テトレーション

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テトレーション (tetration) は、冪乗の次の、4番目のハイパー演算である。つまり、自らの冪乗を指定された回数反復する演算である。

超冪(ちょうべき)ともいう。ただし、超冪は n ≥ 4 番目の一般のハイパー演算を総称することもある。

第1から第4のハイパー演算は次のとおり。

  1. 加算 (hyper1) a + b = a + \underbrace{1 + 1 + \cdots + 1}_{b \mathrm{ \ copies \ of  \ }1 }
  2. 乗算 (hyper2) a \times b = \underbrace{a + a + \cdots + a}_{b \mathrm{ \ copies \ of  \ }a }
  3. 冪乗 (hyper3) a^b = a \uparrow b = \underbrace{a \times a \times \cdots \times a}_{b \mathrm{ \ copies \ of  \ }a }
  4. テトレーション (hyper4) ^b a = a \uparrow\uparrow b = \underbrace{a \uparrow a \uparrow \cdots \uparrow a}_{b \mathrm{ \ copies \ of  \ }a }  = \underbrace{a^{a^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{ \cdot ^{ \cdot ^{a}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}_{b \mathrm{ \ copies \ of  \ }a }

これらの演算のなかのテトレーションの特異性は、最初の3つ(加算、乗算、冪乗)は複素数値へ一般化できるがテトレーションの複素数値への正則な一般化が確立できず初等関数と見做すこともできないことである。

テトレーションは b を固定する毎に初等帰納的関数であるが b を変数と見做すと初等的でない。

aを底(てい)、bを高さという。

なお、冪乗の演算の優先順位は右(右上)からである。つまり、

a ^ {b ^ c} = a ^ \left( b ^ c \right) \ne \left( a ^ b \right) ^ c,
a \uparrow b \uparrow \cdots \uparrow y \uparrow z = a \uparrow (b \uparrow (\cdots \uparrow (y \uparrow z))) \ne (((a \uparrow b) \uparrow \cdots) \uparrow y) \uparrow z.

記法[編集]

テトレーションを表すにはいくつか等価な記法がある。

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\exp_a^b xは反復指数関数で、

\exp_a^b x = (a \uparrow)^b x = \underbrace{a \uparrow a \uparrow \cdots \uparrow a}_{b \text{ copies of } a } \uparrow x.
n {}^{2}n {}^{3}n {}^{4}n
0 1 0 1
1 1 1 1
2 4 16 65,536
3 27 7,625,597,484,987 \approx \exp_{10}^3(1.09902)
4 256 \approx \exp_{10}^2(2.18788) \approx \exp_{10}^3(2.18726)
5 3,125 \approx \exp_{10}^2(3.33931) \approx \exp_{10}^3(3.33928)
6 46,656 \approx \exp_{10}^2(4.55997) \approx \exp_{10}^3(4.55997)
7 823,543 \approx \exp_{10}^2(5.84259) \approx \exp_{10}^3(5.84259)
8 16,777,216 \approx \exp_{10}^2(7.18045) \approx \exp_{10}^3(7.18045)
9 387,420,489 \approx \exp_{10}^2(8.56784) \approx \exp_{10}^3(8.56784)
10 10,000,000,000 \exp_{10}^3(1) \exp_{10}^4(1)

拡張[編集]

テトレーションは、高さが自然数以外の場合に拡張できる。

底が0[編集]

0^0 が単純には定義できないため、^k 0 は直接には定義できないが、極限

\lim_{n \rightarrow 0} {} ^ {k} n \rightarrow \begin{cases} 1, & k \in 2\mathbb{Z} \\ 0, & k \in 2\mathbb{Z} + 1 \end{cases}

と収束するため、

{}^{k}0 = \begin{cases} 1, & k \in 2\mathbb{Z} \\ 0, & k \in 2\mathbb{Z} + 1 \end{cases}

と定義する。(2\mathbb{Z}, 2\mathbb{Z} + 1偶数奇数

たとえば、

{}^0 0 = 1, \ {}^1 0 = 0, \ {}^2 0 = 1 \,.

なおここで、0^0 が一意に決まらないにもかかわらず {}^2 0 ( = 0 ^ 0) が定義できるのは、a ^ bab が等しいという条件下で極限を取ったからである。

高さが∞[編集]

y = {}^\infty x

ある範囲の x (実数では e ^ {-e} < x < e ^ \frac{1}{e}) に対し、 \lim_{k \rightarrow \infty} {}^k x は収束するため、その極限を {}^\infty x と定義する。

極限が存在するとは {}^\infty x = x ^ {{}^\infty x} が成立するということなので、一般の複素z に対して、

{}^\infty z = -\frac{\operatorname{W} (- \ln{z})}{\ln{z}}

が成り立つ。WはランベルトのW関数

高さが非正[編集]

