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こうした世界最悪といわれる敵対的労使関係によって現代自動車の成長が阻害されているのは事実であり、「ブルームバーグ・グローバル自動車業種指数」基準で現代自動車の時価総額順位が2005年末の7位から16位(2日の終値基準)に急落したと発表されたことからも、この敵対的労使関係が原因となって海外の投資家による現代自動車への資本投下を鈍らせているとも指摘されている<ref>「[http://www.chosunonline.com/article/20070508000030 現代自は最下位、1位はトヨタ=グローバル業種指数]」。2007年5月8日、朝鮮日報。2008年1月6日閲覧。</ref>。会社がウォン高による採算性の悪化や不正資金疑惑による会長逮捕といった窮地に陥ろうとも、権利主張を繰り広げて賃上げストを頻発させより一層会社を窮地に追いやっている労組の特性からいっても、今後も現代自動車における労使問題は、同社に暗い影を落とし続けるという見方もある。
こうした世界最悪といわれる敵対的労使関係によって現代自動車の成長が阻害されているのは事実であり、「ブルームバーグ・グローバル自動車業種指数」基準で現代自動車の時価総額順位が2005年末の7位から16位(2日の終値基準)に急落したと発表されたことからも、この敵対的労使関係が原因となって海外の投資家による現代自動車への資本投下を鈍らせているとも指摘されている<ref>「[http://www.chosunonline.com/article/20070508000030 現代自は最下位、1位はトヨタ=グローバル業種指数]」。2007年5月8日、朝鮮日報。2008年1月6日閲覧。</ref>。会社がウォン高による採算性の悪化や不正資金疑惑による会長逮捕といった窮地に陥ろうとも、権利主張を繰り広げて賃上げストを頻発させより一層会社を窮地に追いやっている労組の特性からいっても、今後も現代自動車における労使問題は、同社に暗い影を落とし続けるという見方もある。


なお、日本でも1960年代~1980年代前半に[[日産自動車]]において、やはり労働組合が経営の足枷の一つとなっていた、という事実がある。日産は80年代半に、当時の社長である[[石原俊]]が以前の日産経営陣と癒着していた[[塩路一郎]]らを追放した。(ただし、塩路の率いた[[全日本自動車産業労働組合総連合会|自動車総連]]は[[労使協調]]路線であって、経営陣と激しく対立した現代自動車労組とは正反対である。また、石原の推進していた積極的な経営方針は失敗し、1990年代末期に[[ルノー]]出身の[[カルロス・ゴーン]]による大リストラが起こるまで、業績は低迷した)現代自動車は同族経営が強いメーカーであり、このようなリストラを行うことは考えにくいという指摘もある<ref>「[http://www.chosunonline.com/article/20071108000012 「現代・起亜の飛躍には同族経営の変化が必要」]」。2007年11月8日、朝鮮日報。2008年1月6日閲覧。</ref>。
なお、日本でも1960年代~1980年代前半に[[日産自動車]]において、やはり労働組合が経営の足枷の一つとなっていた、という事実がある。日産は80年代半、当時の社長である[[石原俊]]が以前の日産経営陣と癒着していた[[塩路一郎]]らを追放した。(ただし、塩路の率いた[[全日本自動車産業労働組合総連合会|自動車総連]]は[[労使協調]]路線であって、経営陣と激しく対立した現代自動車労組とは正反対である。また、石原の推進していた積極的な経営方針は失敗し、1990年代末期に[[ルノー]]出身の[[カルロス・ゴーン]]による大リストラが起こるまで、業績は低迷した)現代自動車は同族経営が強いメーカーであり、このようなリストラを行うことは考えにくいという指摘もある<ref>「[http://www.chosunonline.com/article/20071108000012 「現代・起亜の飛躍には同族経営の変化が必要」]」。2007年11月8日、朝鮮日報。2008年1月6日閲覧。</ref>。


