ドクダミ
ドクダミ | |||||||||||||||||||||
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ドクダミ
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Houttuynia cordata Thunb., 1783[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ドクダミ (蕺[2]、蕺草[3]、蕺菜[4]、度久太美[5]、止久陀三[6]、毒溜[7])、ドクダミソウ (蕺草)[3]、ドクダメ (毒溜め、蕺[2]、蕺草[3])、シブキ (蕺[2]、之布岐[8]、之布木[9]、之布支[9]、志布岐[9])、ジゴクソバ (地獄傍[10]、地獄蕎麦[要出典])、ウマゼリ (馬芹)[11][注 1]、イシャゴロシ (医者殺)[12]、ママオヤ (継親)[13]、イヌノヘ (犬屁)[14]、キツネノカライモ (狐唐芋)[15]、ウマクワズ (馬不食)[16]、ゴゼナ (瞽女菜)[17]、イモグサ (芋草)[18]、ホトケグサ (仏草)[19]、ヘビクサ (蛇草)[20]、ニュウドウグサ (入道草)[21]、ハッチョウグサ[22]、ギョセイソウ (魚腥草)[23]、シュウサイ (蕺菜)[24]、シュウヤク (蕺薬)[25]、ジュウサイ (蕺菜)[26]、ジュウヤク (十薬[25]、重薬[26]、蕺薬[27]) | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
fish mint[28], fish plant[28], Vietnamese fish plant[28], fishwort[28], chameleon[29], chameleon plant[28], heartleaf[28], heart-leaved houttuynia[1], heartleaf houttuynia[28], houttuynia[29], edible houttuynia[28], wild houttuynia[28], white chaplu[28] |
ドクダミ(蕺、学名: Houttuynia cordata)は、ドクダミ科ドクダミ属の多年草の1種である。ドクダミ属 (Houttuynia) は、本種のみを含む単型属である。湿った陰地に群生し、全体に特有の臭気がある。葉はハート形、萼片や花弁を欠く小さな花が密集し、その基部に白い花弁のような苞[注 2](花や花の集まりの基部にある特殊化した葉)が4枚つくため、花の集まり (花序) が1個の花のように見える(右図)。東アジアから東南アジアに分布しており、日本では北海道南部から九州で見られる。
名に「ドク」とあるが、ドクダミは無毒である。雑草として身近な植物であるが、古くから民間薬として利用され、生薬としては
特徴
多年生の草本であり、全草にアルデヒド由来の特有の臭気がある[35][36][37][38][39]。地下に細長く白い地下茎が横に伸び、盛んに分枝している[35][36][38][40]。地下茎の節から不定根が輪生している[41]。草丈は20–60センチメートル (cm) になり、地上茎は紫色を帯びて斜上・直立し、無毛または有毛、まばらに葉が互生する[35][36][38][42][43] (下図1a, b)。葉身は心形で全縁、先端が尖り、長さ 3–10 cm、腺点をもち、光沢のない暗緑色で特に裏面はしばしば紫色を帯びる[35][36][38][43][44] (下図1)。葉脈は掌状、5–7本[36] (下図1c)。葉柄は長さ1–3.5 cm、無毛[36]。托葉は膜質で鈍頭、長さ 1–2.5 cm、葉柄の基部につき、鞘状に茎を抱き、はじめは新芽を包んでいる[35][36][38]。
花期は初夏から夏 (5–8月)[43]。茎頂または茎の上部の葉腋から長さ 1–5 cm の花序柄を伸ばし、その先に小さな花が密集して長さ 1–3 cm の穂状花序をつける (花は下から順に咲く)[35][36][38][43] (上図1a, b,下図2a, b)。花序の基部には長楕円形から倒卵形、長さ 1–2 cm の白い苞[注 2]が4枚 (まれに5、6、7枚)、十字状についている (これが"花びら"のように見えるため、花序全体が1個の花のように見える; 下図2a, b)[35][36][38]。この苞はつぼみのときに花序全体を包んでいる[36]。各花の基部には小さな線形の苞 (小苞) があるが、園芸品の中にはこの苞が最下の苞と同様に白く大型化しているものもある[35][36] (ヤエドクダミ; 下図2c)。個々の花は花被 (花弁、萼片) を欠き、雌しべと雄しべからなる[35][36][39]。雄しべは3–8個、葯は黄色、花糸は細長く基部で雌しべの子房に合着している[35][36][44]。雌しべは子房上位、3または4個の心皮からなり、合着して1室、側膜胎座、各胎座に6–8個の胚珠がつく[35][44]。雌しべの花柱は3または4個、白色、反曲する[35] (下図2b)。
