2021年精子提供訴訟

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2021年精子提供訴訟(2021ねんせいしていきょうそしょう)とは、2021年令和3年)12月27日日本女性が、自身へ「精子提供」を行った中国出身の男性に対して「男性が国籍学歴婚姻状況を詐称していたことで、精神的苦痛を受けた」として損害賠償を請求した訴訟である[1][2][3][4]

精子提供」をめぐる訴訟・裁判は日本では珍しく、多くの反響を呼んだ[5]。なお、類似した事件2000年(平成12年)にも起きている(当該記事を参照)[6]

精子提供の経緯[編集]

被提供者:女性A[編集]

Aの経歴[編集]

精子提供を受けた女性(Aとする)は、との間に生まれた中学生の第1子(長男)と3人で暮らしていた[7][8]。Aは東京都に在住する会社経営者[3]2020年(令和2年)6月時点で35歳だった[8]

第2子の挙児希望[編集]

Aによれば、Aは以前から夫との第2子を望んで不妊治療を行っていたが妊娠できず、不妊検査ではAに問題はなかったという[8]。Aの証言では、夫は「不妊の原因は女性にある」という固定観念を持ち[注釈 1][9]、さらにAや第1子へ家庭内暴力を行っていたことから、Aは夫との話し合いの場を持てなかったのだという[注釈 2][8]

Aは「(家庭の)状況にプラスの変化を起こす最終段階」として、第2子の妊娠を望み続けていたという[8]。またAは「夫に遺伝性難病が判明した」とも後に主張している[1][3]

提供者の検索[編集]

Aが悩んでいるうちに、知人からインターネット上の会員制交流サイト(SNS)での精子提供を教えられ[8]、『Twitter』などで精子の提供者を探した[10]

Aは夫に隠したまま、SNSで精子提供を行う男性を探した[11]。夫に疑われないよう、「夫と容貌が似ており[7]、同じ日本人で、学歴が同程度(夫は東京大学卒)で、夫と血液型が一致し、未婚で交際相手のいない男性」を条件としていたという[注釈 3][5][10]。また「夫と同じIQ130以上で、偏差値がトップクラスの大学に入れる子どもが欲しかった」とも述べている[7]

AはTwitterなどを経由して15人程度の精子提供希望の男性と連絡を取り[5]、うち5名ほどと面談したが、条件と合わず、話が進まなかったという[7]

提供者:男性B[編集]

Aとの出会い[編集]

2019年(平成31年)3月、AはSNSを経由して一人の精子提供者の男性(Bとする)と出会い、Bからの精子提供を受けることを決めた[7]

BはTwitter上で『精子提供@東京』と名乗り、以下のように自己紹介していたという[11]

Bの経歴[編集]

Bは中華人民共和国(中国)出身で、日本留学[11]静岡大学を卒業して日本生命保険相互会社に勤務し、千葉県浦安市にある同社の家族用社宅に居住しており、名字は中国語で「リョウ」だった[11]。当時20歳代で[1]、日本には10年以上在住しており(在日中国人)、既婚者だった[7]。妻との子はいなかった[7]

Bによれば、Bは大学時代にも知人から精子提供を求められたことがあり[8]、「不妊の夫婦の役に立ちたい」と考えてドナー(提供者)を始めた直後で[11]、インターネット経由での精子提供はAへが初めての例だったという[7]

AはBへ口頭で質問し、「性感染症精神疾患の既往歴、遺伝子疾患の家族歴などはない」ことを伝えられた[7][5]。また「学習塾に通っていたか否か」「努力をするタイプか、天才タイプか」なども質問した[5]

Bの経歴に関する争点[編集]

Aの主張[編集]

Aの主張によれば、「Bは夫と容姿が似ており[注釈 4][7]、一流の金融会社で働く男性だった。日本語が堪能なので、日本人だと思った[注釈 5]。感じのいい人だったし、社員証苗字を隠しつつ見せられたので信用した。」[7][10]という。

またAの主張によれば、「”国立大学卒とのことですが、どの大学ですか”と尋ねると、Bは”京都です”と答えた」[10]「Aが”奥様お付き合いしている女性はいますか”と尋ねると、Bは”いません”と答えた」[10]といい、「改めて”京大卒なのか[注釈 6]”と確認すると、Bはうなずいた」[5]のだという。

このことから、Aは「Bは京都大学卒で独身の日本人である」と信じたという[2][3][10]

