JR貨物コキ100系貨車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

コキ100系貨車(コキ100けいかしゃ)とは、日本貨物鉄道(JR貨物)が1987年(昭和62年)度から製作する貨車コンテナ車)である。

コキ100系貨車で組成された貨物列車、先頭はDD51型ディーゼル機関車(根室本線 新富士駅、2005年8月13日)

目次

[編集] 概要

コンテナ輸送の競争力を向上するため、速度や輸送力向上の対策は国鉄末期から進められてきた。輸送体系の主幹をなす主要拠点間の輸送においては、高速走行ができないコキ5500形や輸送効率と整備性に難のあるコキ10000系に代わり、コキ50000系やその改造車で対応されてきたが、生活関連物資輸送などの特に速達性の要請が強い分野でトラック輸送に対抗することと、将来想定される輸送分野に対応できるよう、高速走行と汎用的な積載能力を兼ね備えた新型車両の開発が1987年(昭和62年)のJR移行後から開始され、同年に製作された試作車4両が各種試験に供された。

この成果を基に1988年(昭和63年)から量産された車両がコキ100系の嚆矢となるコキ100形コキ101形である。海上コンテナ輸送のための低床車体、拠点間輸送に適応した4両ユニット方式、コストを抑えるためユニット単位での集中搭載とした電磁ブレーキ装置などの新機軸が盛り込まれた。

1988年(昭和63年)3月のダイヤ改正で設定された最高速度 110 km/h のコンテナ列車「スーパーライナー」に暫定使用されていたコキ50000形350000番台を置き換えたほか、拠点間の主要列車に重点的に投入された。

本系列はその後、従来のコンテナ車置き換えや、海上コンテナ輸送への対応など輸送の実態に合わせた仕様の変更を重ね、複数の派生形式が開発され、製作が続いている。現在までに総数は4000両を超え、コキ50000系とともに広汎に使用されている。

製造メーカーは川崎重工業日本車輌製造の2社であるが、コキ100-2 のみはJR貨物新小岩車両所で製作している。

[編集] 構造

コキ100 - コキ105の各形式に使用されているFT1形台車(根室本線新富士駅、2005年6月26日)
コキ104-504の台枠上部(根室本線新富士駅、2005年7月17日)

台枠は従来のコンテナ車と同様な魚腹形側梁であるが、海上コンテナなどで一般的な高さ 8 ft 6 inハイキューブコンテナ(背高コンテナ)を積載できるよう床面高さを従来車より 100 mm 下げ、1000 mm とした。このため台車周辺の台枠寸法が変更されている。車体長はコキ50000系と同一の 19600 mm を基本とする。

車体の一端に手すりとデッキ、昇降用ステップを有する。「突放禁止」扱いとされたため手ブレーキは留置専用とされ、操作ハンドルは台枠側面に移設された。外部塗色はコンテナブルー(明るい青)、台車は灰色である。ユニットで運用される形式の中間車は手すりとデッキを廃止し、車体長が短くなったものもある。

台枠上のコンテナ緊締装置は 5 t コンテナ (10 ft , 12 ft) 用を左右5組、 20 ft コンテナ用を左右3組装備するほか、着脱式のインターボックスコネクタ(IBC、海上コンテナ用緊締装置)により各種の海上コンテナを積載できる構造である。荷重は 40.5 t で設計され、総重量 20 t の海上コンテナを2個積載可能とした。

台車はコキ50000形のTR223形を基に開発されたFT1系列である。枕バネ配列の変更や左右動ダンパの取付、軸受の軸ゴム追加などが施された。

ブレーキ装置はコキ10000系と同様な CLE 方式(応荷重装置付電磁自動空気ブレーキ)を装備する。ただし、ユニットで運用される形式では電磁弁をユニット中の一部車両のみに搭載し、ここからユニット内他車の CL 方式(応荷重装置付自動空気ブレーキ)ブレーキ装置を集中制御する。最高速度は 110 km/h である。

