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2010年2月2日 (火) 08:43時点における版
内燃機関(ないねんきかん、Internal-combustion engine:インターナル・コンバッション・エンジン)は、内部で燃料を燃焼させて動力を取り出す機械 [1] [2] [3] 「動力を取り出す機械」である原動機の一種。
動作概要と原理
燃料を直接作動流体とし動力源とする。工学では、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する熱機関の一種に分類される。ピストンエンジン(レシプロエンジン)やガスタービンエンジン [4] 等がある。燃焼形態に注目した場合、ピストンエンジンは「間欠燃焼」、ガスタービンエンジンは「連続燃焼」という違いがある。ピストンエンジンの場合、シリンダー(気筒)の内部で燃料を燃焼させ、燃焼により生じる圧力がピストンを押す力を利用する。 [5] 内燃機関に限らず、燃焼プロセスを経る装置では、熱効率においてカルノー効率を越えるものは、理論上作り出せない。
内燃機関の歴史
19世紀より以前から様々な内燃機関が開発されてきたが、石油の採掘と精製が産業として確立する1850年代中ごろまで普及しなかった。19世紀後半には技術革新によって様々な用途で利用されるようになっていった。
- 13世紀: 内燃機関の一種であるロケットエンジンが中国、モンゴル、アラブなどで使われていた[6]。
- 1509年: レオナルド・ダ・ヴィンチが無圧縮式内燃機関についての記述を残している。
- 1673年: クリスティアーン・ホイヘンスが無圧縮式内燃機関についての記述を残している。
- 17世紀: イングランドの発明家サミュエル・モーランドが、火薬の爆発力で動作するポンプを発明。世界初の原始的なピストンエンジン。
- 1780年代: アレッサンドロ・ボルタが電気銃という玩具を製作[7]。電気スパークで空気と水素の混合気体を爆発させ、銃の先端に詰めたコルクを発射するもの。
- 1791年: ジョン・バーバーがイギリスで特許(第1833号、A Method for Rising Inflammable Air for the Purposes of Producing Motion and Facilitating Metallurgical Operations)を取得。その中でタービンを解説している。
- 1798年: ティープー・スルタン(インドのマイソール国王)が、鉄製のロケットを使いイギリス軍を攻撃。
- 1807年: スイス人技師 François Isaac de Rivaz が水素と酸素の混合気体を燃料とした内燃機関を製作[8]。
- 1823年: Samuel Brown が産業の動力源として使える世界初の内燃機関の特許を取得。無圧縮式で当時既に古臭くなっていたサイクル "Leonardo cycle" を使っていた。
- 1824年: フランスの物理学者サディ・カルノーが理想的熱機関の熱力学理論を確立。この理論から、温度差を大きくするには圧縮が必要であることが科学的に裏付けられた。
- 1826年4月1日: アメリカのサミュエル・モーリーがガス作動の内燃機関で特許を取得。
- 1838年: イギリス人のウィリアム・バーネットが特許を取得。その中で初めてシリンダー内での圧縮が示唆された。
- 1854年: イタリア人 Eugenio Barsanti と Felice Matteucci が、高効率で実動する世界初の内燃機関の特許(特許番号1072)を取得したが、生産には至らなかった。
- 1856年: フィレンツェの企業 Fonderia del Pignone(現在はゼネラル・エレクトリックの子会社 Nuovo Pignone となっている)で、Pietro Benini が Barsanti-Matteucci 式の内燃機関の実動プロトタイプを製作(5馬力)。その後も単気筒や2気筒のエンジンを製造し、蒸気機関の代替として販売した。
- 1860年: ベルギーのジャン=ジョゼフ・エティエンヌ・ルノアール (1822–1900) がガス燃焼式内燃機関を開発。外見や構造は蒸気機関とよく似ていて、蒸気の代わりにガスを使ったものと言える。大量生産された世界初の内燃機関となった。
- 1862年: ドイツの発明家ニコラウス・オットーが照明用ガスを燃料とする内燃機関を設計し、オイゲン・ランゲンから資金援助を得ることに成功。また、ボー・ド・ロッシャが4ストロークエンジンの理論を公表。
- 1870年: ウィーンのジークフリート・マルクスが、初めて荷車にガソリンエンジンを搭載。
- 1876年: ニコラウス・オットーはゴットリープ・ダイムラーおよびヴィルヘルム・マイバッハと共に実用的な4ストローク機関(オットーサイクル)を開発。しかしドイツの法廷は、シリンダー内で圧縮する内燃機関全般だけでなく4ストローク機関についても特許を与えなかった。これ以降、シリンダー内での圧縮が一般化する。
- 1879年: カール・ベンツは、高信頼の2ストロークガスエンジンの特許を取得。これはオットーの4ストローク機関の設計に着想を得たものである。後にベンツは独自の4ストローク機関を製作し、自動車に搭載。その開発は1885年に行われ、1886年に特許を取得。これが世界初の自動車生産となった。
- 1882年: ジェームズ・アトキンソンがアトキンソンサイクルの内燃機関を発明。
- 1885年: ドイツの技術者ゴットリープ・ダイムラーがスーパーチャージャーの特許を取得。
