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これは「'''幼い動物の身体的特徴を[[かわいい]]と感じるのは本能である'''」という[[動物行動学]]の発想に基づいた概念であり、[[乳幼児]]が自分自身を「かわいく」見せることで[[保護者]]の養育反応を喚起させる身体的特徴を指している。 |
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また、ベビースキーマは本来の[[生物学]]的な領域以外に[[デザイン]]や[[産業]]の分野でも絶大な効果があり、特に有名な例が日本の[[漫画]]や[[アニメ]]などの[[ポップカルチャー]]([[おたく|おたく文化]])である。たとえば[[キャラクター]]の「無垢さ」「従順さ」「幼さ」を演出・強調するために、しばしば'''「身体に比して大きな頭と小さな鼻」「顔の中央よりやや下に位置する大きな眼」「突き出た額」「短くてふとい四肢」「やわらかい体表面」「丸みをもつ豊頬」「全体に丸みのある体型」「ぎこちない動き」'''<ref>インゴ・レンチュラー『美を脳から考える ―芸術への生物学的探検―』[[新曜社]], p.13, 2000年</ref><ref>入戸野宏「[http://cplnet.jp/Kawaii_symposium_June2012.pdf かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察]」日本感性工学会・かわいい人工物研究部会・2周年記念シンポジウム(2012年6月2日・[[芝浦工業大学]]豊洲キャンパス)資料集, p.7</ref>などベビースキーマの特徴が多用される(こうした[[天然]]に存在しないが見る者に大きな反応を引き起こすものを「'''[[超正常刺激]]'''」と呼ぶ)。このような[[超正常刺激]]を呼び起こす[[キャラクターデザイン]]は[[サブカルチャー]]に留まらず、[[ゆるキャラ]]や[[萌えキャラ]]<ref>「[[超正常刺激]]の他の例として、アニメで女性を描くときに、胸を大きく、ウエストをくびれさせ、ヒップを大きくすることがあります。女性の[[色気|性的魅力]]を誇張して描いていますが、そんな女性はほぼ実在しません。好みは分かれますが、根強い人気があります。特定の特徴の組み合わせが、私たちの感情や行動を引き起こすという典型例です。キャラクターの中には、地方団体や民間団体が作るものもあります。『[[ゆるキャラ]]』という言葉は、[[イラストレーター]]の[[みうらじゅん]]氏の[[造語]]であり、[[登録商標]]です。もともとは、人が入る着ぐるみを指していました。完璧に作りこまれたものではなく、予算の関係で洗練されない手作り感が残るものが多く、微笑(苦笑)を誘います。こういったキャラクターにもベビースキーマは含まれています。中にはそうでないものもありますが、かわいいと感じさせようと作ったものには、必ずベビースキーマが超正常刺激として誇張された形で含まれています」入戸野宏『「かわいい」のちから 実験で探るその心理』化学同人, 2019年, p.57</ref>など日本社会のあらゆる分野に広がっている美的感覚であり、総じて「[[かわいい]]」「[[萌え]]」「[[尊い]]」などの[[日本語]]で形容・表現されている。 |
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== 「かわいさ」を感じる対象・因子・関係性 == |
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かわいさを感じる対象(大人の庇護を喚起するもの)は[[マチズモ]](男らしさ)と対極的な存在であるといえる。 |
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例として「壊れやすい」「頼りない」「小さい」「幼い」「か弱い」「遅い」「軽い」「緩んだ」「繊細」「未成熟」「不完全」「歪んだ」「病んだ」「儚い」といった[[フラジャイル]]なもの<ref>[[永山薫]]『増補 エロマンガ・スタディーズ「快楽装置」としての漫画入門』[[筑摩書房]]〈[[ちくま文庫]]〉2014年, pp.81-83</ref>、あるいは親しみやすくて身近なものがあげられる<ref>入戸野(2009), p.24</ref>。なお「[[かわいい]]」という[[日本語]]も元々は目上の者<ref>「[[かわいい]]」は原則的に目上の者が目下の者に抱く情愛を示す表現である。一方で目下の者から目上の者への情愛を示す際には「いとしい」が用いられた。(入戸野宏 |
