ATR 42

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

ATR 42

ATR 42フランスイタリア航空機メーカー合弁事業で興したATR製のターボプロップ双発旅客機である。42は標準座席数の42席(ピッチ 81cm)を意味する。

概要[編集]

降着装置格納時の右舷側
アエロマールの-300

1984年8月16日に初飛行。1985年12月3日に通算4号機がフランスのエールリトラル(英語版)に引き渡され、同年12月9日に路線に初就航している。現在も改良が続けられ、世界各国の航空会社で運用されている。また、ATR 42の胴体主翼を延長したモデルにATR 72がある。 胴体は円形断面で、客室内の最大幅は2.57 m、全長が13.85 m、最大高が1.91 mある。主翼は高翼配置で、低翼機に比べ客室からの眺めはよい。客室は旅客の昇降扉が機体後方左側にあり、機体後方右側には機体後部にまとめられているギャレー洗面所などに物品を出し入れするサービスドア(ヒンジ式)を装備する。また、貨物室は機体前方にあり、機体前方左側にその貨物室への1.27 m X 1.28 mの大型カーゴドアを装備している。

降着装置は全てダブルタイヤ装備で油圧により格納される。主脚は胴体左右下部のバルジ(膨らみ)に格納されるが、脚扉はあるが車輪扉はなく、格納時でもタイヤ側面のみがむき出しの状態となる。

貨物機として専用コンテナなら9台、LD-3なら5台搭載可能。前述の機体前方左側にある大型カーゴドアを利用でき、改修の必要がないためフェデックスなどの貨物航空会社で多く運用されている。

開発[編集]

フランスのアエロスパシアル(現エアバス・グループ)とイタリアのアエリタリア(現アレーニア・アエロナウティカ)は1980年代初めに40席クラスの輸送機計画をそれぞれ持っていてアエロスパシアルはAS35、アエリタリアはAIT230という名で研究を行っていたがこの2機種はほとんど同じクラスの機体計画だったため、統合し共同作業を行うことで協議し、1980年7月に協定が成立し、開発に着手したものである。

タイプ[編集]

ATR42は以下の主要な六種類のタイプが流通。

ATR 42-200
ATR 42の試作機で数機だけ作成された機体。エンジンはPW120で出力が2,000 shp
ATR 42-300
最大離陸重量を引き上げ、1996年まで製作された基本生産型。
ATR 42-320
エンジンをPW121(出力2,100 shp)へ換装し、最大離陸重量の引き上げ及び高温高地性能強化を行った型。
最大離陸重量は300型から変わっていないが、エンジン重量が増加しているため、搭載量が減らされている。
ATR 42-400
200/300/320型のエンジンに六翅プロペラを装着した型。
ATR 42-500
搭載量を増大し、離着陸性能と操縦性を向上させ、エンジンはPW127E(出力2,400 shp)を搭載した型。
アビオニクスを更新してICAOの設定するCATⅡのILS進入能力を使用できる。
-600のプロペラとエンジンナセル
ATR 42-600
2007年6月に発表された最新の改良機種。エンジンをPW127Mへ換装し、500型よりアビオニクスを更新してCATⅢのILS進入能力を付与、液晶画面への交換によるグラスコックピット化が行われる。客室内も改良され、LED照明を採用。
2010年3月に初飛行に成功し、2012年11月、タンザニアプレシジョンエアへ初めて引き渡された。その後世界各国で人気を集めている機種であり、日本国内では天草エアラインが2代目「みぞか号」として2016年平成28年)に初導入した他、日本エアコミューターJAC)が8機を確定発注しており、2017年(平成29年)1月から受領開始、同年4月より運用を始めた。


スペック[編集]

[1] [2]

ATR 42-200 ATR 42-300 ATR 42-320 ATR 42-500 ATR 42-600
運航乗務員 2
座席数 42-52
全長 74 ft 5 in (22.67 m)
全幅 80 ft 7 in (24.57 m)
全高 24 ft 11 in (7.59 m)
翼面積 587 ft² (54.5 m²)
主翼アスペクト比 11.1:1[3]
ホイールベース 28.8 ft (8.78 m)
キャビン長 45.4 ft (13.85 m)
自重 23,148 lb
(10,500 kg)
24,802 lb
(11,250 kg)
最大離陸重量
(MTOW)
34,280 lb
(15,550 kg)
37,258 lb
(16,900 kg)
37,258 lb
(16,900 kg)
41,005 lb
(18,600 kg)
巡航速度 267 knots (494 km/h) (巡航高度時) 299 knots (554 km/h) (巡航高度時) 300 knots (556 km/h) (巡航高度時)
航続距離 480 nmi (885 km) 840 nmi (1,555 km) 842 nmi (1,560 km)
最大燃料容量 1,486 US gal (5,625 L)
実用上昇限度 25,000 ft (7,600 m)
エンジン (×2) プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW100 Pratt & Whitney Canada PW121 Pratt & Whitney Canada PW127E Pratt & Whitney Canada PW127M

日本における動き[編集]

天草エアライン[編集]

天草エアラインのATR 42-600(機体記号:JA01AM)

