クイーン・エリザベス (空母)
クイーン・エリザベス | |
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![]() HMS Queen Elizabeth, February 2018 | |
基本情報 | |
建造所 | ロサイス造船所 |
運用者 |
![]() |
艦種 | 航空母艦 |
級名 | クイーン・エリザベス級航空母艦 |
前級 | インヴィンシブル級航空母艦 |
艦歴 | |
発注 | 2008年5月20日 |
起工 | 2009年7月7日 |
進水 | 2014年7月17日 |
就役 | 2017年12月7日 |
要目 | |
基準排水量 | 45,000トン |
満載排水量 | 67,669トン |
全長 | 284m |
最大幅 | 73m |
水線幅 | 39m |
吃水 | 9.9m |
最大速力 | 26 ノット |
航続距離 | 10,000海里(18,520 km) |
乗員 | 約1600人 うち操艦要員:679名[1] |
兵装 |
・ファランクスCIWS3基 ・30mm単装機銃4基 |
搭載機 |
F-35BV/STOL機 ・ヘリコプター (合計して平時約40機、戦時には最大48機) |
クイーン・エリザベス(英語: HMS Queen Elizabeth;R08)は、イギリス海軍の航空母艦。クイーン・エリザベス級航空母艦の1番艦。
概要[編集]

本艦は多目的の航空母艦として複数の任務に対応する。船体は4つのセクションがポーツマス、ロサイス、バロー・イン・ファーネス、クライドでBAEシステムズとVT グループによって建造される。
2007年7月25日、国防大臣デズ・ブラウンは、38億ポンドで2隻の発注を契約した。このニュースは政治家、労働組合に歓迎された[2]。両艦ともポーツマス海軍基地を拠点とする予定である[3]。この時点の計画ではスキージャンプ式滑走路を備え、艦載ヘリコプターのほかV/STOL型であるF-35Bを積む予定であった。
2008年12月11日、国防大臣ジョン・ハットンは、2隻の就航が当初予定の2014年と2016年よりも1年か2年遅れると発表した[4]。
2010年10月、クイーン・エリザベス級航空母艦の搭載機を、開発が著しく遅延しているF-35BからCTOL型のF-35Cへと変更した。この時点では36機のF-35Cと12機のヘリコプターを搭載する能力を備える2番艦と異なり、ヘリコプターのみを艦載機として搭載するヘリ空母として2016年に就役し、2019年の2番艦就役を待って予備役に編入される予定であった[5]。
2012年5月10日イギリス政府は、F-35Cの実戦配備が2023年まで遅れる見込みのため、搭載機を再度F-35Bに変更すると発表した[6]。
艦歴[編集]
2009年7月9日に起工。
2014年7月4日、進水式を実施した。エリザベス2世及びエディンバラ公フィリップが出席し、エリザベス2世も訪れたことがあるボウモア蒸留所のウイスキーが入ったボトルを船体にぶつけて祝った[7]。
2017年6月26日、試験航海に向けてロサイス造船所から出航。試験航海への出発時、イギリス国防大臣のマイケル・ファロンは「(唯一の空母「アドミラル・クズネツォフ」が旧式である)ロシアはうらやむことになる」「ロシアが近づきすぎないようあらゆる措置をとる」と発言。これに対してロシア連邦国防省が「(クィーン・エリザベスは)格好の標的」とやり返す一幕があった[8]。
就役は2017年12月7日であった[9]。同月19日、イギリス国防省は、試験航海中にプロペラシャフトのシール部分から浸水が発見されたと発表。サン紙では、漏水の規模を毎時200リットルとしている[10]。
2018年9月28日、「クイーン・エリザベス」で初めてF-35Bの着艦に成功したと発表された[11]。
2019年2月11日、「クイーン・エリザベス」を2021年以降に太平洋、地中海、中東沖に派遣すると発表した。また、F-35を搭載することも同時に発表している[12][13]。
2021年1月27日、イギリス海軍の艦隊旗艦の任務を揚陸艦「アルビオン」から継承した[14]。同年6月、フランスのトゥーロン沖合で、同国の原子力空母「シャルル・ド・ゴール」と初めての合同訓練を行った[15]。同月22日、イギリス国防省は、アメリカ海兵隊とイギリス軍のF-35Bがクイーン・エリザベスの艦載機として中東にてイスラーム過激派組織ISILに対する掃討作戦を行ったと発表した[16]。
