Mac OS

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Mac OS(マック オーエス)は、アップルが開発・販売していたオペレーティングシステム (OS)。1984年Macintosh (Mac) と共に登場し、グラフィカルユーザインタフェース (GUI) の普及に大きく貢献した。

2001年以降、アップルが開発・販売している後継の OS Xは技術的に直系ではないため、単にMac OSといった場合は概ねバージョン 9までのClassic OSを指す。この記事でも基本的にクラシックOSについて記述する。

概要[編集]

当初のMacintoshは、ハードウェアの一部として提供されるToolbox ROM(現在は通常OSで提供される高レベルなAPIを含む)とOSとが、一体化したシステムソフトウェアとして扱われ、Systemと呼んでいた。

Macintosh互換機の登場によりアップル自身もMac OSという呼称を使うようになり、System 7.5.1からは起動画面で Mac OSロゴが表示されるようになった。Mac OSという呼び名が通称から正式なものになったのは、1997年1月、Mac OS 7.6がリリースされた時である。互換機の普及とともに、MacのハードウェアとOSを明確に区分する必要が生じたことによる。その後アップルの方針転換により互換機は市場から姿を消したが、Mac OSという名前はその後のアップルのOS製品に引き継がれている。1998年に発売されたiMac以降は、Toolbox ROMの内容の大半がMac OS側に移され、ほぼハードウェアから独立したOSとなった。

ビットマップディスプレイマウスの利用を前提としていること、オーバーラップするマルチウインドウやメニュー操作、マルチスタイルフォントに代表される WYSIWYG 表示など、ゼロックス1970年代に研究開発されていた暫定Dynabook環境(SmalltalkをOSとして動作するAlto)から多くの影響を受けたが、Altoでは3つあったマウスボタンをMacでは1つに限って、操作体系を分かりやすく構築し直した。ファイルシステムドラッグ・アンド・ドロップファイル操作、国際化に必要な情報を保存するためのリソースコードの分離、ファイルとアプリケーションソフトウェア(アプリケーション)との関連付け、データ形式に依存しないクリップボードプルダウンメニューゴミ箱を発明するなど、今日でも使われている多くの独自のアレンジを加えることで使い勝手を向上させた。暫定Dynabook環境では部分的に隠れたウインドウの再描画もできなかったが、QuickDrawの実装により、これを実現させた。こうした改良により、GUIというものをコンピュータの世界に広く浸透させた。

Macに追随してマウスが付き始めた他のパーソナルコンピュータでは、アプリケーションごとにGUIのデザインの統一性が全くない時代が長く続いた。これは統一されたインフラストラクチャが存在しなかったことによる点が大きい。一方、Macintosh はインフラの提供にとどまらず、「作法」とでも言うべきヒューマン・インタフェース・ガイドライン英語版を定めることで、ひとつのソフトが使えれば、他のソフトも使えるというコンピュータ利用の形態を、パーソナルコンピュータで実現したさきがけとなった。

漢字Talk[編集]

詳しくは、漢字Talk参照

Systemのアプリケーション群を日本語表示に対応させ、日本語フォント日本語入力システム(当初はFEPであり、インプットメソッドではない)を同梱するなど日本市場向けに設計されたオペレーティングシステムを漢字Talk(かんじトーク)と呼称した[1]。この名称は1986年のMacintosh Plusの登場から、1997年にMac OSに名称変更されるまで使い続けられた。

歴史[編集]

技術の進歩に伴いMac OSも様々な変化を遂げている。その系譜は概ねSystem 6までと、System 7、Mac OS 8とMac OS 9の3つの時期に分かれる。

System 1, 2, 3, 4 (1984-1988)[編集]

