第二地方銀行

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第二地方銀行(だいにちほうぎんこう)は、一般社団法人第二地方銀行協会の会員であり、金融庁の「免許・登録業者一覧」において「第二地方銀行」とされた銀行である。

概要[編集]

協会の会員の資格は、

平成元年(=1989年2月1日以降、金融機関の合併及び転換に関する法律昭和43年法律第86号)第6条第5項の規定に基づいて、銀行法により免許を受けたとみなされた銀行、及び会員から営業を譲り受けることを目的として新たに免許を受けた銀行であって、主たる営業基盤が地方的なもの。 — 第二地方銀行協会定款第5条

である。以下本項では前者を「銀行法により免許を受けたとみなされた銀行」、後者を「新たに免許を受けた銀行」とする。

「銀行法により免許を受けたとみなされた銀行」は、相互銀行(大半は無尽から発展)が転換したものであり、営業内容に制約がある信用金庫よりも小規模で、非上場の銀行もある。それ故にバブル期に経営陣の私物化による情実(不正)融資が起こり、兵庫銀行(普通銀行として戦後初)を皮切りに、徳陽シティ銀行東京相和銀行中部銀行石川銀行など不良債権による債務超過で経営破綻したところが相次いだ。

なお、破綻した都市銀行の事業を譲受したことにより、第二地方銀行首位となった北洋銀行や、経営再編により第二地方銀行ではなくなったわかしお銀行[注釈 1]八千代銀行第三銀行[注釈 2]や、地方銀行[注釈 3]に吸収合併されたものの、本店所在地は確保した福岡シティ銀行(ただし、2021年を目処に、旧西日本銀行本店だった福岡支店にブランチインブランチとなり、本店ビルの再開発が検討されている)などもある。

第二地方銀行の一覧[編集]

