サバイバルゲーム

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サバイバルゲームに興じる人々
ロシアのプレイヤーたち

サバイバルゲーム(Survival Game/Airsoft)[1]とは、主にエアソフトガンBB弾を使って行う、概ね20世紀以降の銃器を用いた戦闘を模す日本発祥の遊び、あるいは競技。

英語ではエアソフト(Airsoft)と呼ばれ、アメリカ合衆国発祥の「ペイントボール」と並んで、銃器型の道具を用いる遊びや競技として楽しまれる[2]

ゲームの概要

敵味方に分かれてお互いを撃ち合い、弾に当たったら失格となるのが基本的なルールとなる。ペイントボールが圧搾空気の力で発射される塗料入りの弾を用いるのに対し、サバイバルゲームはBB弾を発射するエアソフトガンを使用するため、「競技者の失格が自己申告制」「主に実銃を模した用具が使用される」という違いがある。

統一されたルールは存在せず、グループや大会、フィールドごとにルールは異なる。サバイバルゲームにおけるルールは一般的にレギュレーションと呼ばれるので、以降の表記は「レギュレーション」に統一する。

歴史

ツヅミ弾とペイントボール時代

1970年代にツヅミ弾が発射出来る遊戯銃が発売され、それを使用した戦争ごっこ的な遊びがルーツと考えられる。 1980年代前半に日本の銃器専門誌においてアメリカのペイントボールが紹介されたが、[3]炭酸ガスをパワーソースとする当時の海外のペイントガンは日本では認められていない高圧ガスを使用していた為、当時は「ツヅミ弾」を使用したエアソフトガンによるサバイバルゲームが広まっていった。

6ミリBB弾の登場

BB弾

1985年に東京マルイが6mm径のプラスチックBB弾を使った初のコッキング式のエアソフトガン「ルガーP08」を発売、またJACではBV式ガスガンに6mmBB弾を採用し、マルゼンKG-9をはじめ、MGCベレッタM93R、マルシンM1カービン、ファルコントーイMP5SD3、コクサイM16、ウエスタンアームズAR-7などに次々と採用され、サバイバルゲームで広く使用されるようになった。当時のエアソフトガンは玩具としてのリアル感を重視するモデルガン要素が強かったが、次第にサバイバルゲームでも使われるようになったが、競技人口はそれほど多くはなく小規模のゲームが実施される程度であった。

電動ガンの登場とホップアップ機構の出現

東京マルイ製のAK-47の電動ガン

1991年に東京マルイから、銃本体に内蔵したニッカドバッテリーを動力源とする電動ガンが発売され、軽量であったことなどから普及し、後にパワーを上げずに飛距離を延長できるホップアップ機能が追加されると、1990年代中期にはガスタンク等を必要とするガスガンは影を潜め、1990年代後期には電動ガンがサバイバルゲームの主流となり競技人口も増え、サバイバルゲーム専門のフィールドも出現している。 一方ガスガンは小型化の方向に進み、リアルな作動を売りにしたブローバックガスガンが開発された。

また、この頃になると「1Jルール」と呼ばれるルールが雑誌等によって普及され一般的となった。そうした経緯もあってか、過度のパワーアップはサバイバルゲームの愛好家の間では下火となった。カスタムパーツを製造するメーカーも1〜1.5J程度のパワーアップに関するパーツの製造は行われていたものの、全体を通して見ればドレスアップを中心としたものに移行していったと言える。

銃刀法の改正による環境の変化

2000年代半ばに極端にパワーを上げたエアソフトガンによる事件が頻発するようになると、これを受けて2006年3月に改正銃刀法が施行された。

当時、ボルトアクションライフルタイプのエアソフトガンや狙撃銃スタイルのエアソフトガンはレギュレーション(サバイバルゲームのルール)によってパワーの面で若干優遇される事が多く、これは連射のきかないスナイパーライフルの不利を射程の長さで埋める事が目的であったが、銃刀法改正以後はそうした優遇措置を行うことができなくなった。

これにより、サバイバルゲームでのエアソフトガンのパワーは規制値以下と言うのが標準レギュレーションとなっている。

ゲーム人口の増加とマナー問題

2010年代になるとサバイバルゲームを扱った漫画やアニメ、ウェブ特集などメディアへの露出も増え、ゲーム人口は飛躍的に増加している。それに伴いセーフティエリア(安全地帯)での暴発事故やマナー違反、ルール違反も増加の一途を辿り問題となっている。

