イシナガキクエを探しています

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イシナガキクエを探しています』(イシナガキクエをさがしています)は、2024年4月30日4月29日深夜)、 5月11日5月10日深夜)、5月18日5月17日深夜)に「TXQ FICTION」枠で放送されたテレビドラマである。

本作は、1969年に失踪した女性「イシナガキクエ」を探し続けている高齢男性の米原実次(よねはら・さねつぐ)の遺志を継いで制作された公開捜査番組という設定のモキュメンタリーである[1]。番組ではフィクションである事を示すため、番組冒頭と番組最後に「この番組はフィクションです。実際の人物や事件とは無関係です」というテロップが表示されている。

あらすじ[編集]

第1話
長年にわたり「イシナガキクエ」という女性を探してきた米原実次は、とあるテレビ局に協力を依頼する[2]。2024年2月に米原が死亡したため、テレビ局は彼の遺志を継いで公開捜索番組を放送する[2]
まず、VTRで米原がイシナガを探す様子が映し出される[2]。米原の近所の人はイシナガの実在を疑っており、スタッフからそのことを伝えられた米原は1枚の不鮮明な写真を見せ、それが彼女の写真だと説明する[2]
ここで番組が視聴者に情報提供を募ったところ、米原の近隣住民だという者から「米原の没後、彼の自宅周辺に大勢の人が出入りしていた」という連絡が電話で寄せられたほか、動画も寄せられた[2]。​​
第2話
全国各地から目撃情報や消息の憶測情報が寄せられる中、心霊系YouTuberのキラフから、2024年2月9日にある廃屋内を撮影した際に、裏面に番号が振られた、イシナガキクエに似た人物が写った不鮮明な35枚以上の写真を発見した情報が寄せられ、番組内でその映像が公開される。
また、上田怜歩那という中学生からも「2024年5月6日に池の生態調査をしていたところ、池の中から謎のビデオカメラを発見した」という連絡が寄せられる。怜歩那から提供された映像には、男性2人がウェットスーツを着て池の中を探索する様子や、池の水中内に額縁らしき物に入れられたイシナガキクエに似た人物の写真が人型の物体に縛り付けられている様子が映っていた。
第3話
スタジオにはゲストも電話オペレーターも居ず、司会の安東のみで進行する。
安東は、キラフが発見した写真を解析したところ米原が持っていたキクエの写真と同一人物の可能性が高いと判明、上田に提供されたビデオテープの内容は情報を整理中と報告。そして新たに匿名視聴者から寄せられたビデオテープを公開する。
それは、1987年生放送のローカルテレビ番組の録画で、会いたい人物を探し出し対面するコーナーにキクエを探す米原が出演していた。結果、キクエは見つからなかったと知った米原は「何体も処理している35体も」「見つからないのが一番良い」「キクエがこの世にいない事を確認して欲しくてここに来た」と司会者に詰め寄り「キクエを見つけたら」とカメラに向け住所と電話番号を掲出していた。
2024年5月12日、特別公開捜査番組スタッフが住所を当たると稲垣一義という男性が住んでいた。稲垣によると電話番号は以前この家で使っていた物で、米原は生前占いや祓いをしていた母・乙の顧客かもしれないという。乙が仕事で使っていた留守番電話のテープを調査すると、1990年に米原から「1体見つけたので処置をお願いしたい」「今回も代理人をこちらで用意する」との依頼が残されていた。
映像はスタジオに戻り「放送時間の関係上、一部お伝えできませんでした」とテロップが表示される。そして番組は最終回と安東が伝えた後、2024年2月12日米原が自宅近くの畑で焼死体で見つかったことを報じるニュース番組映像が流れ、番組は幕を閉じる。

登場人物[編集]

イシナガ キクエ〈77〉[3]
演 - 堀口さほ
1969年に失踪した、当時22歳の女性。名前の漢字表記は不明。1947年昭和22年)8月10日生まれ。身長145cm。中肉中背。会話はできない(米原曰く「喋れないのではなく、おとなしい」とのこと)[4]
米原実次(よねはら さねつぐ)〈享年84〉
演 - 中山克己[5]
イシナガキクエの行方を探していた男性。イシナガキクエとの関係は「家族みたいなもの」とのこと[4]。2024年2月に死去。5人兄弟の次男で、両親は林業を営んでおり広大な山林を所有していた。家族はみな亡くなり、1人暮らししていた。

特別公開捜索番組[編集]

安東弘樹
演 - 本人[5]
特別公開捜索番組の司会者。
神崎一郎
演 - 帆足健志[5](第1話・第2話)
元警視庁刑事。特別公開捜索番組のゲスト。
サーヤ(ラランド
演 - 本人[5](第1話・第2話)
特別公開捜索番組のゲスト[2]
ナレーション
声 - 水原恵理

