ドクダミ

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どくだみ
Houttynia cordata Leaf.jpg
ドクダミ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: コショウ目 Piperales
: ドクダミ科 Saururaceae
: ドクダミ属 Houttuynia
: ドクダミ H.cordata
学名
Houttuynia cordata
和名
ドクダミ

ドクダミ(蕺草、蕺、学名:Houttuynia cordata)はドクダミ科ドクダミ属多年草。 別名、ドクダメ(毒溜め)、ジュウヤク(十薬)、ギョセイソウ(魚腥草)、ジゴクソバ(地獄蕎麦)、ウマゼリなど。湿った陰地などに群生し、草全体に独特の香りを持つ。古くから民間薬としても広く知られる。

名称[編集]

和名ドクダミの名称は、民間薬で毒下しの薬効が顕著であるので、毒を抑えることを意味する「毒を矯(た)める」から、「毒矯め(ドクダメ)」が転訛して「毒矯み(ドクダミ)」と呼ばれるようになったというのが通説である[1][2]。異説として、「毒痛み」の意味で毒や痛みに効くことから名付けられたという説[3][4]、群落地に漂う特有の臭気から毒気が溜まった場所を意味する「毒溜め(ドクダメ)」、あるいは植物自体が毒を溜めていると解されたものが転じてドクダミと呼ばれるようになったとする説もある[5]。ただし、あくまで植物に毒が入っているというのは誤った解釈であり、ドクダミ自体に毒はない[6]

地方によって様々な呼び名があり、ドクダン[7]、ハッチョウグサ[7]、ドクダメ[2]の地方名でも呼ばれていて、日本全国にわたる方言名は160余りを数えるといわれている[8]。古くは、之布岐(シブキ)と呼ばれていた[9][10]。各地の方言名は、薬効や生態に関するものを由来とする呼び名はわずかで、あとはこの植物特有の臭気に関するもの、あるいはこの植物をあたかも有毒植物であるかのように表現したものが多い[8]。旧陸奥国(特に青森県下北郡三戸郡八戸市秋田県鹿角郡北秋田郡岩手県盛岡市紫波郡福島県会津)、旧常陸国(現茨城県)、栃木県、旧武蔵国千葉県東葛飾郡山武郡印旛郡)ではジゴクソバ[11]大分県大分郡ではウマゼリ[11]と呼ばれてきた。

中国植物名(漢名)は、蕺菜(しゅうさい/じゅうさい)[7][1]。日本で生薬名として通称されているジュウヤク(十薬)は、民間薬として用途が広く、応用範囲が10を数えるというところから、漢名の蕺菜の蕺の字を十に読み換えものだとされている[1]中国語と同様の魚腥草(腥の意味は「生臭い」)、ベトナム語のザウザプカーまたはザウジエプカー(ベトナム語: rau giấp cá/ rau diếp cá 、意味は「魚の野菜の葉」)、英語のフィッシュミント(fish mint)・フィッシュハーブ(fish herb)・フィッシュウワート(fishwort)など、魚の匂いにまつわる名称も多い[10]。英語にはそのほか、リザードテイル(lizard tail:トカゲの尻尾の意)、カメレオンプラント(chameleon plant:カメレオンの植物の意)、ハートリーフ(heartleaf:心臓形の葉の意)や、ビショップズ・ウィード(bishop's weed:司教の雑草の意)という表現もある[10]

花言葉は、「白い追憶」である[12]

形態・生態等[編集]

原産地は東アジアで日本から東南アジアにおいて広く分布する。日本では、北海道南部から本州四国九州に分布する[4][12]。湿り気のある半日陰地を好み、住宅周辺の空き地道ばたなどによく群生している[13][4][2]