== 沿革 ==
== 沿革 ==

2008年9月27日 (土) 01:03時点における版

現代自動車
各種表記
ハングル 현대자동차
漢字 現代自動車
発音 ヒョンデチャドンチャ
英語 Hyundai Motor Company
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ゲッツ(日本名・TB)

現代自動車ヒョンデチャドンチャげんだいじどうしゃ)は韓国で最大手の自動車メーカーである。

韓国語では「ヒョンデ」と発音するが、社名およびブランド名の英字表記は「Hyundai」とされており、日本では「ヒュンダイ」のブランド名を称する。傘下に起亜自動車があり、現代-起亜自動車グループを構成している。

概要

会社設立は、1967年であり、フォードとの協力の下、翌1968年に初めての自動車が製造された。これは、日本のホンダが最初の4輪自動車を生産した(1963年)5年後にあたる。

現在、現代自動車の自動車は世界194の国と地域で販売され、韓国に次いで重要な市場はアメリカ合衆国である。現代-起亜自動車グループ全体の販売台数はアジアに本拠を置いている自動車メーカーとしてはトヨタグループに次ぐ規模であり、世界の自動車メーカー(グループ)で第6位(2006年)である[1]。 2007年の「世界ブランドランキング」(ビジネスウィーク誌/インターブランド社調べ)は72位[2]であった。

当初は安価だが粗悪という評価だったものの、相対的に安価な価格設定を維持しながらも品質向上を行い、その上で販売奨励金や「キャッシュバック」、「10年10万マイル保証」(アメリカ合衆国における特別保証)などのキャンペーンで販売台数を伸ばした。2005年頃以降には、ときに「日本車と変わらぬ品質」との評価を受ける例[3]も見られるようになった。

アメリカ合衆国へは1986年に進出した。小型乗用車エクセル1車種の販売で開始されたが、2007年には累計販売台数が500万台を突破した[4]。これまで、自身の商品を「日本車の安価な代用品」と位置付けてビジネスを行ってきた[5]ため、ディーラー網が未整備であり、自前の単独販売店舗は数少ない。近年ではウォン高による価格の高騰や後述の不正資金疑惑による信用低下で北米など海外市場での販売が低迷し在庫が増えていることと、ゼネラルモーターズ等アメリカ自動車業界の価格引下げ攻勢から割引販売を行わざるを得なくなり、採算性の悪化は避けられないと見られる。またトヨタを始めとする日本自動車業界もヤリス(ヴィッツ)などの低価格車戦略を展開し、ウォン高で価格が高騰した現代自動車は北米などの市場でのシェアを奪われる形となった。さらに労組のストライキによって多大な損失を被っている。

2006年7月には、ストによる影響で国内・海外での月間販売台数が初めてGM大宇に抜かれるという事態となった。2007年には北米・アラバマ工場が10月にソナタの在庫が大幅に急増したことから初の操業停止による生産調整を行い、中国市場でも傘下の起亜自動車と共に販売台数が減少しシェアを前年3位から6位にまで落とし、トヨタ、ホンダのほか中国の独立資本系メーカー奇瑞汽車にも追い抜かれることとなった。アメリカ市場でも中国市場でもリセールバリューの下落が激しく、アメリカでは「レンタカー用自動車」、中国では「タクシー用自動車」のイメージも定着してしまっている[6][7][8][9][10]

しかしながらこのような逆風の中でも持ち前の攻撃的なマーケティングによりロシアを含めた東欧地域での販売は44万7363台に達し、前年比50.0%の急成長を達成した。ブラジルを含む中南米地域への輸出も40%を超える成長を見せ、アフリカと中東もそれぞれ22.4%増、21.1%増と高い成長を示している。これら新興市場の開拓などもあり07年は過去最高の売上となる30兆4890ウォン(約3兆4000億円)を記録し、営業利益は47%増加、営業利益率も3年ぶりに6%台を回復した[11][12]

中国の自動車会社各社が、韓国の自動車会社が1980年代から1990年代にかけて行っていたのと全く同じビジネスを開始しつつあり、現代自動車は高価格帯モデル・高級分野へ移行せざるを得ない[5]とされる。

