プライム・ローズ

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プライム・ローズ』は、手塚治虫による日本SF漫画作品。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)に1982年7月9日号から1983年6月3日号まで連載された。

1983年8月21日には本作のアニメ化作品である『タイムスリップ10000年プライム・ローズ』が24時間テレビ 「愛は地球を救う」内で放映されたが、原作が製作当時まだ完結しておらず、加えて長編ストーリーを90分にまとめた関係から、手塚本人や脚本の藤川桂介によって終盤を中心に大胆なアレンジが施されている。ストーリーの骨子や主要登場人物はさほど変わらないものの、設定やデザインを含め細部にはかなり相違点が見られる。その最たる例として、原作には近未来的なメカニックが登場するのに対して、「タイムスリップ〜」では古代ローマのような生活水準であることが挙げられる。その他人物ごとの相違点については#登場人物節で詳説する。

主人公であるプライム・ローズは、身長が低めで、また地肌に「プロテクター」をまとっただけの露出度の高い出で立ちだが、これは当時の「ラブコメ」や「ロリコンマンガ」の隆盛を受けたものと考えられる[1]

あらすじ

遥かな未来、世界にはグロマン人ククリット人という2つの人種があり、ククリット人はグロマン人の支配下に置かれていた。タチ家の養子として育てられてきた少女エミヤ・タチは、総督ピラールを倒しグロマン人による屈辱的な支配をしりぞけるため、ジンバの元で剣の腕を磨く。

タイムパトロールのタンバラ・ガイは、核爆発のショックで日本の九十九里浜アメリカダラスが1万年後の世界に飛ばされてしまった事件を調査するためこの時代を訪れ、それらの街がそれぞれククリットとグロマンのおこりであることを突き止める。一方、ガイの後を追ってこの世界にやって来たガイの弟・胆原分烈は「悪魔」と出会い、彼女が人間同士を戦わせるために2つの都市をこの時代に持ってきたのだと聞かされる。

登場人物

エミヤ・タチ
声 - 岡本茉利
十七代グロマン王の第三王女プライム・ローズとして生まれたが、ククリットとグロマンの間にひとときの平和が訪れたとき、それを保証するものとしてククリットのタチ家に養子にとられた。そのため根っからのククリット人を自称しており、グロマン人に対して反感すら覚えているが、体を石化させる能力などグロマン人の特性も兼ね備えている。アニメでは単にククリット人とされ、石化の能力はファイヤードラゴンの舌を食べることで得る。
ピラール
声 - 池田秀一
六本指連盟の一人。エミヤとは逆にククリット人の王子でありながらグロマン人のもとで育てられ、ククリットの総督を任されている。エミヤに惚れており、それが原因で失策を講じてしまう。アニメ版では純粋なグロマン人であり、その出で立ちもスキンヘッドに古代ローマ風の服装と、原作の制服姿とはかなり異なった印象を受ける。
タンバラ・ガイ
声 - 水島裕
タイムパトロールとしてこの時代にやってきた人間で、漢字で描けば胆原凱となる。潜入操作のためククリット人を強制労働させるコロニーの警備員を務めていたが、エミヤを助けたことがきっかけで彼自身もコロニーに送られてしまう。日本人の成れの果てであるククリット人に共感し、レジスタンスのリーダーを買って出る。彼もエミヤに思いを寄せており、ピラールとは恋敵の関係にある。
ジンバ
声 - 小松方正
エミヤの過去を知る謎の老人。剣の達人でありエミヤに剣術を指南する。キリコに敗れ、その死の間際に自身が十七代グロマン王アブミスであり、エミヤ(プライム・ローズ)の父であることを明かす。アニメではククリット王とされ、ファイヤードラゴンにはね飛ばされたことが元で絶命する。
胆原分烈(たんばら ぶんれつ)
声 - 堀絢子
タンバラ・ガイの弟で、兄の後を追ってこの世界にやって来た。原作では物語の中盤で数々の謎を解き明かすことになるキーパーソン。アニメではエミヤらと行動をともにする。
キリコ
声 - 屋良有作
六本指連盟の一人で剣の名手。情にかられてプライム・ローズに手が下せないピラールに業を煮やしてククリットの地にやってきた。手塚版スター・システムの一員として『ブラック・ジャック』のドクター・キリコがキャスティングされている[2]。なお、六本指連盟はアブミス王から王位を簒奪したゴールダの子息からなるが、ピラールとキリコ以外の4人は数カットの登場に留まっている。また、アニメでは単なるピラールの部下に収まっている。
ジャーク・タチ
声 - 神山卓三
エミヤの養父。ククリット上流階級の身分であり、グロマン人に取り入って立場を得ようとする。そのためにエミヤをピラールに嫁がせようとし、エミヤの反感を買う。
イルマ・タチ
声 - 塚田恵美子
エミヤの養母。ジャークよりはエミヤに同情的だが、それでもエミヤに手を焼いている。
タロ
声 - 塩沢兼人
エミヤの最初のボーイフレンド。身分の違いからエミヤの義父ジャーク・タチに煙たがられ、前倒しでコロニーに送られる。そこで脱走を図ったため、救出にきたエミヤの目の前で撃ち殺される。
パズス(デス・マスク)
声 - 千葉耕市
世界中で戦争が行われていた時代に打ち上げられた、「破滅兵器」を搭載した人工衛星。「悪魔」がそれを2つに分離して落下させ、2つの街がタイムスリップするきっかけとなった。アニメでは「悪魔」が登場せず、パズスがコンピュータ「シグマ99」を伴う意志を持った存在として描かれ、シグマ99自体が2つの街をタイムスリップさせた張本人とされている。

単行本

  • 少年チャンピオンコミックスエクストラ『プライム・ローズ』(秋田書店)全4巻
  • 手塚治虫漫画全集『プライム・ローズ』(講談社)全4巻
  • 秋田文庫『プライム・ローズ』(秋田書店)全4巻
  • 手塚治虫文庫全集『プライム・ローズ』(講談社)全2巻

「タイムスリップ10000年プライム・ローズ」制作スタッフ

脚注

  1. ^ 手塚マンガ あの日あの時 第26回:手塚萌えの異色作『プライム・ローズ』の時代!!(虫ん坊 2013年1月号)
  2. ^ 作中でも分烈の台詞で指摘されている。

外部リンク