2021年(令和3年)5月時点で37存在する。内訳は次の通り。

  • 相互銀行から普通銀行に転換したもの: 36
  • 営業を譲り受けることを目的として新たに免許を受けたもの: 1
第二地方銀行一覧表(2021年5月現在)[1]
銀行名 旧名称 本店所在地 店舗数 預金
(億円)
貸出金
(億円)
自己資本比率
(%)
金融機関
コード番号
1 ほくようぎんこう北洋銀行 ほくようそうごぎんこう北洋相互銀行 01100-2北海道札幌市中央区 175 72,395 56,219 10.00 0501
2 きらやかぎんこうきらやか銀行 しょくさんそうごぎんこう殖産相互銀行 06201-4山形県山形市 117 12,316 9,438 10.28 0508
3 きたにっぽんぎんこう北日本銀行 きたにっぽんそうごぎんこう北日本相互銀行 03201-8岩手県盛岡市 79 13,467 9,037 10.11 0509
4 せんだいぎんこう仙台銀行 しんこうそうごぎんこう振興相互銀行 04100-9宮城県仙台市青葉区 72 8,433 5,750 10.88 0512
5 ふくしまぎんこう福島銀行 ふくしまそうごぎんこう福島相互銀行 07201-0福島県福島市 53 6,439 4,686 10.71 0513
6 だいとうぎんこう大東銀行 だいとうそうごぎんこう大東相互銀行 07203-6福島県郡山市 62 6,896 4,626 10.37 0514
7 とうわぎんこう東和銀行 たいせいそうごぎんこう大生相互銀行 10201-6群馬県前橋市 94 17,711 13,025 10.45 0516
8 とちぎぎんこう栃木銀行 とちぎそうごぎんこう栃木相互銀行 09201-1栃木県宇都宮市 91 24,667 17,213 11.67 0517
9 けいようぎんこう京葉銀行 ちばそうごぎんこう千葉相互銀行 12100-2千葉県千葉市中央区 120 37,733 28,027 11.51 0522
10 ひがしにっぽんぎんこう東日本銀行 ときわそうごぎんこうときわ相互銀行 13102-4東京都中央区 79 17,810 14,739 9.31 0525
11 とうきようすたーぎんこう東京スター銀行 とうきょうそうわぎんこう東京相和銀行 13103-2東京都港区 31 21,571 15,599 9.72 0526
12 かながわぎんこう神奈川銀行 かながわそうごぎんこう神奈川相互銀行 14100-3神奈川県横浜市中区 34 4,091 3,094 8.36 0530
13 たいこうぎんこう大光銀行 たいこうそうごぎんこう大光相互銀行 15202-1新潟県長岡市 70 12,754 9,160 11.00 0532
14 ながのぎんこう長野銀行 ながのそうごぎんこう長野相互銀行 20202-9長野県松本市 55 10,080 5,943 11.67 0533
15 とやまだいいちぎんこう富山第一銀行 とやまそうごぎんこう富山相互銀行 16201-9富山県富山市 67 10,361 7,665 12.06 0534
16 ふくほうぎんこう福邦銀行 ふくいそうごぎんこう福井相互銀行 18201-0福井県福井市 39 4,176 3,191 8.75 0537
17 しずおかちゅうおうぎんこう静岡中央銀行 しずおかそうごぎんこう静岡相互銀行 22203-8静岡県沼津市 45 5,389 4,515 10.53 0538
18 あいちぎんこう愛知銀行 ちゅうおうそうごぎんこう中央相互銀行 23100-2愛知県名古屋市中区 106 25,953 16,396 11.95 0542
19 なごやぎんこう名古屋銀行 なごやそうごぎんこう名古屋相互銀行 112 29,548 21,100 12.35 0543
20 ちゅうきょうぎんこう中京銀行 ちゅうきょうそうごぎんこう中京相互銀行 90 16,594 12,244 11.06 0544
21 みなとぎんこうみなと銀行 はんしんそうごぎんこう阪神相互銀行 28100-0兵庫県神戸市中央区 107 30,462 23,515 8.64 0562
22 しまねぎんこう島根銀行 まつえそうごぎんこう松江相互銀行 32201-6島根県松江市 34 3,497 2,495 9.44 0565
23 とまとぎんこうトマト銀行 さんようそうごぎんこう山陽相互銀行 33100-7岡山県岡山市北区 60 9,518 8,064 9.78 0566
24 もみじぎんこうもみじ銀行 ひろしまそうごぎんこう広島相互銀行 34100-2広島県広島市中区 117 26,445 19,283 11.55 0569
25 さいきょうぎんこう西京銀行 やまぐちそうごぎんこう山口相互銀行 35215-2山口県周南市 65 10,283 7,309 10.17 0570
26 とくしまたいしょうぎんこう徳島大正銀行 とくしまそうごぎんこう徳島相互銀行 36201-8徳島県徳島市 108 20,053 15,732 9.38 0572
27 かがわぎんこう香川銀行 かがわそうごぎんこう香川相互銀行 37201-3香川県高松市 86 12,969 9,793 10.83 0573
28 えひめぎんこう愛媛銀行 えひめそうごぎんこう愛媛相互銀行 38201-9愛媛県松山市 103 18,251 13,625 10.85 0576
29 こうちぎんこう高知銀行 こうちそうごぎんこう高知相互銀行 39201-4高知県高知市 71 8,922 6,597 10.20 0578
30 ふくおかちゅうおうぎんこう福岡中央銀行 しょうきんそうごぎんこう正金相互銀行 40130-7福岡県福岡市中央区 41 4,347 3,497 8.71 0582
31 さがきょうえいぎんこう佐賀共栄銀行 さがそうごぎんこう佐賀相互銀行 41201-5佐賀県佐賀市 35 2,125 1,681 9.02 0583
32 ながさきぎんこう長崎銀行 ながさきそうごぎんこう長崎相互銀行 42201-1長崎県長崎市 23 2,262 2,269 7.99 0585
33 くまもとぎんこう熊本銀行 くまもとそうごぎんこう熊本相互銀行 43100-1熊本県熊本市中央区 70 12,235 10,298 10.60 0587
34 ほうわぎんこう豊和銀行 ほうわそうごぎんこう豊和相互銀行 44201-1大分県大分市 42 5,084 3,874 10.08 0590
35 みやざきたいようぎんこう宮崎太陽銀行 みやざきそうごぎんこう宮崎相互銀行 45201-7宮崎県宮崎市 53 5,754 4,475 9.10 0591
36 みなみにっぽんぎんこう南日本銀行 あさひそうごぎんこう旭相互銀行 46201-2鹿児島県鹿児島市 65 6,754 5,425 8.76 0594
37 おきなわかいほうぎんこう沖縄海邦銀行 おきなわそうごぎんこう沖縄相互銀行 47201-8沖縄県那覇市 48 5,885 3,898 9.83 0596

東京スター銀行東京相和銀行から営業を譲り受けることを目的として新たに免許を受けた銀行、それ以外は全て旧相互銀行から普通銀行に転換した銀行である。

現存しない第二地方銀行[編集]