定義より

{}^{k}n = \log_n \left\{{}^{(k+1)}n \right\}

が成り立つので、この関係を k ≤ 0 に対しても帰納的に拡張し


\begin{array}{rclclcccc}
  {}^{1}n
    & = &
  \log_n \left({}^{2}n\right)
    & = &
  \log_{n} \left(n^n\right)
    & = & 
  n \log_{n} n 
    & = & 
  n
\\
  {}^{0}n
    & = &
  \log_{n} \left({}^{1}n\right)
    & = & 
  \log_{n} n
    & & & = &
  1
\\
  {}^{-1}n
    & = &
  \log_{n} \left({}^{0}n\right)
    & = &
  \log_{n} 1
    & & & = & 
  0
\end{array}

と定義する。

ただし、定義できるのは k = -1 までで、log 0 が存在しないため k = -2 に対しては定義できず、したがって k ≤ -2 に対して定義できない。

高さが実数[編集]

テトレーションを高さ実数または複素数へ拡張する、という一般的な問題への広く受け入れられた解答は今のところ存在しない。幾つかのアプローチについて以下で述べる。

一般にこの問題は任意の実数 a > 0 に対し、実数 x > -2 で定義され、次の条件を満たす超指数関数 f(x) = {}^x a を求めるものである。

  • {}^{-1} a = 0
  • {}^{0} a = 1
  • 任意の実数 x > -1 に対し {}^x a = a \uparrow\uparrow \left( {}^{x-1} a \right)
  • 四つ目の条件は通常次の中のどれかである。
  • 連続性(通常は x>0 における a ,~ x についての連続性)
  • 微分可能性x についての 1,~2,~k 回または無限回微分可能性)
  • 正則性(x についての二階微分可能性を含む)
任意の実数 x>0 に対し \displaystyle{ \frac{ \mathrm{d}^2 }{ \mathrm{d}x^2 } f(x) > 0 }

四つ目の条件は著者およびアプローチによって異なる。高さ実数への拡張には二つの主要なアプローチが存在し、一つは正則性、もう一つは微分可能性に基づいたものである。これらの二つのアプローチは、相反する結果を導くことから互いに大きく異なるとされ、調和は難しいと考えられている。

長さ 1 の区間で {}^x a が定義されれば、任意の x > -2 に対し容易に拡張される。

一次近似[編集]

一次近似による \,{}^{x}e のグラフ

一次近似(連続性のもと微分可能性を近似)は次のように与えられる。

{}^{x}a \approx \begin{cases}
\log_a(^{x+1}a) & x \le -1 \\
1 + x & -1 < x \le 0 \\
a^{\left(^{x-1}a\right)} & 0 < x
\end{cases}

ゆえに

近似 定義域
{}^x a \approx x + 1 -1 < x < 0
{}^x a \approx a^x 0 < x < 1
{}^x a \approx a^{a^{x - 1}} 1 < x < 2
\vdots \vdots

と以下続く。但しこの微分可能性はあくまで区分的なものである。整数 x において微分係数は \ln a 倍される。

より高次の近似[編集]

(微分可能性についての)二次近似は次のように与えられる。

{}^{x}a \approx \begin{cases}
\log_a({}^{x+1}a) & x \le -1 \\
1 + \frac{2\ln(a)}{1 \;+\; \ln(a)}x - \frac{1 \;-\; \ln(a)}{1 \;+\; \ln(a)}x^2 & -1 < x \le 0 \\
a^{\left({}^{x-1}a\right)} & 0 < x
\end{cases}

これは任意の x > 0 について微分可能であるが二階微分可能でない。a = e のときこれは一次近似に等しくなる。

三次近似および近似の n 次への一般化は次のように与えられる。[1]

高さが複素数[編集]

複素平面上にテトレーション f=F(x+{\rm i}y)を解析接続したものを描画。 |f|=1,e^{\pm 1},e^{\pm 2},\ldots\arg(f)=0,\pm 1,\pm 2,\ldotsを太い曲線で示した。


方程式F(z+1)=exp(F(z))を満たし、かつ、追加条件としてF(0)=1と、zを±i∞に近づけるとF(z)が対数関数の不動点(およそ0.318 ± 1.337i)に近づき、実軸のz≤−2の部分を除いた複素z-平面全体でF正則であるという条件を満たす関数Fは一意的に定まるだろうと予想されている[2]。 この関数を右図に示す。 浮動小数近似はオンラインで入手できる[3]

テトレーションを一意的に決定するためには、正則性を要求することが重要である。関数Sを、

S(z)=F\!\left(~z~
+\sum_{n=1}^{\infty} \sin(2\pi n z)~ \alpha_n
+\sum_{n=1}^{\infty} \Big(1-\cos(2\pi n z) \Big) ~\beta_n \right)

のように構成しよう。ここで、\alpha\betaは級数を収束させるために十分な速度で減衰する実数列である。

関数Sはテトレーションの方程式S(z+1)=exp(S(z))かつS(0)=1を満たし、さらにαnβnが十分に速く0に近づくならば、正の実軸の近傍で解析的となる。しかし、もし{α}または{β}のいくつかの要素が0でないならば、虚軸上の指数関数的なsinとcosの増加のために、関数Sは余分に特異点を持ち、複素平面上のカットラインを持つことになる。係数{α}と{β}が小さくなればなるほど、これらの特異点は実軸から離れていく。

実解析上のテトレーションは一意的に定まらないので、複素平面への拡張は一意性に必要である。

脚注[編集]