フィボナッチ数

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フィボナッチ数列の各項を一辺とする正方形
ウィキペディア日本語版で使われていたイメージ画像もフィボナッチ数列を利用している。

フィボナッチ数(フィボナッチすう、Fibonacci number)は、イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチ(ピサのレオナルド)にちなんで名付けられた数である。

概要[編集]

n 番目のフィボナッチ数を Fn で表すと

F_0 = 0\,

F_1 = 1 \,

F_{n+2} = F_n + F_{n+1} \quad (n \ge 0)

で定義される。これは、2つの初期条件を持つ漸化式である。

この数列フィボナッチ数列(フィボナッチすうれつ、Fibonacci sequence)と呼ばれ、

0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, 1597, 2584, 4181, 6765, 10946, …(オンライン整数列大辞典の数列 A45

と続く。最初の二項は0,1と定義され、以後どの項もその前の2つの項の和となっている。

1202年にフィボナッチが発行した『算盤の書』(Liber Abaci) に記載されたことで「フィボナッチ数」と呼ばれているが、それ以前にもインドの音楽家であるヘマチャンドラ(Hemachandra)が和音の研究により発見し、書物に記したことが判明している[1][2]

兎の問題[編集]

フィボナッチは次の問題を考案した[3]

  • 1つがいの兎は、産まれて2か月後から毎月1つがいずつの兎を産む。
  • 兎が死ぬことはない。
  • この条件のもとで、産まれたばかりの1つがいの兎は1年の間に何つがいの兎になるか?

つがいの数は次の表のようになる。どの月のつがいの合計も、その前の2つの月での合計の和となり、フィボナッチ数が現れていることがわかる。

  産まれたばかりのつがい 生後1か月のつがい 生後2か月以降のつがい つがいの数(合計)
0か月後 1 0 0 1
1か月後 0 1 0 1
2か月後 1 0 1 2
3か月後 1 1 1 3
4か月後 2 1 2 5
5か月後 3 2 3 8
6か月後 5 3 5 13
7か月後 8 5 8 21
8か月後 13 8 13 34
9か月後 21 13 21 55
10か月後 34 21 34 89
11か月後 55 34 55 144
12か月後 89 55 89 233

一般項[編集]

フィボナッチ数列の一般項は次の式で表される[3]:

F_n = \frac{1}{\sqrt{5}} \left\{ \left( \frac{1+\sqrt{5}}{2} \right)^n - \left( \frac{1-\sqrt{5}}{2} \right)^n \right\} = {{\phi^n - (-\phi)^{-n}} \over \sqrt{5}}
ただし、\phi \equiv \frac{1+\sqrt{5}}{2} \simeq 1.618 033 988 749 895黄金比

この式は1843年ビネ (Jacques Philippe Marie Binet) が発表したことからビネの公式と呼ばれるが、それ以前の1730年 (ド・モアブル)・1765年オイラー)にも発表されており、ビネは最初の発見者ではない。

この式の第2項は n = 0 のときの 1 / \sqrt 5 \simeq 0.447 が最大で、それを超えることはない。従って、第2項を略した次の式は Fn の値を 0.447 以下(n > 4 のとき1%以下)の誤差で与える近似式である。

F_n \approx {\phi^n \over \sqrt{5}}

この誤差は 0.5 より小さいので、Fn の正確な整数値は以下の式で得られる[3]

F_n = \left\lfloor {\phi^n \over \sqrt{5}} + \frac{1}{2} \right\rfloor
ただし、\lfloor x\rfloor床関数

フィボナッチ数列の漸化式は次のように行列表現できる[3]:

{F_{n + 2} \choose F_{n + 1}} = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} {F_{n + 1} \choose F_n}
ゆえに \begin{pmatrix} F_{n+1} & F_n \\ F_n & F_{n-1} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}^n

性質[編集]

隣り合うフィボナッチ数の比は黄金比 φ に収束する。この性質は初期値 (F0 = 0, F1 = 1) に拠らない。

\lim_{n \to \infin} {F_n \over F_{n-1}} \to \phi

導出:

x = \lim_{n \to \infin}{F_n \over F_{n-1}} とおけば、
x = \lim_{n \to \infin} \frac{F_{n-1} + F_{n-2}}{F_{n-1}} = \lim_{n \to \infin} \left( 1 + \frac{1}{ F_{n-1} / F_{n-2} } \right) = 1 + \frac{1}{x}
x^2-x-1=0\,

pq最大公約数r であるならば FpFq の最大公約数は Fr である。

このことより以下を導くことができる。
mn で割り切れるならば、FmFn で割り切れる。
連続する2数は互いに素であることより、隣り合うフィボナッチ数も互いに素である。

