2の冪

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2n直方体可視化比較図例。
左上1(20)から右下1024(210)まで

2の(にのべき)は、適当な自然数 n を選べば、2n 乗 2n の形に表せる自然数の総称である。平たく言うと2の累乗数(にのるいじょうすう)である。

概説

2倍を繰り返したり、1 + 1 から始めて答えを2つずつ加え合わせることによって得られる数である。いずれもごく基本的な数量操作であり、様々な場面で用いられる。

指数に負の整数を許すならば、2の冪乗(この場合、それらは自然数ではなく有理数である)の中には「半分」の概念も含まれてくる。実際、1 (20), 1/2 (2−1), 1/4 (2−2), 1/8 (2−3), 1/16 (2−4) … というようなものも、2の冪乗として表すことができる有理数である。

トーナメント制のスポーツ大会で、試合の回戦が進むごとにチーム数が単純に半減していくように試合を組むとすれば、出場チーム数を2の累乗数にしておかなければならない。但し、実際にはシードや敗者復活などのルールを利用して試合を組むので、2の累乗数に近ければ支障が無い。

100乗までの2の冪(正の冪)

オンライン整数列大辞典の数列 A79

20 = 1 216 = 65,536 232 = 4,294,967,296 248 = 281,474,976,710,656 264 = 18,446,744,073,709,551,616 280 = 1,208,925,819,614,629,174,706,176 296 = 79,228,162,514,264,337,593,543,950,336
21 = 2 217 = 131,072 233 = 8,589,934,592 249 = 562,949,953,421,312 265 = 36,893,488,147,419,103,232 281 = 2,417,851,639,229,258,349,412,352 297 = 158,456,325,028,528,675,187,087,900,672
22 = 4 218 = 262,144 234 = 17,179,869,184 250 = 1,125,899,906,842,624 266 = 73,786,976,294,838,206,464 282 = 4,835,703,278,458,516,698,824,704 298 = 316,912,650,057,057,350,374,175,801,344
23 = 8 219 = 524,288 235 = 34,359,738,368 251 = 2,251,799,813,685,248 267 = 147,573,952,589,676,412,928 283 = 9,671,406,556,917,033,397,649,408 299 = 633,825,300,114,114,700,748,351,602,688
24 = 16 220 = 1,048,576 236 = 68,719,476,736 252 = 4,503,599,627,370,496 268 = 295,147,905,179,352,825,856 284 = 19,342,813,113,834,066,795,298,816 2100 = 1,267,650,600,228,229,401,496,703,205,376
25 = 32 221 = 2,097,152 237 = 137,438,953,472 253 = 9,007,199,254,740,992 269 = 590,295,810,358,705,651,712 285 = 38,685,626,227,668,133,590,597,632
26 = 64 222 = 4,194,304 238 = 274,877,906,944 254 = 18,014,398,509,481,984 270 = 1,180,591,620,717,411,303,424 286 = 77,371,252,455,336,267,181,195,264
27 = 128 223 = 8,388,608 239 = 549,755,813,888 255 = 36,028,797,018,963,968 271 = 2,361,183,241,434,822,606,848 287 = 154,742,504,910,672,534,362,390,528
28 = 256 224 = 16,777,216 240 = 1,099,511,627,776 256 = 72,057,594,037,927,936 272 = 4,722,366,482,869,645,213,696 288 = 309,485,009,821,345,068,724,781,056
29 = 512 225 = 33,554,432 241 = 2,199,023,255,552 257 = 144,115,188,075,855,872 273 = 9,444,732,965,739,290,427,392 289 = 618,970,019,642,690,137,449,562,112
210 = 1,024 226 = 67,108,864 242 = 4,398,046,511,104 258 = 288,230,376,151,711,744 274 = 18,889,465,931,478,580,854,784 290 = 1,237,940,039,285,380,274,899,124,224
211 = 2,048 227 = 134,217,728 243 = 8,796,093,022,208 259 = 576,460,752,303,423,488 275 = 37,778,931,862,957,161,709,568 291 = 2,475,880,078,570,760,549,798,248,448
212 = 4,096 228 = 268,435,456 244 = 17,592,186,044,416 260 = 1,152,921,504,606,846,976 276 = 75,557,863,725,914,323,419,136 292 = 4,951,760,157,141,521,099,596,496,896
213 = 8,192 229 = 536,870,912 245 = 35,184,372,088,832 261 = 2,305,843,009,213,693,952 277 = 151,115,727,451,828,646,838,272 293 = 9,903,520,314,283,042,199,192,993,792
214 = 16,384 230 = 1,073,741,824 246 = 70,368,744,177,664 262 = 4,611,686,018,427,387,904 278 = 302,231,454,903,657,293,676,544 294 = 19,807,040,628,566,084,398,385,987,584
215 = 32,768 231 = 2,147,483,648 247 = 140,737,488,355,328 263 = 9,223,372,036,854,775,808 279 = 604,462,909,807,314,587,353,088 295 = 39,614,081,257,132,168,796,771,975,168