Mac登場当時の直系。画面は白黒ベースで基本的にシングルタスクのOSであり、QuickDrawの採用により、ハードウェアによるアクセラレーションなしでGUI OS環境を実用的な速度で動作させることができた。ファイルシステムは、初期ではMacintosh File Systemであったが、512KeやPlusに搭載された 128KBのToolbox ROMおよびSystem 3.1よりHFSを採用した。今から見れば非常に貧弱な機能しか持たないが、それでも驚くべきことに初代 MacintoshのToolbox ROMはわずか64KBにおさめられ、128KBのメインメモリ上ですべての機能が動作した(もっとも128KBでは実用上厳しいほどメモリが不足していたため、すぐに512KB モデルへのアップデートが行われた)。当時の限られたハードウェア上で動作させるため性能的には多くの制約があり、メモリを節約するために完全なシングルタスクを前提として設計されたToolbox APIは後のMac OSの発展の足枷となることになる。

System 6 系列 (1989-1991)[編集]

商品パッケージ名称のSystem Softwareのバージョン表記と、Systemファイルのバージョンが(日本語版は漢字Talk のバージョンも)同一になった。System 4までと同じく、画面は白黒ベースで基本的にシングルタスクのOSだが、MultiFinderが用意され、疑似マルチタスク環境が利用できるようになる。32ビットQuickDrawの登場により、24ビットフルカラーが扱えるようになる。TrueTypeが採用され、QuickTimeの登場によりマルチメディアデータを扱う環境が整う。ちなみにSystem 5というバージョンはない。これはSystem 6において、FinderとSystem自体のメジャーバージョンを統一するという方針によるものであった [2]2011年にはシステムクロックの表示がリセットされてしまう。

System 7 系列 (1991-1997)[編集]

System 7.0
コードネーム:Blue, Big Bang。システム全般が大幅に改良・強化され、Macは本格的なマルチメディア時代に踏み出した。システムが32 ビットクリーンになった(機能拡張〈INIT〉ファイル等には24ビットアドレッシングが残ったものもあった)。32ビットQuickDrawやMultiFinderの疑似マルチタスク機能がシステムに全面統合され、QuickTimeも標準で付属するようになった。画面のデザインがカラー化され、ラベル機能など色を生かしたインタフェースが搭載された。仮想メモリの搭載により最大 4GB のメモリ空間にアクセスできるようになり、巨大な画像データや動画ファイルを扱う条件が整う。Open Scripting Architectureの採用によりアプリケーション間通信の機構が整備され、AppleScriptによる自動操作を実現した。ファイル共有やドラッグ・アンド・ドロップの標準化も行われ、その後のMac OSの原型となったバージョンである。
System 7.1
コードネーム:Cube-E, I TripoliWorldScript英語版が搭載され2バイト言語が利用出来るようになった他、フォント管理はFont/DA Moverからフォントフォルダによる管理に移行し、日本語版にあたる漢字Talk 7 リリース 7.1ではことえりの最初のバージョンが搭載された。その後は機能拡張ファイルを追加することにより、音声認識、テキスト読み上げ、発行と引用などの最新技術が順次投入された。 System 7.1.2ではPowerPCへの対応をはたし、従来の 68kコードを動的に変換して実行する機構 (Dynamic Recompilation Emulator) を搭載、PowerPCへのスムーズな移行を実現した。
System 7.5
コードネーム:Mozart, Capone。ウインドウシェードやメニューバーの時計、コントロールバーなどサードパーティーのアクセサリで実現されていた機能が標準で付属するようになった。また、ネットワーク機能も強化され TCP/IPクライアント機能を標準で備えるようになり、PowerTalkによる柔軟なネットワーク機能を実現した。その後のマイナーアップデートでは、次世代の Copland OSをにらんでQuickDraw GX、QuickDraw 3D、OpenDocJava仮想マシンといった新技術が次々盛り込まれた。こうした機能の強化のうち多くはシステムフォルダ内の機能拡張・コントロールパネルフォルダに新しいファイルを追加されることで行われ、システムは肥大化した。680x0からPowerPCへの橋渡しの役目を担う System 7.5.2は、改良されたコード変換機構を搭載し 68kコードの実行性能が向上した半面、新機能の Open Transport をはじめとしてバグが多くシステムが不安定であった(その後のSystem 7.5.3、System 7.5.3 Release 2とSystem 7.5.5[3]にて不具合の多くは解消される)。
Mac OS 7.6[4]
コードネーム:Harmony[5]。それまでの通称であったMac OSという名称が正式な製品名となった。仮想メモリシステムが改良され、最大4TBのボリュームがサポートされた。OpenDocやOpen Transportのアップデート、インストーラや機能拡張マネージャの機能強化も行われた。