Bの主張[編集]

一方、Bの主張によれば、「私は”国立大学卒”で”京都方面の大学”である[注釈 7]”としか伝えていない[11][8]し、勤務先についても何も話していない[7]国籍については尋ねられていないし、もし尋ねられたら答えた[7]。妻や恋人の存在については質問されたが、回答していない[7]。」という。

またBの主張によれば、「そもそも初めから匿名での提供で、『互いの個人情報を詮索しない』という約束だったのだから、詳細を話す必要がなかった[7][8]。」「将来、生まれた子どもが"自分の父親が知りたい"となったら困ると思ったので、個人情報を明かしたくなかった。」[11]のだという。

性交渉[編集]

同年4月から、BによるAへの精子提供が始まった[7]。Aの要望で、精子提供は「自然な性交渉」(タイミング法)を通じて行った[7]

精子提供には性交渉ではなく注射器のような道具を使う方法(シリンジ法)もあるが、Aが「自然妊娠で授かった第1子と差をつけたくなかったから」と考えて、直接の性交渉を選んだ[8]

(上記は、訴訟前の2020年の『週刊女性[7]および『日刊SPA![8]における記述に基づく。一方、訴訟を起こした後、2022年には、Aは「Bが性交渉を求めた」と主張している[2]。)

二人は週に2、3回程度、同年6月に妊娠が判明するまで10数回の性交渉を行い、ホテル代金としてAが総額15万円ほどを支払った[7]

なお、Aは夫に不信感を持たれないように、同時期に夫とも性交渉を行っていたため、夫から疑われることはなかった[8]

妊娠後も続いた性交渉[編集]

しかし、6月にAの妊娠が判明したことで精子提供という目的が終了したにもかかわらず、二人の性交渉は継続していた[7]

Aによれば、「たしかに、妊娠が発覚したあとも何度かBと性交渉を行った。今思えばおかしかった。どちらから誘ったのかはよく覚えていない。」という[7]

Bによれば、「妊娠発覚以降も、何度もAから”会いたい”と言われ、7月から翌年3月まで性交渉を求められていた。断ると、Aからインターネットで誹謗中傷された。私はAに対して恋愛感情はないが、Aは私に好意があった。何度も”(Bの)妻と離婚して(Aと)結婚してほしい”と迫られ、何度も断った。」という[7]

実際、当時のAとBとのメッセンジャーアプリLINE』での会話記録において、AがBに対して次のように性交渉を迫る文言を大量に送っていた[8]原文ママ[7]

いっぱい仲良しして、子孫をいっぱい繁栄しようね

Bちゃんのエッチは気持ちいい

またAは夫についてもBへ「主人おじさんすぎて臭い」「DVをされている」(原文ママ)などと不満を述べていた[8][7]

妊娠後の対立[編集]

AとBとの対立[編集]

しかし、Aは2019年11月ごろからBに不信感を持ったという。Aによれば、「妊娠後もBと連絡を取っていたが、急にBのLINEの態度が粗暴になり、“は? お前何考えてんの?”などと口調が荒くなった。もしBが反社会的な人物だったら第2子の父親として心配なので、Bのことを調べようと思った。」という[8][7]

Bはこの態度について「妊娠後にも執拗に連絡が来たので、適当に返事をしていた。」と後に述懐した[8]

Bの経歴を知る[編集]

AはBの会社の社員寮を訪問して聞き込み調査を行い、Bの名前を調べた[8][7]。「Bは中国人ではないか」と疑い、調査会社(探偵)へ依頼したところ、Bが地方国立大学卒の既婚者で、中国籍だったことが判明した[8][7]。Aは後に「もし知っていれば絶対に提供を受けなかった」と述べている[11][8]

Bの学歴と国籍を知った時点でAはすでに妊娠5ヶ月であり、妊娠中絶は難しかった[11]

Aは弁護士に相談し、警察署にも通報した[7]。Bは事情を聴取され、妻や勤務先にも精子提供について暴露された[7]。Aによれば、Bは「お互い探り合わない約束なのに、会社にまでなぜ連絡するんだ!」とAを叱咤したという[7]

出産[編集]

2020年(令和2年)2月、AはBとの子を出産した[11]。夫は真相を知らず、大変喜んでいたという[7]

児童福祉施設への収容[編集]