各部寸法は形式毎に詳細が異なり、以下に一覧として記す。

形式 荷重
(t)
自重
(t)
換算 最大長
(mm)
最大幅
(mm)
最大高
(mm)
車体長
(mm)
車体幅
(mm)
床面高さ
(mm)
台車中心間距離
mm
コキ100 40.5 18.5 5.0 1.8 19910 2640 1162 19110 2376 1000 13710
コキ101 40.5 18.7 5.0 1.8 20400 2640 1867 19600 2376 1000 14200
コキ102 40.5 18.5 5.0 1.8 19910 2640 1162 19110 2376 1000 13710
コキ102-500番台 40.5 18.5 5.0 1.8 20400 2640 1162 19600 2376 1000 14200
コキ103 40.5 18.7 5.0 1.8 20400 2640 1867 19600 2376 1000 14200
コキ104 40.5 18.7 5.0 1.8 20400 2640 1867 19600 2376 1000 14200
コキ104-5000番台 40.5 18.7 5.0 1.8 20400 2640 1867 19600 2376 1000 14200
コキ104-10000番台(改造前) 40.5 18.9 5.0 1.8 20550 2645 1889 19600 2396 1030 14200
コキ105 40.5 18.7 5.0 1.8 20400 2640 1867 19600 2376 1000 14200
コキ106 40.7 18.9 5.0 1.8 20400 2663 2017 19600 2396 1000 14200
コキ110 40.7 18.9 5.0 1.8 20400 2663 2017 19600 2396 1000 14200
コキ107 40.7 18.9 5.0 1.8 20400 2663 2017 19600 2396 1000 14200

[編集] 形式毎の概要

[編集] コキ100形・コキ101形

コキ100形試作車の成果を元に製作された、4両ユニット方式の車両である。コキ100形がデッキ・手すりのない中間車、コキ101形がデッキ・手すりをもつ両端車である。ブレーキ電磁弁は両端のコキ101形に各々用途の異なるものを設ける。

[編集] コキ100形

試作車
1987年(昭和62年)に4両 (1 - 4) が製作された。デッキ・手すりはなく、車体長がその分短い。車体にインターボックスコネクタ (IBC) 取付穴がなく、川崎重工製の 1, 4 は台枠側面のブレーキコック操作口周囲に補強板が付けられている。ブレーキ装置は全車とも CLE 方式(応荷重装置付電磁自動空気ブレーキ)である。4両1編成で各種試験に供された。
量産車が落成するとコキ101形 (1 - 4) と新たにユニットが組まれ、中間車として再組成された。


量産車
コキ100-48(水島臨海鉄道 水島本線 倉敷市駅 - 球場前駅、2007年10月17日)
1988年(昭和63年)・1989年(平成元年)に128両 (5 - 132) が製作された。車体長は試作車と同一である。IBC 取付穴が車体に設けられ、ブレーキ装置は電磁弁をもたない CL 方式(応荷重装置付自動空気ブレーキ)とされた。

[編集] コキ101形

1988年(昭和63年)・1989年(平成元年)に132両 (1 - 132) が製作された。コキ100形試作車の試験結果を踏まえ、入換作業の便を図るため手すりとデッキを設けた両端車として製作された。このため車体が延長され、19600 mm となった。積載設備はコキ100形量産車と同一である。

ブレーキ装置は電磁弁を装備した CLE 方式で、奇数車には SV (常用ブレーキ電磁弁)と RV (緩め電磁弁)、偶数車には SV と EV (非常ブレーキ電磁弁)をそれぞれ装備する。

1 - 4 はコキ100形試作車とユニットを組成し、5 - 132 はコキ100形量産車とユニットを組成する。

[編集] コキ102形・コキ103形

コキ100形+コキ101形のブレーキ装置の配置を変更した、4両ユニット方式の車両である。コキ102形がデッキ・手すりのない中間車、コキ103形がデッキ・手すりをもつ両端車である。ブレーキ電磁弁は中間のコキ102形(奇数番号車)1両に集中して設ける。

[編集] コキ102形

基本番台
コキ102-165(水島臨海鉄道 水島本線 倉敷市 - 球場前、2007年10月22日)
1989年(平成元年)・1990年(平成2年)に180両 (1 - 180) が製作された。車体長や積載設備はコキ100形量産車と同一で、外観上の相違は手ブレーキハンドルの位置と、側面のブレーキコック操作口が異なる程度である。ブレーキ装置は奇数車が電磁弁を装備した CLE 方式で、偶数車は CL 方式である。


500番台
1990年(平成2年)に50両 (501 - 550) が製作された。31 ft コンテナ積載に適応し、また、荷役作業の便を図るため、車体長を両端車と同一の 19600 mm に延長した区分である。外観上、台枠側面補強の位置が異なる。ブレーキ装置の配置は基本番台と同一である。

[編集] コキ103形

コキ103-165 コキ102形165とユニットを組成している(水島臨海鉄道 水島本線 倉敷市 - 球場前、2007年10月22日)

1989年(平成元年)・1990年(平成2年)に230両 (1 - 230) が製作された。デッキと手すりを設けた車体構造や積載設備はコキ101形と同一であるが、手ブレーキハンドルの位置が異なり、ブレーキ装置は電磁弁をもたない CL 方式とされた点が異なる。

1 - 180 はコキ102形基本番台とユニットを組成し、181 - 230 はコキ102形500番台とユニットを組成する。

[編集] コキ104形

途中駅での増結・切り離しが発生する運用に充てるため、1両単位での運用ができるよう仕様を変更した形式である。コキ103形のブレーキ装置に電磁弁を追加し CLE 方式ブレーキ装置とした構造で、コキ5500形・コキ10000系など従来車の置き換え用として大量に製作された。

