命数法
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命数法(めいすうほう、英語: numeral)とは、数を名付ける法、即ち与えられた数を表わすための、一連の方式・規則・対応である。
目次
命数法の定式化[編集]
命数法は、言語により異なる。例えば、「四の次」を表す数を、日本語では「五」、英語では"five"、ドイツ語では"fünf"、ラテン語では"quinque"という。同じく、「十の四乗」を表す数を、日本語では「一万」、英語では"ten thousand"(十千)と呼ぶ。「二と三と五の積」を表す数は、二の三倍すなわち六を底にするなら「五六」、二の五倍すなわち十を底にするなら「三十」と呼ぶ。命数法のうち、数字を用いて数を表す方法を記数法という。
命数には、一般に「一」や「三」など自然数を表す数詞、「零」など無を表す数詞、「百」や「千」など何かの冪乗を表す数詞とがある。冪数は二乗と三乗が命名される一方、四乗と五乗(特に五乗)は命名されない場合がある。
例えば、二を七回掛けた数(2*2*2*2*2*2*2)は、
- 二の三倍を底にすると、記数法では「332」だが、命数法では「3◆3●2」。
- 二の五倍を底にすると、記数法では「128」だが、命数法では「1◆2●8」。
となるが、命数法では一の位だけではなく、●(N)や ◆(Nの二乗)に当たる「数詞」を作る。
位取りは十進法が圧倒的に多いが、十進法に囚われる必要は無く、十二進法や二十進法も散見される。十を超える数で、十進法から独立している数詞として、十二を意味する"dozen"や"打"(→zh:打)、百四十四を意味する"gross"、千七百二十八を意味する"great gross"、二十を意味する"score"や"vingt"(フランス語)や"廿"や"kal"(マヤ数詞、以下同じ)、四百を意味する"bak"、八千を意味する"pic"などがある。
定式化された命数法では、零から桁の基数N(10と表記される数)までを一語または一字で命名し、基数の次からは「基数NにRを加えた数」として命名する。そして、基数の二倍に達したら「M倍のN」という命名になり、基数の二倍の次は「M倍のNにRを加算」として命名される。これを繰り返し、Nの二乗はNとは別の単語で数を命名して、「Nの二乗のM倍、NのM倍、そしてRの和」を繰り返し、以後はNの冪数が来た時に新しい数詞が命名される。
個別の数[編集]
命数法の後に位取り記数法を括弧書きで示す。
三の四倍を表す数は、十進法では「十二」という命数法だが、十進法以外では全く別の命数法になる。
- 二進法:八四(1100)
- 三進法:九三(110)
- 四進法:三四(30)
- 五進法:二五二(22)
- 六進法:二六(20)
- 七進法:七五(15)
- 八進法:八四(14)
- 九進法:九三(13)
- 十進法:十二(12)
同じく、三の七倍を表す数も、以下のような命数法になる。
- 三進法:二九三(210)
- 五進法:四五一(41)
- 六進法:三六三(33)
- 七進法:三七(30)
- 八進法:二八五(25)
- 九進法:二九三(23)
- 十進法:二十一(21)
適用法[編集]
十進法[編集]
代表例で、「5 + 5 = 10」となる十進法で説明する。十進法による命数法では、零から十までを一語または一字で命名し、十の次からは「十一」「十二」というように「十にRを加えた数」として命名する。そして、十の二倍を「二十」というように「二倍の十」として命名し、その次は一つずつ「二十一」「二十二」というように「M倍の十に一を加算、二を加算…」という形式で命名し、「九十八」「九十九」と数えて、その次の十の二乗は「百」という別の単語で命名する。
これ以後は、「百一」「百二」「百十」「二百」「三百四十五」…というように「M倍の百、M倍の十、そしてRの和」による命名を繰り返し、「九百九十八」「九百九十九」と数えて、十の三乗で「千」、十の四乗で「万」というように十の冪数で新しい数詞を命名する。三乗以後も、「三千四百五十六」や「一万二千三百四十五」というように「M倍の万、M倍の千、M倍の百、M倍の十、そしてRの和」の命数法となる。
別のN進法による命数法は、以上の十進法の説明を、別の N の場合に敷衍する事で成立する。
Nが十未満[編集]
- 「5 + 1 = 10」の場合