その他[編集]

キラフ
心霊系YouTuberの男性。15年前に空き家となったとされる家屋を探索するなか、手書きで番号が振られた35枚以上の不鮮明な写真を見つける。
上田怜歩那
演 - 本人(第2話)
生物研究会に所属する中学1年生。池の生態調査中にビデオカメラを拾い、その中に入っていたテープを番組に提供する。
稲垣義一
演 - 木村清志(第3話)
37年前のテレビ番組で米原が「キクエを見かけたらここに連絡して欲しい」と示した住所に住んでいる男性。現在は1人暮らし。母親が生前仕事依頼のメモ代わりにしていた留守番電話の録音テープを取材スタッフに貸与する。
稲垣乙
演 - 冨井桂子(第3話)
義一の母。故人。生前は占いお祓いを生業としており、その客が自宅によく訪れていた。

放送日程[編集]

各話 放送日
第1話 2024年4月30日
第2話 2024年5月11日
第3話 2024年5月18日

制作[編集]

本作は、新しく創設された番組枠「TXQ FICTION」の中でモキュメンタリーを作るという目的があり、これまで大森時生が手掛けた作品でよく見られた構造でのだまし討ちなどではなく、フィクションとしての強度を高めるという方針が立てられた[1]。『フェイクドキュメンタリー「Q」』の寺内康太郎と皆口大地も制作に参加している[1]。皆口には『世にも奇妙な物語』のように、タイトルを聞いてどんな番組か想像できるようにしたいという思惑があり[6]、モキュメンタリーを作ると聞いた時には入れ子の構成にすることを思い当たった[7]。皆口のテレビ番組への愛に加え、予算上の都合もあった[7]

ライターのダ・ヴィンチ・恐山は大森との対談の中で、番組の内容について、幼少期に見た公開捜査番組のざわざわした感じを思い起こしたと語っており、番組の体裁からホラーの感触もあったが、テレビの中で起きていることへの不安が強く、「大昔に失踪した一般人の公開捜査番組」というコンセプトそのものがいびつだとしている。一方、恐山は大森の過去作品よりも番組内容を事実だと誤認する者が続出しそうだと指摘しており、これについて大森は過去に手掛けた『SIX HACK』よりも30分早い0時半からの放送であり、事前情報なしで見ている視聴者が多いからかもしれないと分析している[1]

なお、リアリティーを出すために、公開捜査番組では問い合わせ窓口の様子が表示されていたことにちなみ、スタジオ内には電話が用意された[1]。それに関連して、視聴者からの情報提供を呼び掛けるための問い合わせ窓口の電話番号が表示される場面が用意されており、関係各所との綿密なすり合わせを行った上で表示される番号には実在のものが使われた[1]

反響[編集]

第1話はその展開からインターネット上で反響が起きた[2][8]。また、大森によると、番組内で表示された電話番号にかける者が続出し、その回線が輻輳した[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g "テレ東・大森時生×ダ・ヴィンチ・恐山 2人が語る「イシナガキクエを探しています」とフェイクドキュメンタリーの未来". WWDJAPAN (Interview). Interviewed by 高山. 10 May 2024. 2024年5月11日閲覧
  2. ^ a b c d e f g 『イシナガキクエを探しています』行方不明女性はどこに?不気味な展開に「違和感しかない」”. plus.tver.jp (2024年5月7日). 2024年5月11日閲覧。
  3. ^ 番組のホワイトボードに書かれていた数字そのまま。1947年8月10日生まれであれば、2024年8月10日の誕生日で77歳となるが、番組放送時の4月末~5月は誕生日前でありイシナガキクエは76歳であるはずだが、これに関しての理由は言及されておらず不明。
  4. ^ a b 55年前、突如行方不明になった女性を探し求めて…”. テレ東プラス (2024年5月2日). 2024年5月17日閲覧。
  5. ^ a b c d allcinema|TXQ FICTION 2024|クレジット
  6. ^ "「イシナガキクエを探しています」皆口大地と大森時生が"新時代のフェイクドキュメンタリー"に仕掛けた秘密". CREA (Interview). Interviewed by むくろ幽介. 7 May 2024. 2024年5月11日閲覧
  7. ^ a b "「イシナガキクエを探しています」皆口大地と大森時生が"新時代のフェイクドキュメンタリー"に仕掛けた秘密(2ページ目)". CREA (Interview). Interviewed by むくろ幽介. 7 May 2024. 2024年5月11日閲覧
  8. ^ 「イシナガキクエを探しています」 安東弘樹アナ、なぜかテロップと違う時間を告知 ネットザワつく/デイリースポーツ online”. デイリースポーツ online (2024年5月11日). 2024年5月11日閲覧。