Microsoft Exchange Server
| 開発元 | マイクロソフト |
|---|---|
| 最新版 | 2010(2009年11月2日) |
| 対応OS | Microsoft Windows |
| プラットフォーム | x86-64(従来はx86) |
| 種別 | グループウェア |
| ライセンス | MS-エンドユーザライセンス |
| 公式サイト | www.microsoft.com/japan/exchange |
Microsoft Exchange Server (マイクロソフト エクスチェンジ サーバー) は、マイクロソフトの開発したグループウェア/電子メール製品。Microsoft Servers の一部であり、マイクロソフト製品を採用している企業で広く使われている。Exchange の主な機能は、電子メール/予定表/連絡先などの共有と携帯機器やウェブからの情報アクセスサポート、さらにデータ格納サポートである。
目次 |
[編集] 歴史
マイクロソフトが従来のXENIXベースのメッセージングシステムから Exchange Server への移行を開始したのは1993年4月であり[1]、1995年1月には約500ユーザーが Exchange Server Beta 1 を使用していた。1996年4月までに 32,000 ユーザーが移行した。
1996年6月11日にリリースされた Exchange Server 4.0 が社外に販売するようになった最初のバージョンであり、Microsoft Mail 3.5 の後継とされた。ただし、Exchange Server は全く新しいX.400ベースのクライアントサーバ型メールシステムであり、単一のデータベースとX.500ディレクトリサービスをサポートしていた。Exchange Server で使われていたディレクトリは後に Active Directory というLDAP準拠ディレクトリサーバとなった。Active Directory は Windows 2000 に導入された。
1997年5月23日、Exchange Server 5.0 がリリースされた。Exchange Administrator コンソールが新たに導入され、SMTPベースのネットワークとの連携を初めて実現した。SMTPリレーが別途必要だった Microsoft Mail とは異なり、Exchange Server 5.0 は Internet Mail Connector というアドインを使って、直接SMTPベースのサーバと通信可能であった。また、Exchange Web Access というWebメールインタフェースも新たに導入された。ただし、これは後に Outlook Web Access と改称し、サービスパックに入れられた。5.0 に対応して、その新機能をサポートした Microsoft Outlook 8.01、Microsoft Exchange Client 5.0、Microsoft Schedule+ 7.5 がリリースされた。
1997年11月、Exchange Server 5.5 がリリースされた。スタンダード・エディションとエンタープライズ・エディションがある。これらは、データベースの大きさ、メール転送機能、クラスタリング機能などで差がある。スタンダード・エディションは従来版と同じ 16GB というデータベースの制限があるが、エンタープライズ・エディションではこれが 8TB に拡張されていた(ただし、マイクロソフトは100GBを越えた構成を推奨していない)。スタンダード・エディションには、Site Connector、MS Mail Connector、Internet Mail Service(Internet Mail Connector から改称)、Internet News Service(Internet News Connector から改称)、cc:Mail/Lotus Notes/Novell GroupWiseといったソフトウェアとの連携機能がある。エンタープライズ・エディションにはさらに、X.400 Connector、IBMのSNADSやPROFSとの連携機能がある。エンタープライズ・エディションには2ノードのクラスタリング機能が導入された。その他の新機能として、予定表をサポートした Outlook Web Access、IMAP4 と LDAP v3 クライアントのサポート、削除されたアイテムの復旧機能がある。このバージョンまで、Exchange Server には内蔵のディレクトリとSMTP/NNTPサービスが含まれていた。Outlook 8.03 が対応するクライアントとしてリリースされたが、Exchange Client と Schedule+ は対応バージョンがリリースされなかった。
2000年11月29日にリリースされた Exchange Server 2000 (開発コード名 Platinum)では、様々な制限が解除された。例えば、データベースのサイズ制限が緩和され、クラスタは2ノードから4ノードに拡張された。しかし、Microsoft Active Directory が必須となったためにアップグレードできない顧客が続出した。つまり、以前はディレクトリサービスを内蔵していたのだが、2000 では Active Directory なしでは機能しなくなったのである。Exchange Server 5.5 から移行する場合、5.5 の動作するシステムと 2000 をインストールするサーバは別に必要であり、そうしないとディレクトリの内容を変換できない。インスタントメッセージのサポートも追加されたが、後に Microsoft Office Live Communications Server として分離されている。Exchange Server 2003 (開発コード名 Titanium)で従来版からの移行がかなり容易になった。このため、Exchange Server 5.5 のユーザーは 2003 のリリースを待ったところが多い。また、アップグレードするには、サーバのOSを Windows 2000 にする必要があった。顧客によっては、マイクロソフトのサポートが得られない Exchange Server 5.5 と Windows NT 4.0 の組合せに留まる選択をしたところもある。この製品発表会では、アクティブ/アクティブ型のクラスタ対応を宣伝するため、黒山羊と白山羊を模した自動メール発信を動作させておき、障害が発生しても問題が発生しないことをアピールしようとした。このパフォーマンス中、サーバの電源を引き抜き、障害を発生させたが、送信メール数と受信メール数が合わず、エラーにもならず、メールをロストしてしまったという、失態を演じた。[2]