天草エアラインで使用しているデ・ハビランド・カナダ DHC-8-Q100型機が、2014年平成26年)ごろには整備費が大幅に増加する時期を迎えるため、機材更新の検討に入り、整備費の抑制と新規集客などの選択肢として、2015(平成27)年度中の購入を目指し、ATR 42を候補に導入検討が進められた。熊本県天草市長の安田公寛は、「県と協議はするが、天草市単独でも購入する覚悟がある」と話し、購入に伴う約21億円の財源には合併特例債の基金を検討していた[4]

2014年(平成26年)5月、天草エアラインはATR 42-600(48人乗り)を2016年(平成28年)1月に新規購入の上で導入する方針を明らかにし[5]、筆頭株主である熊本県に機体購入費用の一部負担を要望したが、知事蒲島郁夫は購入費の県負担を否定。地元だけで機体を購入した場合でも、天草飛行場の運営を含む運航経費の実質的な負担割合は、2014年(平成26年)から15年間で熊本県が75 %、天草市上天草市天草郡苓北町の2市1町は25 %との試算を示し、理解を求めた[6]

その後の同年7月22日、天草エアラインはノルディック・アビエーション・キャピタル社との間でATR 42-600のリース契約を締結した。同年8月14日受領し(機体記号:JA01AM)、2016年(平成28年)1月より就航[7]。姉妹機のATR 72を導入予定だったリンクが就航前に破産したため[8]、天草エアラインが日本で初めてATR機を運航する航空会社となる[9]

日本エアコミューター[編集]

2015年6月15日、フランスパリで開幕したパリ航空ショーにて日本エアコミューターとATR aircraftとの調印式が行われ、2017年から引き渡し開始で8機を確定発注し、1機をオプションで契約し、14機の購入権付きの契約を行った[10]。JACは10機保有しているサーブ340を中心に更新していく予定でJACの安嶋新代表取締役社長は「ボンバルディアが開発予定のDHC-8-Q400よりも小型の機体と比較して決めた」とし「最新鋭のターボプロップ機であるATR42-600型機のもつ快適性、経済性および信頼性と、JACがこれまで30年余に渡って築きあげた安全運航体制の融合によって、種子島屋久島奄美群島など、鹿児島の離島をはじめとした西日本の各地をきめ細かく結び、JALグループの利便性の高いシームレスな航空ネットワークサービスを提供します。」とコメントし、同型機を2015年(平成27年)から導入している天草エアラインからの整備事業の受託の可能性について、「一緒に離島路線を支えるパートナーとして、部品の共用などを検討していきたい」と語った[11]

2017年1月20日に初号機を受領、同26日に鹿児島空港に到着し[12][13][14]、4月26日から鹿児島 - 屋久島沖永良部、5月28日から鹿児島 - 奄美で就航した[15][16]。。

オリエンタルエアブリッジ[編集]

オリエンタルエアブリッジが保有している2機のDHC-8-Q200型機が2019年(平成31年)と2020年(平成32年)に構造寿命を迎え、2016年(平成28年)には更新機材の方針を決定する必要があるが、ボンバルディアでは同型機の製造を既に中止しているため、更新機材の有力な候補としてATR 42に絞り、導入検討を進めている事が報じられた[17]

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ "ATR 42?500". ATR. Retrieved 8 November 2010.
  2. ^ ATR 42-600”. ATR. 2012年11月27日閲覧。
  3. ^ Jackson 2003, pp. 224?225.
  4. ^ 天草エアライン、機体更新を検討 候補に仏機”. くまにちコム/熊本日日新聞 (2012年12月12日). 2012年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月28日閲覧。
  5. ^ 仏製新機体、16年1月に導入方針 天草エア”. くまにちコム/熊本日日新聞. 2014年5月20日閲覧。
  6. ^ 地元2市1町が全額負担へ 天草エア新機体購入”. くまにちコム/熊本日日新聞 (2014年5月26日). 2014年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月28日閲覧。
  7. ^ 天草エアライン、日本初のATR機受領 16年1月から運航”. Aviation Wire (2015年8月14日). 2015年10月7日閲覧。
  8. ^ 就航準備中のリンク、自己破産申請へ 約22億円調達できず 負債9億円”. フライチーム (2013年12月10日). 2014年7月29日閲覧。
  9. ^ 天草エアライン、日本初のATR 42-600を導入 引き渡しは2015年末”. フライチーム (2014年7月23日). 2014年7月28日閲覧。
  10. ^ 日本エアコミューター、ATR42-600型機の導入を決定
  11. ^ JAC、ATR42を8機発注 17年から置き換え
  12. ^ “日本エアコミューター、ATR 42-600「JA01JC」は1月26日に鹿児島到着”. FlyTeam. (2017年1月25日). http://flyteam.jp/registration/JA01JC/news/article/74603 2017年1月28日閲覧。 
  13. ^ 【ATR42-600型機】フェリーフライト報告 1日目”. 2017年1月28日閲覧。
  14. ^ JALグループ、ATR製旅客機を初導入 人気席は前でなく後ろに? その特徴とは
  15. ^ JALグループ、2017年度 路線便数計画を決定
  16. ^ 日本エアコミューター、4月からATRを鹿児島発着の定期便に投入へ
  17. ^ オリエンタルエアブリッジ、ATR42型の導入検討 16年に更新機方針 19年~20年に現有機構造寿命で”. 旅行業界・航空業界 最新情報 − 航空新聞社 (2013年12月11日). 2014年7月28日閲覧。

外部リンク[編集]