三菱自動車との提携

設立当初はヨーロッパフォードと提携し「コルチナ」などをノックダウン生産していたが、1973年三菱自動車からの技術協力を得て、1975年に韓国初の国産車「ポニー」を発売(但し、デザインはジウジアーロによるもので、エンジン・プラットフォームはランサー(初代)のものを流用していた)。ポニーの発売以降、三菱自動車との協力関係を一気に強化。やがて提携し、数多くの三菱車ベースの車種(デボネアデリカパジェロザ・グレートエアロバスなど:以上、三菱自動車での名称)、もしくは三菱車のプラットフォームを流用した独自の車種(ポニーエクセルソナタ、アトスなど)を生産している。1986年 に発売された最高級車グレンジャー(2代目デボネアの韓国版)は、三菱自動車との蜜月関係を象徴するような車である。

日本国内の三菱の地域販売会社の中には、日本法人のヒュンダイモータージャパンと正規販売代理店契約を結び、既存の一部の三菱ディーラーをヒュンダイディーラーに改装したり、三菱車とヒュンダイ車とを併売したりしている所も少なくない。ちなみに、ギャランΣ/エテルナΣデボネアに搭載していたサイクロンV6を供給していた。

類似性の問題

韓国の自動車会社は、以前からデザイン面におけるアイデンティティの希薄さがしばしば批判の対象になっているが、ヒュンダイで発表されたモデルについては競合車種との類似性が韓国国内の朝鮮日報で指摘されている。

カウンティーが全体的にトヨタコースターに類似している。[15]

特にソナタに関しては同様の指摘が多方面でなされており、日本で2005年度グッドデザイン賞に選ばれた件については一部の層から批判が浴びせられた。

類似性の問題は現代自動車に限った事ではなく、起亜自動車GM大宇雙龍自動車奇瑞汽車と韓国の自動車メーカーや中国の自動車メーカーの殆どに指摘されている問題である。日本車との類似性は販売上、アメリカ市場においては有利に、日本市場においては不利に作用しているという[16]

また、自動車のデザインの他にも

  • CIロゴマークの内部のHがホンダ、外形がトヨタの四輪車部門のロゴマークと酷似しているとされている。ロゴマークに楕円の外形を採用しているのは他にスバルなどがある。また、イニシャルを採用しているのは他にスズキ、両方に該当するものにはダイハツマツダ日野のエンブレムなどがある。
  • キャッチコピーの"Drive Your Way"(2005年から全世界で使用)が、トヨタの"Drive Your Dreams"(2000年から日本国内で使用)と酷似。なお、ホンダのコーポレートステートメントである"The Power of Dreams"とトヨタが類似していることが指摘されたこともある。ちなみに現代自動車の子会社である起亜自動車のキャッチコピー"The Power to Surprise"もホンダのそれに酷似しているとの指摘もある。
  • 現代(ヒュンダイ)と日本の本田(ホンダ)とは漢字や片仮名書きでは全く異なるが、アメリカ英語において現代はHyundai(ハンデイ、またはハンダイ)、本田はHonda(ハン)となり、強勢部は同じ、弱勢部分は微妙な差となってしまう。そのため、ヒュンダイがそれほど有名でなかった頃はホンダと間違えられることがままあり、アニメ「ザ・シンプソンズ」で「ホンダと間違えてヒュンダイを買ってしまった」というネタとして用いられた。なお、英語では "y" をアイと発音し、次に母音が続く場合は半母音がさらにプラスされる読み方もあるため、Hyundaiをハイユンデイ(またはハイユンダイ)と発音されることがある。