しかし、後にAは第2子の養育を中断し、東京都内の児童福祉施設へと入所させた[1][12](入所時期は明示されていない)。

Aの代理人となった弁護士によれば、「東京都の判断で入所させた。」[2]「Aは睡眠障害などを抱えており[2]、心身の不調から第2子と暮らすことが困難である[3]。」という。

出産後の両者の見解[編集]

Aの見解[編集]

2020年(令和2年)5月20日の記事の時点で、Aは「そもそも初めの時点での話が嘘だったことが問題だ。Bに妻がいることを知っていたら、相手の人間関係を壊したくないと思っていたので、精子提供を受けていなかったはずだ。Bは一流企業に勤めていることを悪用して人を信じ込ませた。Bには謝罪や説明を求めたが、まともに取り合ってもらえなかった。」と話した[7]

同年9月には「悪質な提供者を規制する法律が必要だ」とも述べた[11]

Bの見解[編集]

同じく5月20日の記事で、Bは「経歴をはっきり伝えなかったことに関しては罪悪感も後悔もある。」「今後は精子提供をすることはない」と述べた[7]

また、Aたちとの今後に関してBは「Aと(私が)本気で争うことになったら、(Aは)夫にすべてを知られることが明らかだ。もしAが離婚することになれば、産まれる子を養うことは難しい。その場合、Aはどうやって生きていくのだろう。私は多国語を操ることができ、職も安定している。万が一のときは、子どもの親権を主張する考えもある[注釈 8]し、妻にも承諾を得ている。」「妻はこんな状況でも私と離婚するつもりはないと言っている。」と語った[7]

Bによる卑猥な投稿[編集]

ただし、同年6月7日の記事の時点で、BはSNSの『Twitter』に複数のアカウント(会員登録)を保有しており、そのうちの一つで次のような卑猥な投稿を行っていた(原文ママ[8]

果実感アップの僕の精子はいかがですか? 今ならなんとおかわり無料キャンペーンをやっておりますよ!笑

在宅勤務暇なんだけど笑 誰か一緒にラブホのサービスタイムに行かない?笑笑

この目的について、Bは「会社の上司や同僚と飲酒をすると下ネタの話題が出るが、辞書には載っておらず、中国人の自分には理解ができない。それで疎外感を覚え、勉強のために下ネタを言い合うアカウントを開設しているだけ。(このアカウントを経由して)実際に女性と会ったことは一度もない。」と説明した[8]

訴訟[編集]

提訴[編集]

2021年12月27日、AはBに対して約3億3,200万損害賠償を請求し、東京地方裁判所において訴訟を起こした[1][4]

Aは「Bが性的な快楽を得るなどの目的で虚偽の情報を伝えていた」「望んでいた条件と合致しない相手との性交渉と、これに伴う妊娠・出産を強いられた」と主張し、「自らの子の父親となるべき男性を選択する自己決定権が侵害された」などと訴えた[1]

代理弁護士の初会見[編集]

2022年(令和4年)1月11日、Aの代理人となる弁護士記者会見を行い、次のように表明した。

  • 日本では精子提供に関する公的制度や法規制などが整備されていない[2]
  • 同様の被害者が生まれることを防ぐために(Aは)訴訟に踏み切った[2]
  • SNSなどでの個人間の精子取り引きに関する訴訟は、これが日本で最初のものである[1]
    • (ただし実際には2000年にも類似した裁判が起きている[6]。)
  • Aは本訴訟を契機として、精子提供に関する法整備に関する具体的議論が尽くされることを望んでいる[3]

反響(法的観点から)[編集]

上記の事件は日本国内で話題となり[12]、さまざまな人物が意見を表明した。

提訴前[編集]

藤元達弥[編集]

提訴以前の2020年6月7日の記事では、弁護士の藤元達弥が訴訟について次のように見解を示した[8]

  • AがBによる精子提供を受ける理由となった事項と、それをBにより詐称されたことを示す証拠があれば、損害賠償請求は不可能ではない。
  • ただ、このケースはAが妊娠後もBに性交渉を迫ったと見られる形跡が残っているようなので、そこは不利な事情になるだろう。
  • そしてAとBの双方が既婚者のため「不貞行為」となり、Bの妻はAに賠償請求を行うことも可能だ。Aは、夫に知られたくないのであれば、Bを訴えることはやめたほうがいいだろう。

小林芽未[編集]

