石油ファンヒーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
石油ファンヒーター

石油ファンヒーター(せきゆファンヒーター)とは暖房器具の1つで、灯油を燃焼しそのエネルギーで得たを送風ファンによって排出し暖をとる電気製品である。他の暖房器具に比べランニングコストが安いことが利点。しかし原油価格による影響を受けやすく、また灯油の扱いや燃焼(主に点火・消火)時の臭気がデメリットともされる。

1978年三菱電機が初めて商品化し、以後各メーカーが参入した。しかし近年[いつ?]では価格競争の激化や電気ファンヒーター(イオンファンやセラミックファン等)への転換などにより撤退したメーカーも多くシャープ2007年春に撤退したことで全ての総合電機メーカーが石油ファンヒーター事業から手を引いた形になり、以後はコロナダイニチ工業トヨトミサンポット・グリーンウッドなどの石油暖房器具メーカーのみが生産を行っている。

パラフィンファンヒーターparaffin fan heater)またはケロシンファンヒーターkerosene fan heater)とも呼ばれる。

基本的な構造[編集]

灯油を機械的な仕組みで気化させ、空気との混合ガスに変えて燃焼させ、発生した熱を本体背面にある送風ファンにより機外(室内)へと送り出す。送風ファンによって室内の空気が強制的に攪拌されるため、部屋全体を速く暖める能力には優れている。を使った自然気化式の石油ストーブと比べ構造的には複雑で、商用電源を必要とすることから、停電時には使えなくなる。

構造による違い[編集]

燃焼用空気の扱いで、大きく分けて以下の3つの方式がある。

開放式[編集]

単に「石油ファンヒーター」と呼ぶ場合、通常はこの方式のみを指すことが多い。

燃焼用空気を室内から取り入れ、燃焼したガスを室内に排気する方式。使用にあたっては定期的な換気が必要である。室内に排気するので、灯油を一酸化炭素や臭いなどをなるべく出さずに高いレベルで安定して燃焼させる技術が求められた。そのため、温風を出す石油暖房機器としてはFF式に先を譲ることとなった。

開放式の石油ファンヒーターは1978年に三菱電機の群馬製作所が開発し、日本国産第1号機が発売された。商品名は「ダンファン(暖ファン)」と命名された。

FF式(密閉式・強制給排気形)[編集]

燃焼用空気を室外から給排気筒を通して燃焼用送風機の力で強制的に取り入れ発生した熱を送風ファンで室内へ送り出し、排気は給排気筒を通して室外に出す方式。FF式はForced draught balanced Flue typeの頭文字をとった略称。開放式と違い使用時に定期的な換気は必要ないが、給排気筒の設置工事が必要である。FF式の石油温風暖房機は開放式の石油ファンヒーターが登場する以前から商品化されていた。

FE式(強制排気型)[編集]

FF式から強制給気を除いたような構造で室内の空気を使って燃焼、排気のみ屋外へ出す構造。FEとはForced Exhaustの略。給気構造を持たないため構造が単純、また排気管も単管であるため延長が容易である。吸気口が積雪で塞がれてしまう懸念があるFF式に比べ、豪雪地帯などで採用が多い。

燃焼方式の違い[編集]

石油ファンヒーターには主に3種類の燃焼方式の違いがあり、各方式により以下のような特徴がある。

ブンゼン式[編集]

ダイニチ工業が積極的に採用。かつては最も多くのメーカーが採用した燃焼方式。灯油を気化器と呼ばれる装置で電気の力により熱し、自然吸気によってとりいれられた空気と混合されたガスを燃焼筒で燃やす仕組みを持つファンヒーターで他の方式よりも消費電力が多い。また燃焼中の音は他方式に比べて大きい傾向にある。気化器の構造上、点火までの時間が短く灯油の気化ガス発生の制御を瞬時に行えるため点火、消火時の臭いは少なく燃焼中の臭いは少ないと言われるが高地での使用はできない(1000mが上限という[1])。

  • メリット
    • 初期着火までの予熱時間が短い。
    • 点火・消火時の臭いが少ない。
  • デメリット
    • 灯油気化器を電力で動かすため、消費電力が多い。
    • 燃焼用空気と送風空気のファンが同一である事が多く、炎を安定させるために送風能力を落とす設計が多い。
    • 灯油の質に左右され、タールによる故障が多い。

クリーニング機能[編集]

ブンゼン式の特徴である、気化器に付着したタールを焼き尽くしてしまう機能のこと。クリーニング機能動作時は強烈な異臭を放つため、注意書きには屋外で使用するように書かれている。この機能は搭載されていないモデルもある。

ポンプ噴霧式(ARCバーナー)[編集]

灯油を燃焼筒で発生した熱を利用し、機械的に空気と混合させて作った混合ガスを使用して燃焼筒で燃やす仕組みを持つ燃焼方式。過去に多く作られていた方式だが、近年ではコロナのみの製造となっている。電気の力で灯油を温めないため、ブンゼン式に比べても燃焼時消費電力が格段に低いが、炉を温めるための初期着火の待ち時間を要する。

