穂村弘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Bukeshothut (会話 | 投稿記録) による 2019年7月26日 (金) 03:42個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎エッセイ)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

穂村 弘
(ほむら ひろし)
誕生 (1962-05-21) 1962年5月21日(61歳)
日本の旗 日本 北海道札幌市生まれ
職業 歌人詩人批評家翻訳家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 上智大学文学部英文科卒業
活動期間 1986年 -
文学活動 ニューウェーブ短歌
代表作 『シンジケート』(1990年)
『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』(2001年)
『楽しい一日』(2008年)
デビュー作 「シンジケート」
ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

穂村 弘(ほむら ひろし、1962年5月21日 - )は、日本歌人。歌誌「かばん」所属。

加藤治郎荻原裕幸とともに1990年代の「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。批評家エッセイスト絵本翻訳家としても活動している。

人物

北海道札幌市に長男(ひとりっ子)として生まれる[1]。父親は鉱山技師で、夕張市炭鉱に勤務した後、建設会社に勤務した[2]。両親はともに北海道出身[3](父親は北見市出身[4]、母親は東京都生まれの北見市育ち[5])。なお、父方の曽祖父は明治時代に屯田兵として現在の北見市内に入植した[6]。父親の転勤で、2歳の時に神奈川県相模原市に移る[7]。その後横浜市を経て[7]、小学5年から高校卒業まで愛知県名古屋市昭和区で育つ[7]名古屋市立桜台高等学校では天文部にて伊藤史隆と同期。北海道大学在学中に、友人の影響で塚本邦雄の作品を読んだことから、短歌に興味を持ち始める。1983年上智大学文学部英文学科に入学。ベンチプレスに熱中し始める。1985年林あまりらの作品に触発され、作歌を開始[8]1986年、連作「シンジケート」で第32回角川短歌賞次席。この年の受賞者は俵万智だった。「かばん」誌上にて林あまりに激賞される。

1987年上智大学文学部英文学科を卒業。卒業論文はヘミングウェイシステムエンジニアとして就職し、その後総務課へ移る。荻原裕幸が企画・運営したシンポジウムに参加、同世代の歌人たちと知り合う。1988年、歌誌「かばん」に入会。1990年、第1歌集『シンジケート』を刊行。石田比呂志に「同じ人間の作ったものがわからんはずがないと心を奮いたたせるのだが、力めば力むほどチンプンカンプンで歯が立たぬ」、高橋源一郎に「俵万智が三百万部売れたのなら、この歌集は三億冊売れてもおかしくないのに」と評された[9]1992年、第2歌集『ドライ ドライ アイス』を刊行。「夏休みの自由研究みたいな感じ」を目指した作品であった。

1994年、初のショートストーリー集『いじわるな天使から聞いた不思議な話』を刊行。1996年、ほむらひろし名義で絵本の翻訳を始める。1998年、加藤治郎・荻原裕幸とニューウェーブ歌人3人で、企画集団SS-PROJECT(エスツー・プロジェクト)を結成。インターネットを積極的に利用するなど、歌壇にとらわれない活動を展開。角川書店『短歌』9月号に発表したエッセイ「<わがまま>について」(『短歌という爆弾』2001年に収録)が評判を呼ぶ。この頃からテレビ番組や朗読イベントに出演するようになる。

1999年10月、「手紙魔まみ」こと雪舟えまから初めての手紙が届き、交流が始まる。2001年、高校教科書に短歌が収録される。高橋源一郎日本文学盛衰史』に石川啄木作という設定で作品を提供。大学の特別講義を初めて行う。7月、第3歌集『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』を刊行。「まみ」と「穂村弘」の対話の構成で、作品における一人称は「まみ」にあり、現代における愛の形を少女の側から描こうとした。2002年日本経済新聞「プロムナード」欄掲載作を中心とした初のエッセイ集『世界音痴』を刊行。

2008年5月、評論集『短歌の友人』で第19回伊藤整文学賞評論部門を受賞[10]。受賞理由について、選考委員の菅野昭正は「1980年代以降の現代短歌の形式と内容の変化をとらえ、分かりやすく分析した」と述べた[10]。同年9月、『楽しい一日』で第43回短歌研究賞を受賞。石井陽子とコラボレーションしたメディアアート作品『火よ、さわれるの』でアルス・エレクトロニカインタラクティブ部門栄誉賞を受賞。日経歌壇選者に就任。2015年NHK全国学校音楽コンクール(高等学校の部)課題曲『メイプルシロップ』の作詞を担当。

短歌は、時代や社会を定点観測するものであるとともに、歴史や形式、さらに言えば日本とは何かを考えさせるものであるとしている[8]。また、詩歌は「若さの狂気ともいうべき、あの特殊なテンション」が武器になりうるとも述べている[8]

年譜

転勤により、 1972年には横浜市立瀬谷小学校に、1973年には名古屋市立鶴舞小学校に転校している。
小学校の卒業アルバムに書いた将来の夢は、「詩人」。

著作

歌集

第一歌集。栞文は塚本邦雄坂井修一林あまり。帯文は大島弓子。装丁は藤林省三
第二歌集。装丁は戸田ヒロコ
第三歌集。挿絵はタカノ綾
ベスト版。装画は大竹伸朗。装丁は名久井直子
第四歌集。装丁は名久井直子。