五の次で桁上がり、即ち六進法による命数法では、零から六までを一語または一字で命名し、七は「六一」(116)、八は「六二」(126)、九は「六三」(136)、十は「六四」(146)、十一は「六五」というように「六にRを加えた数」として命名する。そして、六の二倍である十二は「二六」(206)と命名し、以降は十三は「二六一」(216)、十四は「二六二」、十八は「三六」(306)、二十四は「四六」、二十七は「四六三」(436)、三十は「五六」…というように、「六の倍数 + R」という形式の命数法になる。そして、三十四が「五六四」、三十五が「五六五」(556)と数えて、その次で六の二乗である三十六(1006)で新しい数詞を命名することになる。{※参考:宇野民幸 名古屋学院大学教職センター年報「虫の視座で学ぶ数」 2017年2月28日発行}
六の大字が「陸」なので、もし三十六に「海」の同義字である「洋」を充てた場合、三十七は「洋一」、三十八は「洋二」、四十二は「洋六」(1106)、六十は「洋四六」(1406)、六十四は「洋四六四」、八十一は「二洋六三」(2136)、百は「二洋四六四」(2446)…というように「M倍の洋、M倍の六、そしてRの和」という形式の命数法になる。これを繰り返し、二百は「五洋三六二」(5326)、二百十四は「五洋五六四」、二百十五は「五洋五六五」と数えて、次は六の三乗である二百十六、六の四乗である千二百九十六など、六の冪数で新しい数詞を命名する。前述の「六=陸、六の二乗=海=洋、六の三乗=空(そら)」に倣って、二百十六を「宙」、千二百九十六を陸海空に続いて「岳」と命名した場合、三乗以後も同様で、千(十の三乗)は「四宙三洋四六四」(43446)、二千は「一岳三宙洋三六二」(131326)、三千四百五十六は「二岳四宙」(345610=240006)というように、「M倍の岳、M倍の宙、M倍の洋、M倍の六、そしてRの和」の形式の命数法となる。
なお、六の冪乗を意味する数詞が実用化されている例としては、インドネシア・パプア州のンドム語の "mer" (六) や"nif" (三十六)[1]、パプア・ニューギニアのコムンゾ語の nimbo (六)、féta (三十六)、tarumba (二百十六)、ntamno (千二百九十六)、wärämäkä (七千七百七十六 = 六の五乗)、wi (四万六千六百五十六 = 六の六乗) がある。
- 「5 + 1 = 10」以外の場合
八進法や九進法などでも、同じ方法になる。八進法では、八までの数詞と、六十四や五百十二など八の冪数を意味する数詞を組み合わせた命数法になる。九進法では、九までの数詞と、八十一や七百二十九など九の冪数を意味する数詞を組み合わせた命数法になる。この場合も、例えば十進命数法の「四十九」は、八進法では「六八一」(618)、九進法では「五九四」(549)となる。
Nが十を超過[編集]
十二進法による命数法では、零から十二までを一語または一字で命名し、その次の十三を「十二に一を加算」として命名し、二十二を「十二に十を加算」(1A12)というように、十三から二十三までを「十二にRを加えた数」として命名する。そして、十二の二倍である二十四を「二倍の十二」(2012)として命名し、二十五を「二倍の十二に、一を加算」、三十六を「三倍の十二」(3012)、百十八を「九倍の十二に、十を加算」(9A12)という風に「M倍の十二にRを加算」する命名を繰り返す。そして、百四十三を「十一倍の十二に、十一を加算」(BB12)として命名し、その次の十二の二乗である百四十四(10012)を "gross"や"簍"(→zh:簍 (單位))など別の単語で命名する。
これ以後は、百四十五を「百四十四に、一を加算」「簍一」、百六十八を「百四十四に、二倍の十二を加算」(12012)、二百八十八を「二倍の百四十四」「二簍」、三百六十を「二倍の百四十四に、六倍の十二を加算」「二簍六打」(26012)、千四百四十を「十倍の百四十四」「十簍」(A0012)、千六百五十を「十一倍の百四十四、五倍の十二、そして六の和」(B5612)というように「M倍の百四十四、M倍の十二、そしてRの和」による命名を繰り返し、千七百二十八(十二の三乗)や二万七百三十六(十二の四乗)といった十二の冪数で新しい数詞を命名する。
二十進法による命数法も同じく、零から二十までの個別の数と、四百(10020、二十の二乗)や八千(二十の三乗)や十六万(二十の四乗)など二十の冪数が、一語または一字で命名される。