埼玉県山梨県においては、1989年時点で県内に本店を置く旧相互銀行自体が存在していなかった[注釈 4]。 また青森県では1976年に、当時の弘前相互銀行が青和銀行(普通銀行: (第一)地方銀行)を存続行として合併し、みちのく銀行が発足したことでやはり相互銀行のない県となった。

第二地方銀行の制度が発足して以降は、吸収合併や経営破綻により、秋田県茨城県石川県岐阜県三重県滋賀県京都府大阪府奈良県和歌山県鳥取県の各府県で、本店を有する第二地方銀行が消滅した。こうした再編はその後も続いており、2025年頃をめどに長野銀行が八十二銀行((第一)地方銀行)と合併し、長野県から第二地方銀行が消滅する見込みである[2]

他のカテゴリーへ移行した銀行[編集]

地域 銀行名 旧名称 本店所在地 登録先財務局 その後
関東 わかしお銀行 太平洋銀行 東京都千代田区 関東財務局 いわゆる“逆さ合併”により三井住友銀行旧社を吸収合併し同名に改称、都市銀行へ移行。
八千代銀行 八千代信用金庫 東京都新宿区 東京都民銀行新銀行東京との経営統合後、その2行を吸収合併しきらぼし銀行に改称、(第一)地方銀行へ移行。
東海 第三銀行 第三相互銀行 三重県松阪市 東海財務局 三重銀行を吸収合併し三十三銀行に改称、(第一)地方銀行へ移行。

わかしお銀行は太平洋銀行から営業を譲り受けることを目的として新たに免許を受けた銀行、八千代銀行及び第三銀行は銀行法により免許を受けたとみなされた銀行(前者は信用金庫、後者は相互銀行から転換)だった。

吸収合併によって消滅したもの[編集]

銀行法により免許を受けたとみなされた銀行
1989年2月1日以降、金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和43年法律第86号)第6条第5項の規定に基づくものを挙げる。
地域 銀行名 旧名称 本店所在地 登録先財務局 その後
北海道 札幌銀行 北海道相互銀行 札幌市中央区 北海道財務局 北洋銀行と経営統合の後同行を存続行として合併
東北 秋田あけぼの銀行 秋田相互銀行 秋田県秋田市 東北財務局 羽後銀行((第一)地方銀行)に吸収合併され、北都銀行
山形しあわせ銀行 山形相互銀行 山形県山形市 殖産銀行と経営統合の後同行を存続行として合併し、きらやか銀行
関東 つくば銀行 東陽相互銀行 茨城県下妻市 関東財務局 2003年4月1日、つくばが関東銀行((第一)地方銀行)に吸収合併され、関東つくば銀行
2010年3月1日、茨城が関東つくば銀行を存続行として合併され、筑波銀行
茨城銀行 茨城相互銀行 茨城県水戸市
東海 岐阜銀行 岐阜相互銀行 岐阜県岐阜市 東海財務局 2010年12月に十六銀行((第一)地方銀行)の完全子会社となった
2012年9月18日に同行に吸収合併された
近畿 びわこ銀行 滋賀相互銀行 滋賀県大津市 近畿財務局 2010年3月1日関西アーバン銀行が吸収合併(現・関西みらい銀行
なにわ銀行 大阪相互銀行 大阪府大阪市中央区 経営再建を図って1998年10月1日に特定合併の形でなみはや銀行を設立したものの、
翌1999年8月6日に経営破綻
福徳銀行 福徳相互銀行
近畿銀行 近畿相互銀行 近畿はいわゆる“逆さ合併”で大阪銀行((第一)地方銀行)を存続行として合併され、近畿大阪銀行
その後旧大和銀行主導で大和・近畿大阪・奈良の3行で経営統合し、りそなグループ
奈良は後に再編でりそな銀行に吸収合併される
奈良銀行 三栄相互銀行 奈良県奈良市
和歌山銀行 和歌山相互銀行 和歌山県和歌山市 紀陽銀行((第一)地方銀行)と経営統合の後、同行に吸収合併
関西アーバン銀行 関西相互銀行 大阪府大阪市 近畿大阪銀行((第一)地方銀行)と経営統合の後、近畿大阪を存続行として合併され関西みらい銀行に
大正銀行 大正相互銀行 徳島銀行と経営統合の後、徳島を存続行として合併され徳島大正銀行
中国 ふそう銀行 扶桑相互銀行 鳥取県鳥取市 中国財務局 山陰合同銀行((第一)地方銀行)に吸収合併される
せとうち銀行 呉相互銀行 広島県呉市 広島総合銀行と経営統合の後、同行を存続行として合併し、もみじ銀行
九州 福岡シティ銀行 福岡相互銀行 福岡県福岡市博多区 福岡財務支局 (第一)地方銀行に転換した西日本銀行を存続行として合併し、西日本シティ銀行
九州銀行 九州相互銀行 長崎県佐世保市 親和銀行((第一)地方銀行)と経営統合の後同行が吸収合併(現・十八親和銀行
肥後ファミリー銀行 肥後相互銀行 熊本県熊本市 九州財務局 熊本銀行を存続行として合併し、熊本ファミリー銀行に、
2013年4月1日に名称変更し熊本銀行
新たに免許を受けた銀行
会員から営業を譲り受けることを目的として新たに免許を受けた銀行を挙げる。
地域 銀行名 譲渡元 本店所在地 登録先財務局 その後
近畿 関西さわやか銀行 幸福銀行 大阪府大阪市 近畿財務局 関西銀行の子会社化された後同行を存続行として合併し、関西アーバン銀行に
みどり銀行 兵庫銀行 兵庫県神戸市中央区 阪神銀行に吸収合併され、みなと銀行

