宇宙戦争 (ラジオ)

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宇宙戦争のパニックを描いた風刺漫画(1939年)

宇宙戦争』(うちゅうせんそう、The War of the Worlds)は、オーソン・ウェルズが、H.G.ウェルズのSF小説『宇宙戦争』をラジオ番組化したものである。

概要[編集]

1938年10月30日ハロウィン特別番組として、アメリカのラジオ番組『マーキュリー放送劇場英語: The Mercury Theatre on the Air)』で放送された[1]。番組は、音楽中継の途中に突如として臨時ニュースとして火星人の侵略が報じられるという体裁になっており、物語の舞台は番組が放送されたアメリカ合衆国に実在する地名に改変されていた[1]。この生放送は多くの聴取者を恐怖させ、実際の火星人侵略が進行中であると信じさせた。

侵略がフィクションである旨を告げる「お断り」が何度もあったと言われるが、そのうちの1度は放送開始直後、残り2度は終了間際であったため、その間、聴取者側から見れば、混乱と恐怖のための時間が充分残っていた。番組の内容がウェルズの『宇宙戦争』であることに気がついた人や、番組内容の非現実的なディテールに気がついた人、他のラジオ局の放送内容と照らし合わせたり、新聞の番組表を見直すなど批判的な確認をして事実を掴んだ人もいる一方[1]、同じように番組を聴いていて混乱していた人に確認の電話をかけてしまった人など、偶然にも誤解を強めるような状況に遭遇してしまった人もいた[1]。放送が行われた当時はナチス・ドイツの台頭により、開戦への緊張感が高まっている時代であったことも関係したと考えられる[1]

オーソン・ウェルズの翻案は、おそらく歴史上最も成功したラジオドラマ作品であろう。それは、Radio Projectの最初の研究課題のひとつとなった。

ただし、このパニックについては、疑いも持たれている。全国の警察に膨大な量の問い合わせの電話があったことは事実であるが、それ以上の行動が起こったという証拠はほとんどない。実際のパニックはごく僅かなもので、当時新興メディアであったラジオに対して警戒心をあらわにしていた新聞がことさらにバッシングを行ったことが都市伝説化したものだとする説も有力である[1]

番組概要[編集]

火星人がVan Ness Parkに「着陸した」ところを祝っている記念碑。

H.G.ウェルズの小説は、19世紀末の地球に対する火星人の侵略についての物語で、イギリスで繰り広げられる出来事に遭遇する人物を語り手としている。

ラジオドラマのストーリーは、当初Howard Kochが翻案、執筆したものに、オーソン・ウェルズやCBSMercury Theatre On The Airのスタッフからのアイディアが取り入れられたものであった。

舞台は、後にニュージャージー州West Windsor Townshipに編入される、放送当時実在のコミュニティ、Grover's Millへと移され、ラジオ番組の形式は、発生中の事件の生中継を模することになっていた。このためにウェルズは、Herbert Morrisonによるヒンデンブルク号爆発事故のラジオレポートの録音を、俳優Frank Readick他のキャストに再生してみせてまで、彼が求める雰囲気を示そうとした。

パニックを再現した作品[編集]

フィラデルフィアを舞台にしたアメリカ合衆国(CBS)の刑事ドラマ『コールドケース 迷宮事件簿』では、シーズン5第7話(通算100話。2007年11月4日放送)「火星人襲来」(原題World's End)で、この時のラジオ放送と、パニックになる人々が描かれた(それに関連して殺人事件が起きており、その解決の糸口になっていた)。

参考資料[編集]

  • 『H・Gウェルズの宇宙戦争』 ユニコム〈CD+BOOK 全米ラジオドラマ傑作選 ミステリー劇場〉、ISBN 978-4896893892

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 松田美佐 『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」』 中央公論新社中公新書〉、2014年4月25日、34-37頁。ISBN 978-4-12-102263-9

関連項目[編集]