果実はさく果、亜球形、長さ 2–3 mm、宿存性の花柱の間で裂開する[35][36]。種子は卵形、長さ約 0.5 mm、褐色[35][36]。日本のドクダミは有性生殖を行わず、胚珠が無性的に種子になる (無融合種子形成) と考えられている[36][49]。また地下茎の分断化などによる栄養繁殖も頻繁に行う[39][40]。染色体数に変異が大きく、2n = 24, 52–56, 72, 80, 96, 100–104, 112, 128 などが報告されている[50]。日本に多いドクダミ (2n = 96) は3倍体とされることもあるが[49]、これら染色体数からは12倍体であるともされる (染色体基本数 x = 8)[50]。
植物体全体に油細胞や分泌細胞、腺毛が存在し、アルデヒドやケトン、フラボノイド、フェノール化合物、タンニンなどを生成、植食者や寄生微生物に対する防御としていると考えられている[51]。
分布・生態
東アジア原産[52]。日本、韓国、中国 (中部から南部)、ヒマラヤ、バングラデシュ、台湾、インドシナ半島に分布する[1]。また北米やヨーロッパの一部に侵入している[1][29]。日本では北海道南部、本州、四国、九州、小笠原諸島から報告されている[1][42][43][53]。北海道のものは、本州からの移入によるものとされる[54]。
湿り気のある半日陰地を好み、住宅周辺の庭や空き地、道端、林によく群生している[38][42][39] (右図3)。
繁殖力が強く、ちぎれた地下茎からでも繁殖するため、放置すると一面ドクダミだらけになり、他の雑草が生えなくなる。強い臭気があることと、地下茎を伸ばしてはびこるため、難防除雑草とされる[39][40]。
日本ではドクダミを食草とする動物は多くないが、広食性の動物 (クワゴマダラヒトリ、ニホンザルなど) が食べることがある[55][56]。一方、広食性のハスモンヨトウはドクダミを忌避する[57]。
ドクダミでは内生菌 (病原性を示さずに植物体内に共生している菌類や細菌) に関して調査されており、Colletotrichum、Ilyonectria、Lasiodiplodia (子嚢菌門) が報告されている[58][59]。
人間との関わり
日本では雑草として身近な存在であるが、古くから民間薬として利用され、ゲンノショウコ、センブリとともに日本の三大民間薬の1つとされる[39][60]。どくだみ茶やハーブ、野菜として利用されることもあり、このような需要のため商業的に栽培されている[61]。また観賞用として栽培されることもあり、欧米でも東洋のハーブとして人気がある[39][42]。
薬用
十薬 | |
生薬・ハーブ | |
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効能 | 利尿作用、抗菌作用、強心作用、血管収縮作用 |
原料 | ドクダミ(地上部) |
成分 | フラボノイド化合物 (クエルシトリンなど)、カリウム、脂肪族アルデヒド (デカノイルアセトアルデヒドなど) |
臨床データ | |
法的規制 | |
投与経路 | 経口(湯液) |
識別 | |
KEGG | E00113 D06742 |
別名 | 重薬、蕺薬 |
ドクダミは、内服薬として、胃腸病、食あたり、下痢、便秘、利尿などに利用され、外用薬としても腫れ物、吹き出物、皮膚病などに用いられる[40][62][63]。
花期の地上部を陰干し乾燥させたものは、日本では生薬として
また湿疹、かぶれ、ニキビ、おでき、水虫、しらくも、痔などに対する外用薬としては、もんだ生葉をそのまま、生葉をすり潰したもの、煮詰めたり蒸し焼きにして軟膏状にしたもの、焼酎に漬け込んだ液、生葉汁、などの形で患部に塗布する[37][38][65][63][67]。蓄膿症、慢性鼻炎、膣炎には、生葉汁を挿入することがある[37][38][67]。あせもやニキビ、肌荒れには、生葉や乾燥したものを入浴剤とする[38][65]。
中国では
薬理成分
生の地上部の茎葉の特異な匂いは、精油成分であるデカノイルアセトアルデヒド (decanoyl acetaldehyde) やラウリルアルデヒド (lauryl aldehyde) などの脂肪族アルデヒドに由来し、これには制菌作用があるが、揮発性があるために乾燥品では失われる[37][70][71][72]。また茎葉や花序にはクエルセチン (quercetin; 右図4a) やクエルシトリン (quercitrin; 右図4b)、イソクエルシトリン (isoquercitrin)、アフゼリン (afzerin)、ヒペリン (hyperin)、ルチン (rutin) などのフラボノイドまたはその配糖体も含まれる[70][73]。ミネラルとしてはカリウムを多く含む[37][74][75]。
- デカノイルアセトアルデヒド、ラウリルアルデヒド: 抗菌性があり、白癬菌 (菌類) やブドウ球菌 (細菌) などに対する殺菌作用がある[31][76][77]。乾燥させると揮発、酸化されて失われる[76]。
- クエルセチン (クェルセチン、ケルセチン): 毛細血管を丈夫にする作用、利尿作用、抗酸化作用[37][66]。