多年生草本で、全草にアルデヒド由来の特有の臭気がある[3][13][14]。地下に白い地下茎が横に伸び、盛んに枝分かれして繁殖する[13][15]。草丈は20 - 50センチメートル (cm) になり[4]は黒紫色を帯びて直立し、まばらに互生する[13][12]。葉は卵状の心臓形で全縁[13][12]。葉身の表面は緑色で、裏面は紫色を帯びる[14]葉柄の基部に托葉がつき、はじめは新芽を包んでいる[13]

開花期は初夏から夏にかけて(5 - 8月)[12]。茎上部の葉腋から花茎を出して[4]、頂には十字状に、径2 - 3 cmほどの4枚の白色の総苞(総苞片:花弁に見える部分)を開き、その中央につく長さ1 - 3 cmの穂のような円柱状の花序花穂)に、微細な淡黄色のを密生させる[13][12]。本来の花には花弁ももなく、雌蕊雄蕊のみからなる[16]。1つの花には、先が3裂した雌しべが1個と、3 - 8個の雄しべがある[14]果実はできず、花弁のように見える白い総包は、何のために美しく見せているのか理由はよくわかっていない[2]

繁殖力が高く、ちぎれた地下茎からでも繁殖するため、放置すると一面ドクダミだらけになり、ほかの草が生えなくなる。強い臭気があることと、地下茎を伸ばして蔓延(はびこ)るため、しばしば邪魔な難防除雑草の扱いをされることもある[2][15]

利用[編集]

昔から、ゲンノショウコセンブリとともに日本の三大民間薬の一つに数えられ、薬効が多岐にわたるところから十薬とも呼ばれている[2]。欧米でも東洋のハーブとして人気がある[2]。葉に斑が入った品種は、観賞用に栽培もされている[4]

食用[編集]

ドクダミの葉は、加熱することで臭気が和らぐことから、日本では山菜として天ぷらなどにして賞味されることがある[3]。日本において料理用のハーブとして用いられることはないが、葉を乾燥させてどくだみ茶を製造することがある。これは一種のハーブティとして、麦茶のように飲まれることが多い。どくだみ茶は商品化もされている。爽健美茶の主原料の1つとしても有名。 地中に伸びる白い根茎にはデンプンがあり、日本で食糧難の時代に、茹でて食べていたといわれている[14]

他の香草と共に食されるドクダミ(ベトナム)

また、ベトナム料理では、とりわけ魚料理には欠かせない香草として生食される。ただし、ベトナムのものは日本に自生している個体群ほど臭気はきつくないとも言われている[要出典]

中国西南部では「折耳根(ぢゅーあーぐぅん) 拼音: zhé’ěrgēn)」と称し、四川省雲南省では主に葉や茎を、貴州省では主に根を野菜として用いる。根は少し水で晒して、トウガラシなどで辛い味付けの和え物にする。

薬用[編集]

ジュウヤク
十薬.jpg
十薬
生薬・ハーブ
効能 瀉下薬
原料 ドクダミ(地上部)
成分 クエルシトリン (ケルセチンの配糖体)
デカノイルアセトアルデヒド (C16947)
カリウム
臨床データ
法的規制
投与方法 経口(湯液)
識別
KEGG E00113 D06742
別名 十薬
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ドクダミは、内服薬として、胃腸病食あたり下痢便秘利尿などに利用され、外用薬としても腫れ物吹き出物皮膚病などの排膿や毒下しに用いられる[1]

