リゾートエクスプレスゆう

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国鉄485系電車 > リゾートエクスプレスゆう
485系「リゾートエクスプレスゆう」
485系「リゾートエクスプレスゆう」
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
改造所 大井工場
大船工場
改造年 1991年
1998年(お座敷化)
運用開始 1991年5月9日
運用終了 2018年1月2日
投入先 勝田車両センター
主要諸元
編成 6両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V
交流20,000 V(50Hz/60Hz)
最高運転速度 120km/h
編成定員 153名
車体 普通鋼
台車 DT32・TR69
主電動機 MT54
主電動機出力 120kW
制御方式 抵抗制御
制御装置 CS15F
制動装置 発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ
勾配用抑速ブレーキ
保安装置 ATS-P
ATS-Ps
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リゾートエクスプレスゆうは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が1991年平成3年)から2018年(平成30年)まで保有していた鉄道車両電車)で、ジョイフルトレインと呼ばれる車両の一種である。

当編成の電源車として50系客車から改造されたマニ50 2186についても本項で解説する。

概要[編集]

JR東日本東京地域本社水戸支社で共通使用するジョイフルトレインとして、1991年3月30日にサロ183形・サロ189形サロ481形を種車に4両が大井工場で、2両が大船工場で改造され、勝田電車区に配置された。編成番号はK30。

また水郡線などの非電化区間への直通運用を考慮し、50系荷物車(マニ50)から専用電源車への改造も施工された(後述)。

1998年(平成10年)に内装を和式化し[1]、引き続き常磐線系統を中心に各種の臨時列車団体専用列車に使用されていたが、2018年9月6日付で廃車となった[2]

車両[編集]

本節では落成当初の車両仕様について記述する。

種車から再用されたのは空気ブレーキ装置・電動発電機(MG)・空気圧縮機(CP)・連結器等の一部部品のみで、車体は同時期製造の651系をベースにした裾絞りタイプの普通鋼製であり、東急車輛製造で新製された。履歴簿上は余剰グリーン車からの改造名義ではあるが、事実上は新製に近い。制御装置等の走行機器に485系の廃車発生品が使用されたことや、三電源対応車であることなどから、485系の形式番号が付与された。

側面窓には大型の連続窓が採用された。車両前面はセンターピラーの幅を広げた上で、縦長の電照式ヘッドマークとした。センターピラーの下には縦型2灯式の前照灯を設置し、その両側に尾灯兼用のLED標識灯を配した。

集電装置(パンタグラフ)はモロ484形に1基搭載するが、中央東線等の狭小トンネル断面線区へ入線可能とするため、取付部分の屋根を一段低くしたほか、信越本線横川 - 軽井沢間を通過するための通称「横軽対策」も施工された。

MG・CPは重量均等化の見地からクロ484形・サロ485形に搭載している。

リゾートエクスプレスゆう 編成
K30
← 上野
勝田 →
号車 1 2 3 4 5 6
車番 クロ484-2 モロ484-3 モロ485-1 サロ485-1 モロ484-2 クモロ485-2
種車 サロ183-1008 サロ189-8 サロ189-6 サロ481-1002 サロ189-7 サロ189-5
定員 21人 39人 33人 イベント車 39人 21人
施工 大船 大井 大船 大井

コンセプト[編集]

水戸鉄道管理局時代から運用されてきた和式客車スロ81形・スロフ81形ふれあい」の後継編成であると同時に、首都圏のジョイフルトレインの新しいシンボルとして「コンフォートクオリティ」を目指した。電源車を除いて全車両がグリーン車扱いである。

外部塗色はフュージョンベージュをベースカラーとし、窓周りにフィロスブラウンを配し、窓上にアクセントとしてペパーミントグリーンのピンストライプが入る。

登場時の先頭車[編集]

1号車・6号車。

乗務員室の後部はフリースペースの展望室とされ、4人がけのソファーが配された。この部分の側面に、高さ930mm・幅2240mmの大型窓を配した。

客室内は通路を片側に寄せた上で、1人がけと2人がけを千鳥式の配置。座席は45度刻みで360度回転が可能なリクライニングシートとなっており、座席の向きを変更することにより、様々なレイアウトを構成することが可能である。

中間車[編集]

2号車・3号車・5号車。

客室内は1人がけと2人がけの座席を、2列 - 1列の配置とした。座席は1号車・6号車と同様とした。

イベント車[編集]