サバイバルゲーム施設と周辺住民

サバイバルゲーム施設がなかった時代は私有地や河川敷等で使用許可を得てゲームを行っていた。中には許可を得ずゲームを実施し、近隣住民から警察に通報される等の事態も散見される。 サバイバルゲーム人口の増加に伴い多くの有料サバイバルゲームフィールドが存在している。千葉県には特にフィールドが多く10を超えるフィールドが存在している。また、多くは平坦な山林等をフィールドとしているが、都心のテナントや市街地の工場跡地等を利用したインドアフィールド(屋内施設)として展開しているフィールドも存在する。多くのフィールドは有料でフィールド毎のレギュレーションが存在しており遵守出来ない場合は退場処分や法令違反の場合は告発される場合もある。 また、施設の中には必要な行政の許可を得ずに築造された建造物があるなど、行政や周辺住民とトラブルとなる施設もある[4]

装備

競技中の人物。迷彩服、トレッキングブーツを着用し、予備弾倉を携行している。
第二次世界大戦時のドイツ国防軍の装備を模倣しているイギリス人チーム。手前のプレイヤーが使用している銃はSIG 550ないしはSIG 551
物陰に隠れて敵を狙うプレイヤー

主に撃ち合うための銃(エアソフトガン)と、その弾丸による負傷を防止するためのゴーグルをはじめプロテクターやグローブを基本とする。 靴については、山野を駆け回る事から動き易いトレッキングシューズか、軍用のブーツ等が多く使われる。

ゴーグルなど保護具の着用必要性

眼球を直撃すれば失明させる恐れがある為、メーカーの説明書や遊戯銃雑誌では、エアソフトガンを使用する場合、ゴーグルやシューティンググラスなどの保護具の着用を推奨している。サバイバルゲームでも、参加条件の一つとして保護具の装着がレギュレーションに盛り込まれている。

ゴーグルには透明な強化樹脂を防護レンズとしている物が望ましい。金網を使用したゴーグルの場合、金網型(メッシュゴーグル)は耐久性の高さや曇らない等の利点があるが、被弾し砕けたBB弾が網目をすり抜けてしまう場合がある。また実銃射撃に用いるサングラス型のシューティンググラスも、強度は充分でも横から飛んでくる弾をガード出来ない等の問題がある。 強度や保護範囲の問題から、ファッションサングラスやウィンタースポーツ用のゴーグル、顔面に密着しない眼鏡型の保護具などは推奨していない。

たとえ被弾によって失格していても、ゲーム進行中のプレイヤーに間違われ誤射を受けた際の負傷を防止するため、フィールド内に居る限りゴーグルを外してはならないレギュレーションとなっている。

その他の装備

ゴーグルを着用している限り、衣服の規定は無い場合が多いが、至近距離で被弾した場合に内出血等の怪我を負う場合もあり、また植物の枝葉などによる切り傷、転倒時の擦り傷軽減なども考慮して、長袖長ズボンや指先まで覆えるグローブ、帽子またはヘルメット、フェイスガード等の防具の着用が推奨される場合もある。 また一種のコスプレ要素として、軍隊の兵士を模した装備を身につけるプレイヤーも多い。戦闘服に、帽子やヘルメット、ブーツなどの実物払い下げ品や放出品、レプリカ品を装備している。 またゲーム構成として、全員で統一したコスチューム(特殊部隊や軍隊などのもの)を着用しゲームを行う事もある。詳細は後述のヒストリカルゲームを参照。

その他にも弾倉ポーチやダンプポーチなどの収納具が有用である。

基本レギュレーション

被弾によって失格になることは死亡とも呼ばれる。失格となった参加者はゲームの行われているフィールドから出て、速やかにセーフティゾーンへ移動しなくてはならない。失格状態のプレイヤーはフィールド内で存在していないと扱われるため、移動する時に仲間に情報を与えたり、装備や余った弾などを譲ることはできない。また、セーフティゾーンからの助言、発砲も禁じられる。