コマーシャルについて

デザイン面での類似性が度々指摘される一方、現代自動車は自らの製品に対して自負を持ったコメントや演出(自社の車両を過度に引き立てる(他社の競合車種を出して悪役にする)等の過剰演出)を含んだCMが多い。例としては「ジェネシス」のCMで、アウディ・A8をジェネシスと正面衝突させる演出をとった。現代側は「世界的な名車にも劣らないくらい頑丈だという点を見せつけるため、正面衝突するシーンを挿入した」[17]としているが、アウディ・A8はアルミニウム車であり、車体が衝撃を吸収することによって車内の人間の安全を確保する設計であるため、このような演出は偽装であるとして非難されている。

その他稀な例として、北米で放映されたJM(現地名ツーソン)のCMにおいては、同車を運転している最中にを轢いてしまい、ドライバーが(ちなみに運転している人物はヒュンダイモーターズニュージーランドのテストドライバーである)轢いた猫をその場で携帯コンロで調理してビールを飲みながら食べると言うCMも存在する。またオーストラリアでは、サンタフェのCMが、幼児が同車を運転し、ヒッチハイキングをする他の幼児を乗せるという内容であったことから放送禁止処分を受けたというエピソードもあった。[18]

日本市場

現代自動車は2000年12月から日本市場への本格的な参入を開始している。現代自動車は2002年の日韓共催のワールドカップにおける自動車部門の公式パートナーであり、日本会場においても現代自動車が用いられることから最大の効果を期待していたという。参入当初、2005年には3万台の販売、100ヶ所の販売拠点設立を目標として掲げるなど日本市場に対する期待は強かったようである。

しかし、国産車の層が極めて厚い日本市場においては、輸入車の位置付けはブランドイメージやデザイン、品質、安全性を重視して購入されるものであるとの事情がある。そのため、見た目が日本人好みとは言い難く、日本においては新興勢力ゆえに知名度が低く、品質も粗悪で国産車には遠く及んでおらず、また日本市場においてはブランドイメージも弱く、さらにはリセールバリューの薄さ、信頼性の低さ・アフターサービス面での不安などの理由から敬遠されている。また当初ヒュンダイ・XGのCM展開で「ヒュンダイを知らないのは日本だけかもしれない」という挑発的で不遜なキャッチコピーが不評であった事も一因である。(同時期のメルセデス・ベンツの日本でのキャッチコピー「美しい国のメルセデス。」との上品さとは対照的である)

年間登録台数は2001年から1113台、2423台、2426台、2524台、2295台、1651台、1223台となっている。なお、この数字が販売台数ではなくモデルルームなどに置かれるものも含めた登録台数である。特に2002年にはワールドカップにおけるオフィシャルカーとして使用されたために多数の登録が行われている。これらのオフィシャルカーは後日にヤフーオークションなどに出品されたが、当然落札されないままに各地のディーラーをたらい回しにされていた。

ヒュンダイモータージャパンはてこ入れのために2005年夏に発売されたソナタのテレビCMペ・ヨンジュンを起用するなど日本市場への浸透を図った。しかし、ペ・ヨンジュンを支持する主婦層とソナタのターゲットは大きくかけ離れているなど、その戦略には疑問点が少なくない。多くが個人タクシーレンタカー向けの販売のため、販売台数が伸びず低迷している。

地域で見ると、北海道では、積雪凍結などでスリップ事故を起こしやすいこと、人口密度が低いため日常的に長距離移動が必要なことなどから、他の都府県に比べて国産軽自動車を忌避する傾向があり、登録台数比率が低い。軽自動車を忌避する北海道で安価なマイカーといえば中古車であったが、ヒュンダイの普通車も安価であるため(とはいっても日本車との価格差は数%程度)新車販売が好調である。

また、沖縄県においては、輸入車の販売台数でヒュンダイが4年連続首位。地場のレンタカー会社が品質と価格を評価し、所有車の3分の1をヒュンダイの車にしたことが大きい。都会からの観光客にも好評である[3]

ヒュンダイモータージャパンでは販売網を強化したり、ミニバンを再投入する計画をたてているという[19]