例として「壊れやすい」「頼りない」「小さい」「幼い」「か弱い」「遅い」「軽い」「緩んだ」「繊細」「未成熟」「不完全」「歪んだ」「病んだ」「儚い」といった[[フラジャイル]]なもの<ref>[[永山薫]]『増補 エロマンガ・スタディーズ「快楽装置」としての漫画入門』[[筑摩書房]]〈[[ちくま文庫]]〉2014年, pp.81-83</ref>、あるいは親しみやすくて身近なものがあげられる<ref>入戸野(2009), p.24</ref>。なお「[[かわいい]]」という[[日本語]]も元々は目上の者<ref>「[[かわいい]]」は原則的に目上の者が目下の者に抱く情愛を示す表現である。一方で目下の者から目上の者への情愛を示す際には「いとしい」が用いられた。({{Cite journal|和書|author=入戸野宏 |title="かわいい"に対する行動科学的アプローチ |url=https://doi.org/10.15027/29016 |journal=人間科学研究 |publisher=広島大学大学院総合科学研究科 |year=2009 |volume=4 |pages=19-35 |naid=120001954440 |doi=10.15027/29016 |issn=18817688}})</ref>が目下の者に「不憫だ」「あわれだ」「気の毒だ」など憐憫・慈悲・慰撫の感情を抱くさまに由来しており<ref>「“[[かわいい]](かわゆい)”の語源は“かわはゆし”という[[古語]]であるといわれる。これは,“顔(かお)映(は)ゆし”の変化した語で,“はずかしい,良心がとがめて顔が赤らむようだ”という意味であった。中世([[鎌倉時代]]から[[安土桃山時代]])には“見るに忍びない”の意から気の毒で不憫という意味で用いられたが,中世後半に,女・子どもなど弱者への憐れみの気持ちから発した情愛の念を示す意が派生した。近世([[江戸時代]])の後半になると不憫の意は消失して,愛らしいの意のみとなり,さらに愛すべき小さいさまという属性形容詞の用法も出現した。現在は,属性形容詞として考えられることの多い“かわいい”だが,本来は感情形容詞であったことは興味深い」{{Cite journal|和書|author=入戸野宏 |title=小講演 “かわいい”の心理生理学 |url=https://doi.org/10.5674/jjppp.1410ci |journal=生理心理学と精神生理学 |publisher=日本生理心理学会 |year=2014 |volume=32 |issue=2 |pages=53-54 |naid=130005072710 |doi=10.5674/jjppp.1410ci |issn=0289-2405}}</ref>、その意味を受け継いだ[[日本語]]が「'''[[かわいそう]]'''」である。 |
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宮﨑拓弥([[北海道教育大学]][[教育学部]]准教授)は、かわいさを喚起する因子を次の4つに分類している<ref name="miyazaki69">宮崎(2019), p.69</ref>。 |
宮﨑拓弥([[北海道教育大学]][[教育学部]]准教授)は、かわいさを喚起する因子を次の4つに分類している<ref name="miyazaki69">宮崎(2019), p.69</ref>。 |
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== 参考文献 == |
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* [[コンラート・ローレンツ]] (Konrad Lorenz), 「[https://doi.org/10.1111/j.1439-0310.1943.tb00655.x Die angeborenen Formen möglicher Erfahrung]」『Z. Tierpsychol.』(題名訳:可能な経験の生得的形態(経験できることには生まれつき決まった形がある)」Vol.5, pp.235-409, 1943年, ※未翻訳文献 |