同じく6月7日の記事で、弁護士の小林芽未が次のように見解を示した[8]

  • 裁判所は性行為において避妊の有無よりも、性的合意の有無に重きを置いて判断すると思われる。性行為に合意があれば性的自由が侵害されているわけではないため、どの部分を損害とするかが争点となる。
    • 「高学歴であると偽られて性行為をした」ことについては、「Bが高学歴でなければ性行為をしなかった」といえるのであれば、Bの不法行為が認められる可能性がある。
    • AがBに性的な文言を送っていたのであれば、性行為の合意に高学歴が要素となっているとはいえず、「Aに精神的損害があった」ことを認めるのは難しくなるだろう。
  • 子供はそのままでいれば嫡出推定により「Aと夫の間の実子」という扱いになるが、将来子供がどこかで真相を知った場合はどうなるのか。
    • 認知請求は子供の権利であるため、親が勝手に放棄することはできない。たとえ親(AとB)が「認知はしない」と契約を交わしたとしても、その契約は無効となる。
    • 子供がどこかで生物学的父親(B)を知った場合は、大人になってから自分自身で養父との間の親子関係不在の訴えを起こし、実父(B)に対して認知を求めることができる。
    • おそらく現在は戸籍上の夫婦(Aと夫)が子の「実親」と扱われているのだろう。その後に特別養子縁組をすれば、「実親」との縁を切って養親の子にすることができるが、当然ながらAの夫の同意も必要となる。
  • 児童相談所がもし何らかの経緯で婚外子であることを知った場合、事実を夫に伝えるかどうかは、児童相談所の裁量になるのではないか。

若松陽子[編集]

同年9月4日の記事では、人工生殖による親子関係に詳しい弁護士の若松陽子が、本事件のような「精子提供」に関して次のように批判した[11]

  • 精子を授受する際、本当にその人物の精子かどうかを証明できるのか。悪意が潜むリスクは絶えず生じる。
  • しかし、家族の形が多様化した現代、SNSを使った精子提供による出産は、明確な法規制がなければ拡大が止まらないだろう。
  • 民法では親子関係を定めているが、精子提供については想定していない。子どもの親権扶養義務を巡るトラブルなどが起きることも考えられる。
  • の同意なく第三者から精子提供を受けて出産した場合、生まれた子と夫と提供者との関係や、権利義務などに不明な点が多い。人工生殖による親子関係について、法律で定める必要がある。

提訴後[編集]

米山隆一[編集]

提訴の翌日の2021年12月28日テレビ番組内で、医師弁護士国会議員である米山隆一[注釈 9]は、次のように見解を示した[12]

  • 婚外子であり、かつ、約束をした上でのことなので、債務不履行や養育費の請求といったことで裁ける問題ではあると思うし、「浮気で子どもができた」という範疇で区分けをすることもできると思う。
  • ただ、いくら(Aが)ひどい目に遭ったとはいえ、3億3000万円の損害賠償額というのはどうなのだろうか。
  • (Bは)生涯にわたり養育費を払うのか、それとも18歳までなのか、また、SNSでこうしたトラブルが起きた場合について、ある種の基準を作ることも必要なのだろうが、線引きは非常に難しい。
  • この子が将来、京都大学に行くこともあるかもしれない。

若狭勝[編集]

Aの弁護士による会見が行われた翌日の2022年1月12日、弁護士の若狭勝は、次のように見解を示した[5]

  • 被告(B)側の反応で結果が決まってくる。
  • 1つの争点は、(Aによる)最初の条件が「東京大学卒」「未婚」だというが、Bと何度も会って性交渉を結んでいるという過程で、条件がトーンダウンしてきた可能性がないかどうか。
    • (Aが)実際にBと会って人となりを見て、「この人の子どもなら(良い)」と(心情が)変わっていった可能性があるかどうか。
    • 仮に、最初からBが「東京大学や京都大学卒ではない」と言えば(Aは)「なし」となったのか。(それとも)「この人なら」という気持ちで産む決意になったのか。
    • Bの反論としては、上述のようなことが考えられる。
  • 訴訟を起こすことは、法律的にありうる話で、全く問題ないと思う。
  • ただし、原告が勝訴するのかどうかは、被告の反応をみないとなんとも言えない。
  • 個人的には、三浦綾子小説氷点』と重ねてしまった。
  • 生まれてきた子どもがどういう立場になるのかを最も危惧、心配している。

