)が登壇し、同国への支援を呼び掛けたほか、この侵攻による犠牲者に対して黙祷が捧げられた[11][12]。なお、ニューヨーク・ポストなどはウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーの出演も予定されていると報じられていたが、登場しなかった[13][14]

平手打ち騒動[編集]

長編ドキュメンタリー賞のプレゼンターとして登壇したコメディアンクリス・ロック脱毛症であることを公表している女優のジェイダ・ピンケット・スミスを侮辱する発言をしたため、夫で俳優のウィル・スミスが壇上に上がり、ロックに平手打ちをする騒ぎが発生。その後、スミスは放送禁止用語を交えてロックの発言を批判したこともあり、アメリカ国内において授賞式を生中継していたアメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー(ABC)や日本国内で授賞式を中継していたWOWOWなどは放送を一時中断する事態になった[15][16][17][18]

騒動を受けて、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)はウィル・スミスに対して、会場から退場するように求めたが、スミスは応じず、会場に留まった[19]。その後、スミスは主演男優賞を受賞し、スピーチの中で「AMPASやノミネートされたすべての仲間に謝りたい」と述べたが、この時点ではクリス・ロックへの謝罪は行わなかった[20]

ウィル・スミスは2022年3月28日に投稿したInstagramの中で「クリス、あなたに公に謝罪したい。私は不適切で間違っていた。自分を恥じ入り、私の行動は自分がなりたい男のものではなかった。愛と優しさのあふれる世界に暴力の存在する場所はない」と述べ、クリス・ロックを始め、AMPAS関係者や視聴者、主演男優賞を受賞した『ドリームプラン』のモデルでもあるテニス選手のウィリアムズ姉妹(ビーナスセリーナ)の父親などに対しても謝罪した[21][22]

クリス・ロックは警察に被害届の提出を行わないことをアメリカのメディアに対して明らかにしているが、AMPASは2022年3月28日にウィル・スミスの行動を非難すると同時に調査を開始し、カリフォルニア州法などに準じた対応を行う声明を発表した[23][24]。同月30日、AMPASは「スミス氏の行為は、アカデミーの行動基準に違反する。目撃した人たちに深い衝撃を与え、トラウマを植え付けた」と述べ、懲戒手続きを開始したことを明らかにした[19]。前述の通り、スミスは主演男優賞を受賞しているが、ロサンゼルス・タイムズは同賞が剥奪される可能性もあると報じている[25][26]

2022年4月1日、ウィル・スミスは「私は多くの人を傷つけ、アカデミーの信頼を裏切った。私はアカデミーから退会するとともに、今後のアカデミーの判断を受け入れる」と述べ、AMPASから退会する意向を示し、AMPASもその申し出を受理したことを同日発表した[27]

2022年4月8日、AMPASは授賞式を始めとするAMPAS主催イベントへの出席を今後10年間禁止する処分を理事会において決定し、ウィル・スミスもこの決定を受け入れたことを発表した。なお、今回のアカデミー賞で受賞した主演男優賞は剥奪されず、今後のノミネートについても除外にはならないことも併せて発表された[28][29]

