垂直/短距離離着陸機

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RIAT2008に参加したイギリス空軍のハリアーGR9
艦船に向けて着陸進入中のアメリカ海兵隊のMV-22オスプレイ

垂直/短距離離着陸機V/STOL機, vertical and/or short take-off and landing aircraft)とは、垂直にまたは短い滑走路で離着陸できる飛行機である。V/STOL機の一形式である垂直離着陸機(VTOL機, Vertical takeoff and landing aircraft)は、V/STOL機のうち、滑走路を必要としないものをいう。V/STOL機は、通常、ホバリングが可能である。慣例的に、V/STOL機に分類されるのは飛行機だけであり、ヘリコプターはこれに含まれない。この場合の飛行機とは、空中を滑空しながら前進飛行することにより揚力を生み出し、ヘリコプターよりもはるかに速い速度と高い燃料効率で飛行できる航空機をいう。

1950年代から1970年代にかけて、V/STOL機に関する実験が数多く行われたが、そのほとんどは失敗に終わった。量産化されたV/STOL機は、ハリアーYak-38フォージャーV-22オスプレイなどに限られている。

V/STOL機は、滑走着陸(傾斜のついたジャンプ台を用いる場合を含む)を行うことにより、(垂直離陸を行うよりも)機体を地上から浮かせるために必要な推力を節減し、その結果、ペイロードと航続距離を増大することが可能となる。ちなみに、ハリアーは、完全武装で燃料を満タンにした場合は垂直離陸ができない。このため、V/STOL機は、滑走路が利用可能な場合には、それを用いるのが通常である。つまり、垂直離着陸機として運用するよりも、短距離離陸垂直着陸機(STOVL機, short takeoff and vertical landing aircraft)または通常離着陸機(CTOL機, conventional takeoff and landing aircraft)として運用されることが多い。 

V/STOL機の目的は、森の中の開豁地や非常に短い滑走路、かつてはヘリコプターしか運用できなかった小型の航空母艦などにおいても、高速なジェット機を運用できるようにすることであった。

V/STOL機の主だった利点は、敵の近くに支援基盤を設けることにより、支援要求に対応するために必要な時間を短縮するとともに、空中給油機による支援を不要にできることである。フォークランド紛争においては、カタパルトを装備する巨大な航空母艦を用いることなく、高性能な戦闘機による対空防御および対地攻撃を行うことを可能にした。

V/STOL機の一覧[編集]

V/STOL機には多数の形式が存在する。以下に示すのは、その一部である。

推力偏向スラスト機[編集]

ティルトジェット機[編集]

ティルトローター機[編集]

ティルトウィング機[編集]

  • カーチス・ライト X-19:4発の回転プロペラを持つティルトウィング機
  • カナディア CL-84 ダイナバート:2発のターボプロップを装備したティルトウィング
  • LTV XC-142:4発のティルトウィング(連結シャフトを有するターボプロップ)
  • ベル X-22:方向を変えられるダクテッド・プロペラを装備する、V-22よりもやや小型の試作輸送機
  • ヒラー X-18

推力/揚力分離型機[編集]

  • ドルニエ Do 31:ベクトル・ノズルおよびリフト・エンジンを装備したジェット輸送機
  • カモフ Ka-22
  • ロッキード XV-4 ハミングバード
  • ダッソー バルザック V (「V」は垂直を意味する。ミラージュ IIIの改修型機)
  • ダッソー ミラージュ IIIV: 初の超音速VTOL機(試験中にマッハ2.03を記録)
  • ライアン XV-5:翼の中のフアンがエンジンの排気ガスで駆動される。
  • VFW VAK 191B:ハリアーに類似した攻撃戦闘機であるが、翼およびリフト・エンジンが小型化され、超音速飛行が可能である。試験飛行は行ったが、運用開始には至らなかった。
  • ヤコヴレフ Yak-38
  • ヤコヴレフ Yak-141
  • ショート SC.1

超音速機[編集]

数多くの超音速V/STOL機が提案・製造されてきたが、飛行試験までに至らなかった機体がほとんどである。2016年に装備化されたF-35Bは、初の、そして唯一の実用超音速V/STOL機である。[1]

  • ベル D-188A :スイベル・エンジンを用いてマッハ2を目指した(モックアップのみ)
  • EWR VJ 101:マッハ2を目指した戦闘機、マッハ1.04を記録したが実用化はされなかった。
  • ダッソー ミラージュ IIIV:マッハ2を目指したデルタ翼の戦闘機。リフト・エンジンを用いた、初めての超音速VTOL機であった。試験間にマッハ2.03を記録したが、実用化はされなかった。
  • ホーカー・シドレー P.1154:マッハ1.7で飛行する超音速ハリアーであったが、完成には至らなかった。
  • ロックウェル XFV-12:複雑な「ブラインド・カーテン」状の翼を有していたが、自重を支えることができなかった。
  • ヤコヴレフ Yak-141:リフト・エンジンに加えて、スイベル・テールパイプを装備していた。
  • ロッキード・マーチン X-35B / F-35B:推力偏向ノズルを有するエンジン(プラット・アンド・ホイットニー F135)に加えて、シャフト駆動されるリフトファンを装備している。短距離離陸、超音速飛行および垂直着陸を1つのソーティーで行うことのできる初めての航空機である。[2]

脚注[編集]

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  1. ^ "Report: F-35 Work Falls Behind Two More Years." CQ Politics, 23 July 2009.
  2. ^ Kjelgaard, Chris (Senior Editor). "From Supersonic to Hover: How the F-35 Flies." space.com, 21 December 2007.

外部リンク[編集]