同年5月27日、地中海、インド洋、極東地域に至る7か月に及ぶ航海に出航[17]。
同年7月11日〜7月12日にかけて海上自衛隊派遣海賊対処行動水上部隊の護衛艦「せとぎり」及び派遣海賊対処行動航空隊の哨戒機P-3Cなどとソマリア沖・アデン湾で共同訓練を行ったと7月13日に発表された[18][19]。
同年7月14日、定期検査を行ったところ、乗組員約3,700人のうち、約100人が新型コロナウイルスに感染していたことが判明したと発表。キプロス寄港中に乗組員の上陸が認められていたことがあり、同年7月4日を境に感染が流行し始めたという。なお、乗組員は全員がワクチンを接種していた。また、今後の作戦に支障はないとの見解も同時に発表している[20]。
同年7月20日、9月中に空母打撃群が自衛隊基地及び在日米軍基地に寄港すると発表した。空母打撃群は横須賀や呉、佐世保、舞鶴、大湊などそれぞれの海上自衛隊基地に入港し、本艦は横須賀の在日米軍基地に入港する予定であるという[21]。その後、本艦の入港時期を同年9月4日から同月9日にかけて入港すると正式に発表した。乗組員の上陸は許可されず、艦艇の一般公開等も行われないという[22] [23]。
同年8月20日から本艦を中心とする空母打撃群(CSG 21)は米海軍強襲揚陸艦「アメリカ」遠征打撃群(AMA ESG)と共同演習を実施し[24]、8月24日には沖縄南方海空域において海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いせ」、護衛艦「あさひ」を加え共同訓練「ノーブル・ユニオン」を行った[24][25][26]。引き続き25日から28日にかけて海自艦艇と日英米蘭共同訓練(PACIFIC CROWN 21-1及び21-2)を実施した[27][28]。
また、同年8月25日、韓国国防部によると、当初は韓国釜山に入港する予定であったが、前述した新型コロナウイルスによる感染が艦内で拡大していたため、本艦の入港を見送ると発表した。なお、代わりに同年8月30日〜翌月1日まで韓国海軍と災害発生時の救助作業の合同訓練などが行われると同時に発表されている[29][30]。予定通り韓国海軍との合同演習が行われた。韓国海軍とイギリス海軍の合同演習は史上初のことであり、韓国海軍からは独島級揚陸艦「独島」や潜水艦、駆逐艦らが参加した[31]。
同年9月2日から7日にかけて、東シナ海から四国南方を経て関東南方に至る海空域において、再び海自艦艇等と日英米蘭加共同訓練(PACIFIC CROWN 21‐3)を実施する[32]。海自からは護衛艦が「いせ」の他6隻、潜水艦1隻、P‐1哨戒機が、航空自衛隊からはF-2、F-15戦闘機、E-767早期警戒管制機が参加し、対抗戦、防空戦、対潜戦等を実施する[32]。また、英国空母打撃群には、カナダ海軍フリゲート「ウィニペグ」が加わった[32]。
同年9月3日、翌4日から9日にかけて米軍横須賀海軍施設への寄港が発表され、予定通り9月4日に横須賀基地へ入港した。9月6日には岸信夫防衛大臣が横須賀を訪れて、本艦を視察した[33]。
同月8日、当初の予定を1日早めて横須賀を出港し、翌9日まで関東東方の海空域において、海上自衛隊護衛艦「いせ」、「いずも」及び航空自衛隊F-35A、E-767等と日英米蘭加共同訓練(PACIFIC CROWN 21‐4)を実施する[34]。
同年10月2日及び3日には沖縄南西海空域において海上自衛隊護衛艦「いせ」、「きりしま」、「やまぎり」、米海軍空母「ロナルド・レーガン」、「カール・ヴィンソン」などと日米英蘭加新共同訓練を実施し[35]、翌10月4日から9日にかけて、南シナ海において海上自衛隊護衛艦「しらぬい」と日米英蘭加新共同訓練を実施した[36]。さらに10月15日から18日には海上自衛隊護衛艦「かが」、「むらさめ」、米海軍空母「カール・ヴィンソン」他、米海軍、豪海軍と日米豪英共同訓練を実施する[37]。11月11日、アデン湾において海上自衛隊派遣海賊対処行動水上部隊の護衛艦「ゆうぎり」との間で共同訓練を実施した[38]。
英国空母打撃群[編集]