脚注[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ a b Porter, Rick (2022年3月28日). “TV Ratings: Oscars Rebound from Historic Lows”. The Hollywood Reporter. 2022年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月28日閲覧。
  2. ^ Oscars to honor Elaine May, Danny Glover, Samuel L. Jackson”. ABC News. 2021年6月24日閲覧。
  3. ^ スティーヴン・スピルバーグやドゥニ・ヴィルヌーヴ、アカデミー賞授賞式に異議を唱える”. Real Sound (2022年3月8日). 2022年3月25日閲覧。
  4. ^ ハリウッドの重鎮たちが非難 アカデミー賞授賞式から8部門カット撤回求める”. 映画.com (2022年3月14日). 2022年3月25日閲覧。
  5. ^ アカデミー賞視聴数、過去2番目の少なさ 多様性なく関心下がったか”. 朝日新聞 (2022年3月29日). 2022年3月29日閲覧。
  6. ^ スピルバーグ監督「ウエスト・サイド・ストーリー」の主演女優、アカデミー賞授賞式に招待されず”. 日刊スポーツ (2022年3月21日). 2022年3月29日閲覧。
  7. ^ Nagasaka, Yoko (2022年3月22日). “アカデミーが態度を一転! レイチェル・ゼグラー、授賞式に招待される プレゼンターも務めることに”. ELLE. 2022年3月29日閲覧。
  8. ^ アカデミー賞、「ドライブ・マイ・カー」が作品賞など4部門で候補に”. Bloomberg.com (2022年2月9日). 2022年3月30日閲覧。
  9. ^ アカデミー賞授賞式は生中継で、案内役のジョン・カビラと宇垣美里が力説”. 映画ナタリー (2022年3月22日). 2022年3月30日閲覧。
  10. ^ 米アカデミー賞を中国では〝政治的理由〟で中継せず 米芸能誌が報道”. 東京スポーツ (2022年3月25日). 2022年3月30日閲覧。
  11. ^ 米アカデミー賞でもウクライナ支援呼び掛け”. CNN.co.jp (2022年3月28日). 2022年3月30日閲覧。
  12. ^ 侵攻犠牲者に黙とう ウクライナ出身女優が支援呼び掛け―米アカデミー賞”. 時事通信 (2022年3月28日). 2022年3月30日閲覧。
  13. ^ ゼレンスキー大統領、アカデミー賞授賞式に映像出演の可能性 衛星中継か事前録画か 米報道”. 日刊スポーツ (2022年3月26日). 2022年3月30日閲覧。
  14. ^ “米アカデミー賞でウクライナ支援メッセージ、大統領登場せず”. ロイター通信. (2022年3月28日). https://jp.reuters.com/article/awards-oscars-ukraine-idJPKCN2LP093 2022年3月30日閲覧。 
  15. ^ ウィル・スミスさん、妻を侮辱されビンタ 主演男優賞スピーチで弁明”. 朝日新聞 (2022年3月28日). 2022年3月28日閲覧。
  16. ^ ウィル・スミス、米アカデミー賞授賞式の最中に妻を侮辱したプレゼンターを強烈ビンタ”. スポーツ報知 (2022年3月28日). 2022年3月29日閲覧。
  17. ^ “ウィル・スミス氏、アカデミー賞授賞式でプレゼンターを平手打ち 生放送中に放送禁止語も”. BBCNEWS JAPAN. (2022年3月28日). https://www.bbc.com/japanese/60896996 2022年3月28日閲覧。 
  18. ^ ウィル・スミスさん、アカデミー賞授賞式でプレゼンターに平手打ち…妻への発言で激怒か”. 読売新聞 (2022年3月28日). 2022年3月29日閲覧。
  19. ^ a b ウィル・スミスさん平手打ち「目撃した人に衝撃とトラウマ」…アカデミー懲戒手続き開始”. 読売新聞 (2022年3月31日). 2022年3月31日閲覧。
  20. ^ ウィル・スミス「妻の名前を口にするな」侮辱に怒りの平手打ち…スピーチで涙「すべての仲間に謝りたい」”. 中日スポーツ・東京中日スポーツ (2022年3月28日). 2022年3月31日閲覧。
  21. ^ ウィル・スミス ビンタ騒動でクリス・ロックへ正式に謝罪 自身インスタで「私が間違っていた」”. スポーツニッポン (2022年3月29日). 2022年3月29日閲覧。
  22. ^ ウィル・スミス、クリス・ロックに謝罪 米アカデミー賞授賞式で平手打ち”. CNN.co.jp (2022年3月29日). 2022年3月29日閲覧。
  23. ^ 平手打ちのウィル・スミス氏謝罪、米映画芸術科学アカデミー調査開始”. Bloomberg.com (2022年3月29日). 2022年3月29日閲覧。
  24. ^ スミスさん「平手打ち」SNSで賛否 「暴行罪で訴えて」「言葉の暴力への抵抗」”. 産経新聞 (2022年3月29日). 2022年3月29日閲覧。
  25. ^ 日本放送協会 (2022年3月29日). “ウィル・スミスさん“妻の容姿”発言のプレゼンターに平手打ち”. NHKニュース. 2022年3月30日閲覧。
  26. ^ ウィル・スミス 強烈ビンタの代償…オスカー剥奪の可能性 正式調査開始”. スポーツニッポン (2022年3月30日). 2022年3月30日閲覧。
  27. ^ 日本放送協会 (2022年4月2日). “ウィル・スミスさん 映画芸術科学アカデミーを退会の意向”. NHKニュース. 2022年4月3日閲覧。
  28. ^ ウィル・スミスさん、アカデミー賞出席10年間禁止に”. AFP通信 (2022年4月9日). 2022年4月9日閲覧。
  29. ^ ビンタ事件ウィル・スミスにアカデミー授賞式含む関連イベント出席を10年間禁止する処分”. 日刊スポーツ (2022年4月9日). 2022年4月9日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

公式ウェブサイト