ヒット
飛んできたBB弾に当たることをヒットといい、反対に、敵に弾を当てる事をゲットと呼ぶこともある。ヒットの詳しい規定は、ゲーム、チームのレギュレーションによって異なる。
ヒットした者は直ちに相手に聞こえる声で「ヒット!」と宣言し、両手を高くあげるなどして自分が失格となったことを周囲に知らせる。
判断は自己申告であり、参加者の良心に任されているが、装備品や体の末端に当たったり、跳弾で勢いのなくなった弾に当たったりすると気づかないこともあるので、意図的でない限り、申告をしないのは「仕方が無い事」とされ、逆の立場なら許容すべきとされる。公正を期するため、大きな大会ではフィールド内に判定員が立ち、判定を行うこともある。ヒットコールの聞こえない距離にいるプレイヤーから撃たれる危険性があるため、白旗やタオルなどを見せると良いとされる。
ヒットしたにもかかわらず、意図的に申告をしない行為や、それを行うプレイヤーはゾンビの蔑称で呼ばれる。実態については当事者同士にしか判らない場合もあるため、代表者等の第三者による判断を勧めるレギュレーションが広く採用されている。事実確認が難しいため、具体的な罰則を設ける例は少ない。意図的に申告しない行為はゲーム成立を阻害する最悪のマナー違反とされ、常習者や、それを疑われる者は参加を拒否される場合もある。
有料のゲームフィールドでは、悪質なゾンビ行為をすると記録を残され、それ以降の利用を断られることもある。
フリーズコール
至近距離において、相手に気づかれず明らかに自分の優勢が保たれている場合、相手の被弾による痛みや怪我を避ける為に「フリーズ(動くな)」と声を掛け、相手にヒット宣言を要求する行為。フリーズコールを仕掛けられた者は反撃の権利を有する場合もあるが、危険を伴うためフリーズコール自体を非推奨ないし禁止とし、至近距離からでもBB弾をヒットさせることを要求するレギュレーションも存在する。
ナイフアタック
怪我を負わせる危険の少ないゴムやプラスチック製の模造ナイフを用い、相手に気づかれずに忍び寄って攻撃することをナイフアタックという。ナイフアタックを受けたプレイヤーは被弾と同様に失格となる。武器による近距離攻撃を全面的に禁止し、素手によるタッチをアタックと認める場合もある。格闘戦形式の攻撃は、とっさの反撃で怪我を負う場合や、プレイヤー同士のトラブルの元となり易いため禁止されているケースが多い。

マナー

レギュレーションではないが、マナーとして周囲に気を配ることが推奨される。

エアソフトガンの取り扱い
不慮の事故を防ぐため、弾が入っていないエアソフトガンであってもゲーム以外で銃口を人や動物に向けない、銃口にキャップをはめておく、使用するまで安全装置を掛けておく、決められたシューティングレンジ以外では、たとえフィールド内でも試射などをしてはいけない、弾倉を抜いておくなどが原則とされる。事故や傷病に備えて、医薬品や絆創膏、洗浄用の水などを用意することもある。
無関係な人への配慮
サバイバルゲームでは弾を飛ばすので、人通りの多い場所で行うと無関係な人に当たってしまう可能性がある。そこで、ひと気のない山の中や森の中、壁などで区切られた専用フィールドを用いる。屋外で行う場合はサバイバルゲーム中であることを知らせる掲示をしておくとともに、ホイッスルやベルなどを用意しておき、万が一人が通った時はそのホイッスルやベルを鳴らして、無関係な人がフィールド内を通ることを他の参加者にも知らせる。その音が聞こえたらすみやかにプレイを中断することにしておくなど、周囲の安全を確保しなくてはならない。このようなゲームの中断をハイカーストップと呼ぶこともある。
会場への移動
会場への行き帰りの服装が迷彩服であったりすると、周囲の人々に対して威圧感を与えたり、動揺させたりする可能性があるため、会場までは普通の服装で行動し、会場で着替えて参加し、帰宅時にまた着替えるのが最良とされている。9.11テロ以降の社会情勢に伴い自動車で往復する場合でも、迷彩服の人間が多数乗車していることでテロリストなどに誤認され、通報される可能性がある。
エアソフトガンは、外観で判別できないケースや袋に入れて持ち運ぶ。本物の銃と誤認されたり、迷惑防止条例違反として取り締まりの対象となるほか、ケースに入れていた場合でも、金融機関や商業施設などに持ち込んだ場合は強盗予備として通報される場合がある。
案内書への明記や口頭による解説で、各種のマナーが確認される場合もある。
廃棄物
タバコ菓子清涼飲料水包装の投げ捨てに関して罰金を課す大会も存在する。エアソフトガンの弾が回収不可能な状態で散乱し易いが、これも可能な限りの回収を勧める場合がある。
生分解性プラスチックでつくられたBB弾の登場以降、これ以外の使用を認めない大会やフィールドも見られる。バイオBB弾と呼ばれるこれらの製品は、1年から3年で分解して自然に還元されると謳われている。黒や暗緑色など、目立ちにくい色合いのBB弾を販売するメーカーもある。
フィールド
サバイバルゲームを行う場所の事。個人所有の私有地を専用フィールドと呼び、専門的にゲームを行える施設として貸し出されている場所も存在する。これらは個人の土地所有者が経営しているものから、遊戯銃メーカーないし販売店が提供しているものまであり、アウトドアのフィールドからインドアの施設まで規模も様々である。
アウトドアのフィールドでは水辺やトンネルなど日常生活では体験できない状況を提供する所もある。インドアの施設では障害物の設置や廃墟を模したセットの構成、フィールド内に設置したカメラからの様子を中継するといったサービスも見られる。