基本番台
コキ104-1934(友部駅、2008年5月9日)
1989年(平成元年)から1996年(平成8年)までに2908両 (1 - 2908) が製作された。
1993年(平成5年)製以降 (1281 - ) は車体台枠の海上コンテナ積載用 IBC 取付穴を省略し、台車軸受も改良された。1994年(平成6年)製のうち、最終製造分の8両 (1981 - 1988) は、当時余剰となっていたクム1000系私有車運車の台車などを流用して製作された。


5000番台
コキ104-5014(水島臨海鉄道 水島本線 倉敷市駅 - 球場前駅、2007年2月20日)
埼玉県資源活性化財団所有の私有貨車として、1996年(平成8年)に36両 (5001 - 5036) が製作された。同時に製作された私有無蓋コンテナ UM12A形(5000番台)を積載し、さいたま新都心の建設残土輸送に使用された。表記の一部以外に JR 保有車と相違はなく、残土輸送終了後は JR 貨物に譲渡され、一般車と混運用されている。譲渡後の番号変更はない。
10000番台
コキ104-10004 2096列車 一般化改造後の姿(根室本線新富士駅、2005年7月17日)
列車の最後尾に連結し、補助機関車(補機)の走行中自動開放に対応する車両として1996年(平成8年)に4両 (10001 - 10004) が製作された。
下関方に、補機と高さを合わせた密着自動連結器(空気管付)を装備した。このため床面が高くなり、12 ft コンテナのみを積載可能としていた。
安治川口駅に常備され、山陽本線八本松 - 瀬野間(通称:瀬野八)で、上り列車の後補機EF67形電気機関車を走行中自動解放するために使用された。2002年(平成14年)3月に走行中解放が廃止された後は一般化改造され、一般車と混用されている。改造による番号の変更はない。
海上コンテナ緊締装置取り付け改造車
ISO コンテナの定期輸送に充当するため、1996年(平成8年)にコキ104形から96両が改造された。改造種車は1992年(平成4年)までに製造された、日本車輌製の IBC 取付穴付車両 (1 - 1280) から選定され、改造車は識別のため車体中央に " M " の文字が描かれていた。
改造はIBC取付穴に折りたたみ式ツイストロック緊締装置を取り付けるもので、増設された緊締装置は 40 ft コンテナ用(4箇所)+ 20 ft ISO コンテナ用(6箇所)である。
20 ft ISO コンテナを2個積載する場合は、JR 規格 20 ft コンテナ2個積載の場合より車体中央寄りに積載され、既存の 20 ft 用緊締装置も2箇所併用する。ISO 20 ft コンテナを1個のみ積載する場合は、JR 規格 20 ft コンテナの場合と同様中央に積載される。
海上コンテナの積載方を改善したコキ106形・コキ200形の増備により2003年(平成15年)に海上コンテナ緊締装置の取り外しと " M " 標記の抹消が行われた。受台はそのまま存置されている。

[編集] コキ105形

1990年(平成2年)・1991年(平成3年)に40ユニット80両 (1 - 80) が製作された。

ユニット方式車両の運用効率化のため製作された、2両ユニット方式の車両である。奇数車と偶数車でユニットを組む。車体構造・積載設備はコキ103形とほぼ同一である。ブレーキ装置は奇数車が電磁弁を装備した CLE 方式で、偶数車は CL 方式である。

[編集] コキ106形

コキ106-327(初期車)(外房線 蘇我駅、2008年9月4日)
コキ106-1100(後期車)(根室本線 東庶路信号場、2007年6月5日)

海上コンテナの積載に適応する車両として開発された汎用コンテナ車である。1997年(平成9年)から2007年(平成19年)までに1162両 (1 - 1162) が製作[1]されている。外部塗色は当初コンテナブルーで落成したが、製作途中から灰色に変更され、初期車も全般検査の機会に灰色へ変更された。

従来のコキ100系では海上コンテナ積載に着脱式の IBC を使用したが、着脱の煩雑さを解消するため 20 ft 海上コンテナの積載位置を JR 20 ft コンテナと同一とし、さらに総重量 24 t の海上コンテナも1個を積載できる構造とした。このため、荷重増の必要をも考慮して台枠強度が見直され、台枠形状は従来型から大幅に変更された。荷重は 40.7 t である。

コキ106のFT2形台車 軸箱両側を数枚の板ゴムで支持するシェブロンゴム支持方式である(根室本線 新富士駅、2005年6月26日)

積載設備は 20 ft ・ 40 ft コンテナ用緊締装置をツイストロック式に変更している。台車は軸箱支持を軸ゴム+シェブロンゴムとした FT2 形とされた。ブレーキ装置は電磁弁をもつ CLE 方式で、1両単位での運用ができる。

