ユーロスター

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ユーロスター
走行中のユーロスター(374形)
走行中のユーロスター(374形
基本情報
イギリスの旗 イギリス
フランスの旗 フランス
ベルギーの旗 ベルギー
オランダの旗 オランダ
種類 高速鉄道
起点 セント・パンクラス駅
終点 パリ北駅ブリュッセル南駅
開業 1994年11月14日
所有者 ユーロスター・グループ英語版
運営者 ユーロスター・インターナショナル英語版
路線諸元
路線距離 492 km(ロンドン〜パリ間)
軌間 1435 mm[1]
電化方式 直流750 V(イギリス在来線。第三軌条方式
直流1500 V(フランス在来線。架空電車線方式
直流3000 V(ベルギー在来線。架空電車線方式
交流25000 V, 50 Hz(各国高速新線)
最高速度 300 km/h
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ユーロスター: Eurostar)は、英仏海峡トンネルを通ってイギリス大陸ヨーロッパとを結ぶ国際列車である。

ロンドンフランスリールパリ、およびベルギーブリュッセルとの間で運行されており、最高速度300km/h の高速鉄道となっている。2018年4月4日より、ロンドン発の1日2本のみブリュッセルからオランダアムステルダムまで直通運転が開始された。

概要[編集]

列車は英仏海峡ドーバー海峡)を横断し、イギリスフランスベルギー各国内の高速路線を使用する。ユーロトンネルの開通と同年、1994年11月14日に開業した[2]

イギリス側の始発駅は現在、ロンドンのセント・パンクラス駅である。当初イギリス国内は在来線を走行し始発着駅にウォータールー駅ウォータールー国際駅)を使用していた。この在来線区間は第三軌条方式が採用されており、速度に劣るうえに、トンネル内で集電装置の切り替えが発生していた。しかしながら2007年11月、イギリス国内の高速新線HS1(ハイスピード1、CTRL)が開業したことによってそれらの事情は解消、ロンドンと大陸の所要時間は数十分程度短縮された。

2019年からタリスとユーロスターの両運行会社の統合が模索された。新型コロナの流行により延期されていたが[3]、2022年3月には欧州委員会の承認を得て、4月にユーロスターとタリスのそれぞれの運行会社(ユーロスター・インターナショナル英語版とTHIファクトリー)は事業所を残しつつ、ブリュッセルを拠点とする新持株会社「ユーロスター・グループ英語版」の元に統合された[4]

路線[編集]

ユーロスター運行経路
KBHFa
0:00 ロンドン (セント・パンクラス)
TUNNEL1
HST
ストラトフォード・インターナショナル
TUNNEL1
TUNNEL1W
テムズ川
HST
0:15 エブスフリート・インターナショナル
eABZg+r
フォークハム・ジャンクション2007 年まで至ロンドン (ウォータールー)
HST
0:30 アシュフォード・インターナショナル
tSTRa
tZOLL
英仏海峡トンネル (0:21 通過)
tSTRe
HST
0:54 カレー-フレタン
BHF
1:20 リール-ウロップ
ABZgl STR+r
STR GRENZE
STR+l ABZgr KBHFe
1:51 ブリュッセル (南駅)
KBHFe STR
2:15 パリ (北駅)
HST
2:33 マルヌ-ラ-ヴァレ - シェシー (ディズニーランド)
STR+l ABZgr
KHSTe STR
5:40 アヴィニョン (中央駅)
HST
6:27 ムーティエ (スキー)
eHST
6:59 ラ・プラーニュ (スキー: 降車のみ)
KHSTe
7:17 ブール・サン・モーリス (スキー)

時間はロンドン セントパンクラスからの最短所要時間

  • ロンドン〜アシュフォード 〜 リール 〜 ブリュッセル:(最速1時間51分)
  • ロンドン〜アシュフォード〜カレー〜リール〜パリ(北駅):(最速2時間15分)
  • ロンドン〜アシュフォード〜マルヌ・ラ・ヴァレ(ディズニーランド・パリ):(2時間33分;1日1往復)
  • ロンドン〜アシュフォード〜ムーチェ〜(エイム・ラ・プラーニュ)ブール・サン・モーリス:(冬季のみ。一部夜行)
  • ロンドン〜アシュフォード〜アヴィニョン:(夏季のみ。5時間40分;1日1往復)
    • 列車により停車駅のパターンが異なる。
    • パリ発着一部列車のみカレーに停車。
    • エイム・ラ・プラーニュへはロンドン発のみ停車
    • CTRL全線開通後、ロンドン〜パリは最速2時間15分、ロンドン〜ブリュッセルは最速1時間51分で結ばれた。また、1時間に最高8往復の運用が可能となる(現在[いつ?]は1時間に最高4往復)。

