コンテンツにスキップ

符号関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
実数に対する符号関数

符号関数(ふごうかんすう、英: sign function, signum function)は、実数に対しその符号に応じて1、−1、0のいずれかを返す関数。

およびそれを拡張した複素関数。

記号は sgn x のほかに、sgn(x), Sgn x, sign x なども使われる。記号としての sgn はレオポルト・クロネッカーが導入した[1]。

英語から「サイン関数」とも呼ぶが、この名は正弦関数 sin と非常に紛らわしい。区別するために sign のラテン語形の signum(シグヌム、英語読みはシグナム)から「シグナム関数」(signum function) と呼ぶことがある。英語以外でもドイツ語などいくつかの言語で signum 系の名前で呼ばれる。

複素数への拡張

[編集]

実数に対する符号関数は絶対値を用いて

と書くこともできる。符号関数の複素数への拡張は、この式を複素数へも適用することで得られる。複素数平面上でベクトルに対し同方向の単位ベクトルを求める操作と同等である(ただし零ベクトル以外のとき)。

なおこのほかに、gnuplotでは、複素数に対し符号関数を

と定義している。またMaple Vでは

という関数を定義している( と はそれぞれ複素数の実部と虚部)。しかしこれ以降は、これらの定義は使わず、最初の定義の符号関数について述べる。

性質

[編集]

符号関数は、以下のような性質を持つ(これらは複素数に対し成り立つ)。

極形式との関係:

  • 、ただし は偏角

符号の演算:

  • (冪等性)
  • (奇関数)

実数に対しては、加えて次のような性質を持つ。

  • 、ただし はディラックのデルタ関数
  • 、ただし はヘヴィサイドの階段関数
  • 、ただし はアイヴァーソンのブラケット

実解析・超関数における性質

[編集]

符号関数は、実解析や超関数(ディストリビューション)の理論において滑らかな関数の極限や連続関数の微分として表される。

連続関数による近似

[編集]

符号関数は原点 で不連続であるが、以下のような連続関数の各点極限として表すことができる。

  • 代数的な近似関数による表現:

これらの極限は、工学や数値計算(例えば最適化問題におけるL1正則化の平滑化近似など)において不連続な符号関数を滑らかな関数で代用する際に広く応用される。

超関数としての微分と積分

[編集]

ヘヴィサイドの階段関数 との関係式 から、超関数としての微分はディラックのデルタ関数 を用いて

と表される。また、絶対値関数 は連続かつ原点以外で微分可能であり、その超関数としての微分(超関数微分)は符号関数に一致する:

フーリエ変換

[編集]

符号関数は局所可積分関数であり、緩増加超関数とみなすことができる。符号関数 のフーリエ変換は、主値(Cauchy principal value)の意味で次のように与えられる:

この関係式は、信号処理におけるヒルベルト変換などの代数的表現の基礎となる。

脚注

[編集]
  1. ↑ 黒木哲徳『なっとくする数学記号』講談社〈ブルーバックス〉、2021年、147頁。ISBN 9784065225509。