1999年(平成11年)製以降 (405 - ) は識別のため、当初から車体色を灰色として落成した。同年製の最初の2両 (405, 406) は、試験的に貨車用フラット防止装置を取り付けていた。電源の車軸発電機と一体化した滑走検知用の速度検出器を車軸に取り付けている。採取したデータは機器箱内部に設置した携帯電話によって随時送信できる構造になっている。

コキ106の手ブレーキ緊解表示装置と緊締装置(東庶路信号場、2007年6月5日)

2003年(平成15年)度製以降 (601 - ) は、留置ブレーキ動作時に車側に表示板が突き出す「手ブレーキ緊解表示装置」が設置された。2004年(平成16年)度製以降 (713 - ) は、応荷重ブレーキ装置の測重機構を従来の油圧式からコキ200形同等の空圧式に変更した。

[編集] コキ110形

コキ110-5 (四日市駅、2007年8月12日 )

新開発された 15 ft コンテナの積載用として、2001年(平成13年)に5両 (1 - 5) が製作された。

コキ106形に 15 ft コンテナ用の緊締装置を追加した構造で、外部塗色は識別のため「カラシ色」と呼ばれる黄色塗装となった。台車はコキ106形と同一の FT2 形である。

15 ft コンテナは現在までのところは試験輸送にとどまり、一部にはコキ106形と混用されている車両もある。

[編集] コキ107形

コキ107-28(山陽本線 三石 - 上郡、2009年3月18日)

コキ50000形の老朽取替を目的とする次世代標準車として開発された形式で、2006年(平成18年)12月に1両 (1) が先行試作され、2008年より量産車の製作が開始 (2 - ) された。初年度は144両[2]の製作を予定する。

コキ200形の構造を踏襲して設計され、台枠の側梁はコキ104形に近い形状とされたが、側梁補強の配置はコキ104形とは異なる。コキ106形までの従来車は手ブレーキを側梁側面に設けたが、本形式ではコキ50000形と同様、車体端部のデッキ上に設けた。これは入換作業の便に配慮したものである。ブレーキ装置は電磁弁をもつ CLE 方式で、各車に電磁弁を装備し1両単位で運用できる。

台車はコキ200形の FT3 形を基本とし、基礎ブレーキ装置もコキ200形と同様、ブレーキシリンダ・ブレーキテコと一体化して台車に装架するユニットブレーキである。外部塗色はコキ106形と同様の灰色で、荷重は 40.7 t である。


[編集] 現況

列車総重量 1200 t 以下の時は最高速度 110 km/h 、総重量 1300 t 時は最高速度 100 km/h で走行可能な高速性能を生かし、主に東海道山陽本線系統、東北本線 - 北海道系統、日本海縦貫線(大阪 - 新潟・札幌)の高速貨物列車に使用されるほか、海上コンテナなど大型コンテナの輸送にも使用されている。

東海道・山陽本線系統では、最高速度 100 km/h 以上の列車 および 総重量 1300 t の列車全てで運用されるほか、コキ50000形では積載できない大型・重量コンテナが積載される列車を中心に使用されている。

東北本線・北海道系統では、最高速度 100 km/h の「高速貨物列車A」のほか、背高コンテナ輸送用や、東海道・山陽本線区間で 1300 t 牽引となる直通列車を中心にコキ50000形式からの置き換えが進展している。

日本海縦貫線では、大阪貨物ターミナル - 札幌貨物ターミナル、大阪貨物ターミナル - 新潟貨物ターミナルに1日1往復ずつ設定されている「高速貨物列車A」に使用されるほか、黒井発着の大型海上コンテナの輸送に使用されている。

既存の海上コンテナのみならず、本系列の仕様に適合したコンテナも各種が製作されている。日産自動車の完成車輸送用で宇都宮貨物ターミナル駅を発着する「カーパック」、都市ガス輸送用として苫小牧駅・新潟貨物ターミナル・姫路貨物駅を発着する LNG コンテナなどの事例があり、本系列で輸送がなされている。

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ 電気車研究会 『鉄道ピクトリアル』 2008年10月臨時増刊号 No.810 「鉄道車両年鑑 2008年版」 による。
  2. ^ JR貨物 Web サイト プレスリリース『平成20年度のコンテナ車及びコンテナの新製について』による。

[編集] 参考文献

  • 電気車研究会『鉄道ピクトリアル
    • 1991年3月号 No.540 特集:コンテナ貨車
    • 2000年1月号 No.680 特集:貨物輸送
    • 2007年10月臨時増刊号 No.795 鉄道車両年鑑2007年版 p109
  • 交友社『鉄道ファン』2002年7月号 No.495 特集:コンテナ特急

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