燃焼時に発生する臭気は、ブンゼン式やポット式に比べ少ない。点火時、消火時には臭う。機械的に空気を混ぜているので、混合ガス用空気を別の口から取り入れているのが特徴。

  • メリット
    • 燃焼中の灯油気化は燃焼熱を使うため、消費電力が少ない。
    • 燃焼用空気と送風用空気のファンが分かれ、送風力が高く送風力の調節範囲を広く取れる。
  • デメリット
    • 着火まで時間がかかる。

ポット式(レーザーバーナー)[編集]

燃焼筒に灯油を流し込み燃焼させる方式で、そのものは過去に多く作られていた方式だが、家庭用ファンヒーターにこの技術を応用することに成功したのはトヨトミのみである。混合ガスを作らないのでどんな灯油でも燃焼させることが出来る。

通常、ポット式ストーブの燃焼は黄炎の低速燃焼であり、効率は低く、小型化にも限界があった。トヨトミがこれをブンゼン式・ポンプ噴霧式同様の高速高温燃焼化と小型化に成功、効率はこれらの方式より優位にあるほどになった。同社が「レーザーバーナー」の商標特許を取得しており、他メーカーのポット式青炎ファンヒーターはトヨトミのOEMである。

ポット式の欠点として石油臭が多く排出されてしまうことがあげられるが、レーザーバーナーは燃焼温度・燃焼速度が高く未燃ガスはほとんど排出されないため、燃焼中はむしろ少ない。ただし、点火・消火時はポットを加熱する関係上、このときの石油臭は他の方式に比べて若干多い。

  • メリット
    • 燃焼中の消費電力が少ない。
  • デメリット
    • 着火まで時間を要する。
    • 予熱から点火までの消費電力が多い。

ロータリー式[編集]

バーナー直下に回転する円盤状の気化器を搭載し、遠心力で気化させて燃焼させる方式。直線的な噴射のポンプ噴霧式やブンゼン式に比べて灯油をより均一な混合気にできるため石油臭が少なく、また耐久性が高いとも言われている。ブンゼン式と同じく気化には電力を用いるが、ヒートパイプなどで熱を誘導し効率を上げることができる。かつては三洋電機が代表的なメーカーで、5年補償を謳った「ロータリーガス化バーナー」として販売していた。しかし、同社は2001年に石油暖房機から撤退。現在FF式ファンヒーターや業務用ファンヒーターに僅かに採用例が見られるのみとなっている。

  • メリット
    • ブンゼン式に比べると消費電力が低い。
    • 石油臭が少ない。
    • ポット式ほどでは無いが、不良灯油には比較的強い。
  • デメリット
    • 着火まで時間を要する。
    • 運転音が大きい。

以上の方式の他、油ポンプによって燃料を高圧にしノズルより燃料を微粒化させ噴霧して燃焼に必要な空気と混合したところへ電極捧により点火し燃焼させるガンタイプバーナーを搭載する方式もあり、一部のFF式ファンヒーターで採用されている。またかつては石油ストーブと同様、芯を用いたしん式の石油ファンヒーターも存在したが燃焼性能の問題から間もなく姿を消した。

主なトラブル[編集]

一酸化炭素中毒
石油ファンヒーターの使用にあたっては取扱説明書をよく読み、必要な換気を十分におこなうことが重要である。暖められた部屋の空気を冷たい外気と入れ替えても壁・床・家具などが既に帯熱しているため、換気後の発熱はほとんどが冷えた空気の加熱に振り向けられ速やかにもとの室温に戻る。
不良・不純灯油
太陽光線にあたっていたり長期保管によって品質が劣化した不良灯油や水やガソリン、軽油など灯油以外の成分が混入した不純灯油を使用すると故障の原因となる。火力が安定しなかったり、異臭や煙が多く排出されるなどの症状が現れた場合は灯油に何らかの問題が生じていると見られる。
シリコーン
ワックス材やヘアスプレー、枝毛コート剤などに含まれるシリコーンが石油ファンヒーターの安全装置を誤作動させ運転を停止することがある。これはバーナーの炎を検知する装置にシリコーンが付着し、正常に燃焼しているにもかかわらず不完全燃焼と誤認して消火してしまうのである。噴出口が白く汚れているときはシリコーンによる故障が疑われる。この場合は、炎検知器の清掃あるいは交換を必要とする。
なお、1986年度の新規格として不完全燃焼防止装置が搭載されるようになった。

主な石油ファンヒーターメーカー[編集]

事故・リコール[編集]

脚注[編集]

  1. ^ ダイニチ工業 よくあるご質問 -石油暖房機器- 設置場所(高度や環境)に制限はありますか?

関連項目[編集]

外部リンク[編集]