ヒュンダイ・クーペ
ヒュンダイ・クーペはかつて現代自動車(ヒュンダイ)が生産していたクーペ型乗用車である。
概要[編集]
本項では1996年から2008年まで、2世代にわたって生産されたモデルについて述べる。いずれもハッチゲートを持つ3ドアクーペで、前輪駆動のレイアウトを採る。「ヒュンダイ・クーペ」は輸出名で、本国の韓国ではティブロン(初代前期) / ティブロン・タービュランス(初代後期) / トスカーニ(2代目)を名乗るなど、仕向け地によって名称は異なる(詳しくは後述)。日本では2代目(本国の「トスカーニ」に相当するモデル)が、「ヒュンダイ・クーペ」の名称で販売された。
この「ヒュンダイ・クーペ」が登場する以前、1990年から1995年までヒュンダイは「スクープ(Scoupe:스쿠프)」というエクセルをベースとした1500ccクーペを生産していた。
名称について[編集]
この車両は、地域によって異なる名称が与えられている。主な地域と名称の関係は以下の表を参照のこと。
モデル | 韓国 | アメリカ、オーストラリア | ヨーロッパ、日本 |
---|---|---|---|
初代前期 | ティブロン (Tiburon/티뷰론)[1] |
クーペ | |
初代後期 | ティブロン・タービュランス (Tiburon Turbulence 티뷰론 터뷸런스)[2] |
ティブロン | クーペ |
2代目 | トスカーニ(Tuscani 투스카니) [3] |
ティブロン | クーペ |
ティブロン以降の歴代モデル[編集]
※本項目では韓国名「ティブロン」(RD)及びフェイスリフトモデル「ティブロン・タービュランス」(RD2)を初代、同「トスカーニ」(GK)を2代目としている。しかし場所によっては「ティブロン」が初代、「タービュランス」が2代目、「トスカーニ」が3代目と扱われることもあるので注意する必要がある。
初代(RD、1996-2001年)[編集]
- 前期型:ティブロン(1996年 - 1999年)
1996年4月発表[4]。プラットフォームはJ2型アバンテをベースとし、駆動方式はFF[5]。直列4気筒 2.0 L DOHCのベータ (β) エンジンを搭載、後に1.8 Lを追加[4]。販売地域によっては1.6 Lも設定[6]。5MTまたは4ATを組み合わせる。マクファーソン・ストラットのサスペンションはポルシェとの共同開発による[4]。
ヒュンダイは英国のMSD(モータースポーツ・ディベロップメント)に半ば委託する形で、クーペのF2キットカーを開発してラリーへの参戦を行っていた。そのため英国では1998年に「F2」、1999年に「F2エボリューション」という市販の特別仕様車をそれぞれ発売している。1999年にクーペはAPRC(アジアパシフィックラリー選手権)の二輪駆動部門のタイトルを獲得し、WRCと併催のFIA 2.0リッターカップでも年間2位に入った。
また米国のSCCAプロラリー(ラリー・アメリカの前身)では四輪駆動に換装したティブロンが参戦し、マニュファクチャラーズ選手権を6連覇した。
- 後期型:ティブロン・タービュランス(1999年 - 2001年)
発売3年目の1999年5月、フェイスリフトモデルの「ティブロン・タービュランス」が登場[4]。本来はフェイスリフトモデルなのだが、変更箇所が顔面だけでなくテール周りにまで至る為か2代目として扱われることがままある。エンジンのラインナップは変わらない。
窓の形状、ヘッドライト形状などから、日本では一部からはST200系セリカの模倣だと批判・揶揄される場合もある。ティブロンは前後期とも日本市場へは導入されなかった[7]。
2代目(GK) 2001年 - 2008年[編集]
2001年9月、本国名「トスカーニ」デビュー。アメリカ、オーストラリアでの名称は「ティブロン」となっていることからも予想が付くように、かつて生産されていた「ティブロン / ティブロンタービュランス」の事実上の後継車種として販売されている。
エンジンはV6 2.7L DOHCデルタ(δ)エンジン、直列4気筒2L DOHCベータ (β) エンジン[8]、直列4気筒1.6 L[9]を設定(地域によりラインナップは異なる)。駆動方式はFF、燃料はレギュラーガソリンである。5MT/6MT/4ATを設定する。
日本では2002年4月2日から「ヒュンダイ・クーペ」の名で発売開始[7]。日本仕様車(GK27型)は4気筒の設定がなくV6 2.7L DOHCに6MTかスポーツモード付き4ATが組み合わされる。本来、ボディーサイズと駆動方式のみで言えば日本車だとインテグラ(最終DC5型は2リッター)やセリカ(最終ZZT230/ZZT231型は1.8L)辺りが対抗馬となる車種だが、日本仕様車は2.7Lしか設定がなかった上、自動車としての特性も異なるため、直接のライバルとはなり得ていなかった。だがそのコストパフォーマンス(初期型の場合6MT・2.7L・17インチアルミで199万円)からか、デビュー直後は日本でもベース車として注目する動きも一部にはあったようである(新車情報としてOPTION2に掲載されたほか、その後Bee☆Rがチューニングカーを制作して同誌に掲載されたこともあった)。