2021年4月、「クイーン・エリザベス」を中心とする英国空母打撃群をCSG21と称し、構成艦艇が発表され、45型駆逐艦2隻、23型フリゲート2隻、タイド型給油艦 、フォート・ヴィクトリア級補給艦 各1隻とアメリカ海軍アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦とオランダ海軍デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲート各1隻のNATO諸国も含まれる混成艦隊で編成され、航空部隊もイギリス空軍とアメリカ海兵隊のF-35BライトニングⅡ部隊及びイギリス海軍SAR対応ワイルドキャット HMA.2部隊とマーリン HM.1部隊の英米混成編成となり、公表されないアスチュート級原子力潜水艦も帯同し、更にNATO所属艦艇が参加するとする報道もあり、この編成で年内予定される西太平洋遠征が実施されるとみられている[39][40]。
- 旗艦空母
- クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth:R08)
- イギリス空軍第617飛行隊「ダムバスターズ」(RAF 617SQ):F-35B 8機
- イギリス海軍815海軍航空隊(815 NAS)、820海軍航空隊(820 NAS):ワイルドキャット HMA.2
- イギリス海軍845海軍航空隊(845 NAS):マーリン HM.1
- アメリカ海兵隊第211海兵戦闘攻撃飛行隊(USMC VMFA-211):F-35B 10機
- クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth:R08)
- 45型駆逐艦
- 23型フリゲート
- リッチモンド(HMS Richmond:F239)
- ケント(HMS Kent:F78)
- アスチュート級原子力潜水艦
- アートフル(HMS Artful:S121)
- 米海軍アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦
- 蘭海軍デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲート
- エヴァーツェン (HNLMS Evertsen:F805)
- 後方支援艦艇
- タイド型給油艦
- タイドスプリング(RFA Tidespring:A136)
- フォート・ヴィクトリア級補給艦
- フォート・ヴィクトリア(RFA Fort Victoria:A387)
- タイド型給油艦
艦名[編集]
かつて、クイーン・エリザベスという客船と軍艦がイギリスに同時に存在した。1940年から1948年の間、キュナード社の客船「クイーン・エリザベス」と、イギリス海軍の戦艦「クイーン・エリザベス」が同時に現役であった。
2010年にキュナード社のクルーズ客船である「クイーン・エリザベス」が就航しており2017年には約70年ぶりに同じ状況が復活した。
ただし、20世紀と21世紀どちらの艦船も、名の由来の「クイーン」は、客船は王妃エリザベス、軍艦は女王エリザベスである。
ギャラリー[編集]
脚注[編集]
- ^ built by the nation for the nationaircraft carrier alliance
- ^ “MoD confirms £3.8bn carrier order”. BBC NEWS. (2007年7月25日) 2020年7月14日閲覧。
- ^ “Aircraft carriers delayed”. BBC 2008年12月15日閲覧。
- ^ 『世界の艦船』2011年12月号 海外艦艇ニュース
- ^ 英国:F-35戦闘機の機種変更 開発3年遅れで 毎日新聞 2012年05月12日
- ^ “英女王、新空母に命名「クイーン・エリザベス」 英海軍最大”. AFPBBNews (フランス通信社). (2014年7月5日) 2014年7月7日閲覧。
- ^ “新空母は「格好の標的」?=英国とロシアが舌戦”. 時事通信. (2017年7月3日)
- ^ “Queen to commission namesake aircraft carrier in three weeks, Defence Secretary announces on flight-deck”. Royal Navy (2017年11月16日). 2020年7月14日閲覧。
- ^ 英史上最大の空母、就役直後に浸水発覚で修理へロイター(2017年12月20日)2017年12月20日閲覧
- ^ “英空母クイーン・エリザベスにF-35Bが初着艦”. 航空新聞社. (2018年10月2日) 2018年10月21日閲覧。
- ^ “英最新鋭空母、太平洋へ 中国けん制、21年以降”. 産経新聞. (2019年2月12日) 2019年2月12日閲覧。