梅原ゆかり[編集]

同年1月21日、弁護士の梅原ゆかりは、「精子提供はこのところ議論の俎上にのぼることも増えており、それに合わせて今後、この問題をめぐる訴訟も増えてくる可能性がある。」と見解を示した上で、2000年に起きた類似事件について紹介した[6]

反響(医学的観点から)[編集]

提訴前[編集]

宮崎薫[編集]

提訴以前の2020年5月20日の記事では、婦人科医師不妊治療に携わっている宮崎薫が、次のように日本国内での現状を解説した[7]

  • 日本でAIDを行う医療機関はもともと少ないうえ、徐々に減ってきている。理由は精子提供者が情報を開示する必要性が高まってきた点にある。提供者が将来に特定されれば、養育費扶養の義務といった問題になりかねない。
  • 結果的に、法的規制のないインターネット上で精子提供が行われている。
    • 日本産科婦人科学会としては(そのような提供手段を)認めていないが、法律で明らかに禁じているというわけではないので、横行するのだろう。
  • 精子の提供者と被提供者が性交渉を行う危険性としては、性感染症のリスクや、夫婦間以外で性交渉をすることによる夫婦関係への悪影響などが考えられる。

柏崎祐士[編集]

同年6月7日の記事では、日本生殖医学会の認定医師で不妊治療の専門家である柏崎祐士が、次のように現状を解説した[8]

  • 自分の出自を知る権利が世界的に認められてきており、日本でもその方向で議論が進んでいる。
  • 2017年、日本国内でAIDの約半数を行っていた慶應義塾大学病院が、精子提供者との同意文書に「生まれた子が情報開示を病院に求めた場合、応じる可能性がある」旨を明記したところ、提供者がいなくなった。扶養義務を負う可能性が出てくるためだ。
  • 世界的にも、性行為を通じた精子提供は認められていない。情が移るなど、さまざまな危険性があるからだ。
  • SNS経由での提供の禁止や合法的な精子バンクの設立に関する法整備を行うことを、専門家会議や学術会議から厚生労働省に請願しているが、現状では後回しにされている。

田中守[編集]

同年9月4日の記事では、非配偶者間での人工授精(AID)に携わっている慶應義塾大学病院産婦人科教授である田中守が、次のように解説した[11]

  • (本事例のような直接の精子提供では)感染症遺伝疾患などの懸念がぬぐえない。
  • 慶應義塾大学病院では、提供者の感染症が後から発覚する場合もあるため、精子を6カ月以上も冷凍保存して使用してきた。
  • 検査後すぐにはわからない病気もある。『生』で使えば安全の保証はない。

反響(著名人から)[編集]

芸能人など[編集]

ハヤカワ五味[編集]

提訴の翌日の2021年12月28日テレビ番組で、実業家ハヤカワ五味は、次のように子への同情を示した上で、社会的な課題について述べた[12]

  • (Aが)相手のスペックで考えてしまうことも残念だが、最も不幸なのは、施設に預けられた子どもだということは忘れてはいけない。
  • 「男性が無精子症でなければ、女性は公的には精子提供が受けられない」という現状も、こういう事態が起こってしまう背景にはあると思う。
  • 同性カップルなど、さまざまな方がいるので、もう少し広く精子提供を受けられるようになってもいい。

若新雄純[編集]

同じ12月28日の番組内で、実業家の若新雄純は、次のようにAを批判した[12]

  • どんな個人間の約束でも、破られたことに対しては怒る自由がある。ただ、それと生まれてきた子どもを施設に預けるというのは話が違う。
  • もちろん嘘をついたBにも責任があるとは思う。しかし、(Aは)そういう可能性がゼロではないSNSを使うのではなく、相手の身分がきちんと保証されるような施設や機関を使うべきだったのではないか。
  • 「子どもは欲しい。でも約束が違ったから育てない」というのは、Aのわがままではないか。精子提供でのトラブルはいえ、「男女のいざこざ」であるとも言えるし、身勝手だ。

西村博之[編集]

同じく12月28日、実業家の西村博之(ひろゆき)[注釈 10]は、Twitter上で次のようにAを批判した[13][14]

  • 精子提供なら(Bが)既婚者かどうかは(Aに)関係ないし、(Aは)子育てをせずに児童福祉施設に入れちゃってるし、子供をブランド品のように選別する考えは如何かな。
  • 遺伝情報に国籍は無い。