四百未満の数も、二十一を「二十に一を加算」、三十を「二十に十を加算」(1A20)、四十を「二倍の二十」、四十一を「二倍の二十に、一を加算」、六十を「三倍の二十」(3020)、九十二を「四倍の二十に、十二を加算」(4C20)、二百八十八を「十四倍の二十に、八を加算」(E820)、三百九十九を「十九倍の二十に、十九を加算」(JJ20)、というように「M倍の二十にRを加算」する命数法になる。
四百以後の数も、四百一を「四百に、一を加算」、四百四十を「四百に、二倍の二十を加算」(12020)、八百を「二倍の四百」、千七百二十八(十二の三乗)を「四倍の四百、六倍の二十、そして八の和」(46820)、三千を「七倍の四百に、十倍の二十を加算」(7A020)、七千二百を「十八倍の四百」(I0020)、七千七百七十六(六の五乗)を「十九倍の四百、八倍の二十、そして十六の和」(J8G20)、というように「M倍の四百、M倍の二十、そしてRの和」という形式で命名する。
英語では、七十を、"seventy"以外にも、"five dozen and ten"や"three score and ten"という言い方をする場合がある。これらのうち、"seventy"は十進命数法(7×10 = 70。7010)であり、"five dozen and ten"は十二進命数法(5×12 + 10 = 70。5A12)であり、"three score and ten"は二十進命数法(3×20 + 10 = 70。3A20)である。
ドイツ語では、neun(九)、zehn(十)、elf(十一)、zwölf(十二)、dreizehn(十三)、neunzehn(十九)、zwanzig(二十)、neunzig(九十)、hundert(百)…というように、十二以前が独立した命数法なのに、十三以後が十進法による命数法で、「十二進法と十進法のキメラ」になっている。これらを一貫して十二進法で命名すれば、十三は"einzwölf"(十二に一を加算)、二十二は"zehnzwölf"(十二に十を加算)、九十六は"achtzwölig"(八倍の十二)、百は"vier und achtzwölig"(八倍の十二に、四を加算。8412)というように、十三から二十三までは「十二にRを加えた数」、二十四から百三十二までの十二の倍数は「M倍の十二」という命数法になる。
同じく、十進命数法の「四十五」(4×10 + 5。4510)を、十二進法や二十進法で命名すると、十二進命数法なら「三打九」(3×12 + 9。3912)、二十進命数法なら「二廿五」(2×20 + 5。2520)という命数法になる。同じく、十進命数法の「二百七十」(2×102 + 7×10。27010)も、十二進命数法なら「簍十打六」(1×122 + 10×12 + 6。1A612)、十干で十一を「甲」と表現する二十進命数法なら「丙廿十」(13×20 + 10。DA20)、といった数詞になる。「三千四百五十六」の命数法も、十進命数法だと「3千4百5十6」の形式、六進命数法だと「2 ntamno 4 tarumba」の形式になるが、十二進命数法だと「2グレートグロス」、二十進命数法だと「8バクCカルG」の形式になる{240006 = 345610 = 200012 = 8CG20}。
大きな数の命数法[編集]
数学の発展に伴い、大数を表すのに複数の位の数詞を組み合わせる方法が様々な言語で生まれた。
現在では、漢字文化圏の多くでは、十進法の4桁(万倍)ごと(ただしベトナムでは3桁ごと)、ヨーロッパでは3桁あるいは6桁(千倍あるいは百万倍)ごと、インドでは最初のみ3桁で以後は2桁ごと(→インドの命数法)の組に区切り、各組に位の数詞を付ける方法が取られている。例えば日本語では12345678を「一千二百三十四万五千六百七十八」と呼ぶ。書くときに、アラビア数字の十進位取り記数法を併用して「1234万5678」とすることも広く行われている。
漢数字[編集]
大数[編集]
中国の算術書である後漢の徐岳『数術記遺』や北周の甄鸞『五経算術』によると、万より大きい数詞の示す値には3種類あり、統一されていなかった。下数、中数、上数である[2]。
当初は万(104)を区切りとして十万(105)、百万(106)、千万(107)まで表していた。これとは別に、万から1桁ごとに億(105)、兆(106)、と名付けていた。これを下数(かすう)と呼ぶ。