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* コンラート・ローレンツ「動物および人間の社会における全体と部分―方法論的考察―」『Studium Generale』1950/3/9(原題:Ganzheit und Teil in der tierischen und menschlichen Gemeinschaft/[[日高敏隆]]訳『動物行動学Ⅱ』所載) |
* コンラート・ローレンツ「動物および人間の社会における全体と部分―方法論的考察―」『Studium Generale』1950/3/9(原題:Ganzheit und Teil in der tierischen und menschlichen Gemeinschaft/[[日高敏隆]]訳『動物行動学Ⅱ』所載) |
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* 井原なみは・入戸野宏「[https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00034619 対象の異なる“かわいい”感情に共通する心理的要因]」広島大学大学院総合科学研究科紀要『人間科学研究』7巻, pp.37-42, 2012年 |
* 井原なみは・入戸野宏「[https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00034619 対象の異なる“かわいい”感情に共通する心理的要因]」広島大学大学院総合科学研究科紀要『人間科学研究』7巻, pp.37-42, 2012年 |
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* 入戸野宏「[http://cplnet.jp/Kawaii_symposium_June2012.pdf かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察]」日本感性工学会・かわいい人工物研究部会・2周年記念シンポジウム(2012年6月2日・[[芝浦工業大学]]豊洲キャンパス)資料集, pp.7-10 |
* 入戸野宏「[http://cplnet.jp/Kawaii_symposium_June2012.pdf かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察]」日本感性工学会・かわいい人工物研究部会・2周年記念シンポジウム(2012年6月2日・[[芝浦工業大学]]豊洲キャンパス)資料集, pp.7-10 |
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2020年10月5日 (月) 09:07時点における版
かわいさ(Cuteness)とは、ある事物に対して「かわいい」と感じる神経科学的刺激・因子・性質・概念・美学。類語として「かわいげ」「かわいらしさ」「いとおしさ」などがある。
概要
動物行動学者のコンラート・ローレンツは1943年に『可能な経験の生得的形態(経験できることには生まれつき決まった形がある)』という論文を発表した[2]。ここで提唱されたベビースキーマという概念は科学的理論体系に基づき、幼児のかわいさを論理的に考察したもので「かわいい」研究の出発点となった[3]。
これは「幼い動物の身体的特徴をかわいいと感じるのは本能である」という動物行動学の発想に基づいた概念であり、乳幼児が自分自身を「かわいく」見せることで保護者の養育反応を喚起させる身体的特徴を指している。
また、ベビースキーマは本来の生物学的な領域以外にデザインや産業の分野でも絶大な効果があり、特に有名な例が日本の漫画やアニメなどのポップカルチャー(おたく文化)である。たとえばキャラクターの「無垢さ」「従順さ」「幼さ」を演出・強調するために、しばしば「身体に比して大きな頭と小さな鼻」「顔の中央よりやや下に位置する大きな眼」「突き出た額」「短くてふとい四肢」「やわらかい体表面」「丸みをもつ豊頬」「全体に丸みのある体型」「ぎこちない動き」[4][5]などベビースキーマの特徴が多用される(こうした天然に存在しないが見る者に大きな反応を引き起こすものを「超正常刺激」と呼ぶ)。このような超正常刺激を呼び起こすキャラクターデザインはサブカルチャーに留まらず、ゆるキャラや萌えキャラ[6]など日本社会のあらゆる分野に広がっている美的感覚であり、総じて「かわいい」「萌え」「尊い」などの日本語で形容・表現されている。