サロ485-1 車内
サロ485-1
車内

4号車。

本車両は定員外のフリースペースとして、フロアとドーム室で構成されている。フロア部分にはステージ、サービスカウンター、AVコントロール室が設置され、「走るディスコ」という演出を行なった。壁面には合計10脚の折り畳み座席(ジャンプシート)が設置されている。

ドーム室はサービスカウンターの脇から階段を上るように設置され、1人がけリクライニングシートを10脚配置している。ドーム室の照明は足元のみ(フットライト)として、夜景の鑑賞に配慮している。

電源車[編集]

水郡線など非電化区間直通運転時の電源供給用電源車として、大宮工場でマニ50 2186を改造。鉄道ファンからは通称「ゆうマニ」と呼ばれていた[3]水郡線営業所に配置されていた。改造の内容を以下に示す。

増結用車両[編集]

「90年代観光振興行動計画(TAP90's)」に基づく「栃木群馬観光立県推進地方会議」の視察団が利用する臨時列車「臨時特急ほのぼの号」が1995年(平成7年)5月12日に信越本線中軽井沢 - 高崎間で運行された際に、増3号車として長野総合車両所サロ489-1051を「ゆう」と同色に塗り替え、編成に組み込んだ。

運用[編集]

常磐線を主として、団体列車・臨時列車で多く運用された。過去に「シュプールゆう白馬号」として大糸線に入線した実績もあるほか、東北地方上越甲信越などJR東日本管内の広範囲で使用されていた。

しかし、メインの客層である高齢利用者からの要望もあり、1998年秋にお座敷車両への再改造が行われ、9月24日に試乗会が行われたのち、10月3日から営業運転を開始した[1]。外観や名称の変更はなく、4号車の定員外スペースは従前のままとされた。

福島デスティネーションキャンペーン開催に合わせて2015年(平成27年)4月4日4月11日に臨時快速列車「つながーるふくしま号」(横浜 - いわき間、上野東京ライン経由)が本系列で運転される予定だったが、「運用上の課題」を理由に651系に変更された[6]

車両の老朽化に伴い、2018年9月5日に長野総合車両センターに回送され[7]、翌9月6日付で廃車となった。廃車後は譲渡された電源車マニ50 2186を除き解体され現存しない。

脚注[編集]

  1. ^ a b “リゾート・エクスプレス「ゆう」 お座敷電車に変身”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1998年10月7日) 
  2. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2019冬 ジェー・アール・アール、交通新聞社、2018年、p.356 ISBN 9784330932187
  3. ^ a b 「東急、道内運行の電源車公開」『日経産業新聞』2019年7月11日(食品・日用品・サービス面)。
  4. ^ “「ゆうマニ」が長野へ|鉄道ニュース|2018年7月27日掲載|鉄道ファン・railf.jp” (日本語). 鉄道ファン・railf.jp. https://railf.jp/news/2018/07/27/160000.html 2018年9月6日閲覧。 
  5. ^ JR東日本の電源車「ゆうマニ」東急に譲渡 「ザ・ロイヤル・エクスプレス」と北海道へ”. 乗りものニュース (2019年7月2日). 2019年7月2日閲覧。
  6. ^ 春季多客臨時列車「快速つながーるふくしま号」の車種変更について (PDF) - 2015年3月10日 東日本旅客鉄道水戸支社
  7. ^ “「リゾートエクスプレスゆう」が長野へ” (日本語). 鉄道ファン. 鉄道ニュース (railf.jp). https://railf.jp/news/2018/09/06/163000.html 2018年9月6日閲覧。 

注釈[編集]

  1. ^ #車両の節の記述の通り、「ゆう」編成本体は485系の電磁直通ブレーキ(バックアップとして自動空気ブレーキあり)を従来どおり用いており、機関車との連結で指令の読み替えをする必要はない。後述のとおり、205系等が本車を控車として、機関車牽引で走行する場合にのみ必要な機能である。

参考文献[編集]

  • 鉄道ジャーナル』通巻297号(1991年7月号)「JR東日本 RESORT EXPRESS ゆう デビュー」
  • 『鉄道ジャーナル』通巻310号(1992年8月号)「リゾートエクスプレスゆう 奥久慈へワンデイハイク」