大きな数の話

当初の増え方から見ると、とても想像できないような大きな数を導き出すことができる点から、古くから様々な話に登場する。

例えば、「新聞紙を26回2つ折りにすると、富士山より高くなる」という話がある。計算上は 226 = 67,108,864 であるから、厚さ0.1mmの紙を26回折り曲げると約6710mとなり、富士山の標高(約3776m)を超える。当然ながら、実際には8回ほど折り曲げたところで限界となるため、紙を何度も折り曲げるのは物理的に実行不可能であるが、「新聞紙を2等分に切り、それを重ねる」を繰り返すことはある程度可能である。

別の例に、「将棋盤問題英語版」というものがある。古代のインドのセーラムという王の家来、セッサ・イブン・ダヘルがチャトランガ将棋チェスの原型となったとされるゲーム)を発明した時、王はこれを喜び、望むだけの褒美を取らせる、と言った。この時の彼の希望は、「盤の最初の升目に一粒の小麦を置き、二升目には二粒、三升目には四粒と増やしていって、最後の升目の分だけを頂きたい」というものであった。この数は、2の63乗であるが、実際の小麦として計算すると、世界の小麦生産高の2500年分を越えるという。日本においては曽呂利新左衛門(初代)豊臣秀吉から褒美を何にするか問われ、今日は米1粒、翌日には倍の2粒、その翌日には更に倍の4粒と、日ごとに倍の量の米を100日間もらう事を希望したという逸話がある。また、漫画『ドラえもん』に登場する「バイバイン」は、物体を5分ごとに2の累乗数に増やす架空の薬品で、作中では、栗饅頭に対し使われた。このバイバインに対する考察を山本弘が行っており、エッセイ集『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』(2007年、河出書房新社ISBN 978-4309018294)を上梓している。

コンピュータにおける2の冪

コンピュータの演算には二進法が使われる。そのため、コンピュータに絡む数値に2の累乗数(ただし、を十進数に直す)が見られる。例えば、1 キロバイト1024 バイト(=210 バイト)であり、家庭用ゲーム機のNINTENDO64やパソコン用CPUブランドのAthlon 64の「64」は、64 ビット(=26 ビット)に因んだ名称である。近年のパソコンやスマートフォンの普及によって、2の累乗数が家庭内にまで見かけられるようになった。

2進接頭辞も参照のこと。

数量的な性質

1を2の累乗数で割って行くと、小数には、位取り記数法の基数の半分の数が、累乗数として現れる。

例えば、十進法の位取り(十進数)では、1 を2の累乗数で割っていくと、小数には5の累乗数が現れる。(1 ÷ 2 = 0.5 (51) 、1 ÷ 4 = 0.25 (52) 、1 ÷ 8 = 0.125 (53)、1 ÷ 16 = 0.0625 (54)) これらは

より

であることから導かれる。

同じく、十二進数では6の累乗数が、二十進数では十の累乗数が現れる。(十二進数: 1 ÷ 2 = 0.6 (61) 、1 ÷ 4 = 0.30 (62)、1 ÷ 8 = 0.160 (63)、1 ÷ 14 = 0.0900 (64))

1以外の2の冪を十進法で表したとき、一の位は 2, 4, 6, 8 のいずれかである。また、1以外の2の冪 2n を二進法で表したとき、一番上の位は 1 であとに 0 が n 個続く数になる。

