新潟市の経済

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新潟市の経済(にいがたしのけいざい)は、新潟県新潟市の市域における経済および産業の状況である。

当記事では、新潟市域における経済・産業の状況を日本標準産業分類に基づいて記載。新潟市域に本社を置く企業について、特に記載がない企業は中央区に本社が所在する。

概要[編集]

経済状況[編集]

新潟市は、周辺地域とともに新潟都市圏を形成しているが、2005年(平成17年)3月の合併により、主な通勤・通学圏内の市町村が新潟市へ編入されたため、市域人口と比べて都市圏人口はそれほど大きくない。2000年国勢調査の統計値をもとにした都市圏人口は、都市雇用圏(10%通勤圏)で約95万人、10%通勤・通学圏[1] で約99万人となっている。1.5%都市圏では約135万人。

以上のような定期的な人の移動を基準にした都市圏に対し、不定期的な人の移動、すなわち経済圏人口は約150万人規模と言われている。これらは既存政令市に比べて小さいが、全中核市よりは大きい。

市内にはかつて新潟証券取引所があった。主に県内主要企業の株式の売買が行われていたが、2000年(平成12年)3月に東京証券取引所に統合され閉鎖した。

古町のオフィスビルは、21階建のNEXT21を除けば10階建て前後の中低層ビルが主流である。対して新潟駅に近く眺望が良い信濃川沿いの地区では、1970年代中盤からマンションなどの高層建築が相次いで建設されている。2000年代中盤には当時の景気回復傾向と政令市特需、さらには都心回帰現象もあいまって中心部の各地区で中高層マンションの建設が活発化した。

新潟市の業務管轄地域[編集]

新潟市は、本州日本海側で最大規模の都市である。所属する地方としては、中部地方社会科地理での分類)、北陸地方五畿七道の分類)、関東甲信越地方(経済ブロックの分類)、信越地方(郵政関係)、北信越地方(衆議院比例代表区北陸信越ブロック (PDF) )、東北地方国土形成計画法による分類)などが見られ、「北陸地方」または「信越地方」の場合に地方を管轄する業務中枢が置かれている。(→甲信越地方中部地方#地方内の分類新潟県なども参照)。

新潟市の政令市移行後は、歴史的につながりの深い山形県庄内地方置賜地方福島県会津地方などの隣接地域に経済圏をはじめとした影響拡大が起きることが期待されたが、2012年(平成24年)秋、新潟市内の3つの商工会議所(新潟商工会議所、亀田商工会議所、新津商工会議所)は、市域の経済活動について「政令市移行による経済効果を享受しているという実感に乏しい」と指摘し、新潟市に対し経済施策の強化などを引き続き要望している[2]

市内総生産[編集]

市内総生産額
項目 実数
(億円)
構成比
(%)
対前年度
増加率
(%)
市内総生産額
29,682 - △1.7
産業分類別生産額
30,755 - △1.7
第一次産業 420 1.4 △8.2
第二次産業 5,358 17.4 △2.3
第三次産業 24,978 81.2 △1.5
経済活動別生産額
項目 実数
(億円)
構成比
(%)
対前年度
増加率
(%)
第一次産業
420 1.4 △8.2
農業 396 - △9.5
林業 3 - 3.8
水産業 21 - 24.2
第二次産業
5,358 - △2.3
鉱業 99 0.3 3.3
製造業 3,743 12.2 2.0
建設業 1,516 4.9 △11.9
第三次産業
24,978 - △1.5
電気・ガス・水道業 664 2.2 △0.1
卸売・小売業 4,132 13.4 △12.9
金融・保険業 1,804 5.9 △1.2
不動産業 4,444 14.5 1.4
運輸・通信業 2,060 6.7 0.2
サービス業 7,034 22.9 △0.8
政府サービス生産者 4,089 13.3 4.3
対家計民間非営利サービス生産者 750 2.4 10.4
※平成18年度データ、新潟市総務部「新潟市の市民経済計算」より

第一次産業[編集]

農業[編集]

新潟市は信濃川と阿賀野川の二大河川の下流部に位置し、平地が多く、海岸部には砂丘が発達している。市域の約半分を水田・田畑などの農地が占めており、農業も基幹産業の一つとなっている。

市域内の農家の戸数は13,797戸(2005年)で、耕地面積は34,100ha(2008年)にのぼる。特に水田面積は29,400ha(同)と全国の市町村で最も広く、静岡県鳥取県高知県の各県全体のそれを大きく上回っている。農業産出額は655.3億円(2006年)で全国市町村3位、政令市としてはトップと群を抜いている。また食料自給率は63%(2005年)で、こちらも政令市としては最も高い[注 1]

こうした背景から新潟市は「田園型政令市」を標榜し、都市の将来像として、高次都市機能と豊かな農業資源とを融合させた「食と花の都 ~日本一豊かでにぎわいのある大農業都市~」を目指している。

