富士モータースポーツミュージアム

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富士モータースポーツミュージアム
Fuji Motorsports Museum
地図
施設情報
専門分野 モータースポーツ(自動車)
収蔵作品数 車両・約40台
館長 布垣直昭[注釈 1]
事業主体 トヨタ不動産(所有・経営)[3]ハイアットホテルアンドリゾーツ(運営)[3]トヨタ博物館(監修)、トヨタ自動車[注釈 2]
開館 2022年(令和4年)10月7日[2]
所在地 410-1308
静岡県駿東郡小山町大御神645
位置 北緯35度22分04秒 東経138度55分07秒 / 北緯35.367855度 東経138.91848度 / 35.367855; 138.91848
外部リンク fuji-motorsports-museum.jp
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富士モータースポーツミュージアム (Fuji Motorsports Museum) は、静岡県駿東郡小山町にあるモータースポーツに関する博物館である。

概要[編集]

この博物館は、富士スピードウェイホテルに併設された施設で、同ホテル建物の1階と2階に展示施設が置かれている[4]。ホテルは、名前の通り、日本を代表するレーシングサーキットのひとつである、富士スピードウェイに隣接し、サーキットの西隣(最終コーナーのアウト側)の敷地に所在する[4]

このホテルは、トヨタ不動産の経営の下、ハイアットホテルアンドリゾーツが運営を手がけており、富士モータースポーツミュージアムはトヨタ博物館の監修によるものである[3][1]トヨタグループの資本による博物館だが、展示車両はトヨタ自動車の車両に限らず、日本国内外の10社の自動車メーカーの協力で様々な車両が展示されており[1][2][注釈 3]、自動車メーカー10社によるモータースポーツ博物館という試みは世界初だと言われている[1]。(→#参加企業

トヨタ博物館が以前から所蔵していた世界各国のモータースポーツ車両のいくつかも移されているため、展示されている車両のブランドは10種類を超えている。(→#主な展示車両

設立の経緯[編集]

トヨタ自動車は愛知県長久手市トヨタ博物館を運営しているが、モータースポーツ関連の車両の展示は少なく[5]、モータースポーツ車両の展示施設を望む声が多く寄せられていた[5][6]。そのため、設立の検討は長年行われていたが、同博物館では動態保存を基本としており、その一方、住宅地の近くに所在していたことから、大きなエンジン音を出すレーシングカーを展示する施設を設けることはできないという難点を抱えていた[5]

そんな時、トヨタグループの東和不動産(現在のトヨタ不動産)が、富士エリアに宿泊施設を作る構想を打ち出し、その宿泊施設に車両のミュージアムを併設したい意向を示したことから、この展示施設の構想が具体的に動き出した[5]

ホテル建物の1階と2階にモータースポーツ関連に絞った展示施設を設けることになり[6]、構想は開館の5年ほど前(2018年頃[7])から進められたという[1]

展示のコンセプト[編集]

展示は15のエリアに分けられており、1番の「モータースポーツのはじまり」から始まり、ラリール・マン、日本国内のモータースポーツ、アメリカ合衆国内のモータースポーツ、など、テーマごとに分けられ、モータースポーツ全体の歴史を体系的に語るものとなっている[1][6]

展示は車両だけではなく、そのテーマに関連した資料や、関係者が車両開発にかけた思いなども伝える[1][6]

展示車両について、当初はサーキットレースの車両を中心に構想されていたが、設立にあたってトヨタ自動車以外の各社の協力を得ていく過程で、ラリーや耐久レースによって量産車につながる技術と信頼性を磨いたという話が集まったため、ラリー車両を含めたものに変わっていった[5]

参加企業[編集]

2022年10月の開業時点で、下記の企業・団体が展示に協力している[1]

主な展示車両[編集]

(2022年10月時点)