経営が破綻したもの[編集]

破綻年月日 銀行名 旧名称 本店所在地 登録先財務局 その後
1995年8月30日 兵庫銀行 兵庫相互銀行 兵庫県神戸市中央区 近畿財務局 新設のみどり銀行に営業を譲渡(現・みなと銀行
1996年3月29日 太平洋銀行 第一相互銀行 東京都千代田区 関東財務局 新設のわかしお銀行に営業を譲渡(現・三井住友銀行
1996年11月21日 阪和銀行 興紀相互銀行 和歌山県和歌山市 近畿財務局 紀伊預金管理銀行に払戻し分の預金などを譲渡(解散)
1997年10月14日 京都共栄銀行 京都相互銀行 京都府京都市下京区 一部の店舗を福邦銀行北京都信用金庫(現・京都北都信用金庫)に譲渡した他は
同系の幸福銀行が営業を継承
1997年11月26日 徳陽シティ銀行 徳陽相互銀行 宮城県仙台市青葉区 東北財務局 仙台銀行七十七銀行北日本銀行に分割譲渡
1999年4月11日 国民銀行 国民相互銀行 東京都千代田区 関東財務局 八千代銀行(現・きらぼし銀行)に営業を譲渡
1999年5月22日 幸福銀行 幸福相互銀行 大阪府大阪市西区 近畿財務局 新設の関西さわやか銀行に営業を譲渡(現・関西みらい銀行
1999年6月12日 東京相和銀行 東京相互銀行 東京都港区 関東財務局 新設の東京スター銀行に営業を譲渡
1999年8月6日 なみはや銀行 大阪府大阪市中央区 近畿財務局 大和銀行(現・りそな銀行)・近畿大阪銀行(現・関西みらい銀行)に分割譲渡
1999年10月1日 新潟中央銀行 新潟相互銀行 新潟県新潟市 関東財務局 第四銀行(現・第四北越銀行)・大光銀行八十二銀行
東日本銀行群馬銀行東和銀行に分割譲渡
2001年12月28日 石川銀行 加州相互銀行 石川県金沢市 北陸財務局 一旦日本承継銀行が営業を継続、その後北陸銀行北國銀行富山第一銀行
金沢信用金庫能登信用金庫(現・のと共栄信用金庫)に分割譲渡
2002年3月8日 中部銀行 中部相互銀行 静岡県静岡市 東海財務局 一旦日本承継銀行が営業を継続、その後清水銀行静岡中央銀行・東京スター銀行に分割譲渡

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 三井住友銀行(旧社)が属していた都市銀行へ転換
  2. ^ 前者は東京都民銀行、後者は三重銀行が加盟していた地銀協に鞍替え加盟している
  3. ^ ただし、合併相手の西日本銀行は、相互銀行から(地銀協加盟の)地方銀行に転換している。
  4. ^ 埼玉県内には東和銀行が本店を置く群馬県内よりも多くの支店を設置している他、山梨県内には東京都に本店を置く東京相和銀行東京スター銀行及び国民銀行の支店がどちらも当時のオーナーの出身地のつながりで過去に存在していた。

出典[編集]

  1. ^ 加盟地方銀行一覧”. 第二地方銀行協会. 2021年5月2日閲覧。
  2. ^ 八十二銀行と長野銀行が経営統合へ 23年6月めど”. 日本経済新聞 (2022年9月28日). 2022年9月30日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]