生薬として、開花期の地上部の茎葉を陰干し乾燥させたものは、中国の生薬名で魚腥草(ぎょせいそう)、日本では十薬(じゅうやく、重薬とも書く)と称され流通している[7][13]日本薬局方にも収録されている。生葉も外用の薬草として利用される[13]。十薬の煎液には利尿作用、緩下、高血圧動脈硬化の予防作用などがあり[17]、特に高血圧、動脈硬化予防には必ず花のあるものを選んで採取する[13]。民間では、花つきの乾燥した全草5 - 20グラムを水500 - 600 ccで半量になるまでとろ火で煎じ、お茶代わりに3回に分けて服用する用法が知られる[17][13]。茎葉を日干しすることによって、特有の臭気は無くなる[3]。患部の余計な熱を取る薬草で、便秘や熱感を持っている、赤く腫れて熱を持っているむくみおでき、黄色い鼻汁が出る蓄膿症のときにもよいと言われている[7]。ただし、妊婦への服用は禁忌とされる[7]。 また、湿疹かぶれニキビ水虫しらくもなどには、生葉をすり潰したものを貼り付けるとよく、蓄膿症、慢性鼻炎膣炎に生葉汁を挿入する[17][13]あせもには、布袋に入れて浴湯料として、風呂に入れる[13]

漢方では解毒剤として用いられ、魚腥草桔梗湯(ぎょせいそうききょうとう)、五物解毒散(ごもつげどくさん)などに処方される。しかし、ドクダミ(魚腥草、十薬)は単独で用いることが多く、漢方方剤として他の生薬とともに用いることはあまりない。

薬理成分[編集]

生の地上部の茎葉の特異な臭気は、デカノイルアセトアルデヒドという成分で、これには制菌作用がある[3]。花にはイソクエルセチン、茎葉にはクエルセチンカリウム塩が含まれている[3]

  • デカノイルアセトアルデヒド - 生のドクダミに特有の臭気成分で、フィトンチッド。抗菌作用、抗カビ性がある。白癬菌ブドウ球菌も殺す作用がある[18]。乾燥させると酸化されて抗菌効果は失われる。
  • ラウリルアルデヒド - デカノイルアセトアルデヒドと同様にドクダミ特有の臭気成分で、抗菌作用がある。
  • クエルシトリン - 利尿作用、動脈硬化の予防作用
  • クエルセチン - 毛細血管を丈夫にする作用、利尿作用[3]
  • カリウム塩 - 利尿作用、動脈硬化の予防作用[3]

副作用[編集]

ドクダミ茶の飲用による副作用が報告されている。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d 深津正 2000, p. 108.
  2. ^ a b c d e f g 亀田龍吉 2019, p. 58.
  3. ^ a b c d e f g h 田中孝治 1995, p. 98.
  4. ^ a b c d e f 大嶋敏昭監修 2002, p. 290.
  5. ^ 深津正 2000, pp. 109–111.
  6. ^ “ドクダミの完全な駆除対策方法7つ。除草剤を使用しない方法も。” (日本語). タスクル | 暮らしのお悩み解決サイト. https://taskle.jp/media/articles/457 2018年10月3日閲覧。 
  7. ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 50.
  8. ^ a b 深津正 2000, p. 109.
  9. ^ 深津正 2000, p. 111.
  10. ^ a b c 藤田亨 (2013年10月8日). “美しい肌Vol.373”. 医療法人社団永徳会 皿沼クリニック. 2020年1月23日閲覧。
  11. ^ a b 『日本植物方言集成』八坂書房、八坂書房、2001年、373-6頁。ISBN 4-89694-470-4
  12. ^ a b c d e f 主婦と生活社編 2007, p. 120.
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m 馬場篤 1996, p. 77.
  14. ^ a b c d 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 177.
  15. ^ a b 深津正 2000, p. 107.
  16. ^ 亀田龍吉 2019, pp. 58–59.
  17. ^ a b c 田中孝治 1995, p. 99.
  18. ^ 藤井 義晴、「未利用植物の有効利用と調理科学への期待」、『日本調理科学会誌』Vol. 41 (2008) No. 3 p. 204-209
  19. ^ ドクダミ茶の副作用-高カリウム血症 医薬品情報21
  20. ^ 田内一民:精度管理研修記録 個人データの変動要因 ―健診結果の解釈― 日本総合健診医学会誌 Vol.28 (2001) No.3 P384-390

参考文献[編集]

関連項目[編集]


外部リンク[編集]