常用対数との関係

log10 2 = 0.3010299956…

この値にnをかけて小数点以下を切り上げると2nが十進数で何桁の整数かわかる。基本的0.301、または0.30103(小数第6位を四捨五入し切り上げ)で計算する。

例えば 0.301 × 100 = 30.1 なので 2100 は31桁、0.301 × 256 = 77.056 なので 2256 は78桁の整数となる。

指数が2の冪となる2の冪

オンライン整数列大辞典の数列 A001146

= 2
= 4
= 16
= 256
= 65,536
= 4,294,967,296
= 18,446,744,073,709,551,616 (20桁)
= 340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456 (39桁)
=
115,792,089,237,316,195,423,570,985,008,687,907,853,269,984,665,640,564,039,457,584,007,913,129,639,936 (78桁)
=
13,407,807,929,942,597,099,574,024,998,205,846,
127,479,365,820,592,393,377,723,561,443,721,764,030,073,546,976,801,874,298,166,
903,427,690,031,858,186,486,050,853,753,882,811,946,569,946,433,649,006,084,096 (155桁)
=
179,769,313,
486,231,590,772,930,519,078,902,473,361,797,697,894,230,657,273,430,081,157,732,
675,805,500,963,132,708,477,322,407,536,021,120,113,879,871,393,357,658,789,768,
814,416,622,492,847,430,639,474,124,377,767,893,424,865,485,276,302,219,601,246,
094,119,453,082,952,085,005,768,838,150,682,342,462,881,473,913,110,540,827,237,
163,350,510,684,586,298,239,947,245,938,479,716,304,835,356,329,624,224,137,216 (309桁)
32,317,006,071,311,007,300,714,876,…,193,555,853,611,059,596,230,656 (617桁)
1,044,388,881,413,152,506,691,752,…,243,804,708,340,403,154,190,336 (1,234桁)
1,090,748,135,619,415,929,462,984,…,997,186,505,665,475,715,792,896 (2,467桁)
1,189,731,495,357,231,765,085,759,…,460,447,027,290,669,964,066,816 (4,933桁)
1,415,461,031,044,954,789,001,553,…,541,122,668,104,633,712,377,856 (9,865桁)
2,003,529,930,406,846,464,979,072,…,339,445,587,895,905,719,156,736 (19,729桁)

これらの数字のいくつかはコンピュータにおける使用可能な値の数となっている。たとえば4バイトからなる32ビットワードは、232の値を表すことができる。ただし符号なし32ビットの場合は0から232-1まで、符号付き32ビットの場合は-231から231−1までが表すことができる範囲である。符号付き数値の表し方は2の補数を使う。

これらの数より1つ大きい数をフェルマー数と言う。

参考

67,411,401,254,990,734,022,690,651,…,009,289,119,068,940,335,579,136 (315,653桁)
181,858,529,856,973,800,789,277,…,884,097,536 or (5,050,446桁)
2の2の2の冪乗乗乗
上記参照
上記参照
上記参照
上記参照
310,328,054,386,328,614,029,989,…,691,982,336 or (1,292,913,987桁)
or (5.55302 × 1018桁)


上の指数関数の反復は、一般に次のように定義される。

n 個の a の上に x が乗っている)

テトレーション・ペンテーションで表される2の冪

指数法則より

が成り立つ(矢印はクヌースの矢印表記)。これらの指数はオンライン整数列大辞典の数列 A036289に表記される数になる。

= 4
=
= 256
=
= 16,777,216
=
= 18,446,744,073,709,551,616
=
= 1,461,501,637,330,902,918,203,684,832,716,283,019,655,932,542,976 (49桁)
=
= 39,402,006,196,394,479,212,279,040,…,884,915,640,806,627,990,306,816 (116桁)
=
= 528,294,531,135,665,246,352,339,…,476,489,538,580,897,737,998,336 (270桁)
=
= 32,317,006,071,311,007,300,714,876,…,193,555,853,611,059,596,230,656 (617桁)
2を底とするテトレーション・ペンテーション
= 2
= 4
= 16
= 65,536
= 2,003,529,930,406,846,464,979,072,…,339,445,587,895,905,719,156,736 (19,729桁)
= 4
= 65,536
その他
= 13,407,807,929,942,597,099,574,024,…,946,569,946,433,649,006,084,096 (155桁)

