国境警備隊

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国境警備隊(こっきょうけいびたい、英:Border guard, Border patrol)は、国境において警備を行う準軍事組織文民警察などである。

概説[編集]

国境線の巡回や検問所におけるパスポートコントロール(旅券確認)を行い、犯罪者・不法入国企図者の侵入逃走防止や密輸の阻止を行う。

原則として陸上国境の警備を行う組織をいい、海上国境の警備を行う組織は沿岸警備隊(こちらも準軍事組織や文民警察のひとつ)となる。軍隊が国境警備を行う場合は境界線を接する隣国と無用の緊張状態を作り出す可能性があることから(相手国と相互に敵視し合い仮想敵国となっている場合はなおさら)、通常の国境警備は準軍事組織とされる国境警備隊によって実施される。この仕事を正規軍が担わない場合が多いのは国境付近に正規軍が展開すると隣接国が進攻を警戒・または挑発行為とみなされ易い為、警察組織や準軍事組織たる国境警備隊を配置しある種の緩衝地帯とする。

日本は現在陸上の国境線を持っていない(樺太は実効支配していない。ロシア連邦サハリン州である)ため国境警備隊を保有していない。国境の完全開放が行われているEU諸国間のような場合は警備が不要となるため国境警備隊も解体されると思われていたが、その変化は国によって温度差がある。長大な国境線と多くの仮想敵国を持つロシアは独自に海上部隊及び航空部隊を保有して軍隊並みの重武装なのに対し、カナダ、メキシコと米州機構を結成しているアメリカは警察組織に近く軽装備である。

外部からの侵入だけでなく、正規の検問所を避ける不法出国も取り締まり対象である。特に、圧政が布かれ貧しい国家にこの傾向が強い。北朝鮮やかつての共産圏などが好例。

主な国の国境警備隊[編集]

日本[編集]

樺太に配置されていた国境警察隊

日本は、四方を海に囲まれており、陸上の“国境線”は存在しない。そのため、日本の国境警備は海上保安庁(諸外国での沿岸警備隊に相当する任務を負う)により行われている。

ほかに国境警備隊的性格を持つ部隊として、陸上自衛隊対馬警備隊、本土より離れた離島の警備を担当する西部方面普通科連隊第301沿岸監視隊海上自衛隊余市防備隊がある程度で、これらは守備隊に近い。

なお、第二次世界大戦前においては陸上国境線のあった朝鮮半島樺太に「国境警察隊」が配備されていた。小銃や機関銃などの小火器を装備し、国境地帯の直接警備を担当していた。

アメリカ[編集]

連邦司法機関(国土安全保障省関税国境警備総局傘下)である合衆国国境警備隊(U.S.Border Patrol)が警備を行なっている。経済的に富裕であるカナダ境界に比べ、メキシコ境界の方が密入国密輸が多発しており、越境警戒業務ははるかに激務であるという。1994年の時点では4,139名の隊員が所属しており、一般的な離職率は5%だったが大規模な人員増加を行っていた1995から2002年までは離職率が10%を越えた年もあった。アメリカ同時多発テロ事件が発生した2001年は連邦航空保安局に転属する隊員が続出したため離職率が18%にも達したが、それ以降は給料の増加などの要因もあり離職率は低下しており2009年の時点では6~7%のラインで落ち着いている。

アメリカの国境警備隊はジョージ・W・ブッシュ大統領(2001~2009)の指揮下で大規模な組織拡充を行っており、当初の計画では2010年には2万人規模の組織になる予定だった[1]。メキシコからの不法移民や麻薬の流入がその後も止まらなかったため、2005年の7月にはさらに500名追加、同年の10月にはさらに1000名追加する法案に署名しており、同年の11月には2007年度に更に1500名追加する予算案を提出している。これらの拡充の結果、アメリカ国境警備隊はアメリカ連邦政府所属の法執行機関としては最大規模の組織になると予想されている[2]