歌論・入門書

装丁は谷田一郎

エッセイ

2作ともにカバー写真は小林キユウ
装丁は鈴木成一デザイン室。カバー写真は高橋和海。挿絵は岩井勝之
装丁・装画は池田進吾
挿絵はフジモトマサル。装丁は名久井直子
デザインは仲條正義
装丁は服部一成
装丁は横尾忠則
装丁は祖父江慎
装丁は立花文穂

ショートストーリー集

『いじわるな天使から聞いた不思議な話』の復刊。
挿絵は安西水丸。装丁は鈴木成一デザイン室。帯は一青窈
ともに挿絵は寺田克也

歌画集・絵本

詩集

挿画はかわぐちみお

書評集

共著

装丁は長尾敦子。挿絵は山上たつひこ吹石一恵吉野朔実千葉すず中島史恵益子直美本上まなみ山﨑浩子佐伯日菜子。帯は恩田陸
  • 『ひとりの夜を短歌とあそぼう』角川ソフィア文庫、2012年1月 ISBN 4-04405-403-7
共著。装丁はクラフト・エヴィング商會

対談

  • 『どうして書くの?―穂村弘対談集』筑摩書房、2009年9月。ISBN 4-48081-663-1
高橋源一郎、長嶋有中島たい子一青窈竹西寛子山崎ナオコーラ川上弘美との対談を収録。
初出:「花椿」2012年4月号~2015年12月号
初出:大修館書店「辞書のほん」2012年秋号~2015年冬号

翻訳

一部を除いてほむらひろし名義。

『ちずのえほん』フレーベル館、1996年7月。ISBN 4-57701-621-4
『ボタン』フレーベル館、1997年10月。ISBN 4-57701-783-0
『ディア・ダイアリー』フレーベル館、2001年12月。ISBN 4-57702-271-0
『とうとうとべた』フレーベル館、2003年5月。ISBN 4-57702-561-2
『なんでもひとつ』フレーベル館、1998年5月。ISBN 4-57701-893-4
  • マージョリー・プライスマン
『エメライン、サーカスへゆく』フレーベル館、2000年10月。ISBN 4-57702-088-2
『それでもへっちゃら』フレーベル館、2000年5月。ISBN 4-57702-085-8
『こんなかみのけ』フレーベル館、2000年5月。ISBN 4-57702-086-6
『どうぶつえんのきまり』フレーベル館、2000年12月。ISBN 4-57702-178-1
『きぶんやちゃん』フレーベル館、2000年12月。ISBN 4-57702-179-X
『おおきいちいさい』フレーベル館、2001年9月。ISBN 4-57702-286-9
『くろいしろい』フレーベル館、2001年9月。ISBN 4-57702-287-7
『パンツのきまり』フレーベル館、2001年11月。ISBN 4-57702-276-1
『ほんとのともだち』フレーベル館、2001年11月。ISBN 4-57702-275-3
『おかあさん』フレーベル館、2002年5月。ISBN 4-57702-409-8
『おとうさん』フレーベル館、2002年5月。ISBN 4-57702-410-1
『オットー ともだちをさがしに』フレーベル館、2003年7月。ISBN 4-57702-683-X
『オットー ねむれないよる』フレーベル館、2003年9月。ISBN 4-57702-684-8
『いろいろかぞく』フレーベル館、2005年12月。ISBN 4-57703-154-X
『しましまゼビーのたからさがし』岩波書店、2003年11月。ISBN 4-00110-868-2
『しましまゼビー キャンプにいく』岩波書店、2003年11月。ISBN 4-00110-869-0
『しましまゼビー おうちにありがやってきた』岩波書店、2004年4月。ISBN 4-00110-871-2
『しましまゼビーのダイビング』岩波書店、2004年4月。ISBN 4-00110-870-4
『ビルはたいくつ』くもん出版、2005年10月。ISBN 4-77431-053-0
スナーク狩り』穂村弘名義、集英社、2014年10月。ISBN 4-08781-557-9

その他

関連項目

参考文献

脚注

  1. ^ 『シンジケート』著者プロフィールより - Amazon.co.jp
  2. ^ 北海道新聞』2013年2月14日夕刊
  3. ^ 毎日新聞、2010年4月1日夕刊3面。
  4. ^ 北海道新聞』、2017年6月9日朝刊北見版「穂村弘さん 市内で講演*市民大学講座*「短歌は言葉に意外性を」」
  5. ^ 北海道新聞、2017年7月12日朝刊北見版。
  6. ^ 北海道新聞、2017年8月8日夕刊
  7. ^ a b c 文藝』2009年夏号 「特集・穂村弘」
  8. ^ a b c d 北海道新聞』2001年11月2日 「金曜らしんばん - マンスリートーク 歌人・穂村弘氏 第1回」
  9. ^ 『文学じゃないかもしれない症候群』1992年、朝日新聞社 86p。初出は朝日新聞文芸時評。
  10. ^ a b 『北海道新聞』2008年5月9日 「伊藤整文学賞 - 評論部門に北大出身・穂村氏、小説部門に荻野氏」
  11. ^ “歌人・穂村弘が41人と対談する書籍に鳥居みゆき登場”. コミックナタリー. (2016年9月29日). http://natalie.mu/owarai/news/203570 2016年9月29日閲覧。 

外部リンク