「かわいさ」を感じる対象・因子・関係性
かわいさを感じる対象(大人の庇護を喚起するもの)はマチズモ(男らしさ)と対極的な存在であるといえる。
例として「壊れやすい」「頼りない」「小さい」「幼い」「か弱い」「遅い」「軽い」「緩んだ」「繊細」「未成熟」「不完全」「歪んだ」「病んだ」「儚い」といったフラジャイルなもの[7]、あるいは親しみやすくて身近なものがあげられる[8]。なお「かわいい」という日本語も元々は目上の者[9]が目下の者に「不憫だ」「あわれだ」「気の毒だ」など憐憫・慈悲・慰撫の感情を抱くさまに由来しており[10]、その意味を受け継いだ日本語が「かわいそう」である。
宮﨑拓弥(北海道教育大学教育学部准教授)は、かわいさを喚起する因子を次の4つに分類している[11]。
- 色彩:彩度が高くて明るい色、もしくはパステルカラーなど明度が低い色、あるいはマカロンやキャンディなどの洋菓子(=日常的かわいい)
- ベビースキーマ:子供、ぬいぐるみ、ハムスター、寝顔、方言、丸顔の女性など幼い存在に認められる生得的なカテゴリー(=か弱いかわいい)
- ファンシー:メルヘンチックなもの、ロリータ・ファッション、人形、ピンク色といった女性文化に認められる文化的なカテゴリー(=独特かわいい)
- 不気味:トカゲ、熊、牛、金魚、蝶の標本、キノコ図鑑、人体模型などネガティブに評価されがちなもの(=キモかわいい[12])
宮崎によると、かわいさを喚起する因子は男女ともに同じ傾向があり、同分類は男女を区別せずに統一して適用できるものと考えられている[11]。
一方で明星大学教育学部教授の西村美香は、2010年代の「かわいい」という言葉には「支配欲(もしくは庇護欲)」「ご都合主義的政治的用語」「商業的うまみ」の3つが要素が含まれていると指摘しており、「かわいい」という言葉が持つ「支配―被支配の関係」に関して次のように述べている。
例えば、不憫なゆえにかわいいとか、気持ち悪くてみなに相手にされなくてかわいいとか、いわば上から目線の支配的な心情がそこに見え隠れする。(中略)それは対象物をまるで所有物のように自分の配下に置き、上から見下すかのような感情ですらある。よぼよぼの醜い老人であろうと自分の庇護を必要とし支配下に下るのであれば、汚らしくても「かわいい」のだ。つまらないものださいものでも、私が、私ひとりが、価値を見いだしてやりいつくしむのである。そして「かわいい」はそれを言われたものは、そこに上から目線や、見下した(ときには馬鹿にしているような)感情を読み取りながらも、「かわいい」が本質的には褒め言葉であるため、言われて居心地の悪さを感じることはあっても侮辱していると怒るほどのものではないと言われるままにひきさがる。苦々しく思いながらもひきさがらずをえないのである。この状況は、白黒をはっきりつけたがらない、ときには奥ゆかしくそしてまわりくどい、人間関係を円滑に進めようとする日本人の心情にぴったりなまさに日本的思考である。「かわいい」と言っていればとりあえずその場は何とかなる。「かわいい」をもちだすことでその場をなごませ、「かわいい」と言われることで小さき弱者に自分を位置づけ危機を回避することができるのである。 — 西村美香「かわいい論試論」明星大学人文学部『明星大学研究紀要人文学部』51号, pp.134-135, 2015年
また西村は「かわいい」を濫用し、自己にも「かわいい」を適合させる「すでに幼くはなく小さくもない大人の女性」について「誰かの庇護の元に入り、その誰かに依存して、したたかに生きてゆく戦略」と指摘しており、逆に「成熟しきって老いて醜くなった女性」の生存戦略として、邪険にされず老後の面倒を見てもらうためには「かわいいおばあちゃん」となって少しでも好かれるぐらいしかないのかもしれないと推察している[13]。
かわいさ・かわいいに言及したフィクション作品
- 藤子・F・不二雄『かわい子くん』
- テレビアニメ『ヒーリングっど♥プリキュア』第23話「かわいいってなんですか? アスミと子犬物語」
参考文献
※国内で流通している「かわいい論」は日本独自の「かわいい」という包括的概念の受容、および文化的諸相を人文・社会科学的に考察した定性的研究が中心である。そのため実験心理学をはじめ神経科学や神経美学の視点から「かわいさ」に関する論文・文献資料を渉猟される際は、日本の特殊性を強調した現代文化論やポップカルチャー論と混合されないよう注意されたい。
著作