市域では様々な農作物が栽培されている。このうち、収穫量もしくは出荷量が全国市町村10位以内に達しているものは下記の通り。

品目 全国
市町村
順位
収穫量
(出荷量)
市内の主な産地 参考
(水稲) 収穫量 1位 144,700t 市内全域 2位: 大仙市秋田県)76,900t
チューリップ(切花) 出荷量 1位 13,300千本 北区、江南区、秋葉区、南区、西区 2位: 深谷市埼玉県)12,900千本
チューリップ(球根) 出荷量 1位 7,390千球 北区、江南区、秋葉区、南区、西区 2位: 砺波市富山県)6,210千球
花木(鉢物) 出荷量 1位 11,800千鉢 東区、江南区、秋葉区 2位: 田原市愛知県)4,410千鉢
枝豆 収穫量 2位 2,560t 秋葉区、南区、西区 1位: 鶴岡市山形県)3,790t
ナシ(日本梨) 収穫量 2位 8,760t 江南区、南区、西蒲区 1位: 福島市福島県)13,200t
ユリ(球根類) 出荷量 3位 1,880千球 江南区、秋葉区 1位: 和泊町鹿児島県)4,130千球
ダイコン 収穫量 5位 28,494t 北区、西区 1位: 三浦市神奈川県)74,603t
カブ 収穫量 6位 2,900t 西区 1位: 柏市千葉県)15,000t
ナシ(西洋梨 収穫量 6位 959t 江南区、南区、西蒲区 1位: 天童市(山形県)3,740t
スイカ 収穫量 7位 12,900t 北区、西区、西蒲区 1位: 植木町[注 2]熊本県)20,200t
※平成18年 農林水産省 農林水産関係市町村別データより

この他栽培されている農作物のうち、出荷量が多いものは下記の通り。

品目 収穫量
(出荷量)
市内の主な産地 参考
大豆 1,450t 秋葉区、南区、西蒲区  
葉たばこ 971t 北区、西区、西蒲区  
トマト 4,850t 北区、南区、西蒲区  
なす 1,950t 北区、江南区  
きゅうり 4,670t 北区、南区、西蒲区  
食用菊(カキノモト) - t 南区  
1,310t 南区、西蒲区  
2,870t 秋葉区、西蒲区 主に「八珍柿」と呼ばれる平核無柿を栽培。
秋葉区に八珍柿の原木が存在する
ぶどう 1,670t 江南区、南区  
メロン - t 北区、西区、西蒲区  
※平成18・19年 新潟農林水産統計年報より

漁業[編集]

新潟市は日本海に面し、信濃川と阿賀野川の二大河川が流れる地形もあいまって、古くから漁業も盛んである。

海面漁業[編集]

新潟港西港区の万代島には漁港区が設けられ、沿岸漁業沖合漁業の基地となっている他、下越地方の海面漁業の中枢機能が置かれている。その他、市域には下記の4箇所の漁港が所在し、いずれも沿岸漁業を行っている。新潟漁業協同組合は、市域を含む下越全域と中越全域の漁業を管轄している。

第1種漁港(新潟市が管理)
第2種漁港(新潟県が管理)
  • 間瀬漁港 : 西蒲区間瀬

内水面漁業[編集]

一方、内水面漁業は信濃川、阿賀野川の2河川と中央区の鳥屋野潟、西区の佐潟、御手洗潟の3湖沼が主な漁場となっている。年間の漁獲高は150t前後とごく小規模だが、信濃川ではサケの種苗生産を行っており、毎年稚魚の放流が行われている。

第二次産業[編集]

鉱業[編集]

市域周辺には古くから原油油田)、天然ガスガス田)の滞留層が存在することが知られている。

秋葉区新津地区南東部の丘陵周辺には新津油田が存在し、古くから原油の採取が行われ、明治時代からは近代化が進んで機械掘りによる採掘が始まり、旧新津市には大手・中小を含め多くの事業者が油井製油所を置き、大正時代には国内随一の産油量を記録した。しかし戦後は資源の枯渇から撤退が相次ぎ、1996年(平成8年)に全ての採掘を終え生産を停止している。1950年代以降には東新潟油ガス田阿賀沖油ガス田に代表される大型油田の開発が進捗した。また新潟港の西港区には大手2社が大規模な石油精製プラントを置き、県内産原油や輸入原油の精製が行われていた。原油の年間輸入量は1960年代の約400万klをピークに、その後は設備の老朽化やコスト増などによって漸減し、1999年(平成11年)に相次いで精製業務を取り止めている。