[編集] Exchange Server 2003
2003年9月28日リリース。Windows 2000 Server(ただし、SP4)と、32ビットの Windows Server 2003 で動作するが、後者では新機能の一部が機能しない。各種互換モードを備えており、ユーザーが徐々に移行できるようにしている。これは、多数の Exchange Server を稼動させていて、移行のためにサービスを停止できない企業などで重宝された。
Exchange Server 2003 の新機能の一つとして、ダウン時の復旧を高速化した点が挙げられる。これは、メッセージストアがバックアップから復旧される前から新規メールのやり取りを可能としたものである。Mobile Information Server 2001/2002 の機能の一部も Exchange Server に取り入れられた。例えば、Outlook Mobile Access や ActiveSyncのサーバ側などである(Mobile Information Server はその後開発中止となった)。ウイルスおよびスパム対策も強化され[3]、フィルタリングソフト向けのAPIの追加、SPFおよびDNSBL[4]フィルタリングの基本部分の組み込みがなされている。メッセージ/メールボックス管理ツールも強化され、管理者の作業時間短縮に寄与している。インスタントメッセージと Exchange Conferencing Server はLive Communication Server (現在はMicrosoft Office Communications Serverに改名) に分離され別製品となったため、完全に除かれた。マイクロソフトはグループウェアとしての機能を、Microsoft Office、Microsoft Office Live Communications Server、Microsoft Live Meeting、Microsoft Office SharePoint Server の組合せで実現するという方向となっている。このため、Exchange Server は、電子メールと予定表だけを分担するようになっている。
Exchange Server 2003 には、スタンダード・エディションとエンタープライズ・エディションがある。スタンダード・エディションはサーバ毎に1つのメッセージ・データベースをサポートし、データベースは最大 16GB である。SP2 では最大 75GB に拡張されたが、デフォルトは 18GB となっており、それ以上に設定するにはレジストリを編集する必要がある[5]。エンタープライズ・エディションでは最大 16TB であり、最大5つのデータベースからなるストレージグループをサーバ内に最大4つ持つことができる(合計で20個のデータベース)[6]。
Windows Small Business Server 2003 には Exchange Server 2003 も含まれるが、32ビット版だけであり、64ビット版では動作しない。
Exchange Server の使うRPCプロトコルは独自のもので、APIしか公開されていない(MAPI)。これは、Microsoft Outlookクライアントで使うべく設計された。Exchange Server 上の電子メールは POP3 と IMAP4 でアクセスでき、Mozilla Thunderbird や Lotus Notes といったクライアントでも使える。Outlook と Novell Evolution は Exchange Server 特有の機能にも対応したクライアントである。Mac 用の Microsoft Entourage も最新版では Exchange Server 特有の機能の大部分をサポートしている。ウェブブラウザからメールボックスにアクセスすることもでき、これを Outlook Web Access(OWA)と呼ぶ。また、Exchange Server 2003 はモバイル版 OWA(Outlook Mobile Access、OMA)もサポートしている。
Windows Mobile 5.0 AKU2 以降では、Exchange Server 2003 SP2 と組み合わせて、プッシュ型電子メールをサポートしている[7][8]。
[編集] Exchange Server 2007
2006年12月7日リリース。Exchange Server 2003 以降、マイクロソフトの方向性は不明だった。2005年に何らかの改良がリリースされる予定が立てられたが、中止されている。Exchange Server 2007 がリリースされたのは2006年末であった。ボイスメールとの連携、ウェブサービス検索強化、フィルタリング強化、新たな Outlook Web Access インタフェースなどが含まれる。
64ビットのx86-64版の Windows Server でのみ動作する。サポートは得られないが、32ビットの試用版がダウンロード可能となっている。32ビットのハードウェアで Exchange Server を使っている顧客は、ハードウェアの置換が必要となるし、64ビットのハードウェアを使っている顧客でも、OS を64ビット版にしないと移行できない。