東京都心部の個人タクシーでもヒュンダイ車を用いる事業者が存在する。

また、2006年には「ヒュンダイ、どうだい?」というキャッチコピーのもと、顧客の手持ちの車を預けることでヒュンダイ車を一週間貸し出すという「とりかえっこキャンペーン」を展開した[20][21]。しかし、2006年の年間登録台数が1651台でしかなかったことから、キャンペーンの効果は少なかった。

2007年には日本最長水準となるメーカー保証10年10万km保証(特別保証の場合。一般保証は5年10万km)を展開している。しかしながら2007年の年間登録台数は1223台と前年よりもさらに下回っており、品質路線も日本市場では通用しなかったといえる。(2008年4月現在、10年10万km保証は何の告知も無いまま廃止され、特別保証は5年10万km、一般保証は3年6万kmとなっている)

2007年に「ヒュンダイ7つの真実」という会社案内のブックレットを配布していた時期があり、公式ホームページでも専用のサイトが設けられていた。しかし、10年10万km保証が廃止になったことで「6つの真実」となってしまった。[22][23]

2008年4月から、鉄鋼などの原材料価格の高騰を理由に、全車種平均で3.9%の値上げを実施した。グレンジャーとJMではそれぞれ14万7000円、TBでは5万2500円と、最高8.4%の値上げとなった[24]。 ただでさえ月間販売台数が前年比で30%前後に落ち込んでいるにも関わらず値上げせざるを得ない状況で、ヒュンダイモータージャパンは更に苦境にたたされたといえる。なおソナタとエラントラについては同年4月7日に、日本市場での販売を取りやめることを発表した[25]

2008年6月、経済連携協定締結交渉再開に向けて日韓両国政府が行った実務協議の中で、韓国政府側が日本の自動車販売網を「閉鎖的」と批判し、進出している現代自動車などの販売拡大への協力を暗に求めた。現代自動車などの自動車が日本で売れないのは日本の市場が閉鎖的であるためとした、技術・ブランドなど自動車市場の要素を排除した韓国政府側の主張は、「販売の成否は企業努力にかかっている」という日本側の反論により進展は見られなかった。[26] [27]

日本の自動車市場を閉鎖的と批判した韓国では、現代自動車など自国産業を保護するためアメリカ製自動車の輸入規制、日本製自動車への関税など、外国製自動車への規制を行っている。なお日本では工業製品については、無関税となっている。

世界市場

世界規模でみると日産とホンダを販売台数で追い抜いている。

主な不正疑惑

不正資金疑惑

2006年3月下旬に、関連会社を通じて作られた不正な資金によって、起亜自動車買収などに際し、当時の韓国の金大中政権関係者へのロビー活動が行われたとして最高検察庁によって本社が家宅捜索を受け、翌4月中旬には副社長らに加え、同月下旬には鄭夢九会長が横領背任の容疑で逮捕された(その後、容疑を大筋で認めた鄭夢九会長は6月28日保釈された)。

この事件との関連性は不明だが、同年第一四半期の決算発表が理由無く“無期限延期”とされ、5月4日にようやく決算発表が行われている。

2007年2月5日、鄭夢九会長の判決公判がソウル中央地裁で開かれ、懲役3年の実刑判決が下された(その後執行猶予5年が言い渡されている[28])。しかし鄭夢九は2008年7月現在も現代-起亜自動車グループ会長から降りてはいない。

この事件によって、韓国国内はもとより国際的な信用やイメージの失墜、それらによる販売台数の減少、さらには新車開発や海外生産拠点の展開への悪影響は避けられないとする見方もある。