漢代あたりから、上数(じょうすう)が記載され始めた。数詞が表す位の2乗が次の数詞となる。万万が億(108)であるのは今日と同じであるが、次は億億が兆(1016)、兆兆が京(1032)となる。実際に使われたことはないようであり、数学書では用いられていない。
その後、千万の次を億とし、十億(109)、百億(1010)と続けていく方法が考案された。これを中数(ちゅうすう)という。ただし、初期の数学書に示されている中数は万万(108)倍ごとに新たな名称をつける方式であった。すなわち、千億(1011)、万億(1012)、十万億(1013)と続き、億の万万倍を兆(1016)、兆の万万倍を京(1024)とする。これを万万進という。後に、万倍ごと、すなわち万万を億、万億を兆(1012)とする万進に移行した。
日本では、1627年(寛永4年)の『塵劫記』の初版において初めて大きな数が登場するが、極以下が下数、恒河沙より上を万万進の中数としていた。1631年(寛永8年)の版では極以下が万進に改められ、1634年(寛永11年)の版ではすべて万進に統一された。今日でも万進だけが使用されている。
中国では、近代まで万万進と万進が混用されたままであった。それに加えて、メートル法の接頭辞のメガ(106)に「兆」(下数における 106)の字をあてたため、さらに混乱が生じた。今日では、「億」は中数の 108、「兆」は下数の 106 の意味となっており、兆より億の方が大きくなっている。日本でいう兆(1012)は「万億」といい、京以上については、例えば 1016 は「万万億」または「億億」のように呼んでいる。台湾には日本の命数法が導入されていたので、兆は 1012 であるが、京以上の命数はほとんど用いられていない。
ベトナムでは西洋式に3桁ずつ新しい名称が使われるが、106を「triệu」(兆)、109を「tỷ」(秭)と呼ぶ。これは下数にあたる。
『塵劫記』での命数は以下のようになっている[3]。
位の大きなものの名称については版によって相違がある。併記した記数は万進による。
| 一(いち) 100 |
十(じゅう) 101 |
百(ひゃく) 102 |
千(せん) 103 |
| 万(まん) 104 |
十万 105 |
百万 106 |
千万 107 |
| 億(おく) 108 |
十億 109 |
百億 1010 |
千億 1011 |
| 兆(ちょう) 1012 |
十兆 1013 |
百兆 1014 |
千兆 1015 |
| 京(けい、きょう) 1016 |
十京 1017 |
百京 1018 |
千京 1019 |
| 垓(がい) 1020 |
十垓 1021 |
百垓 1022 |
千垓 1023 |
| 𥝱(じょ)、秭(し) 1024 |
十𥝱 1025 |
百𥝱 1026 |
千𥝱 1027 |
| 穣(じょう) 1028 |
十穣 1029 |
百穣 1030 |
千穣 1031 |
| 溝(こう) 1032 |
十溝 1033 |
百溝 1034 |
千溝 1035 |
| 澗(かん) 1036 |
十澗 1037 |
百澗 1038 |
千澗 1039 |
| 正(せい) 1040 |
十正 1041 |
百正 1042 |
千正 1043 |
| 載(さい) 1044 |
十載 1045 |
百載 1046 |
千載 1047 |
| 極(ごく) 1048 |
十極 1049 |
百極 1050 |
千極 1051 |
| 恒河沙(ごうがしゃ) 1052 |
十恒河沙 1053 |
百恒河沙 1054 |
千恒河沙 1055 |
| 阿僧祇(あそうぎ) 1056 |
十阿僧祇 1057 |
百阿僧祇 1058 |
千阿僧祇 1059 |
| 那由他(なゆた) 1060 |
十那由他 1061 |
百那由他 1062 |
千那由他 1063 |
| 不可思議(ふかしぎ) 1064 |
十不可思議 1065 |
百不可思議 1066 |
千不可思議 1067 |
| 無量大数(むりょうたいすう) 1068 |
十無量大数 1069 |
百無量大数 1070 |
千無量大数 1071 |
全て万万進の場合は1兆=1016、1京=1024、1垓=32、1𥝱=1040、1穣=1048、1溝=1056、1澗=1064、1正=1072、1載=1080、1極=1088、1恒河沙=1096、1阿僧祇=10104、1那由多=10112、1不可思議=10120、1無量大数=10128となる。