現在アメリカの国境警備隊に所属している2万人前後の隊員のうち、大半はメキシコ国境に配属されている。カナダ国境は問題が少ない事もあり配置人数が少なく、2001年にはわずか324名の隊員しか配置されていなかった事が明らかになっている。これは順次拡大されており2009年には1845名にまで拡充されている。ただし、国境警備隊の主な任務がメキシコ国境の警備であると言う事実は動かしがたく、国境警備隊の情報サイトでも新規入隊者はまず南西部国境(メキシコ国境)に配属される事と[3]スペイン語の履修が不可欠である事[4]が明言されている。またアメリカの国境警備隊は連邦政府所属の法執行機関では一番殉職者が多い組織であり、1924年から数えて114名の隊員が殉職している。

ロシア/旧ソ連[編集]

冷戦時代、諜報機関であると共に秘密警察でもあったKGB(国家保安委員会)が警備を担当していた。

現在、ソ連崩壊ロシア連邦建国)でKGBもFSB(ロシア連邦保安庁)SVR(ロシア対外情報庁)等に分裂、再編された際、『FPS(連邦国境庁)』がその任務を担当することになる(だが、当のFPS自体、2003年にFSBに移管される)。

ドイツ[編集]

第二次世界大戦後、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)では正規軍たるドイツ連邦軍よりも先に連邦国境警備隊(Bundesgrenzschutz, BGS)が創設されていた。BGSは国境警備のほか、各地方警察の管轄を跨いで活動しうる即応警察部隊としての側面もあり、対テロ特殊部隊として知られるGSG-9の編成も行われた。2005年、BGSは任務と権限を拡張すると共に連邦警察局と改称された。一方、ドイツ民主共和国(東ドイツ)では建国以前から内務省の前身にあたる内務管理局の元でドイツ国境警察(Deutsche Grenzpolizei)が組織されていた。国境警察は規模の拡大を受けて権限が国防省に移され、ドイツ民主共和国国境警備隊となった。

EU[編集]

欧州ではシェンゲン協定後、紆余曲折を経て欧州国境警備隊の創設計画がすこしずつ動き出している。欧州連合理事会はEU加盟国の外部国境を管理するための計画を2002年6月13日採択した。

しかし、大半のEU諸国はEU委員会への権限委譲を嫌って明確な支持を表明しておらず、現在も欧州国境警備隊は実現していない。[1]

ミャンマー(ビルマ)[編集]

ミャンマーには国境警備隊の創設計画が存在しており、実働部隊として国境に近い周縁部の少数民族民兵組織を充てる予定という。ミャンマーはビルマ族の多い平野部を馬蹄型に囲むように存在する山間地に少数民族がおり、彼らは独立もしくは自治権の確保を目的として長年武装闘争を続けてきた。これらの大半は1990年代にミャンマー政府との間で停戦協定を締結し、ミャンマー政府から経済的利益を享受する代償に支配地域へのミャンマー軍の駐留を容認した。しかし、これら民兵は現在でもおおむね反政府的であり、今回の国境警備隊計画も実質的な武装解除計画だとして国境警備隊への編入を拒む組織が続出している。ミャンマー政府は編入を拒む組織には武力行使も辞さない構えを取っている。

世界の国境警備隊の一覧[編集]

アジア[編集]

ヨーロッパ[編集]

アメリカ[編集]

オセアニア[編集]

消滅した組織[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 2009年には国境で捕まる不法移民の数は2005年の120万人から54万に減ったとされている。国境警備隊によれば、人員増加のおかげで不法に越境しにくくなったのがその理由だとされている。
  2. ^ これはアメリカ合衆国では各州に警察組織が別個に存在しており、アメリカ連邦政府直属の法執行機関は必然的に小規模な物が多くなってしまうからでもある(各州政府や州警察などでは間に合わない部分を補うのが主な任務となるため)。ただし他に大規模な組織が存在しないわけではなく、アメリカ沿岸警備隊は4万2千名、連邦捜査局は3万人規模、それに麻薬取締局は1万人強などとなっている。
  3. ^ "As a Border Patrol Agent, where will I be stationed?"
  4. ^ "Are trainees required to learn the Spanish language?"

関連項目[編集]