モキュメンタリー
モキュメンタリー(英: mockumentary)は、映画やテレビ番組のジャンルの1つで、フィクションを、ドキュメンタリー映像のように見せかけて演出する表現手法である。モキュメンタリーは擬似やからかうを意味する「mock(モック)」と、「ドキュメンタリー」を合成したかばん語であり、「フェイクドキュメンタリー」(和製英語)とも言われる[1][2]。
ドキュメンタリー的な要素・手法を用いたフィクション作品であり、隣接領域として、フィクション的要素を持ったドキュメンタリー(ドキュフィクション)、実際に起きた出来事を脚色してドラマ化するドキュメンタリードラマがある[3]。
虚構の物語を、あくまでも事実を伝えるドキュメンタリーとして構成する映像手法である。そのため、ドキュメンタリーの慣例に則って架空のインタビューやニュース映像、関係者の証言などが織り交ぜられてゆく。また、発掘されたビデオ映像という形態で、逆に一切のテレビ的な構成を排する作例もある。内容はコメディからホラー、ポルノ映像までと幅広い。
起源
[ソースを編集]先駆的作品として、1938年にオーソン・ウェルズが手がけたアメリカのラジオドラマ『宇宙戦争』があり、同作品では架空のニュース中継という手法を用いている[2][3]。テレビ番組では、1957年に4月1日のエイプリルフール企画としてBBCが時事番組内で放送した『スパゲッティの木』が知られる[3]。また、1977年に製作されたイギリスのテレビドラマ『第三の選択』は、先駆的な例としてしばしば紹介される[2]。
映画作品では、1984年に公開されたロブ・ライナーによる『スパイナル・タップ』がカルト映画として人気を獲得し、同作品内に登場する架空のバンド“スパイナル・タップ”が現実世界でも音楽アルバムを発表するなどの展開がされた[3]。
受容と発展
[ソースを編集]「モキュメンタリー」という言葉は、前述の『スパイナル・タップ』の監督ロブ・ライナーがインタビューで用いた1980年代中頃に大衆化したと考えられている。言葉の確かな初出は分かっていないが[4] 、『オックスフォード英語辞典』には1965年から掲載されている[5]。
1990年代以降、ビデオカメラの小型化とともに一人称視点(POV手法)による作品が増え、1999年に発表された『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が低予算映画ながら興行収入の面で大きな成功を収め、ホラー映画、サスペンス映画の一ジャンルとして成立していく[2][3]。
日本では、フジテレビ系列で2003年から不定期で放送された『放送禁止』シリーズがモキュメンタリーの代表例として知られ、2024年にはテレビ東京系列で放送された『イシナガキクエを探しています』(TXQ FICTIONシリーズ第一弾)が話題となった[1][2]。2020年代以降の令和のホラーブームの中で、雨穴の『変な家』、背筋の『近畿地方のある場所について』などの同種の手法を採り入れたホラー小説も人気を呼んでいる[1][2]。
脚注
[ソースを編集]- 1 2 3 『現代用語の基礎知識2026』自由国民社、2026年、131,220頁。ISBN 978-4-426-10150-3。
- 1 2 3 4 5 6 なぜ今「モキュメンタリー」が熱いのか?空前のホラーブームを巻き起こした理由 - @DIME (2025年12月12日)、2026年2月1日閲覧。
- 1 2 3 4 5 中垣恒太郎 (2022). “「リアリティTV」以降のドキュメンタリー表現の変容 : モキュメンタリーにおける「リアリティ」の創出”. 人文科学年報 (専修大学人文科学研究所) 52: 23-46. doi:10.34360/00012516.
- ↑ Roscoe, Jane; Craig Hight (2001). Faking it: Mock-documentary and the Subversion of Factuality. Manchester University Press. ISBN 0719056411
- ↑ “mockumentary, n.”. Oxford English Dictionary. draft entry. Oxford University Press. 2010. 2010年7月28日閲覧.
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