ベータ版は2005年12月にリリースされたが、ベータテストを行ったサイトはごく少ない。広範囲に配布されるベータ版は(開発チームのブログによれば)2006年3月に公開された。2006年4月25日、マイクロソフトは Exchange Server の次期バージョンが Exchange Server 2007 となることを発表した。
2009年1月、Exchange Server 2007 のセキュリティソリューションとしてMicrosoftが起案・監修したメール情報セキュリティ強化パックがリリースされ、開発したソフトバンク・テクノロジーのWebサイトから無償提供される。
[編集] 主な強化点
マイクロソフトによれば、強化点は以下の通り[9]。
- 保護機能: アンチスパム、アンチウイルス、法令順守、クラスタリングによるデータ複製、セキュリティと暗号の強化
- アクセスの強化: 予定表強化、統合メッセージング、モバイル対応強化、ウェブアクセス強化
- IT効率強化: 64ビット化によるスケーラビリティと性能、コマンドシェルと単純なGUI、展開強化、役割分離、ルーティングの単純化
- Exchange Management Shell: 管理者向けの新たなコマンド行シェルとスクリプト言語(Windows PowerShellベース)。GUIでできることは全て実行可能であり、日々の作業でよく実施するものをスクリプト化することが可能。375種のコマンドを備えている[10]。
- 統合メッセージング: ボイスメール、電子メール、ファックスを統合的に利用可能。また、メールボックスに携帯機器や電話からアクセス可能。
- データベースサイズの制限を解除。ハードウェアおよびOSの限界までの大きさのデータベースを利用可能。
- サーバ毎のストレージグループ数とデータベース数を拡大。スタンダード・エディションでは5個まで、エンタープライズ・エディションでは50個まで。
- Outlook 2007との組み合わせにより階層型アドレス帳機能をサポート。
[編集] Exchange Server 2010
2009年11月2日リリース。ベータ版は2009年4月にリリースされた。マイクロソフトが推進するクラウドコンピューティングである、ソフトウェア プラス サービス (S+S)に対応した最初のリリース。マルチテナント型で提供されるクラウドコンピューティング サービスであるMicrosoft Exchange Onlineを意識したつくりになっている。
[編集] 主な強化点
- Outlook Web Appの機能向上: リッチクライアントであるOutlookとの使い勝手の差がより小さくなった。複数の人の予定を一画面で表示させることも可能になった。
- トランスポート保護ルール: メール送信時に、特定の条件に当たる場合は、自動的にInformation Rights Management (IRM) 保護を適用することが可能。
- 個人用アーカイブ機能: 従来はPSTファイルとしてローカルに保存していた過去のメールをサーバー上に保存する機能が実装された。
- マルチメールボックス検索: 管理者が複数のメールボックスを検索することが可能。
- メールヒント: Outlook Web AppやOutlook 2010でメールを編集している場合、メールの送信時に、組織外部のメールアドレスが含まれていたり、配布リストに多人数のメールアドレスが含まれていたり、という特定の条件に当たる場合は、警告メッセージを表示する。
[編集] クラスタリングと高可用性
エンタープライズ・エディションは、Windows 2000 Server では4ノードまでのクラスタ、Windows Server 2003 では8ノードまでのクラスタをサポートしている。Exchange Server 2003 はアクティブ/アクティブ型クラスタも導入しているが、その場合は2ノードクラスタのみである。アクティブ/アクティブ型では、同時に両方のサーバが利用できる。より一般的なアクティブ/パッシブ型は、クラスタ内に現用系のフェイルオーバーのための待機系が存在する。待機系は現用系で障害が発生するときのために待機状態にある。アクティブ/アクティブ型については性能問題があることがわかり、マイクロソフトも現在では利用を推奨していない[11]。実際、Exchange Server 2007 では、アクティブ/アクティブ型クラスタはサポートされていない。
Exchange のクラスタリングは、同じ物理データのノード間での共有方法が問題視されてきた。クラスタリングによって Exchange Server は「アプリケーション」として多重化されるが、「データ」は多重化されない[12]。この場合、データが「単一故障点」となるが、マイクロソフトはこれを "Shared Nothing" と説明している[13]。ただし、この隙間をISVやストレージ企業が様々な手法で埋めてきた[14]。Exchange Server 2007 では、新たなクラスタリング構成を導入し、従来の "shared data model" の問題点に対処している[15]。
Exchange Server 2007 では、SQL Server の "Log Shipping"[16] に基づいた非同期レプリケーションを、CCR(クラスタ連続レプリケーション)[15]として組み込みでサポートしている。これは、MSCS MNS(Microsoft Cluster Service - Major Node Set)を使ったもので、共有ストレージを必要としない。このようなクラスタは安価に構成でき、遠隔のデータセンタ間でクラスタを構成可能で、サイト全体の災害などにも対応できる。CCRクラスタは、2ノードでのみ構成可能で、追加のファイル共有証人としての "voter node" が第三のノードとして追加可能である[17]。voter node はスプリットブレインシンドロームを防ぐもので、一般に Hub Transport Server 上でファイル共有する[15]。