不正販売疑惑

現代自動車は海外市場では低価格での販売で「自動車業界の安売り王」と評されているが、これには仕掛けがあった。 2007年1月の朝鮮日報の記事によると、現代自動車と子会社の起亜自動車が合計で韓国市場で70%近くのシェアを独占していることを利用して、ディーラーの営業活動を制限し車両価格を急激に引き上げるなどの不公正取引行為を行い、ディーラーや消費者が被害を受けていると公正取引委員会が判定を下したとのことである[29]。現代自動車の車両価格の高騰はここ数年急激になっており、ソナタの場合は平均価格が2000年の1429万ウォン(約185万円)から2003年には1949万ウォン(約252万円)、2006年には2498万ウォン(約323万円)に上昇し、6年で1069万ウォン(約138万円)も価格が上昇したことになる[30][31]。これについても公正取引委員会は「現代自動車の中・小型車価格が大幅に上がったのは、ライバルとなる輸入車がなく、現代自動車が市場支配力を持っているためだ」と指摘している。現代-起亜自動車グループが国内市場で78%ものシェアを独占していることに加え、韓国政府は高関税戦略で国内市場において、海外企業との競争から自国企業を保護していることが要因となっている。

ソナタの2006年におけるアメリカ市場での価格は約193万円、日本市場では約208万円である。

さらにジェネシスにおいては、国内販売価格5280万ウォンに対してアメリカ市場での販売価格が3万2000ドル(約3100万ウォン)水準で策定された。単純比較では2180万ウォン、韓米両国の税金の差を考慮しても1200万ウォンも国内での販売価格が高く設定されていることから、一部の消費者や並行輸入業者たちは、米国で販売されるジェネシスを韓国に逆輸入しようとする動きを見せている[32]

なお国際貿易においては、国内価格よりも安い価格で国外で販売することはダンピング行為にあたる。

モータースポーツ活動・WRC

現代自動車は1994年よりアジア・パシフィックラリーエラントラで出場し総合優勝を果たしている。

翌1995年からはアバンテ(エラントラの二代目モデル以降の韓国名)ティブロンなどで参戦し幾つか優勝を経験したが、2000年からは世界ラリー選手権にWRカー規定のアクセントで参戦するも大方の予想通り苦戦を強いられた。アリスター・マクレーアルミン・シュワルツフレディ・ロイクスなどのドライバーがハンドルを握るも4位が最高位であった。原因としては、開発資金の不足によりデータが蓄積されず信頼性の低さなどが原因と言われている。しかしながら、時折見せる速さは資金不足の中でも開発が進んでいた証拠でもあった。2002年にはマニュファクチャラーズ選手権でシュコダ三菱自動車を上回るマニュファクチャラーズ4位を記録している。

しかし、2003年途中に資金面でマネージメントを委託している英国の運営チーム「モータースポーツデベロップメント」との衝突により、シーズン途中から参戦を取りやめた。全戦参戦が義務付けられているにもかかわらずシーズン途中で撤退した事により、FIAから罰金として100万US$(約1億600万円)を支払う命令が下され、現代自動車は罰金の納付を確約した(2006年頃まで法廷闘争を展開していた)が、案の定2008年1月現在この罰金は支払われていない。

その後、2006年の復活を目指していると報道されたが、参戦の目処は立っておらず、前述のように罰金の納付を滞納しているため、WRC復帰へのハードルは非常に高く、今後のモータースポーツ活動に際して良い展望ではない状況である。

なお、現代自動車は2010年にF1への参戦に意欲を示しているが、先述のFIAへの罰金を滞納していることもあり、先行きは不透明である。

労働組合

現代自動車成長の阻害要因の一つとして、非協力的な労働組合の存在が挙げられる。韓国の労働組合は一般に激しい闘争で知られているが、現代自動車は社内での労組の影響力が「ストのヒュンダイ」といわれるほど強く、設立された1987年から数えると1994年を除いて毎年ストライキが発生している。このため効率的なリストラを行えず人件費の上昇が韓国企業の中でも飛びぬけており、会社の経営を圧迫しているという問題を抱えている。

2006年3月20日の朝鮮日報では、市民団体「先進化政策運動」が現代自動車労組の集団エゴイズムを厳しく批判するデモを行ったと報じられている[33]。これは「現代自動車が、毎年労組による賃上げ交渉に屈服した結果、国際競争力が低下しその負担を下請け業者に押し付けている」事を批判し、現代自動車労組に会社と痛みを分かち合うことを求めたものだった。労組に対してのデモは初めてのようで、韓国では大々的に報じられていた。労組は2006年6月26日から長期ストに突入。7月26日に賃金交渉が妥結、7月29日に完全収拾となったが、生産遅延は93,882台、金額にして1兆3000億ウォンの損失が発生している[34]