Mac OS 8 (1997-1999)[編集]

1996年12月20日のアップルがNeXT買収発表後のWWDC '97で発表されたRhapsody計画(後のMac OS X Server 1.0)を経て、2000年のMacworld Expo/San FranciscoでMac OS X(後のOS X)が発表され[6]、それまでのつなぎとしてシステムの近代化、インターネットへの親和性強化が図られる。Coplandプロジェクトで開発されたもののうち、使えそうな技術から順次採用を進め、半年ごとにマイナーアップデートとメジャーアップデートを繰り返すという方針が発表された。

Mac OS 8.0
コードネーム:TempoFinderが刷新され、デスクトップピクチャの実装、プラチナアピアランス化により、インタフェースがCoplandとほぼ同様のものに変わった。FInderはマルチスレッド化され、ゴミ箱を空にしたりファイルをコピーしている最中でも、Finderでほかの作業ができるようになった。また、フォルダナビゲーション、ポップアップウインドウといった Copland由来の機能がインタフェースに追加され、コンテキストメニューが標準採用された。インターネットへの接続アシスタントやWebサーバ機能、インターネットスイートCyberdog 2.0が付属するようになった。根本的な機能の刷新は先送りにされたものの、久々の新OSの登場はCoplandを待ち望んでいたユーザに歓迎された。プラチナアピアランスはMac OS最後のバージョン9.2.2まで引き継がれた。
Mac OS 8.1
コードネーム:Bride of Buster。新しいファイルシステムとして HFS Plus が利用できるようになり、Internet Explorer for Macが標準ブラウザ、Outlook Expressが標準メールクライアントとなった。
Mac OS 8.5
コードネーム:Allegro。PowerPC専用となり、よりPowerPCへ最適化された。開く/保存ダイアログの刷新(ナビゲーションサービス)、Sherlock によるファイル内容の検索、ATSUI[7]によるフォント環境の改善、新しいヘルプビューアなどの機能が搭載された。新しいアピアランスマネージャを搭載し、画面上の文字表示にアンチエイリアスがかかるようになり(アンチエイリアスをオフにすることも可能)、フルカラーのアイコンもサポート、より重厚なアピアランスとなった。
Mac OS 8.6[8]
コードネーム:Veronica。省エネルギー機能の向上、マルチプロセッサ対応の改善など、様々な機能の改良が行われた。USBの標準サポートもされた。

Mac OS 9 (1999-2001)[編集]

Mac OS Xへの橋渡しの役割を担ったバージョンであり、アプリケーションパッケージCarbonlib など、Mac OS Xとの互換性を意識した機能が盛り込まれた。最後のバージョンとなった Mac OS 9.2.xはMac OS直系の到達点として高い完成度を持っている。

なお、Mac OS 9.0はMac OS 9.2.2までアップデートできる[9]。2012年5月現在、日本語版の 9.0.4 へのアップデータは入手可能だが、それ以外はダウンロードページへのリンクが正常に機能しなくなっていて入手不可能になっている。

Mac OS 9[10]
コードネーム:Sonata。特にインターネットを意識した機能強化がなされた。TCP/IPによるファイル共有、キーチェーン、ファイルの暗号化音声認識によるログイン、ソフトウェアの自動アップデート、疑似マルチユーザ機能、Language Kit による多言語サポートの強化など 50 以上の新機能を搭載した。
Mac OS 9.0.x
コードネーム:Duet, Minuet。iMac (slot-loading) 向けの対応とバグフィックスが中心のリリース。9.0.4 へのアップデータも公開され、9.0.2、9.0.3の存在が知られている[11]
Mac OS 9.1
コードネーム:Fortissimo。旧Mac OSとして最後の単体パッケージ販売された製品。アップデータも公開された[12]。Finder のメニューバーに「ウィンドウ」メニューが追加され、ディスクアクセススピードが向上するなどシステム内部に多くの改良がされた。
Mac OS 9.2
コードネーム:Moonlight
Mac OS 9.2.1[13]
コードネーム:Limelight。旧Mac OSとして最後の単体インストールCD-ROMMac OS X v10.1 のバンドルとしてリリースされた。アップデータも公開された[14][15]
Mac OS 9.2.2
コードネーム:Starlight。PowerMac G4 (Mirrored Drive Doors 2003) を起動できる[16]旧Mac OSであり、Classic環境向けとしても最後のリリース。アップデータも公開された[17][18]