『塵劫記』のいくつかの写本では1恒河沙=1億極、1阿僧祇=1億恒河沙というように恒河沙から8桁刻み(万万進)となる。この説に従うと1恒河沙=1056、1阿僧祇=1064、1那由他=1072、1不可思議=1080、1無量大数=1088となる。
なお、無量大数を「無量」と「大数」に分けて説明しているものもあるが、これは『塵劫記』で無量と大数の間に傷ができて間隔があき、別の数のように見える版があったためである。無量大数で一つの数とするのが普通である。
小数[編集]
小数については、一桁(0.1倍)ごとに新たな名前を付ける下数が行われているが、これも、位の小さなものの名称については時代や地域、また書物によって相違がある。例えば朱世傑『算学啓蒙』では沙以下は万万進としているほか、「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」の4つの別の名とするなどの違いがある。以下は一例である。
| 呼称 | 数 |
|---|---|
| 一(いち) | 100 |
| 分(ぶ) | 10−1 |
| 厘(釐)(りん) | 10−2 |
| 毛(毫)(もう) | 10−3 |
| 糸(絲)(し) | 10−4 |
| 忽(こつ) | 10−5 |
| 微(び) | 10−6 |
| 繊(せん) | 10−7 |
| 沙(しゃ) | 10−8 |
| 塵(じん) | 10−9 |
| 埃(あい) | 10−10 |
| 渺(びょう) | 10−11 |
| 漠(ばく) | 10−12 |
| 模糊(もこ) | 10−13 |
| 逡巡(しゅんじゅん) | 10−14 |
| 須臾(しゅゆ) | 10−15 |
| 瞬息(しゅんそく) | 10−16 |
| 弾指(だんし) | 10−17 |
| 刹那(せつな) | 10−18 |
| 六徳(りっとく) | 10−19 |
| 虚空(こくう) | 10−20 |
| 清浄(しょうじょう) | 10−21 |
このうち、『塵劫記』では埃以上のみが紹介されている[4]。
実用で用いられるのは毛あるいは糸くらいまでであり、それ以下については名前がついているだけで実際にはほとんど用いられない。なお、「六徳」は「徳」の6倍という意味ではなく、「六徳」で一つの単位である。
実際に桁を連ねるときは、「二寸三分四厘」のように1の位の後に「基準単位(ここでは「寸」)」をつける。現代的な表現が「2.34寸」のように最後に「基準単位」を付けるのとは異なる。
割と共に用いる場合の誤解[編集]
基準単位として「割」を使う場合は「二割三分四厘」のようになることから、「分が 1/100、厘が 1/1000 だ」と勘違いをされることがある。しかし、これは「2.34割」の意味であって、「分は割の 1/10、厘は割の 1/100」であり、上記の「二寸三分四厘 = 2.34寸」と同様の表現である。
上記の勘違いを生ずる原因は、割を用いる場合に割そのものが 1/10 を意味するために、「分が全体の 1/100、厘が全体の 1/1000 である」と誤解するからである。分、厘、毛などの数詞は、「基準単位」(例えば、寸、割、匁など)の小数を意味することを理解しておく必要がある。
仏典の数詞[編集]
もっとも、これらは実用のものではなく、計算もできないほど大きな数を示して悟りの功徳の大きさを表したものである。
| 名称 | n | 数 |
|---|---|---|
| 倶胝 | 0 | 107 |
| 阿庾多 | 1 | 1014 |
| 那由他 | 2 | 1028 |
| 頻波羅 | 3 | 1056 |
| 矜羯羅 | 4 | 10112 |
| 阿伽羅 | 5 | 10224 |
| 最勝 | 6 | 10448 |
| 摩婆羅 | 7 | 10896 |
| 阿婆羅 | 8 | 101792 |
| 多婆羅 | 9 | 103584 |
| 界分 | 10 | 107168 |
| 普摩 | 11 | 1014336 |
| 禰摩 | 12 | 1028672 |
| 阿婆鈐 | 13 | 1057344 |
| 弥伽婆 | 14 | 10114688 |
| 毘攞伽 | 15 | 10229376 |
| 毘伽婆 | 16 | 10458752 |
| 僧羯邏摩 | 17 | 10917504 |
| 毘薩羅 | 18 | 101835008 |
| 毘贍婆 | 19 | 103670016 |
| 毘盛伽 | 20 | 107340032 |
| 毘素陀 | 21 | 1014680064 |