小原ブラス[編集]

Aの弁護士による会見直後の2022年1月12日のテレビ番組で、コラムニスト小原ブラス[注釈 11]は、精子提供という選択肢を肯定しつつ、Aの姿勢について次のように批判した[15]

  • 東京大学卒の精子提供を希望するとか、学歴とかで子供を決めるというのが、競馬種馬を掛け合わせるかのような、カスタムベイビーのような感覚が理解できない。
  • 子が生まれた時に、「父親は高学歴なのに、この子はなぜこんなに勉強ができないのか」と責めたりすることにもつながる。
  • 親の学歴と子の学歴は、もしかしたら医学的には何か(関係が)あるのかもしれない。しかし、「そうなって当然だ」という考え方で生きていくのは、子供にとってつらい。
  • 倫理的に、どこまでこういった(子の)カスタムをすることをオッケーとするのか、考えていく時期になったのかもしれない。

梅沢富美男[編集]

同じく会見後の同年1月13日のテレビ番組で、俳優梅沢富美男は、次のようにAを批判した[16]

  • 記事を)読めば読むほど、Aのことがよくわからない。
  • 精子をもらう、提供してもらう」ってことになれば、(通常ならば)性行為なんてしないわけだから。
  • この記事が事実なら、どうして(Aは)その子どもを福祉(施設)に預けるのか。おかしいところばかりだ。
  • ドナー(からの人工授精)を受けないで、性行為をして妊娠したというのはどうなのだろう。
  • 嘘をついたBも悪いが、(Aは)そんなことで自分が欲しいと思った子どもだったら、なぜ施設に預けないといけないのだろうか。
    • 自分が腹を痛めて産んだ子どもを、そういうところへぽんと次にやれるもんなのか。

ふかわりょう[編集]

同じ1月13日の番組で、タレントふかわりょうも「きれいごとに聞こえるかもしれないが、何にせよ、生まれた子は愛さなければいけないとは思う。」と述べた[16]

大島由香里[編集]