2007年9月には、労組は1997年以来10年ぶりにスト無しに年内の賃金・団体交渉の合意に至ったが、合意事項には「新車の生産工場と生産量を労使共同委員会で審議・議決する」「海外工場の新設・増設はもちろん、国内生産車種の海外移転や海外生産製品の第3国輸出までも労組の同意を受ける」という内容となっており、今後の工場建設や国内車種の海外移転、海外生産品の輸出に至るまで、組合員雇用に影響を及ぼす事案について労組の同意を必要とすることになるという、事実上現代自動車は経営権を労組に握られたに等しい状況となった。[35]

2008年9月の労使交渉では、労使は現行の昼・夜間二交代制の勤務方式を改善し、労働者の健康を大きく害する深夜と早朝の作業、すなわち夜間組の勤務を廃止し、その代替として朝の作業開始時間を繰り上げ、午前と午後組が二交代で夜12時以前にすべての作業を終えるという「昼間連続2交代制」を翌年9月にも施行し、かつ賃金を現在の水準で保つことを骨子とする賃金協議案に暫定合意した。その分生産性を引き上げて1日の自動車生産台数を現在の水準で保つことにしたが、こうした方法ではすでに損失が発生した部分については補うことができず、会社側が不法ストを行った労組の主張に屈してしまった結果だと指摘する声が多い[36]

こうした世界最悪といわれる敵対的労使関係によって現代自動車の成長が阻害されているのは事実であり、「ブルームバーグ・グローバル自動車業種指数」基準で現代自動車の時価総額順位が2005年末の7位から16位(2日の終値基準)に急落したと発表されたことからも、この敵対的労使関係が原因となって海外の投資家による現代自動車への資本投下を鈍らせているとも指摘されている[37]。会社がウォン高による採算性の悪化や不正資金疑惑による会長逮捕といった窮地に陥ろうとも、権利主張を繰り広げて賃上げストを頻発させより一層会社を窮地に追いやっている労組の特性からいっても、今後も現代自動車における労使問題は、同社に暗い影を落とし続けるという見方もある。

なお、日本でも1960年代~1980年代前半に日産自動車において、やはり労働組合が経営の足枷の一つとなっていた、という事実がある。日産は80年代半ばには、当時の社長である石原俊が以前の日産経営陣と癒着していた塩路一郎らを追放した。(ただし、塩路の率いた自動車総連労使協調路線であって、経営陣と激しく対立した現代自動車労組とは正反対である。また、石原の推進していた積極的な経営方針は失敗し、1990年代末期にルノー出身のカルロス・ゴーンによる大リストラが起こるまで、業績は低迷した)現代自動車は同族経営が強いメーカーであり、このようなリストラを行うことは考えにくいという指摘もある[38]

沿革

車種一覧

日本発売車種

現在、ヒュンダイモータージャパンによって日本に正規輸入されている車種は全車種右ハンドルで、方向指示スイッチ(ウィンカーレバー)が国内発売の日本車と同じく、座席側から見てステアリングコラムの右側に付いている。

  • グレンジャー(TG型)
  • ソナタ(NF型。日本市場では在庫が無くなり次第販売終了が決定している)
  • エラントラ(XD型・現地名:アバンテXD。日本市場では在庫が無くなり次第販売終了が決定している。なお、本国ではフルモデルチェンジが行われたが、日本市場への導入は行われていない)
  • ヒュンダイクーペ(現地名:トスカーニ)
  • TB(現地名:クリック。2008年7月に生産が終了したため、日本市場では在庫が無くなり次第販売終了が決定している[39]
  • JM(現地名:ツーソン)
  • i30
  • ユニバース(大型観光バス、2007年東京モーターショーに出展し、2008年に日本市場に投入。オリオンツアー等、既に導入している業者もある)