| 毘婆訶 | 22 | 1029360128 |
| 毘薄底 | 23 | 1058720256 |
| 毘佉擔 | 24 | 10117440512 |
| 称量 | 25 | 10234881024 |
| 一持 | 26 | 10469762048 |
| 異路 | 27 | 10939524096 |
| 顛倒 | 28 | 101879048192 |
| 三末耶 | 29 | 103758096384 |
| 毘覩羅 | 30 | 107516192768 |
| 奚婆羅 | 31 | 1015032385536 |
| 伺察 | 32 | 1030064771072 |
| 周広 | 33 | 1060129542144 |
| 高出 | 34 | 10120259084288 |
| 最妙 | 35 | 10240518168576 |
| 泥羅婆 | 36 | 10481036337152 |
| 訶理婆 | 37 | 10962072674304 |
| 一動 | 38 | 101924145348608 |
| 訶理蒲 | 39 | 103848290697216 |
| 訶理三 | 40 | 107696581394432 |
| 奚魯伽 | 41 | 1015393162788864 |
| 達攞歩陀 | 42 | 1030786325577728 |
| 訶魯那 | 43 | 1061572651155456 |
| 摩魯陀 | 44 | 10123145302310912 |
| 懺慕陀 | 45 | 10246290604621824 |
| 瑿攞陀 | 46 | 10492581209243648 |
| 摩魯摩 | 47 | 10985162418487296 |
| 調伏 | 48 | 101970324836974592 |
| 離憍慢 | 49 | 103940649673949184 |
| 不動 | 50 | 107881299347898368 |
| 極量 | 51 | 1015762598695796736 |
| 阿麼怛羅 | 52 | 1031525197391593472 |
| 勃麼怛羅 | 53 | 1063050394783186944 |
| 伽麼怛羅 | 54 | 10126100789566373888 |
| 那麼怛羅 | 55 | 10252201579132747776 |
| 奚麼怛羅 | 56 | 10504403158265495552 |
| 鞞麼怛羅 | 57 | 101008806316530991104 |
| 鉢羅麼怛羅 | 58 | 102017612633061982208 |
| 尸婆麼怛羅 | 59 | 104035225266123964416 |
| 翳羅 | 60 | 108070450532247928832 |
| 薜羅 | 61 | 1016140901064495857664 |
| 諦羅 | 62 | 1032281802128991715328 |
| 偈羅 | 63 | 1064563604257983430656 |
| 窣歩羅 | 64 | 10129127208515966861312 |
| 泥羅 | 65 | 10258254417031933722624 |
| 計羅 | 66 | 10516508834063867445248 |
| 細羅 | 67 | 101033017668127734890496 |
| 睥羅 | 68 | 102066035336255469780992 |
| 謎羅 | 69 | 104132070672510939561984 |
| 娑攞荼 | 70 | 108264141345021879123968 |
| 謎魯陀 | 71 | 1016528282690043758247936 |
| 契魯陀 | 72 | 1033056565380087516495872 |
| 摩覩羅 | 73 | 1066113130760175032991744 |
| 娑母羅 | 74 | 10132226261520350065983488 |
| 阿野娑 | 75 | 10264452523040700131966976 |
| 伽麼羅 | 76 | 10528905046081400263933952 |
| 摩伽婆 | 77 | 101057810092162800527867904 |