- ^ “英の最新鋭空母、太平洋へ 中国けん制、21年以降”. 沖縄タイムス. 共同通信. (2019年2月12日). オリジナルの2019年2月12日時点におけるアーカイブ。 2020年7月14日閲覧。
- ^ @RoyalNavy (2021年1月28日). "The start of a new era…" (ツイート). Twitterより2021年2月9日閲覧。
- ^ “仏英空母が共演 地中海で合同演習”. AFP (2021年6月4日). 2021年6月5日閲覧。
- ^ “米戦闘機、英空母クイーン・エリザベスから実戦参加 中東での作戦支援”. CNN (2021年6月22日). 2021年7月13日閲覧。
- ^ “英空母でコロナ集団感染、100人規模か 寄港先で外出”. 朝日新聞 (2021年7月15日). 2021年7月20日閲覧。
- ^ “海自と英空母打撃群、アデン湾で初の共同訓練 今後も戦略的に実施”. 毎日新聞. (2021年7月13日) 2021年7月13日閲覧。
- ^ “海自が英空母と共同訓練”. 時事通信. (2021年7月13日) 2021年7月13日閲覧。
- ^ “英空母でコロナ集団感染、100人規模か 寄港先で外出”. 朝日新聞. (2021年7月15日) 2021年7月15日閲覧。
- ^ “英、空母打撃群を日本に派遣 中国をけん制”. AFPBB. (2021年7月21日) 2021年7月24日閲覧。
- ^ “空母「クイーン・エリザベス」、9月4日〜9日に米横須賀基地へ入港”. FlyTeam. (2021年9月3日) 2021年9月3日閲覧。
- ^ “英最新空母、横須賀寄港へ 4~9日、乗組員下船せず”. 産経新聞. (2021年9月3日) 2021年9月3日閲覧。
- ^ a b “クイーン・エリザベス空母打撃群・USSアメリカに陸自ヘリ搭載「いせ」合流”. FlyTeam. (2021年8月25日) 2021年8月26日閲覧。
- ^ “自衛隊、英空母「クイーン・エリザベス」と共同訓練…沖縄南方で米・オランダも参加”. 読売新聞. (2021年8月25日) 2021年8月26日閲覧。
- ^ “UK carrier Queen Elizabeth holds maiden drill with Japan's SDF”. NIKKEI ASIA. (2021年8月26日) 2021年8月26日閲覧。
- ^ 日英米蘭共同訓練(PACIFIC CROWN 21-1)について 海上幕僚監部(令和3年8月27日) (PDF)
- ^ 日英米蘭共同訓練(PACIFIC CROWN 21-2)について 海上幕僚監部(令和3年8月29日) (PDF)
- ^ “英空母"コロナ発生"で釜山への入港見送り”. 日テレNEWS24. (2021年8月26日) 2021年8月26日閲覧。
- ^ “英空母"コロナ発生"で釜山への入港見送り”. 日本海テレビ. (2021年8月26日) 2021年8月26日閲覧。
- ^ “韓・英海軍、初の合同演習 韓国近海、最新鋭空母が参加”. 中日新聞. (2021年9月2日) 2021年9月3日閲覧。
- ^ a b c 日英米蘭加共同訓練(PACIFIC CROWN 21-3)について 海上幕僚監部(令和3年9月2日) (PDF)
- ^ “岸防衛相 英空母「クイーン・エリザベス」視察 防衛協力深化へ”. NHK newsweb. (2021年9月6日) 2021年9月6日閲覧。
- ^ 日英米蘭加共同訓練(PACIFIC CROWN 21-4)について 海上幕僚監部(令和3年9月8日) (PDF)
- ^ 日米英蘭加新共同訓練について 海上幕僚監部(令和3年10月4日) (PDF)
- ^ 日米英蘭加新共同訓練について (PDF)
- ^ 日米豪英共同訓練(Maritime Partnership Exercise)の実施について (PDF)
- ^ 英空母打撃群との共同訓練の実施について 統合幕僚監部(2021年11月12日) (PDF)
- ^ Commander UK Carrier Strike Group
- ^ クイーン・エリザベス空母打撃群、構成固まる オランダ海軍も参加
外部リンク[編集]
- HMS Queen Elizabeth - イギリス海軍
- 【艦内説明ノーカット】英 “最新鋭”空母クイーン・エリザベス…!内部公開の全貌 【公式】日テレNEWS 2021/09/24