メーカー 車両 主なドライバー 補足
パナール・エ・ルヴァッソール タイプB2イタリア語版 1899年 -
フォード 999英語版 1902年 ヘンリー・フォードバーニー・オールドフィールド英語版 レプリカ
トーマス英語版 フライヤー・モデルL 1909年 -
スタッツ英語版 ベアキャット・シリーズF英語版 1914年 -
サンビーム グランプリ英語版 1922年 ケネルム・リー・ギネス英語版 1922年フランスグランプリ英語版参戦車両(#16)。
ブガッティ タイプ35B 1926年 -
アルファロメオ 6C 1750 グランスポルト英語版 1930年 -
ベントレー 4½リットル 1930年 -
メルセデス・ベンツ W25 1934年 マンフレート・フォン・ブラウヒッチュ 1934年アイフェルレンネン優勝車両・レプリカ[注釈 4]
シルバーアロー」伝説の始まり。
チシタリア英語版 202C 1947年 - 1948年ミッレミリア参戦車両。
トヨタ自動車 トヨペット・レーサー 1951年 - レプリカ
日産自動車 桜号(ダットサン・210型 1958年 三縄米吉、大家義胤、アラン・ギボンス 1958年オーストラリア一周ラリー英語版参戦車両。
本田技研工業 RC162 1961年 高橋国光 1961年西ドイツグランプリ優勝車両[注釈 5]
ロードレース世界選手権における日本人初優勝。
日野自動車 コンテッサ900 1963年 立原義次 1963年日本グランプリ・CIIIレース優勝車両。
ポルシェ 904 カレラGTS 1964年 アントニオ・プッチ英語版コリン・デービス英語版 1964年タルガ・フローリオ優勝車両。
本田技研工業 RA272 1965年 リッチー・ギンサー 1965年メキシコグランプリ優勝車両・レプリカ[注釈 6]
F1における日本車初優勝。
トヨタ自動車 2000GT スピードトライアル 1966年 細谷四方洋田村三夫福澤幸雄津々見友彦鮒子田寛 レプリカ
トヨタ自動車 7 (474S) 1969年 川合稔 1969年日本カンナム優勝車両。
トヨタ自動車 7ターボ (578A) 1970年 細谷四方洋川合稔 レプリカ。
日産自動車 R382 1969年 高橋国光都平健二 1969年日本グランプリ参戦車両(#23)。
三菱自動車工業 ランサー 1600GSR 1974年 ジョギンダ・シン英語版デイビッド・ドイグ英語版 1974年サファリラリー優勝車両。
日産自動車 バイオレットGT 1981年 シェカー・メッタ、マイク・ドウティ 1981年サファリラリー優勝車両。
ムーンクラフト スペシャル7(マーチ85J・ヤマハ) 1987年 鈴木亜久里 1987年富士グランチャンピオンレース参戦車両(#55)。
トヨタ自動車 スープラ・ターボA 1990年 小河等関谷正徳黒澤琢弥舘善泰 1990年の全日本ツーリングカー選手権参戦車両(#36)・レプリカ
マツダ 787B 1991年 フォルカー・ヴァイドラーベルトラン・ガショージョニー・ハーバート 1991年ル・マン24時間レース優勝車両・レプリカ。
ル・マン(及び世界三大レース)における日本車初優勝。
オール・アメリカン・レーサーズ イーグル・MkIII 1993年 ファン・マヌエル・ファンジオ2世 1993年IMSA GTPチャンピオン獲得車両。
トヨタ自動車 セリカ GT-FOUR(ST185) 1993年 ユハ・カンクネンニッキー・グリスト 1993年オーストラリアラリー優勝車両。
三菱自動車工業 ランサーエボリューションIII 1995年 ケネス・エリクソンスタファン・パーマンダーフランス語版 1995年オーストラリアラリー優勝車両。
SUBARU インプレッサ555 1996年 コリン・マクレーデレック・リンガー 1996年アクロポリスラリー優勝車両。
本田技研工業 NSX タイプR 1996年 - 市販車。
日産自動車 ペンズオイル・ニスモ・スカイラインGT-R 1998年 影山正美エリック・コマス 1998年JGTCチャンピオン獲得車両。
トヨタ自動車 GT-One(TS020) 1999年 片山右京土屋圭市鈴木利男 1999年ル・マン24時間レース参戦車両(#3)。
日産自動車 R391 1999年 エリック・コマス本山哲影山正美 1999年ル・マン富士1000km英語版優勝車両。
ローラ B02/00英語版 2002年 クリスチアーノ・ダ・マッタ 2002年CARTチャンピオン獲得車両。
トヨタ自動車 カムリ 2008年 カイル・ブッシュ 2008年NASCAR第4戦アトランタ英語版優勝車両・レプリカ
NASCAR最高峰シリーズにおける日本車初優勝。
トヨタ自動車 TF109 2009年 小林可夢偉 2009年アブダビグランプリ参戦車両(#10)。
トヨタ自動車 GRスープラ 2019年 谷口信輝 HKS製・ドリフト走行用車両。
出典: [8][9]

