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エイコサペンタエン酸

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エイコサペンタエン酸
IUPAC名(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ- 5,8,11,14,17-ペンタエン酸
20:5(n-3)
分子式C20H30O2
分子量302.451
CAS登録番号10417-94-4
融点-54から-53 °C
SMILESCC/C=C\C/C=C\C/C=C\C/C=C\C/C=C\CCCC(=O)O
必須脂肪酸の代謝経路とエイコサノイドの形成

エイコサペンタエン酸(エイコサペンタエンさん、Eicosapentaenoic acid、EPA)またはイコサペンタエン酸(Icosapentaenoic acid)は、ω3 脂肪酸の一つ。ごく稀にチムノドン酸(Timnodonic acid)とも呼ばれる。EPAは、5つのシス-二重結合をもつ20炭素カルボン酸である。

概要

EPAは、プロスタグランジントロンボキサン-3、ロイコトリエン-5(すべてエイコサノイド)の前駆体であるω-3脂肪酸多価不飽和脂肪酸の1つである。ω3系統もω6系統と同様にロイコトリエンなどの生理活性物質に変換される。しかしながら、ω6系統を材料にしたものに比較して生理活性が低い、あるいはないという特徴がある。生理活性が低いということで、過去、食用油脂から不要として除去されたこともある。しかし、生理活性の強いω6系統と競合することで、免疫凝血反応炎症などにおいて過剰な反応を抑えるということが明らかになった。いわばω6系統のブレーキ役であるといえる。実際にω3系統の脂肪酸の1つであるEPAで血小板凝集抑制作用があることが知られている。その裏返しとして、EPAの過剰な摂取により出血傾向が現れることが指摘されている[1]

ヒトを含む動物では、体内で合成できないα-リノレン酸から体内でEPAを合成するため、広義ではω-3脂肪酸必須脂肪酸となる。

多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPAやDHAを生産することができるが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度である[2]

DHAは脳内にもっとも豊富に存在する長鎖不飽和脂肪酸で、EPAは脳内にほとんど存在しない[3]。なお、DHAは脳関門を通過できるが、EPAを含めた他のω-3脂肪酸は脳関門を通過することができない[4]

利用

医療用医薬品としては閉塞性動脈硬化症高脂血症治療薬である。商品名としてはエバデール・イコサペント酸エチル粒状カプセルなどとして販売されている。また健康食品にもDHAとともにサプリメントとして用いられている。

研究

基礎研究で脂質代謝血液凝固異常の改善が認められた。4g(1日)以下のEPA、DHAの摂取により、LDLコレステロール値5~10%、中性脂肪値が25~30%低下した。神戸大学の研究では、2700mg(1日)EPAを8週間投与により本態性高血圧患者の収縮期血圧が低下した。

また認知症患者への投与で認知機能の改善、手術前のアルギニンなどとの併用投与で、感染症予防、創傷の治癒促進の報告がされている[5]

存在

EPAは、魚油食品、肝油ニシンサバサケイワシナンキョクオキアミから得られる。魚介類100g中の主な脂肪酸については魚介類の脂肪酸を参照のこと。また、母乳にも含まれている。

EPAは、動物以外にもスピルリナマイクロアルジェからも得ることができ、マイクロアルジェは商業用に開発されている[6]。EPAは、ふつう高等植物では見られないが、スベリヒユで微量確認された[7]

エビデンス

大規模臨床試験「JELIS」studyにおいて、EPAは冠動脈疾患を優位に予防したと報告された。[8]

脚注

  1. ^ 不飽和脂肪酸
  2. ^ http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php?file_id=15917
  3. ^ Journal of the American Medical Association 2010 年11月3日号、坪野
  4. ^ http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/34639/1/Takahashi-Shoko-04-08-0072.pdf
  5. ^ 蒲原聖可『サプリメント事典』(平凡社、2004)、pp.194-195
  6. ^ Jess Halliday (12/01/2007). Water 4 to introduce algae DHA/EPA as food ingredient. Retrieved on 2007-02-09.
  7. ^ Simopoulos, Artemis P (2002). "Omega-3 fatty acids in wild plants, nuts and seeds". Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition 11 (s6): S163–S173. doi:10.1046/j.1440-6047.11.s.6.5.. Retrieved on 2007-02-09.
  8. ^ Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

関連項目

外部リンク