ゲーム内容

公式レギュレーションがないため、参加者や状況によって多様な条件が設定されたゲームを行っている。  ・一見して敵味方の識別が困難なため、マーカーと呼ばれる色付きの布・テープ類を腕に巻く等して敵味方の識別が可能な状態で行われる。

フラッグ戦
チームに分かれ、互いに陣地を決め、旗を掲げる。その旗の付近からスタートの合図で動き出す。敵の陣地にある旗に触れるか、旗周辺に設置されたブザーを鳴らす事で勝利となる。制限時間内にどちらのチームも条件を満たせない場合は引き分けとなる。

・派生としてキャプチャー・ザ・フラッグ(フラッグを自陣に持ち帰る)や、ドミネーション(指定場所に自陣の旗を掲げ防衛)等、特殊ルールも該当する。

殲滅戦
チームに分かれ、スタート地点を設定しスタートの合図で開始し敵を全員倒せば勝利となる。制限時間内に敵を殲滅できなかった場合には、生き残った人数の多い方が勝ちとする場合と、生き残った人数に関係なく引き分けとする場合がある。

・派生として、スタート地点を複数としオセロのスタート時のように、両翼に敵が配置され、対角線上に味方が配置される。

防衛戦
2チームにわけ片方を攻撃、もう片方を防衛とし制限時間内にフラッグを奪取または殲滅する事で勝敗を決めるルール。 防衛側は守り切れば勝利となる。

・派生として制限時間を設けず、何分で攻略が出来るかを競うタイムアタック形式も存在する。 また、同数のチーム分けでは膠着する場合も考えられるため、人数配分によって防衛側を少数としたり、防衛側はフルオート射撃可、攻撃側はセミオートのみと言う変則ルールも存在する。

カウント戦
チームに分かれ、ヒットした場合、自陣や指定の位置に戻り復活し再度ゲームに参加出来る。最終的に復活した人数の少ないチームの勝利となる。
バトルロワイアル(on for all)
チーム分けせず各個人で散らばり、一定の経過時間や何らかの合図で開始する。自分が生き残れば勝利。
ヒストリカルゲーム
相手チームの殲滅等の勝敗とするのではなく、史実上の戦争や武力衝突を再現して行うルール。歴史再演、歴史再現を意味する「リエナクトメント」と呼ばれることもある。参加者はリエナクター(歴史再演者)と称され、その時代や場所で使われた軍服や装備品を考証し、忠実に再現して身につけることを要求される。

・ゲームとしての勝敗よりも、歴史の中の兵士を演じることに重点が置かれることから、勝敗が予め決まっていたり、弾の出ないモデルガン無可動実銃が使用されたり、失格者が安全地帯に戻らず死体を演じたり、本来なら戦死であるが重傷を負った戦友役を担いで後送したりする例もある。また、軍人に限らず戦地に存在する民間人や文民組織要員(赤十字国際委員会派遣員など)での参加が認められることもある。第二次世界大戦ベトナム戦争ボスニア紛争などの一局面を再現するイベントが行なわれている。

その他、衛生兵ルールやリアルカウント(実銃弾数)戦、使用するエアソフトガンを指定したルールなど多種多様のゲームが存在する。

チームの結成

同じ趣味の者同士が集まりチームを組むことが多い。大きいものでは100人を超す規模となる。チームに属さずにフィールドやエアガンショップの開催する「定例ゲーム」に個人参加するプレーヤーもいる。

その他

ペイントボールと同様、プラスティックを利用したエアガンも軍事教練に利用される。安全性と射程の両立が難しいため、野戦ではなく市街戦などのごく近距離の模擬戦に使用される。

陸上自衛隊では「閉所戦闘訓練用教材」として89式5.56mm小銃型の東京マルイ電動ガンを採用している。またこの89式小銃は実際に東京マルイ社から発売されているが、訓練用と一般販売向けは若干ではあるが商品の仕様が違う。

国際的な広がり

サバイバルゲームはアジア諸国に伝播して愛好者を増やし、その後は北米やヨーロッパにおいてもAirsoft Warという名前でペイントボールとは別の魅力を持つ遊びとして広がっており、YouTubeなどの動画サイトで検索すると海外でのゲームの様子を記録した動画を多数観ることができる。

登場する作品

関連作品

脚注

  1. ^ 日本においてはサバゲー、サバゲ、SVGと略される場合もある。
  2. ^ エアソフトとペイントボールのゲームを同時に解説した本としてChristopher E. Larson et.al, Paintball and Airsoft Battle Tactics, Voyageur Press, 2008がある。
  3. ^ GunMagazine
  4. ^ サバイバルゲーム場“反則”無許可で建物 - 東京新聞