| 阿怛羅 | 78 | 102115620184325601055735808 |
| 醯魯耶 | 79 | 104231240368651202111471616 |
| 薜魯婆 | 80 | 108462480737302404222943232 |
| 羯羅婆 | 81 | 1016924961474604808445886464 |
| 訶婆婆 | 82 | 1033849922949209616891772928 |
| 毘婆羅 | 83 | 1067699845898419233783545856 |
| 那婆羅 | 84 | 10135399691796838467567091712 |
| 摩攞羅 | 85 | 10270799383593676935134183424 |
| 娑婆羅 | 86 | 10541598767187353870268366848 |
| 迷攞普 | 87 | 101083197534374707740536733696 |
| 者麼羅 | 88 | 102166395068749415481073467392 |
| 馱麼羅 | 89 | 104332790137498830962146934784 |
| 鉢攞麼陀 | 90 | 108665580274997661924293869568 |
| 毘伽摩 | 91 | 1017331160549995323848587739136 |
| 烏波跋多 | 92 | 1034662321099990647697175478272 |
| 演説 | 93 | 1069324642199981295394350956544 |
| 無尽 | 94 | 10138649284399962590788701913088 |
| 出生 | 95 | 10277298568799925181577403826176 |
| 無我 | 96 | 10554597137599850363154807652352 |
| 阿畔多 | 97 | 101109194275199700726309615304704 |
| 青蓮華 | 98 | 102218388550399401452619230609408 |
| 鉢頭摩 | 99 | 104436777100798802905238461218816 |
| 僧祇 | 100 | 108873554201597605810476922437632 |
| 趣 | 101 | 1017747108403195211620953844875264 |
| 至 | 102 | 1035494216806390423241907689750528 |
| 阿僧祇 | 103 | 1070988433612780846483815379501056 |
| 阿僧祇転 | 104 | 10141976867225561692967630759002112 |
| 無量 | 105 | 10283953734451123385935261518004224 |
| 無量転 | 106 | 10567907468902246771870523036008448 |
| 無辺 | 107 | 101135814937804493543741046072016896 |
| 無辺転 | 108 | 102271629875608987087482092144033792 |
| 無等 | 109 | 104543259751217974174964184288067584 |
| 無等転 | 110 | 109086519502435948349928368576135168 |
| 不可数 | 111 | 1018173039004871896699856737152270336 |
| 不可数転 | 112 | 1036346078009743793399713474304540672 |
| 不可称 | 113 | 1072692156019487586799426948609081344 |
| 不可称転 | 114 | 10145384312038975173598853897218162688 |
| 不可思 | 115 | 10290768624077950347197707794436325376 |
| 不可思転 | 116 | 10581537248155900694395415588872650752 |