Fm偶数となるのは m が 3 の倍数となるときと一致する。 Fm が 5 の倍数となるのは m が 5 の倍数となるときと一致する。 p が 2 でも 5 でもない素数のとき、m = p − (5/p) とおくと pFm を割り切る。ここで (/) はルジャンドル記号である。 フィボナッチ数の累和や累積について以下の式が成り立つ:

F_1 + F_2 + F_3 + ... + F_n = F_{n+2} - 1 \,
F_1 + F_3 + F_5 + ... + F_{2n-1} = F_{2n} \,
F_2 + F_4 + F_6 + ... + F_{2n} = F_{2n+1} - 1 \,
{F_1}^2 + {F_2}^2 + {F_3}^2 + ... + {F_n}^2 = F_n F_{n+1}
F_{n-1} F_{n+1} - {F_n}^2 = (-1)^n

次の関係式が知られている。

\frac{1}{89}=\sum_{n=1}^\infty{F_n\times 10^{-(n+1)}}

フィボナッチ数のうち平方数であるものは F1 = F2 = 1, F12 = 144 のみ (Cohn 1964)[4]立方数であるものは F1 = F2 = 1, F6 = 8 のみ (London and Finkelstein 1969)[5] である。フィボナッチ数のうち累乗数であるものはこれしかない (Bugeaud, Mignotte, Siksek 2006)[6]

フィボナッチ数の逆数の総和 (reciprocal Fibonacci constant) はある一定の値に収束し、記号ψで表される。

\psi = \sum_{n = 1}^\infty \frac{1}{F_n} = \frac{1}{1} + \frac{1}{1} + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \cdots \approx 3.35988566 \ldots [7]

ψは無理数であることが証明されているが (André-Jeannin 1989)、超越数であるかどうかは分かっていない。

任意の正の整数は、1つ以上の連続しない相異なるフィボナッチ数の和として一意に表すことができる(ゼッケンドルフの定理)。

その他の話題[編集]

ヒマワリの種の数を螺旋に沿って数えていくとフィボナッチ数が現れる[要出典]
  • フィボナッチ数は自然界の現象に数多く出現する。
    • 花びらの数はフィボナッチ数であることが多い。
    • 植物に現れる螺旋の数もフィボナッチ数であることが多い。
      • ヒマワリの螺旋の数はフィボナッチ数とされることもあるが、螺旋の数が多い場合、中心から離れると螺旋の隙間にも種ができてしまうため、途中から枝分かれしてフィボナッチ数にならないこともある[8]
    • 葉序(植物の葉の付き方)はフィボナッチ数と関連している。
    • ハチアリなど、オスに父親がない家系を辿っていくとフィボナッチ数列が現れる(父母2匹、祖父母3匹、曽祖父母5匹、高祖父母8匹…)。
  • n 段の階段を1段または2段ずつ登るときに、登る場合の数は Fn+1 通りある。
  • ●と○を合わせて n 個並べる。●が2個以上続かないように一列に並べる方法は Fn+2 通りある。
  • 為替などのテクニカル分析で、フィボナッチ・リトレースメントという手法がよく使われている。

負数番への拡張[編集]

フィボナッチ数列は、漸化式 Fn = Fn−1 + Fn−2 を全ての整数 n に対して適用することにより、n が負の整数の場合に拡張できる。そして Fn = (−1)n+1Fn が成り立つ。この式より、負の番号に対する数項は次のようになる。

…, −55, 34, −21, 13, −8, 5, −3, 2, −1, 1.

類似の数列[編集]

トリボナッチ数[編集]

トリボナッチ数とは、次のように定義されるトリボナッチ数列に現れる数のことである。

T_0 = T_1 = 0,\ T_2 = 1
T_{n+3} = T_n + T_{n+1} + T_{n+2} \quad (n \ge 0)

フィボナッチ数列が「前の2項の和」なのに対し、トリボナッチ数列は「前の3項の和」である。

最初のいくつかの項は、次のようになる。

0, 0, 1, 1, 2, 4, 7, 13, 24, 44, 81, 149, 274, 504, 927, 1705, 3136, 5768, 10609, 19513, 35890, 66012, … (A73)