車両[編集]

ユーロスターの車両は、3カ国を直通運転するためのさまざまな工夫がされている。例えば電源は各国の高速新線用とイギリスの在来線区間用に加えてベルギー在来線用も備えた3電源対応で、さらに一部車両はフランス在来線用にも対応している。

373形[編集]

1994年の開業時に投入された車両はフランスの高速鉄道車両であるTGVをベースとしたもので、イギリス国鉄のTOPSにより373形の形式が付与されている。フランスイギリスベルギーの3カ国で共同開発された。

3000番台は英国、3100番台はベルギー、3200番台はフランスが所有する。3200番台のうち4編成はTGVとしてパリ〜リール間の短距離区間で使用されている。また3300番台の7編成は、将来のイングランド北部・スコットランド方面への乗り入れに備えて2005年12月まで英国のGNERがリース契約で借り受け、車色をGNERのコーポレートカラーであるダークブラウンに変更し、ロンドンのキングス・クロス〜リーズ/ヨーク間を実験的に営業運転を行っていた。しかし、航空機との競争等による採算性の問題から延伸は中止となり、現在はロンドン、ストラトフォードにあるテンプル・ミルズ車両基地にて一時的に保管されている。また、増結用寝台車として製造されたナイトスター: Nightstar)は結局のところ一度も営業運転で使われることはなく、カナダのVIA鉄道に売却された。

  • 3種類の電源対応(フランス所属の一部編成のみ4電源対応)
    • 交流25000 V, 50 Hz(各国高速新線用)
    • 直流3000 V(ベルギー国内在来線用)
    • 直流1500 V(フランス国内在来線用:一部編成のみ)
    • 直流750 V(イギリス国内在来線用:第三軌条方式)
  • 3カ国の信号システム対応
  • 海底トンネル対策
  • 基本編成:20両(動力車2両+客車18両)但し3300番台は16両(動力車2両+客車14両)
    • 連接台車を採用しているが、動力車と客車の間、編成中央の客車の間は非連接式であり、連結器を解結すれば容易に4分割できる。これは海底トンネル内で火災などの事故が発生した際に損傷した車両を切り離して脱出するため(トンネルは信号回路も含めて並列単線方式のため、双方向に走ることができる)。
  • 車両高:3410 mm
  • 車両幅:2810 mm(イギリスの車両限界に合わせて小さい)
  • 軌道:標準軌1435 mm

374形[編集]

2010年10月7日に、ユーロスターの次世代車両としてドイツシーメンス社の「ヴェラロ」が、競争入札の結果、導入されることが発表された[5]。TOPSによる車両形式は374形で、愛称は「Eurostar e320」となる。これに対しフランスは、ユーロスター・インターナショナル社の最大株主(55%保有)がフランス国鉄であることや、これまで自国のアルストム社の車両を導入してきたことから不快感を示している[6]

輸送実績[編集]

リール・ユーロップ駅のユーロスター
ユーロスター(ロンドン-パリ間)の市場シェアと定時運行率

ユーロスターの定時運行率は年によって変動するが2007年は91.5%であった[7][8]。1994年の運行開始以来、航空輸送からのシェアを徐々に獲得し優位な立場に立っている。2007年はロンドン・パリ間で71%、ロンドン・ブリュッセル間では65%と運行開始以来もっとも高いシェアを獲得している[9]

しかしながら、1996年ロンドン・アンド・コンティネンタル・レイルウェイズが予測した2004年までの旅客数2,140万人[10]には遠く及ばず、2004年実績では730万人にとどまっており、2010年までに年間1,000万人という旅客数目標を掲げていた[11]

2010年の旅客数は950万人と目標には僅かに及ばなかったものの旅客数は年々着実に増加しており、2012年には旅客数が990万人[12]となり大台の1000万人が目前に迫り、2013年にはついに達した[13]

1995年以降の推定旅客数の推移(単位 百万人)[14][15][16][17][18][19][20][21]

歴史[編集]

停車駅[編集]

イギリス
フランス
ベルギー
オランダ

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 当初は一部列車についてはウォータールー発着を残す予定であったが、コスト面での折り合いが付かないため全列車がセント・パンクラス発着となった。
  2. ^ 英語圏からの利用の際は当然ながら「リール・ユーロップ」様の発音となる。

