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在日ブラジル人

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在日ブラジル人
ブラジルの旗日本の旗
総人口
210,032人[1]
居住地域
愛知など東海地方群馬など北関東埼玉千葉県神奈川長野県滋賀
言語
ブラジル語日本語
宗教
カトリックプロテスタント仏教神道

在日ブラジル人(ざいにちブラジルじん、ブラジル語: Brasileiros no Japão)とは、日本に3ヶ月以上暮らしているブラジル国籍の者である。大半は日系ブラジル人であったが、現在は非日系ブラジル人も多い。

沿革

1990年入国管理法の改正により急速に増加し、2005年には30万人を超えた。しかし、ブラジルの経済発展、リーマンショックや東日本大震災などの影響などもあり、ここ数年で大幅に減少し、2011年末現在では、20万人程度となり、最盛期の2007年よりも10万人以上も減少した。最近は日本国籍を取得する者が増えているが、ブラジルは国籍離脱を認めていないため二重国籍となる。その数は数万人に達するという。

生活

 マスコミなどが日本語を話せない者が多いと報道している。しかし現実には、多くのベテラン移住者は日常生活に必要な日本語が話せ、一部にはポルトガル語会話が困難になる人もいる(聞けても話しづらい)。しかしながら、読み書きは会話と比べると非常に難しい。当然のことながら、新入ブラジル人には日本語が困難な人が多い。日系であっても文化的にはブラジル人であり、日本から見れば外国で生まれ、外国で育ち、外国の学校で学んだ外国人である。また、日本国内のみで話される独特のポルトガル語のスタイルが生まれつつある。いわば、ポルトガル語の日本方言である。この現象は、ブラジル国内のみで話される独特の日本語、日本語のブラジル方言たるコロニア語の発生に類似する。日本語とポルトガル語の両方を自由に読み書き話せる人は、驚くほど少ない。日本語のうまい人はポルトガル語が不得意な場合がある。

 そして、出稼ぎ労働者が多い。特にブラジル人労働者を多く受け入れている自治体はブラジリアンタウンと呼ばれる。日本各地のブラジリアンタウンには、在日ブラジル人向けのブラジル料理店(ブラジリアンレストラン)やブラジルのビデオなど生活雑貨を取り扱う店が数多くある。岐阜県可児市など在日ブラジル人向けを中心にブラジル野菜を栽培・生産している場所もある。日本のマスコミはしばしばブラジリアンタウン、ブラジリアンレストラン、ブラジリアンスクール、ブラジリアン柔術等の英語起源の表現を用いる。ブラジル人は英語ではなくポルトガル語を話す。ブラジル関係の機関や文化が、日本国内でなぜ英語で呼ばれるのかは不明である。日本では中南米のスペイン語圏とポルトガル語圏(ブラジルのみ)の国民や文化の差異がよりく理解されているとはいえず、両者がしばしば混同される。

 もともとは出稼ぎを目的にして日本へ渡航したが、その後日本での定住を望む人が多く、永住権を得てやがては日本国籍を獲得していくケースがある。日本国籍の取得にはブラジル国籍の放棄を日本政府に宣言しなければならない。その宣言は日本では有効であるが、日本語で書かれておりしかもブラジル国内で公式に登録されていない書類はブラジルでは無効である。したがって、ブラジルから見れば日本国籍を取得した「元ブラジル人」は、「元」ではなく正式な「現」ブラジル人である。ひとたびブラジルの領土を踏むと、日本のパスポートで入国しても、ブラジルの国民鑑識手帳を持つ限り国内では一般のブラジル人と何の区別もない。ブラジル人には二重国籍を持つ人が少なからずおり、彼らは海外のパスポートで出入国しブラジルの国内では国民鑑識手帳で生活する。もちろんブラジルのパスポートも取れるが、その場合米国やカナダへの入国が困難になる。

 宗教面では、日本各地のキリスト教教会が在日ブラジル人の生活支援をしている。在日ブラジル人のうち約20万人がカトリック教徒といわれているが、ブラジルではカトリック教会よりプロテスタント教会のほうが圧倒的に数が多い。ただし、ブラジルのプロテスタント教会はアメリカ合衆国のそれとは性格がかなり異なる。