また海岸線沿いや水田地帯では、地下水に溶融する水溶性天然ガスを分離して採取する小規模なガス井が稼働し、旧農村部では天然ガスを自家採取して使用する家庭が多く見られた。また新潟交通では戦後のエネルギー供給不足を賄うため、市内を走る路線バスの燃料として自社採取した天然ガスを1947年(昭和22年)から約12年間にわたって使用していた。しかし深刻な地盤沈下の進行によって1950年代後半からはガスの採取規制が執られ、1970年(昭和45年)からは自家用ガス井の使用も原則禁止された(この間、編入市域でも1963年から1978年にかけて規制条例が設けられている)。現在内陸部では県内外の数社が北区松浜・南浜地区、東区木戸地区、中央区関屋地区、西区黒埼地区などにガス井を設けて天然ガスの採取を続けているが、県・市は地盤沈下を防止するため、事業者に対してガス採取後の地下水を帯水層に還元圧入することを義務付けている。この地下水から三菱ガス化学の連結子会社の東邦アーステックが国内生産量の8%にあたるヨウ素を製造している[3][4]

建設業[編集]

製造業[編集]

機械工業、金属工業、製紙業化学工業、食品製造業など多種多様な工業が盛んであり、北陸工業地域の中核となっている。

「平成20年工業統計調査」によると、新潟市の事業所数(従業者4人以上)は1,281、従業者数は39,603人、製造品出荷額等は1兆1,168億円で、日本海側の市町村では富山市と並ぶ規模を有する。

食料品製造業[編集]

印刷・同関連業[編集]

  • 第一印刷所
  • タカヨシ

その他[編集]

第三次産業[編集]

新潟市の産業のうち、総生産額で8割を占める。

電気・ガス・熱供給・水道業[編集]

情報通信業[編集]

映像・音声・文字情報制作業[編集]

各種コンテンツ制作
映像制作
  • 時空映像
アニメーション制作
アニメーション制作ではプロダクション・アイジーマジックバスが新潟市内にスタジオを持つ他、以下の2社が新潟市内に本社を置いている。
  • スノーライトスタッフ
  • 新潟アニメーション
新聞
出版業
フリーペーパー

運輸・郵便業[編集]

運輸業

卸売・小売業[編集]

卸売・小売業の「平成19年商業統計調査」では、新潟市の事業所数は10,759、従業者数は81,307人、年間商品販売額は3兆5,719億円に上る。[5]

百貨店
スーパーマーケット
ドラッグストア
  • 星光堂薬局(クスリのセイコードー、ドラッグトップス)
書店
家具店
ホームセンター
リサイクル販売
郊外型店舗
  • 原信マーケットシティ河渡
  • 松崎マーケットシティ(GARDEN MATSUZAKI、新松崎ストリート)
  • 原信マーケットシティ赤道
  • フレスポ赤道

金融・保険業[編集]

金融機関[編集]

都市銀行では、みずほ銀行三菱UFJ銀行三井住友銀行の3行が新潟市内に支店を置いている。信託銀行みずほ信託銀行三井住友信託銀行の2行が支店を置いている。また、地方銀行では第四北越銀行が市内に本店を置いている他、3行が新潟市内に支店を置いている。第二地方銀行も2行が新潟市内に支店を置いている。

市内に本店を有する金融機関
市内に支店を持つ金融機関

不動産・物品賃貸業[編集]

物品賃貸業

宿泊・飲食サービス業[編集]

宿泊業[編集]

  • 新潟グランドホテル
  • ホテルディアモント

飲食店[編集]

持ち帰り・配達飲食サービス業[編集]

生活関連サービス業、娯楽業[編集]

娯楽業[編集]

興行
その他の娯楽業
芸ぎ業
  • 柳都振興

教育、学習支援業[編集]

その他の教育,学習支援業[編集]

教養・技能教授業
音楽教授業
  • ニイガタ・パフォーマンス・スクール

特別区域[編集]

新潟市は2014年(平成26年)3月28日に国家戦略特別区域「大規模農業の改革拠点」の指定を受けている。2015年(平成27年)6月までに6事業者が参入し、2015年6月9日に新たに5事業者の参入を決定した[6]

参入事業者
事業者名 参入日 業種 事業所 事業内容 備考
ローソンファーム新潟 農業生産法人 江南区
セブンファーム新潟 2015年6月9日 農業生産法人 江南区 店舗から出た生ごみで作った堆肥を使い、ジャガイモなど野菜を生産 [6]
新潟クボタ 2015年6月9日 農業機械販売 中央区 市内農家と連携し輸出用米の生産、耕作放棄地での小麦の栽培 [6]
WPPC 2015年6月9日 ペレット製造業 秋葉区 輸出用のコケの栽培 [6]
アイエスエフネットライフ新潟 2015年6月9日 障害者就労支援サービス 中央区 イチジクなどのを栽培し、障害者の就労の場とする [6]
ars-dining 2015年6月9日 農業生産法人 東区 新規事業を検討 [6]

歴史[編集]

近代[編集]

現代[編集]

脚注[編集]

注釈

  1. ^ 政令市の食料自給率2位は、浜松市の12%である。
  2. ^ 植木町は2010年3月23日、熊本市に編入合併している。

出典

関連項目[編集]

外部リンク[編集]