2004年9月に最初のマイナーチェンジ。フェイスリフトのほか、HIDヘッドランプやVDC、パワーブレーキシステムを採用[8]。
2006年には2度目のフェイスリフトが行われ、7月に広州モーターショーで世界初公開。本国では10月に発売された[8]。主にフロントマスクのデザインが大きく改められ、フロントグリルがZZT230系セリカに似たデザインに変えられた。また、テールランプの意匠も微妙に変わっている(ユーロテール風になっただけではなく、輪郭そのものの形状が違う)。日本市場へは前期型に代わって2007年3月から導入され、前述のセリカやインテグラが相次いで生産・販売中止されたこともあり、クーペ型乗用車では数少ない300万円を大きく下回る価格(末期の頃で税込本体価格220万5千円~252万円、初期型に至ってはAT/MT問わず199万円)で販売されていたが、販売不振などで2008年6月頃に輸入販売を終了している。なお、本国やアメリカ市場では後継のジェネシスクーペがデビューしている。
韓国市場においてはチューニングカーのベース車としても支持を受けていたようで、特に2.7リッター車「Elisa」のザックスサスペンションを2リッター車に流用したり(そのため後に同様の仕様を新車販売することになった)前期・後期間のいわゆる顔面スワップを行ったりと言った事象がみられ、[10] 更には2リッター車においてボルトオンターボなどのチューニングが流行った。後に「2.0 GTS」グレードから装備を削った廉価グレードの「GL」が追加されたが、ターボやエアロ、スポーツシートを装着しても「GTS」同等の価格に収まったとある。その一方、当時の韓国市場では困った問題も生じた。17インチホイールが標準で装着されていたがために、タイヤ交換に対応できないショップがままみられたのである。[11]
ヒュンダイ CCS(トゥスカーニCS)[編集]
2003年ごろカルマン社の協力の下、トゥスカーニをベースとしたスタディモデルの4人乗りオープンカー「ヒュンダイCCS(クーペ・コンバーチブル・スタディ)」が発表された。一部ではトゥスカーニCSとも呼ばれるこの車は東京モーターショー他数々のショーで披露された。なお、この車はショーでの参考出品にとどまっており市販化はされていない。
車名の由来[編集]
- Coupe・・・フランス語で「2人乗りの箱形馬車(coupé)」。
- Tiburon・・・スペイン語で「鮫」。
- Turbulence・・・英語で「乱気流」。
- Tuscani・・・古代ローマ文明の発祥地であるイタリア・トスカーナ地方を指す。
関連項目[編集]
- 現代自動車
- ヒュンダイ・エクセル(ポニー)
- ヒュンダイ・ヴェルナ
- ヒュンダイ・アクセント
- 現代自動車グループのクーペ
- ヒュンダイ・スクープ
- ヒュンダイ・プロアクセント、ヴェルナスポーツ
- ヒュンダイ・エラントラクーペ
- ヒュンダイ・ジェネシスクーペ
- ヒュンダイ・ヴェロスター※クーペかハッチバックかでは意見が分かれる。
- ヒュンダイ・i20 - 2代目に「クーペ」と呼称するモデルがあるが、その実態は3ドアハッチバックである。
- キア・フォルテクープ
脚注[編集]
- ^ ハングル表記に忠実に発音すると発音は「ティビュロン」となる
- ^ ハングル発音は「ティビュロン・トビュロンス」
- ^ ハングル発音は「トゥスカニ」
- ^ a b c d “Before N - 티뷰론 #1” (朝鮮語). 現代自動車. 2020年10月29日閲覧。
- ^ “티뷰론(Coupe)(1996.04)” (朝鮮語). 現代自動車. 2020年10月29日閲覧。
- ^ “Hyundai Coupe I (RD) 1.6 i 16V (114 Hp) 1996, 1997, 1998, 1999 Specs”. 2020年11月1日閲覧。
- ^ a b “ヒュンダイ・クーペFX V6(6MT)【ブリーフテスト】”. webCG. 2020年10月29日閲覧。
- ^ a b c “Before N - 투스카니 #1” (朝鮮語). 現代自動車. 2020年10月29日閲覧。
- ^ “Car Reviews - Hyundai Coupe 1.6 S”. 2020年11月1日閲覧。
- ^ Before-N トスカーニ#1 ヒュンダイ韓国向け公式サイト、2021年9月19日閲覧
- ^ Before-N トスカーニ#2 ヒュンダイ韓国向け公式サイト、2021年9月19日閲覧
外部リンク[編集]
現代自動車公式サイトより(韓国語)
- Heritage 1990's - ティブロン(Coupe)(1996.04)
- Heritage 1990's - ティブロン タービュランス(1999.05)
- Heritage 2000's - トスカーニ(2001.09)
- ティブロンの略史
- トスカーニの略史
種類 | 2000年代 | 2010年代 | ||||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | |
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