- コンラート・ローレンツ『動物行動学Ⅱ』思索社, 1989年, 日高敏隆訳
- インゴ・レンチュラー『美を脳から考える ―芸術への生物学的探検―』新曜社, 2000年
- 四方田犬彦『「かわいい」論』筑摩書房〈ちくま新書〉2006年
- 古賀令子『「かわいい」の帝国―モードとメディアと女の子たち』青土社, 2009年
- オギ・オーガス+サイ・ガダム『性欲の科学 なぜ男は「素人」に興奮し、女は「男同士」に萌えるのか』CCCメディアハウス, 2012年
- 永山薫『増補 エロマンガ・スタディーズ「快楽装置」としての漫画入門』筑摩書房〈ちくま文庫〉2014年
- 入戸野宏『「かわいい」のちから 実験で探るその心理』化学同人, 2019年 ※「かわいい」を科学的視点から体系的に論じた本邦初の研究書
- 渡辺茂+石津智大『神経美学―美と芸術の脳科学』共立出版, 2019年
論文
- コンラート・ローレンツ (Konrad Lorenz), 「Die angeborenen Formen möglicher Erfahrung」『Z. Tierpsychol.』(題名訳:可能な経験の生得的形態(経験できることには生まれつき決まった形がある)」Vol.5, pp.235-409, 1943年, ※未翻訳文献
- コンラート・ローレンツ「動物および人間の社会における全体と部分―方法論的考察―」『Studium Generale』1950/3/9(原題:Ganzheit und Teil in der tierischen und menschlichen Gemeinschaft/日高敏隆訳『動物行動学Ⅱ』所載)
- 入戸野宏「"かわいい"に対する行動科学的アプローチ」『人間科学研究』第4巻、広島大学大学院総合科学研究科、2009年、19-35頁、doi:10.15027/29016、ISSN 18817688、NAID 120001954440。
- 井原なみは, 入戸野宏「幼さの程度による"かわいい"のカテゴリ分類<論文>」『広島大学大学院総合科学研究科紀要. I人間科学研究』第6号、広島大学大学院総合科学研究科、2011年12月、13-17頁、doi:10.15027/33096、ISSN 1881-7688、NAID 120004288081。
- 井原なみは・入戸野宏「対象の異なる“かわいい”感情に共通する心理的要因」広島大学大学院総合科学研究科紀要『人間科学研究』7巻, pp.37-42, 2012年
- 入戸野宏「かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察」日本感性工学会・かわいい人工物研究部会・2周年記念シンポジウム(2012年6月2日・芝浦工業大学豊洲キャンパス)資料集, pp.7-10
- 石田かおり「日本のカワイイ文化の特質・来歴とその国際的発信について」駒沢女子大学『駒沢女子大学研究紀要』19巻, pp.57-68, 2012年
- 入戸野宏「かわいさと幼さ:ベビースキーマをめぐる批判的考察」日本視覚学会『VISION』25巻2号, pp.100-104, 2013年
- 畠山真一『カワイイ概念と「不気味の谷」現象について』学校法人尚絅学園尚絅大学研究紀要編集部会『尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編』46巻,pp.29-42, 2014年
- 西村美香「かわいい論試論」明星大学人文学部『明星大学研究紀要人文学部』51号, pp.133-136, 2015年
- 一ノ瀬健太『クラリス・クライシス ─なぜ日本でロリコン文化が花開いたのか?─ 』東京藝術大学修士論文,2015年
- 遠藤薫『「カワイイ」の哲学 ―その歴史的パースペクティブと現代的意義―』『情報処理』57巻2号, pp.118-121, 2016年
- 入戸野宏「“かわいい”感情の心理学モデル」情報処理学会『情報処理』Vol.57 No.2(2016年2月号)pp.128-131
- 宮﨑拓弥『「かわいい」対象と感情の分類』北海道教育大学『北海道教育大学紀要 教育科学編』70巻1号, pp.63-75, 2019年
脚注
- ^ 入戸野宏『「かわいい」のちから 実験で探るその心理』化学同人, 2019年, p.56
- ^ Lorenz, K. (1943). Die angeborenen Formen möglicher Erfahrung [The innate forms of potential experience].