同番組で、アナウンサーの大島由香里[注釈 12]も「自分の産んだ子どもをすぐに手放すことができるっていう神経っていうのは、本当私は……」と述べた[16]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 実際には、不妊の夫婦のうち48%は男性に原因がある例だったと1996年WHOが発表している(24%が男性単独、24%が夫婦両方、41%が女性単独、11%が不明)。
  2. ^ 「話し合い」の議題については明示されていない。
  3. ^ のちにAが訴訟を起こした際の主張によれば、「日本人を求めた理由は、将来、臍帯血幹細胞などを活用して高度医療を受ける際、日本人同士の方が利用可能性が高くなると考えたため」「高学歴を求めた理由は、第1子と第2子が、できる限り差を感じることがないようにするため」「独身の男性を求めたのは、倫理的問題に配慮し、精子提供を受けることによって不貞行為慰謝料請求などの法的リスクやトラブルを回避することなどが目的」だったという。
  4. ^ 週刊女性』の記述によれば、Bは「スケート選手の羽生結弦にどことなく似た、さわやか系のイケメン」だという。
  5. ^ Aは以後も10回以上にわたりBと会って性交渉を行っているが、その間もAは「Bは日本人である」と信じて疑うことはなかったという。Aが「Bは外国出身ではないか」と初めて考えたのは、ずっと後日にBの氏名を知った時点だったという(後述)。
  6. ^ 「京大」は京都大学の日本における一般的な略称。
  7. ^ 京都府内の国立大学として、京都大学の他にも京都工芸繊維大学京都教育大学の2校がある。また、公立大学京都府立大学など3校ある。ただし、『週刊文春』の記述によればBは京都から遠い静岡県静岡大学卒業である。
  8. ^ この記事の時点では、Aが第2子を施設へ入所させたことは報道されていない。
  9. ^ 東京大学医学部を卒業している。過去に新潟県知事を務めたが、女性との性交渉に伴う金銭授与(援助交際)をめぐって自ら辞職した経験を持つ。
  10. ^ 妻とともに日本からフランスへ移住している。
  11. ^ ロシア出身。ロシア人の両親から産まれたのち、幼少期に母親が日本人の男性と再婚したことで日本に移住した在日ロシア人ゲイの男性。
  12. ^ を出産している。娘が2歳のときに離婚し、以降はシングルマザーとして育児を行っている。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g 小嶋麻友美 (2021年12月27日). “精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と信じたのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴 全国初か”. 東京新聞. https://www.tokyo-np.co.jp/article/151342 2022年1月11日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g “SNSでの精子提供で“学歴にうそ”ドナー男性を女性が提訴”. TBS. (2022年1月11日). オリジナルの2020年1月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220111112013/https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4445506.html 2022年1月11日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f “精子提供で出産“学歴など偽られ”男性提訴”. 日本テレビ. (2022年1月11日). オリジナルの2022年1月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220112015436/https://www.news24.jp/articles/2022/01/11/071011811.html 2022年1月13日閲覧。 
  4. ^ a b “学歴偽り精子提供 女性「3億円賠償を」”. FNNプライムオンライン. (2021年1月11日). オリジナルの2022年1月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220111192250/https://www.fnn.jp/articles/-/297139 2022年1月12日閲覧。 
  5. ^ a b c d e f g 松川沙紀 (2022年1月12日). “「京大卒」「独身」「日本人」はウソ “精子提供”男性は中国籍 妊娠・出産までした女性が怒りの提訴 驚きの中身とは ”. FNN. https://www.fnn.jp/articles/amp/297472 2022年1月13日閲覧。 
  6. ^ a b c 梅原 ゆかり (2022年1月21日). “30代の女性が「精子提供」のために“夫に秘密で性行為”…それが訴訟に発展した理由”. 現代ビジネス. https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91616? 2022年1月21日閲覧。 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai “SNS取引の危険、精子提供を「受けた女性」と「提供した男性」のドロドロ愛憎劇”. 週刊女性. (2020年5月20日). https://www.jprime.jp/articles/-/17928 2022年1月11日閲覧。 
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x “SNS精子提供の闇 ウソ経歴で女性のカラダ目的も…”. 日刊SPA!. (2020年6月7日). https://nikkan-spa.jp/1671802/ 2022年1月11日閲覧。 
  9. ^ 吉川 雄司 (2019年9月27日). “パートナーの「まだ大丈夫」を撃退 夫は思いもよらない「男性不妊」衝撃のデータ”. プレジデントウーマン. https://president.jp/articles/-/30107 2022年1月12日閲覧。 
  10. ^ a b c d e f “SNSで「精子提供」ウソ学歴…女性が提訴”. 日本テレビ. (2022年1月12日). https://www.news24.jp/articles/2022/01/12/071012256.html 2022年1月13日閲覧。 
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m 小林太一、杉浦奈実、波多野大介 (2020年9月4日). “精子提供、ネットで広がり 「子が欲しい」に法律は今”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/amp/articles/ASN944RS6N84PTIL01B.html 2022年1月12日閲覧。 
  12. ^ a b c d e ““精子提供トラブル”で訴訟、生まれた子を児童福祉施設に預けた女性に米山隆一氏「これから京大に行くこともあるかもしれない」”. ABEMA TIMES. (2021年12月29日). https://times.abema.tv/articles/-/10010133 2022年1月18日閲覧。 
  13. ^ “『国籍や学歴に偽り』 精子取引トラブル訴訟にひろゆきさん私見 「子供をブランド品のように選別する考えは…」”. 中日スポーツ. (2021年12月28日). https://www.chunichi.co.jp/article/392178 2022年1月18日閲覧。 
  14. ^ 西村博之 (2021年12月28日). “ひろゆき, Hiroyuki Nishimura@hirox246: 男性が京大では無く、別の国立大卒で、既婚者だったことが良くないらしいです。 精子提供なら既婚者かどうかは関係ないし、子育てをせずに児童福祉施設に入れちゃってるし、子供をブランド品のように選別する考えは如何かな、、と。 あと、遺伝情報に国籍は無いです。”. Twitter. 2022年1月13日閲覧。
  15. ^ “精子提供訴訟『競馬の種馬みたい』 小原ブラスさんが嫌悪感 「学歴とかで決めるというのがどうも…」”. 中日スポーツ. (2022年1月12日). https://www.chunichi.co.jp/article/399033 2022年1月13日閲覧。 
  16. ^ a b c “梅沢富美男「どこを探してもおかしいところばっかり」とキッパリ 精子提供トラブル、女性の行動に疑問”. リアルライブ. (2022年1月14日). https://npn.co.jp/article/detail/200018799 2022年1月16日閲覧。