日本未発売車種

※既に生産が終了した車種も含む

1986年 ステラ
1995年 グレース
2003年 マトリックス
エアロシティ
スタレックス
ユニバース

<セダン・ステーションワゴン・ハッチバック>

  • ポニー(韓国初の国産乗用車。初代三菱ランサーがベース)
  • i10(アトスプライム/サントロの後継車種。韓国国内では販売されていない)
  • アクセント(現地名:ヴェルナ
  • ステラ
  • エラントラ/アバンテ(初代・2代目モデル)
  • ソナタ(初代、2代目)
    • ソナタII/ソナタIII(3代目)
    • EFソナタ/ニューEFソナタ(4代目)
  • マルシア(2代目ソナタ(韓国国内ではソナタIIという名称)ベースのミディアムサルーンだったが、ソナタとの差別化に失敗し、なかなか売れなかった)
  • ダイナスティ(2代目グレンジャーの豪華版)
  • グレンジャー(初代・2代目モデル。三菱デボネアの兄弟車)
  • エクウス/センテニアル(三菱プラウディア/ディグニティの兄弟車)
  • ジェネシス
  • フォードグラナダ(ヨーロッパフォードのグラナダのノックダウン生産車)
  • フォードコルチナ(ヨーロッパフォードのコルチナのノックダウン生産車)

<クーペ>

<ミニバン・トールワゴン>

<RV・SUV>

  • ギャロッパー(初代三菱パジェロのライセンス生産車。グループ会社の現代精工(現・ヒュンダイモービス)で製造されていた)
  • ギャロッパーII(ギャロッパーのマイナーチェンジ版。当初は現代精工製だった)
  • テラカン(2代目三菱パジェロをベースに独自開発されたSUV
  • ベラクルス(サンタフェベースの高級SUV)

<商用車>

  • ポーター(3代目三菱デリカトラックがベース)
  • ポーターII(起亜・ボンゴIIIトラックの兄弟車)
  • リベロ(輸出名H-1トラック。スタレックスをベースに開発された小型トラック。日本では正規輸入されていないが、キャンピングカーのベース車として並行輸入を行っている業者が存在する。日本ではすでに三菱自動車が「リベロ」を商標登録しているため、「ヒュンダイSRX」という名称になる)
  • コーラス三菱ふそうローザがベース)
  • エアロ三菱ふそうエアロバス系がベース)
  • エアロシティ三菱ふそうエアロスターがベース)
  • エアロタウン/eエアロタウン
  • カウンティ/eカウンティ
  • グレース(3代目三菱デリカがベース)
  • スタレックス(輸出名H-1。三菱・デリカスペースギアがベース)
  • スタレックスリムジン(スタレックスの豪華版)
  • グランドスタレックス/i800(スタレックスの後継車)
  • マイティII/マイティQt(キャンタークラスの小型トラック、発売当初はマイティIIという名称だったがeマイティ登場と同時期に名称がマイティQtになった)
  • eマイティ(キャンタークラスの小型トラック)
  • メガトラック(ファイタークラスの中型トラック)
  • パワートラック/トラゴ(大型トラック、発売開始当初の名称はパワートラックだったが、途中からトラゴに名称が変更された)

かつて日本で発売された事のある車種

  • ヒュンダイXL(1988年三菱商事がポニーエクセルを輸入し、台数限定で販売された)
  • トラジェ(現地名:トラジェXG)
  • サンタフェ(初代モデル。なお、本国ではフルモデルチェンジが行われたが、日本市場への導入については、2007年夏頃を予定していたが断念された)
  • ヒュンダイXG(現地名:グレンジャーXG。つまり、グレンジャーの先代モデルであるため撤退ではなくフルモデルチェンジに伴う名称統合・変更とする解釈が正しいと思われる。)

日本市場向けのCMに出演した著名なタレント

参考文献

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関連項目

外部リンク