得意分野[編集]

Mac OSは組版デザイン写真イラストレーションといった分野で好んで利用された。これは、PC/AT互換機では多色高解像度へ満足のいく対応が行われた時期が遅く、それまではMacが事実上唯一の存在であったことが最大の理由である。また、色調管理など多色画像処理に必須とされている機能にも早くから対応しており、完成度の高い WYSIWYG を当初から実現していたことも大きい。

さらにDTPのジャンルに特化したソフトが早くから多く開発・販売されたことが、印刷出版業界におけるMacの普及に大きく貢献した。アドビシステムズからはPhotoshopIllustratorアルダスからはAldus PageMaker(のちにアルダスごとアドビシステムズが買収)、Quark 社からはQuarkXPressといった、業務用ソフトウェアがそろっていた。

画像処理を得意とする理由としては、Lisaのためにビル・アトキンソンが中心となって開発したグラフィックルーチンLisaGrafがMacintoshに移植され、 QuickDrawとして初めの機種からROMの状態で搭載された点が大きい。また当初よりある程度先を見て広いメモリ空間を確保しており、いわゆる「640KBの壁」に悩まされていた MS-DOS系システムに比べて大きな画像を扱いやすかったという要素も挙げられる。グラフィックルーチンはMac OS XからPDFをベースとしたQuartzに替わったが、互換性を考慮して現在も残されている。

また、サウンド関連の機能が比較的充実していたこともあり(Sound Managerによるところも大きい)、CubaseLogic StudioVisionDigital PerformerPro Toolsなどのさまざまなソフトや周辺機器(アップル自身も MIDIインタフェースを発売)が発売され、プロのミュージシャンに盛んに利用された。ヤマハローランドも初心者向けパッケージを発売し、アマチュアの愛用者も多かった。

デスクアクセサリ[編集]

デスクアクセサリ (Desk Accessory, DA) は、Systemと呼ばれていた頃のMac OSにおいて、使用中のアプリケーションとは別に起動しておける小物的なアプリケーションのことである。

初期のMacはシングルタスクであったため、別のアプリケーションを使用するには一旦終了させなければならない。これは、搭載していたメモリが少なかったことに起因する。

デスクアクセサリは起動と終了の手間を省くための手段として用意された。わずかなメモリしか使わないため、使用中のアプリケーションとは別に起動しておくことができ、このころのMacには欠かせないものだった。サードパーティーからは小物の位置づけであるにもかかわらず多機能なデスクアクセサリが多数開発された。Mac OSにあらかじめ搭載されていたデスクアクセサリもある。Mac OS 9まで残された「計算機」や「スクラップブック」がそうである。

デスクアクセサリを使用するためには、まず「Font/DA Mover」と呼ばれるユーティリティソフトウェアでシステムにインストールする。インストールしたデスクアクセサリはアップルメニューから起動できるようになる。

System 7でMacが疑似マルチタスクになるとデスクアクセサリは単なる一アプリケーションとなり、Font/DA Moverも姿を消した。アップルメニューはアプリケーションやファイルを起動するためのランチャーとなった。Mac OS 9まではデスクアクセサリのランチャーであったことの名残だということがうかがえる。

アーキテクチャ[編集]

  • QuickTime - マルチメディアツール
  • QuickDraw - グラフィック描画ルーチン
  • OpenDoc - ファイル中心のインタフェース

脚注[編集]

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関連項目[編集]

  • OS X Server
  • Classic環境 (OS X上のMac OS互換環境)
  • AppleShare
  • Dashboard - デスクアクセサリに似たウィジェットという小さなアプリケーションを実行するOS X付属のソフトウェア。

参考文献[編集]