 ブラジルはサッカー大国であるため広く海外に人材を派遣しており、Jリーグでプレーする外国籍選手に占めるブラジル人の割合が高い。アマラオシジクレイのように長期に渡って日本で選手生活を送る者もいる(Category:在日ブラジル人のサッカー選手を参照)。また、日本各地にブラジリアン柔術カポエイラの道場があり、在日ブラジル人が多数在籍している。

 ブラジルは徴兵制を採っているため、成年になってから来日した男性はブラジル軍で兵役経験がある者がいる。しかし、ブラジルでの兵役勤務率は徴兵者のうち10%未満に過ぎず、諸外国よりも低い。したがって、在日ブラジル人男性=兵役経験者という図式は成り立たない。ブラジルの陸海空軍はその規模においても装備においても、日本の陸海空自衛隊にはるかに及ばない。空軍ではとりわけその差が顕著である。正規空母(空母サンパウロ、フランス製のクレマルソー級)の保有は例外であるが、その運営費、維持費は高額であり、海軍にとっては大きな財政負担である。兵役期間は二年であるが、多くの召集兵は一年で復員し、軍隊内部では職業軍人の割合が増えている。

人口分布

 労働力としての受け入れという観点から、在日ブラジル人は大都市には集中せずに、機械工業の集積地に集中している。特に東海地方北関東甲信地方などに集中しており、東京にはその都市規模から考えるとブラジル人は非常に少ないのが特徴である。しかし、年月とともに日本各地に拡散する傾向がある。

都道府県別ブラジル人人口

都道府県 2009
23愛知 67,162
22静岡 42,625
24三重 18,667
21岐阜 17,078
10群馬 15,324
14神奈川 13,091
11埼玉 12,301
25滋賀 11,384
20長野 10,938
08茨城 10,200
09栃木 7,710
12千葉 6,004
13東京 4,439
19山梨 4,318
27大阪 3,986
34広島 3,808
28兵庫 3,564
16富山 3,313
18福井 2,393
17石川 1,547
33岡山 1,490
32島根 1,122
15新潟 693
29奈良 686
26京都 558
07福島 383
37香川 331
40福岡 326
38愛媛 257
47沖縄 256
35山口 221
01北海道 193
04宮城 187
03岩手 175
06山形 169
30和歌山 106
44大分 95
43熊本 65
36徳島 48
46鹿児島 46
45宮崎 44
31鳥取 36
42長崎 33
02青森 32
41佐賀 21
39高知 18
05秋田 13
合計 267,456
  • 出典・・・法務省 登録外国人統計「都道府県別年齢・男女別外国人登録者(その3 ブラジル) 」2009年[1]

子弟教育

 多くのブラジル人子弟は、苦労しながらも日本の学校に通い日本社会に順応している。しかしながら、一部では彼らが暮らしている近所にある日本の学校や日本国内にあるブラジル学校に通わない不就学児がいる。[2] また日本の公立中学校への通学者の中には授業についていけず退学届を提出し受理され、その後フリーターになど社会的不安定な身分になってしまうケースがある。これらは現在社会問題となっている。

 彼らの幼い子供(幼児)を預かる所(託児所・保育所)は個人宅で、個人経営しているケースが多い。

このような例がマスコミに好んで報道されるため、多くのブラジル人が日本社会になじめないとの間違った印象が普及するケースがある。日本の学校に順応できたブラジル人子弟はとりわけ話題にならないので、多数派でありながら知られてはいない。

日本国内での行政支援

  •  日本における世界的不況の影響のため、あるいは日本自身のバブル崩壊や、天災のために職を失い、ブラジルへ帰国する者がいる。そういった者たちのため日本政府岐阜県などはブラジルへの渡航費の助成をしている。

その他

  •  在日ブラジル人のブラジル国政選挙での在外投票者は1万人ほどである。

人物

団体

脚注

  1. ^ 法務省:国籍(出身地)別 -第1表-
  2. ^ * 佐久間孝正『外国人の子どもの不就学 -異文化に開かれた教育とは-』勁草書房、2006年、ISBN 9784326298860

参考文献

関連項目

外部リンク