- 1887年: グスタフ・ド・ラバルがドラバル・ノズルを考案。
- 1891年: Herbert Akroyd Stuart は独自の内燃機関を開発し、その製造権をイギリスのHornsbyにリースした。世界初の低温で点火可能な圧縮点火内燃機関である。翌年、ポンプ場に最初の装置を設置した。また同年、試験的に高圧版を作り、圧縮だけで発火する状態を作ることに成功。
- 1892年: ルドルフ・ディーゼルがカルノーサイクル式エンジンの特許を取得[9]。
- 1893年 2月23日: ルドルフ・ディーゼルがディーゼルエンジンの特許を取得。
- 1896年: カール・ベンツが水平対向エンジンを発明。ピストンの動きによる振動を抑える効果がある。
- 1900年: ディーゼルがピーナッツ油を燃料としたディーゼルエンジンをパリ万博に出展。
- 1903年: コンスタンチン・E・ツィオルコフスキーが宇宙に到達可能なロケットについての一連の論文を発表し始めた。エギディアス・エリング が遠心式圧縮機を使った世界初の実動するガスタービンを製作。
- 1908年: René Lorin がラムジェットエンジンの特許を取得。
- 1910年: アンリ・コアンダが世界初のジェット推進の航空機コアンダ=1910を製作。ただし、実際にジェットエンジンで飛行することはなかった。
- 1921年: Maxime Guillaume が軸流式ガスタービンエンジンの特許を取得。圧縮機とタービンを多段式にし、1つだけ大きな燃焼室があるという構成だった。
- 1923年: アメリカ国立標準局の Edgar Buckingham がジェットエンジンは効率が低く現実的でないという報告を発表。特にピストンエンジンに比べて5倍の燃料を消費するとしていた[10]。
- 1924年: ベンツ社が初のトラック用ディーゼルエンジンの特許を取得。
- 1925年: スウェーデンの技術者 Jonas Hesselman が世界初のガソリン直噴エンジンを開発[11][12]。
- 1926年: Alan Arnold Griffith は重要な論文 Aerodynamic Theory of Turbine Design を発表。これによってそれまで実現が疑問視されていたジェットエンジンが注目されるようになった。その中で、これまでの圧縮機は飛行には不向きで、ブレードを翼型に設計変更すべきだとし、実用的エンジンが製造可能であることを数学的に示すと共にターボプロップエンジンの構築法を解説した。同年、ロバート・ゴダードが世界初の液体燃料ロケットを打ち上げた。
- 1929年: フランク・ホイットルがジェットエンジンに関する論文を発表。
- 1930年: ホイットルが遠心圧縮式のジェットエンジンの特許を取得。
- 1936年: フランスの技術者 René Leduc が René Lorin のラムジェットエンジンを独自に再発明し、実験に世界で初めて成功。
- 1937年3月: 遠心式ターボジェットエンジン ハインケル HeS 1 の試験が行われた。
- 1942年7月18日: メッサーシュミットMe262がジェットエンジンのみで初めて飛行に成功。
- 1957年: フェリクス・ヴァンケルが製作したロータリーエンジン試作機 DKM 54 が世界で初めて動作。
脚注
- ^ Internal-combustion engineの訳語であり、内部で(インターナル)燃料を燃焼させて(コンバッション)動力を取り出す機械(エンジン)の意味。
- ^ 日本語の「機関」は仕掛けという広い意味をもつが、内燃機関の「機関」は、英語のエンジンの訳語として使われ、原動機と同義となる。
- ^ 日本語で一般にエンジンとは内燃機関を指すことが多い。
- ^ ジェットエンジンはガスタービンエンジンの一種。
- ^ これに対し、外燃機関としてのピストンエンジンでは、燃料を燃焼させ、その熱で作動流体(蒸気機関の場合は主に水)にエネルギーを与え、外部機関(=ピストン/シリンダー)に送り込み動力を得る。
- ^ chapters 1–2, Blazing the trail: the early history of spacecraft and rocketry, Mike Gruntman, AIAA, 2004, ISBN 156347705X.
- ^ Electric Pistol
- ^ “The History of the Automobile - Gas Engines”. About.com (2009年9月11日). 2009年10月19日閲覧。
- ^ DE patent 67207 Rudolf Diesel: „Arbeitsverfahren und Ausführungsart für Verbrennungskraftmaschinen“ pg 4.
- ^ JET PROPULSION FOR AIRPLANES
- ^ Scania fordonshistoria 1891-1991 |year=1992 |language=Swedish |isbn=91-7886-074-1}} (Translated title: Vehicle history of Scania 1891-1991)
- ^ Volvo – Lastbilarna igår och idag |year=1987 |language=Swedish |isbn=91-86442-76-7}} (Translated title: Volvo trucks yesterday and today))