特殊な2の冪

24 = 16
2桁最小の2の累乗数である。2の100乗までは指数の1の位が0、4、7のときに桁があがる。
西洋の命数法では指数が10の倍数のときに接頭辞(thousand→million→billion)があがる。
28 = 256
8ビットで表せる整数の数で、8ビットを1オクテットとも呼ぶ。1バイトは8ビットである。
210 = 1,024
1000に最も近い2の累乗数である。
コンピュータで用いられる単位ビットバイトでは、キロ(K)やメガ(M)といった接頭辞が1024ごとに上がる。例えば1キロバイトは1024バイトである。コンピュータにとっては特別な意味はないが、十進数を利用する人間には重要な数字である。曖昧さを排するためキビ(Ki)メビ(Mi)などを使うこともある。
214 = 16,384
1万以上の最小の2の累乗数である。漢字圏の命数法では40の倍数と40n+14、27で接頭辞()があがる。
215 = 32,768
符号付き16ビットで表せる非負整数の数である。
216 = 65,536
16ビットで表せる整数の数である。Intel 8086などが16ビットである。
42、2↑↑4(矢印はクヌースの矢印表記)のテトレーション数である。
220 = 1,048,576
1000000に最も近い2の累乗数である。コンピュータにおける1メガバイトは1048576バイトである。
224 = 16,777,216
カラーコードで表せる色の総数である。コンピュータのモニターで使用される色の総数でもある。RGBの各3色に8ビットずつ、合計24ビットで表される。
229 = 536,870,912
各桁すべて異なる数字で表される最大の2の累乗数である。
231 = 2,147,483,648
符号付き32ビットで表せる非負整数の数である。
UNIX時間を使用している32ビットコンピュータは、1970年1月1日0時0分0秒からの秒数が2,147,483,647秒に達する2038年1月19日3時14分7秒(日本標準時では2038年1月19日12時14分7秒)を過ぎると、この値がオーバーフローし誤作動を引き起こす恐れがあり、これを2038年問題と呼ぶ。
232 = 4,294,967,296
32ビットで表せる整数の数である。JavaC言語で表せる変数の数でもある。
IPv4アドレスの総数である。約43億という数は一見すると大きな数だが、現在のインターネットの規模に対しては十分に大きいとは言えないため、IPアドレス枯渇問題が起こっている。このため現在ではIPv6が開発されており、そのアドレス数は後述するように2128となっている。
240 = 1,099,511,627,776
1テラバイトは240バイトである。
10の12乗に最も近い2の累乗数で、千進の英語圏と万進の漢字圏の両方で接頭辞があがる最初の2の累乗数である。これは指数が40の倍数のときに該当する。漢字圏では、英語圏short scaleではtrillion、long scaleではbillionになる。
256 = 72,057,594,037,927,936
旧型56ビットのDES鍵空間の総数である。
263 = 9,223,372,036,854,775,808
符号付き64ビットで表せる非負整数の数である。
264 = 18,446,744,073,709,551,616
64ビットで表せる整数の数である。
268 = 295,147,905,179,352,825,856
0~9のすべての数字が含まれる最小の2の累乗数である。
280 = 1,208,925,819,614,629,174,706,176
コンピュータの情報量を表す最大の単位、1ヨタバイトは280である。
千進の英語圏と万進の漢字圏の両方で接頭辞があがる2番目の2の累乗数である。漢字圏では𥝱(秭)、英語圏short scaleではSeptillion、long scaleではQuadrillionになる。
286 = 77,371,252,455,336,267,181,195,264
0が含まれていない最大の2の累乗数であると推測されている数である。
296 = 79,228,162,514,264,337,593,543,950,336
ローカルインターネットレジストリに割り当てられるIPv6アドレスの総数である。CIDRではISPに128ビットのうち32ビットが与えられる。そのためIPアドレスに使用できるのは残りの96ビットである。
2103 = 10,141,204,801,825,835,211,973,625,643,008
指数の1の位が0、4、7以外で桁が上がる最小の2の累乗数である。
2128 = 340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456
IPv6アドレスの総数である。非常に巨大な数であるため、アドレス枯渇の心配がほぼ解消される。
2168 = 374,144,419,156,711,147,060,143,317,175,368,453,031,918,731,001,856
現在発見されている2の累乗数で、すべての数字が含まれていない最大の数である。この数は2だけが含まれていない。
2192 = 6,277,101,735,386,680,763,835,789,423,207,666,416,102,355,444,464,034,512,896
192ビットのAES鍵空間の総数である。
2256 = 115,792,089,237,316,195,423,570,985,008,687,907,853,269,984,665,640,564,039,457,584,007,913,129,639,936
256ビットのAES鍵空間の総数である。
21,024 = 179,769,313,486,231,590,772,931,…,304,835,356,329,624,224,137,216(309桁)
倍精度浮動小数点数に適合する最大数。従って多くのプログラム(Microsoft Excelなど)で表せる数の総数である。
ただし符号付数値表現なので実際に表せる範囲は-21023+1~21023となっており、表せる最大数は21023(8.988×10307)である。
265,536 = 2,003,529,930,406,846,464,979,072,…,339,445,587,895,905,719,156,736 (19,729桁)
52、2↑↑5(矢印はクヌースの矢印表記)であり、ネット上の電卓ですべての数値を計算できる最大のテトレーション数である。
282,589,933 = 148,894,445,742,041,…,210,325,217,902,592(24,862,048桁)
この数より1少ない数が2018年12月の時点で発見されている最大の素数である。この素数は24,862,048桁の長さを持つ。

脚注

注釈

出典

関連項目