- ^ 入戸野宏『「かわいい」のちから 実験で探るその心理』化学同人, 2019年, p.55
- ^ インゴ・レンチュラー『美を脳から考える ―芸術への生物学的探検―』新曜社, p.13, 2000年
- ^ 入戸野宏「かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察」日本感性工学会・かわいい人工物研究部会・2周年記念シンポジウム(2012年6月2日・芝浦工業大学豊洲キャンパス)資料集, p.7
- ^ 「超正常刺激の他の例として、アニメで女性を描くときに、胸を大きく、ウエストをくびれさせ、ヒップを大きくすることがあります。女性の性的魅力を誇張して描いていますが、そんな女性はほぼ実在しません。好みは分かれますが、根強い人気があります。特定の特徴の組み合わせが、私たちの感情や行動を引き起こすという典型例です。キャラクターの中には、地方団体や民間団体が作るものもあります。『ゆるキャラ』という言葉は、イラストレーターのみうらじゅん氏の造語であり、登録商標です。もともとは、人が入る着ぐるみを指していました。完璧に作りこまれたものではなく、予算の関係で洗練されない手作り感が残るものが多く、微笑(苦笑)を誘います。こういったキャラクターにもベビースキーマは含まれています。中にはそうでないものもありますが、かわいいと感じさせようと作ったものには、必ずベビースキーマが超正常刺激として誇張された形で含まれています」入戸野宏『「かわいい」のちから 実験で探るその心理』化学同人, 2019年, p.57
- ^ 永山薫『増補 エロマンガ・スタディーズ「快楽装置」としての漫画入門』筑摩書房〈ちくま文庫〉2014年, pp.81-83
- ^ 入戸野(2009), p.24
- ^ 「かわいい」は原則的に目上の者が目下の者に抱く情愛を示す表現である。一方で目下の者から目上の者への情愛を示す際には「いとしい」が用いられた。(入戸野宏「"かわいい"に対する行動科学的アプローチ」『人間科学研究』第4巻、広島大学大学院総合科学研究科、2009年、19-35頁、doi:10.15027/29016、ISSN 18817688、NAID 120001954440。)
- ^ 「“かわいい(かわゆい)”の語源は“かわはゆし”という古語であるといわれる。これは,“顔(かお)映(は)ゆし”の変化した語で,“はずかしい,良心がとがめて顔が赤らむようだ”という意味であった。中世(鎌倉時代から安土桃山時代)には“見るに忍びない”の意から気の毒で不憫という意味で用いられたが,中世後半に,女・子どもなど弱者への憐れみの気持ちから発した情愛の念を示す意が派生した。近世(江戸時代)の後半になると不憫の意は消失して,愛らしいの意のみとなり,さらに愛すべき小さいさまという属性形容詞の用法も出現した。現在は,属性形容詞として考えられることの多い“かわいい”だが,本来は感情形容詞であったことは興味深い」入戸野宏「小講演 “かわいい”の心理生理学」『生理心理学と精神生理学』第32巻第2号、日本生理心理学会、2014年、53-54頁、doi:10.5674/jjppp.1410ci、ISSN 0289-2405、NAID 130005072710。
- ^ a b 宮崎(2019), p.69
- ^ 「気味が悪い、醜いということと、『かわいい』こととは、けっして対立するイメージではなく、むしろ重なりあい、互いに牽引し依存しあって成立しているものなのである。これは逆にいえば、あるものが『かわいい』と呼ばれるときには、そのどこかにグロテスクが隠し味としてこっそりと用いられていることを意味している」四方田犬彦『「かわいい」論』筑摩書房〈ちくま新書〉p.80, 2006年
- ^ 西村(2015), p.135
外部リンク
- 「かわいい」を横断的に考える
- 顔やしぐさがかわいい〜不思議な行動に現れる本能 - 子猫のへや
- 主婦と科学/家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所/研究レポート18「赤ちゃんの顔はなぜかわいい?」 - ほぼ日刊イトイ新聞
- 入戸野宏 (2019年10月7日). “「かわいい」ってなんだろう:実験心理学の研究で分かったこと”. ニッポンドットコム 2020年9月26日閲覧。