第二のクラスタ形態は、以前のバージョンから可能だったもので、現在はSCC(シングルコピークラスタ)と呼ばれている。Exchange Server 2007 では、CCR も SCC も展開が簡略化され、Exchange Server のインストール時にクラスタとしての構成が可能である。LCR(ローカル連続レプリケーション)[15] は "poor man's cluster"(貧者のクラスタ)とも呼ばれる。これは、データのレプリケーションを同じサーバ上の別の装置に行うもので、ストレージの故障に対応できる。しかし、サーバそのものが故障した場合には対応できない。
2007年11月、マイクロソフトは Exchange Server 2007 の SP1 をリリースした。このサービスパックには新たな高可用機能 SCR(スタンバイ連続レプリケーション)が含まれている。CCR では両サーバが Windows クラスタに属していなければならなかったが、SCR ではクラスタ化されていないサーバにレプリケーション可能であり、遠隔地のデータセンタへのレプリケーションが容易である。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ “Microsoft's Migration to Microsoft Exchange Server - The Evolution of Messaging within Microsoft Corporation”. 2007年5月2日閲覧。
- ^ 2000年9月8日 東京国際フォーラム Bホール Microsoft Exchange 2000 Server Airlift において
- ^ “Exchange Intelligent Message Filter”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ “Implementing and Configuring Blacklist Support in Exchange Server 2003”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ “Registry tweak to set a 75gb store limit on Exchange 2003 Standard Sp2”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ “Exchange 2003 editions”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ “New Mobility Features in Exchange Server 2003 SP2”. TechNet. 2007年7月2日閲覧。
- ^ “Microsoft Looks to Mobilize With Exchange SP2”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ Microsoft Exchange Server Website
- ^ Exchange 2007 Cmdlet List
- ^ “Considerations when deploying Exchange on an Active/Active cluster”. 2007年7月2日閲覧。 (ログインが必要)
- ^ “The benefits of Windows 2003 clustering with Exchange 2003”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ “Exchange Clustering Concepts”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ “Storage Glossary: Basic Storage Terms”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ a b c d “高可用性”. 2008年1月14日閲覧。
- ^ “Frequently asked questions - SQL Server 2000 - Log shipping”. 2007年7月2日閲覧。
- ^ “An update is available that adds a file share witness feature and a configurable cluster heartbeats feature to Windows Server 2003 Service Pack 1-based server clusters”. 2007年7月2日閲覧。
[編集] 参考文献
- "Active Directory LDAP Compliance" Microsoft Corporation, 2003年12月2日。2005年11月2日閲覧。
- Morimoto, Rand; Michael Noel, Chris Amaris, Andrew Abbate, Mark Weinhardt. Exchange Server 2007 Unleashed. ISBN 0-672-32920-4.
- McBee, Jim; Barry Gerber. Mastering Microsoft Exchange Server 2007. ISBN 0-470-04289-3.
- Cavalancia, MCSE, MCT, MCNE, MCNI, Nick. Microsoft Exchange Server 2007: A Beginner's Guide. ISBN 978-0-07-148639-2.
[編集] 外部リンク
- Exchange Server マイクロソフト 公式技術情報
- Microsoft Exchange Server 2010 ホーム
- You Had Me At EHLO! - The Microsoft Exchange Team Blog
- Exchange ブログ JAPAN
- Microsoft Exchange Server 2010 Service Pack 1 評価版 ダウンロード