トリボナッチ数列の一般項は次で表される。

T_n = \frac{\beta\gamma - \beta - \gamma + 2}{(\beta - \alpha)(\gamma - \alpha)}\alpha^{n-2} + \frac{\gamma\alpha - \gamma - \alpha + 2}{(\gamma - \beta)(\alpha - \beta)}\beta^{n-2} + \frac{\alpha\beta - \alpha - \beta + 2}{(\alpha - \gamma)(\beta - \gamma)}\gamma^{n-2}

ただし、α, β, γ は方程式 x3x2x − 1 = 0 の3解

\alpha = \frac{1}{3} \left(1 + \sqrt[3]{19-3\sqrt{33}} + \sqrt[3]{19+3\sqrt{33}}\right)
\beta = \frac{1}{3} \left(1 + \omega \sqrt[3]{19-3\sqrt{33}} + \bar{\omega} \sqrt[3]{19+3\sqrt{33}}\right)
\gamma = \frac{1}{3} \left(1 + \bar{\omega} \sqrt[3]{19-3\sqrt{33}} + \omega \sqrt[3]{19+3\sqrt{33}}\right)

であり、ここに

\omega = \frac{- 1 + \sqrt{3} i}{2}

は1の虚の立方根の1つ。

また、上の3つの根のうち、実数解αのことをトリボナッチ定数という。これはフィボナッチ数列の黄金比にあたる定数で、トリボナッチ数列の隣り合う2項間の比は、トリボナッチ定数に収束する。

\lim_{n \to \infin} {T_n \over T_{n-1}} \to \alpha \simeq 1.839286755214162

テトラナッチ数[編集]

テトラナッチ数は、トリボナッチ数列と同様に次のように定義される、テトラナッチ数列に現れる数のことである。

T_0 = T_1 = T_2 = 0,\ T_3 = 1
T_{n+4} = T_n + T_{n+1} + T_{n+2} + T_{n+3} \quad (n \ge 0)

フィボナッチ数列が「前の2項の和」、トリボナッチ数列が「前の3項の和」なのに対し、テトラナッチ数列は「前の4項の和」である。

最初のいくつかの項は、次のようになる。

0, 0, 0, 1, 1, 2, 4, 8, 15, 29, 56, 108, 208, 401, 773, 1490, … (A78)

リュカ数[編集]

フィボナッチ数列の最初の2項を 2, 1 に置き換えた数列の項をリュカ数という。この数列の一般項は

L_n = \left( \frac{1+\sqrt{5}}{2} \right)^n + \left( \frac{1-\sqrt{5}}{2} \right)^n  = {\phi^n + (-\phi)^{-n}}

と表される。

フィボナッチ数列やリュカ数の列を一般化したものがリュカ数列であり、1878年にエドゥアール・リュカが体系的な研究を行い、1913年にロバート・ダニエル・カーマイケル (en) がその結果を整理、拡張した[9]。これらの研究が現代のフィボナッチ数の理論の基礎となった。

脚注[編集]

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  1. ^ Parmanand Singh. "Acharya Hemachandra and the (so called) Fibonacci Numbers". Math. Ed. Siwan, 20(1): pp.28-30, 1986. ISSN 0047-6269.
  2. ^ Parmanand Singh, "The So-called Fibonacci numbers in ancient and medieval India." Historia Mathematica 12(3), pp.229–244, 1985.
  3. ^ a b c d 奥村晴彦 『C言語による最新アルゴリズム事典』 技術評論社1991年、305頁。ISBN 4-87408-414-1
  4. ^ J. H. E. Cohn, On square Fibonacci numbers, J. London Math. Soc. 39(1964), pp.537-540.
  5. ^ H. London and R. Finkelstein, On Fibonacci and Lucas numbers which are perfect powers, Fibonacci Quart. 5(1969), pp.476-481.
  6. ^ Yann Bugeaud, Maurice Mignotte, Samir Siksek, Classical and modular approaches to exponential Diophantine equations. I. Fibonacci and Lucas perfect powers. Ann. of Math. 163(2006), pp.969-1018. Yann Bugeaud, Publications, 2006.
  7. ^ Reciprocal Fibonacci Constant -- from Wolfram MathWorld
  8. ^ 第14回:全ての植物をフィボナッチの呪いから救い出す(こんどうしげるの生命科学の明日はどっちだ!?)
  9. ^ R. D. Carmichael, On the numerical factors of the arithmetic forms αn ± βn, Ann. of Math. 15 (1913), pp.30-70.

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]