出典[編集]

  1. ^ 櫻井寛『今すぐ乗りたい!「世界名列車」の旅』新潮社新潮文庫〉、2009年6月、97頁。ASIN 4101384711ISBN 978-4-10-138471-9NCID BA90117359OCLC 676683810全国書誌番号:21604230 
  2. ^ a b c 「イギリス 高速新線が全線開業」『交通新聞』交通新聞社、2007年12月14日、4面。
  3. ^ 橋爪 智之 (2021年11月7日). “環境問題が後押し、欧州「2大国際列車」の合併計画 ユーロスターとタリス、コロナ禍鎮静で再始動”. 東洋経済オンライン (東洋経済新報社). https://toyokeizai.net/articles/-/466600 2022年9月26日閲覧。 
  4. ^ “Eurostar - Thalys merger completed”. IRJ. (2022年5月13日). https://www.railjournal.com/passenger/high-speed/eurostar-thalys-merger-completed/ 2022年5月14日閲覧。 
  5. ^ “独シーメンス、ユーロスターに新型鉄道車両10編成を供給へ”. Reuters. (2010年10月7日). http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-17570320101007 2010年10月10日閲覧。 
  6. ^ “英仏横断ユーロスターに独シーメンス車両、仏閣僚ら不快感”. AFP. (2010年10月8日). https://www.afpbb.com/articles/-/2764381?pid=6300701 2010年10月10日閲覧。 
  7. ^ Eurostar uses the airlines' definition of 'on-time': within 15 minutes of scheduled arrival time. The measure used for long-distance services in the UK rail industry is within 10 minutes.
  8. ^ "High Speed 1 delivers a record year for Eurostar" (Press release). Eurostar. 9 January 2008. 2009年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。 {{cite press release2}}: 不明な引数|dead-url=は無視されます。(もしかして:|url-status=) (説明)
  9. ^ Wright, Robert (2008年1月10日). “Eurostar passenger numbers surge”. Financial Times (London). http://www.ft.com/cms/s/0/67ed5b0c-bf1e-11dc-8c61-0000779fd2ac.html?nclick_check=1 2009年8月6日閲覧。 
  10. ^ Select Committee on Public Accounts Thirty-Eighth Report”. House of Commons (2006年5月4日). 2007年12月15日閲覧。
  11. ^ Channel Tunnel Traffic Forecasting”. Transport Issues. Nottingham University. 2009年9月1日閲覧。
  12. ^ (英語)Eurostar reports increased profit and passengers in 2012
  13. ^ ユーロスター利用者数、2013年に過去最多を記録”. AFPBB News (2014年1月8日). 2019年1月16日閲覧。
  14. ^ “Eurostar travel hits record level”. BBC News. (2009年1月13日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/7825737.stm 2009年4月18日閲覧。 
  15. ^ “Eurostar sales up in 2009 despite travel chaos”. BBC News. (2010年1月20日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8469399.stm 2010年1月22日閲覧。 
  16. ^ “Eurostar sales rise on recovery in business travel”. BBC News. (2011年1月14日). https://www.bbc.co.uk/news/world-south-asia-12188996 2011年1月14日閲覧。 
  17. ^ “Eurostar sales boosted by visitors from outside EU”. BBC News. (2012年3月8日). https://www.bbc.co.uk/news/business-17296527 2012年4月27日閲覧。 
  18. ^ “‘Strong’ 2012 for Eurostar”. Rail.co. (2013年3月25日). オリジナルの2013年4月10日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20130410050527/http://www.rail.co/2013/03/25/strong-2012-for-eurostar/ 2013年3月25日閲覧。 
  19. ^ “Eurostar passenger figures topped 10 million in 2013”. BBC News. (2014年3月5日). https://www.bbc.co.uk/news/business-26444689/ 2014年3月5日閲覧。 
  20. ^ “Eurostar growth continues in 2014”. Railwaygazette.com. (2015年2月18日). http://www.railwaygazette.com/news/high-speed/single-view/view/eurostar-growth-continues-in-2014.html 2015年2月19日閲覧。 
  21. ^ “Eurostar passenger numbers steady but profit down”. Railwaygazette.com. (2016年3月15日). http://www.railwaygazette.com/news/high-speed/single-view/view/eurostar-passenger-numbers-steady-but-profit-down.html 2016年3月16日閲覧。 
  22. ^ https://news.yahoo.co.jp/articles/a10465ce0d157bad475bb8889fc340be8932ab53

関連項目[編集]

外部リンク[編集]