杜祖健
杜祖健(と そけん、英語名Anthony T.Tu、アンソニー・ツ、1930年 - )はアメリカの化学者。コロラド州立大学名誉教授、千葉科学大学教授。毒性学および生物兵器・化学兵器の専門家として知られ、松本サリン事件解明のきっかけを作った。趣味はピアノ演奏。流暢な日本語を話す。
経歴
1930年に薬理学者杜聡明の三男として、台北市で生まれる。台北市樺山小学校、台北一中を経て[1]、1953年に台湾大学理学部を卒業後アメリカに渡り、ノートルダム大学、スタンフォード大学、エール大学で化学と生化学を研修。専門はヘビ毒に関する毒物研究[2]。1957年に日系アメリカ人女性と結婚[3]。ユタ州立大学で教職を得、1967年コロラド州立大学に移籍(1998年に名誉教授となる)。1992年、天然毒素専門の出版社「Alaken, Inc」を設立[4]。2004年、千葉科学大学に創設された危機管理学部の教授に就任。順天堂大学の客員教授も務める。2009年旭日中綬章受章[5]。
オウム真理教による一連のサリン事件で、日本の警察当局にサリンの分析方法を指導するなど活躍している。
日米平和・文化交流協会理事。
オウム事件との関わり
松本サリン事件が起こった1994年、日本の化学専門誌「現代化学」の依頼で、論文「猛毒『サリン』とその類似体」を寄稿した。その中の「土壌中のサリン分解物によるサリンの検出法」に注目した警察庁科学警察研究所(角田紀子所長)のために、アメリカ陸軍からサリン分解物の土壌中での毒性や分析法を解説した資料30枚を入手し、研究所に渡した。同年秋、警察当局は山梨県の旧上九一色村にあったオウム真理教の施設付近の土壌中からサリン分解物を検出することに成功し、教団とサリンを結びつけるきっかけのひとつとなった[6]。
2011年には、サリン製造の中心人物だった教団元幹部の中川智正死刑囚と東京拘置所で面会し、教団による殺人事件に使用されたVXガスが、自分の論文をヒントに製造されたことを知る[6]。
著書
- 『毒蛇の博物誌』講談社、1984年。
- 『中毒学概論 -毒の科学-』薬業時報社、1999年。
- 『化学・生物兵器概論』薬業時報社、2001年。
- 『事件からみた毒 トリカブトからサリンまで』化学同人、2001年。
- 『生物兵器、テロとその対処法』薬業時報社、2002年。
- 『サリン事件の真実』新風舎文庫、2005年。
- 他、多数の著書・編著・論文あり。
脚注
- ^ 杜祖健博士榮獲日本天皇旭日中綬章北投埔林炳炎、2009年11月03日
- ^ 自著『サリン事件 科学者の目でテロの真相に迫る』 東京化学同人、2014年4月
- ^ Kazuko Yamamoto Tucoloradoan.com, Dec. 19, 2012
- ^ Company ProfileAlaken, Inc
- ^ Professor honored by Japan for help solving '90s sarin gas attacksColorado State University, November 23, 2009
- ^ a b 松本サリン事件20年 盗まれた論文…風化する「化学兵器」の衝撃産経新聞、2014年6月26日