印 これらの車両は実車(現に結果を残した個体そのもの)が現存しておらず、各社が製作した精巧なレプリカ(復元車)が展示されている。

交通アクセス[編集]

富士スピードウェイホテル内に所在している。同ホテルは富士スピードウェイに隣接する施設なので[1]、基本的にアクセス方法は同サーキット・西ゲートへのアクセス方法と同じだが、ホテルの入口(アクセス通路)とサーキットの入口は別になっており、ホテルへのアクセス通路は、富士スピードウェイの西ゲートに隣接して設けられている[10][11]

自動車で訪れる場合、西ゲートからサーキットに「入場」してしまうと、サーキット内からホテルの駐車場に車で進入することはできないため、注意を要する[12][10]

公共交通機関を用いる場合、アクセス通路入口までの経路は、富士スピードウェイの西ゲートへのアクセス方法に準じる。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 初代館長。トヨタ自動車の社会貢献推進部部長(2020年 - )で[1]、同社の自動車文化関係全般の責任者。トヨタ博物館の館長(2014年 - )と兼任[1][2]
  2. ^ 富士モータースポーツフォレスト構想全体の事業主体[1]
  3. ^ トヨタ博物館と同様のコンセプト[2]
  4. ^ この車両の実車(W25の4号車)は、ドイツのメルセデス・ベンツ博物館英語版が所蔵している。
  5. ^ 2022年10月時点で、二輪車(オートバイ)の展示はこの車両のみ。
  6. ^ 展示のパネルでもレプリカである旨が明記されている。優勝した個体は、日本車としては初のF1優勝車両だったが、日本に帰国した後に(本田宗一郎の方針により)溶断廃棄されたとされる。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k 吉原知也 (2022年10月8日). “「なんで貸さないといけないの?」から信頼関係 車メーカー10社連携の博物館、実現のワケ”. ENCOUNT. 2022年11月26日閲覧。
  2. ^ a b c d 嶋田智之 (2022年10月18日). “歴史的なレーシングマシンが集結! クルマ好きの新聖地「富士モータースポーツミュージアム」の全容とは (1/2)”. VAGUE. 2022年11月26日閲覧。
  3. ^ a b c 安田剛 (2022年7月8日). “富士スピードウェイ併設ホテルの詳細を解説。宿泊予約もスタート。日本初進出「アンバウンド コレクション by Hyatt」”. トラベルWatch. インプレス. 2022年11月26日閲覧。
  4. ^ a b 中はこうなっている! 新施設「富士スピードウェイホテル」内覧会の会場から”. webCG (2022年10月6日). 2022年11月26日閲覧。
  5. ^ a b c d e いよいよ明日、富士モータースポーツミュージアムがオープン!”. Octane (2022年10月6日). 2022年11月26日閲覧。
  6. ^ a b c d FSWに「富士モータースポーツミュージアム」がオープン”. jama blog. 一般社団法人 日本自動車工業会(JAMA) (2022年10月21日). 2022年11月26日閲覧。
  7. ^ 平野隆治 (2022年4月6日). “トヨタと東和不動産が富士スピードウェイ周辺に『富士モータースポーツフォレスト』計画を推進”. Auto Sport web. 三栄. 2022年11月26日閲覧。
  8. ^ 安田剛 (2022年10月8日). “「富士モータースポーツミュージアム」が静岡県にオープン。約130年の歴史を振り返る、貴重な展示車がスゴかった!”. トラベルWatch. インプレス. 2022年11月26日閲覧。
  9. ^ 嶋田智之 (2022年10月18日). “歴史的なレーシングマシンが集結! クルマ好きの新聖地「富士モータースポーツミュージアム」の全容とは (2/2)”. VAGUE. 2022年11月26日閲覧。
  10. ^ a b アクセス - 駐車場のご案内”. 富士モータースポーツミュージアム. 2022年11月26日閲覧。
  11. ^ 安田剛 (2022年10月6日). “静岡県に「富士スピードウェイホテル」開業。モータースポーツとホスピタリティが融合した、遊び心満載の施設を見てきた”. トラベルWatch. インプレス. 2022年11月26日閲覧。
  12. ^ よくある質問”. 富士モータースポーツミュージアム. 2022年11月26日閲覧。

参考資料[編集]

配信動画
  • 日本自動車工業会 - YouTubeチャンネル
    • モータースポーツ歴史の聖地、誕生!. 日本自動車工業会. 7 October 2022.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]