- クエルシトリン、イソクエルシトリン: 利尿作用、緩下作用、強心作用、血管収縮作用[66][76]。
- カリウム塩: 利尿作用、動脈硬化の予防作用[37]。
副作用
どくだみ茶の飲用による副作用として、以下のものが報告されている。
食用
ドクダミの葉は加熱することで臭気が和らぐため、日本では天ぷらなどにして賞味されることがある[37][81][63][52]。上記のようにドクダミは民間薬として古くから利用されており、そのような薬効を期待して葉を乾燥させたものを煎じたどくだみ茶が茶外茶、ハーブティーとして広く飲まれている[82] (下図5a)。また清涼飲料水である爽健美茶も、原料の1つとしてドクダミを使用している[83]。
ベトナム料理では、ドクダミは香草 (ハーブ) としてバインセオやカオラウなどさまざまな料理に添えて生食され、またサラダとしても食される[77][84][85] (上図5b)。中国西南部 (貴州省、四川省、湖南省など) ではドクダミは食材として広く利用されている。特にその地下茎は「
日本でも、古くに「蕺 (シブキ)」が食用とされていた記録がある。『和名類聚抄』(935年頃) には、野菜として記されており、また『蜻蛉日記』(974年頃) ではユズをのせたものを食したと記されている[88]。ただし、日本では古くは「蕺」がドクダミではなくギシギシ (タデ科) を意味していたとの説もある[89]。地下茎にはデンプンが蓄積されるため、近現代の日本でも食糧難の時代に地下茎を茹でて食料としていたという[44]。
栽培
上記のように、ドクダミは薬用や食用に広く利用されているため、商業的な栽培も行われている。日本特産農産物協会によると、日本での栽培面積は、国産薬用植物の需要増加を背景に、2016年の200アール未満から2018年は666アールへと急増した。兵庫県 (253アール) と徳島県 (250アール) が二大産地である[61]。
ドクダミを農作物として栽培する場合、定植直後に小まめに手作業で雑草を取り除いて密植して定着させれば、他の雑草が生えにくくなる[61]。
ドクダミは園芸用にも栽培されており、またさまざまな園芸品種がある[90]。多くの花の苞が最下部の苞と同様に大型化したものは (上記参照)、ヤエドクダミ (Houttuynia cordata f. plena (Makino) Okuyama) (右図6a)、葉に白やピンク色などの斑が入ったものはフイリドクダミ (Houttuynia cordata f. variegata (Makino) Sugimoto) とよばれる[36]。斑入りにはさまざまなものがあり、五色ドクダミ (‘カメレオン’、‘トリカラー’; 右図6b) や錦ドクダミ (白色部が多い)、‘フレーム’ (覆輪模様)、‘ジョーカーズ・ゴールド’ (明黄色の斑入り) などがある[90]。
名称
ドクダミの学名である Houttuynia cordata のうち、属名の Houttuynia はオランダの博物学者であるマールテン・ホッタイン (Maarten Houttuyn, 1720–1798) への献名であり、種小名の cordata はラテン語でハート形の葉の形を示している[91]。
和名である「ドクダミ」の名は、民間薬として毒下しの薬効が顕著であるため、毒を抑えることを意味する「毒を
古くは、「
漢名は、「
季語・花言葉
「どくだみ」、「どくだみの花」、「十薬」は夏の季語であり、下記のような俳句がある[88][96]。
十薬を 抜きすてし香に つきあたる—中村汀女
どくだみや 真昼の闇に しろ十字—川端茅舎、華厳
ドクダミの花言葉は、「白い追憶」、「野生」である[43][97]。
脚注
注釈
- ^ a b 「ウマゼリ」の名はキツネノボタンやドクゼリ、ノダケなどさまざまな植物に充てられている[95] (→「ウマゼリ」を参照)。
- ^ a b この構造は総苞片 (花序全体の苞) とされることが多いが[35][45]、厳密な意味での総苞片ではないともされ[46]、花序の最下にある花の苞 (小苞) であるともされる[36][47][48]。
- ^ a b 「十薬」の名の初出は『大和本草』(1708年) であり、馬に対して十の薬効があるためとしている[30][31]。ほかにも、花に白い苞が十字につくためとされることもある[32]。また「重薬」は重要な薬であるから、または重宝するからとされる[33][32]。おそらく実際には、これらは漢名の「蕺薬」の音読みへの当て字であると考えられている[30][33][34]
- ^ 弱火で10分程度煎じるとする記述から、半量になるまでとろ火で煎じるとする記述まである[37][38][66]。
- ^ 『本草和名』(918年) に漢名の「蕺」が示され、これに和名として「之布岐」が充てられている[30]。ただし日本では、「蕺」がギシギシの意味で用いられたともいう[89]。
出典
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関連項目
外部リンク
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- 『ドクダミ』 - コトバンク