| 不可量 | 117 | 101163074496311801388790831177745301504 |
| 不可量転 | 118 | 102326148992623602777581662355490603008 |
| 不可説 | 119 | 104652297985247205555163324710981206016 |
| 不可説転 | 120 | 109304595970494411110326649421962412032 |
| 不可説不可説 | 121 | 1018609191940988822220653298843924824064 |
| 不可説不可説転 | 122 | 1037218383881977644441306597687849648128 |
六十華厳[編集]
東晋の仏駄跋陀羅訳の『華厳経(六十華厳)』(旧訳華厳経、晋経、大正蔵278)の第29巻「心王菩薩問阿僧祇品第二十五」には、上記の命数法とは異なる命数が記述されている[5][6]。
1010 を拘梨とし、拘梨以上を上数として121の命数が列挙されている。
最大の命数である不可説転転は という巨大な数となる。
八十華厳[編集]
唐の実叉難陀訳の『華厳経(八十華厳)』(新訳華厳経、唐経、大正蔵279)の第45巻「阿僧祇品第三十」には、上記の命数法とは異なる命数が記述されている[7][8]。
105 を洛叉、100洛叉(107)を倶胝(くてい)とし、倶胝以上を上数として123の命数が列挙されている。
最大の命数である不可説不可説転は
という巨大な数となる。
四十華厳[編集]
唐の般若三蔵訳の『華厳経(四十華厳)』(貞元経、大正蔵293)の第10巻「入不思議解脱境界普賢行願品」には、上記の命数法とは異なる命数が記述されている[9][10]。
105 を洛叉、100洛叉(107)を倶胝とし、倶胝以上を上数として144の命数が列挙されている。
最大の命数である不可説不可説転は という巨大な数となる。
西洋[編集]
インド[編集]
注釈・出典[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ 高杉親知:世界の言語の数体系「ンドム語の数体系」
- ^ wikisource:zh:五經算術:按黃帝為法、數有十等。 及其用也、乃有三焉。十等者、謂億、兆、京、垓、秭、壤、溝、澗、正、載也。三等者、謂上、中、下也。其下數者、十十變之。若言十萬曰億、十億曰兆、十兆曰京也。中數者、萬萬變之。若言萬萬曰億、萬萬億曰兆、萬萬兆曰京也。上數者、數窮則變。若言萬萬曰億、億億曰兆、兆兆曰京也。若以下數言之、則十億曰兆;若以中數言之、則萬萬億曰兆;若以上數言之、則億億曰兆。
- ^ “新編塵劫記第3巻”. p. 4. doi:10.11501/3508170. 2018年3月2日閲覧。第一:大数の名の事
- ^ “新編塵劫記第3巻”. p. 4. doi:10.11501/3508170. 2018年3月2日閲覧。第二:小数の名の事
- ^ “SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018(T0278)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
- ^ “T09n0278_029 大方廣佛華嚴經 第29卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。
- ^ “SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018(T0279)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
- ^ “T10n0279_045 大方廣佛華嚴經 第45卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。
- ^ “SAT大蔵経テキストデータベース2018(T0293)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
- ^ “T10n0293_010 大方廣佛華嚴經 第10卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
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