親子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
父と子
母と子

親子(おやこ、しんし)とは、のこと[1][2]である。また、その関係[2]。「親子」という語は父母と子の関係を意味する語であるが、生みの親と子の血縁的な関係だけでなく、養親養子の関係も指す[3]。父と子、あるいは、母と子の関係に限定して使用するときは、それぞれ父子、あるいは、母子という。また、親分と子分の関係、親方と子方の関係など、習俗上親子関係になぞらえた関係(擬制的親子関係)を指しても用いられる[3]

普通の文脈で親子と言えば、命あるもの、特に人間におけるそれを指していることが多い。

比喩的な用法としては、あるものから別の物が派生したときの関係を「親子」と言う場合がある(たとえば、コンピュータ上でプログラムの実行形態プロセスにおいてあるプロセスが別のプロセスを作成した場合、両者の間で親子(関係)と言う場合がある)ほか、同じような形状で大きさの異なるものが対になっている場合にも、大きい方を親、小さい方を子ということがある。

本記事ではまず人間の親子関係について説明し、次に生物一般などの親子関係についても説明する。

人間の親子関係[編集]

親子関係では、文化圏によっては、ことさら「血のつながり」つまり生物学的な要素が強調されることがあるが、これは実は必ずしも一般的というわけではなく、どの社会でも血のつながりがあればただちに社会的にも親子関係が発生するとされているわけではない[3]。このことは社会人類学者B.マリノフスキーらによって早くから指摘された[3]

例えば、トロブリアンド諸島の原住民は、(生物学上の)父親が果たす役割を知らない。だが、タマと呼ばれる男性母親の親しい人であり、愛情をこめて自分たちを養育してくれる男親であり、いわゆる今日の父親像と本質的に異ならない[3]。つまり彼らは父子間の血のつながりは認識しないが、社会的な父親の存在を認めているのである[3]

このような事実があるため、一般に(厳密には)<<社会的な父親>>と<<自然的な父親(生物学的な父親)>>が区別され、<<社会的な父親>>のことをpater ペーター、<<生物学的な父親>>はgenitor ジェニターと呼ばれている[3]

と子の関係も、必ずしも子供は産んだ女性に愛着を示すわけではなく、養育活動と血のつながりは区別されると指摘されており[3]、<<社会的な母親>>をmaterマター、<<自然的(生物学的)母親>>をgenitrixジェニトリックスと区別する余地がある[3]という。 英語では親であることを、biological parentage /non-biological parentage などと呼びわけることが行われている。

日本では「実(の)親」「義理の親」「仮親」と分類することが行われている。

また、母親が再婚した相手は継父(ママチチ)、父親が再婚した相手は継母(ママハハ)である。つまり継父と子の関係、継母と子の関係もある。

また最近では、人工授精代理出産等も広く行われるようになっており、新たな要素が加わり、「親子」の概念も非常に複雑になってきている。

日本における親子[編集]

日本における親子関係は多様な内容・形式があり、仮に親のほうを見てみると、少なくとも「実親」「義理の親」「仮親」の三つがあった[3] /ある、と考えられる。「実親」が生みの親で、「義理の親」は配偶者の父や母であるシュウトオヤ()、ママオヤ()や養子縁組による養父養母がある。仮親とは、従来親子関係になかった人との間に、(出生時、成人時、結婚時などに)新たに親子関係に類似する関係を設定するものであって、名付け親拾い親元服親鉄漿親仲人親草鞋親等々がある[3]。仮親との関係は一時的なものもあるが、一生続くものも多い。日本の親子関係の特徴として、こうした擬制的な親子関係の重要性や多様性が指摘されることがある[3]。一定の手続きを経て、親子関係に類似した関係をとり結ぶことを親子成りと言う[4]

現在の日本の民法上の親子[編集]

親子には民法上、血のつながりのある実親子(自然親子)と養子縁組による養親子(法定親子)がある。実親子の子を「実子」、養親子の子を「養子」という。また、実親子の親を「実親」、養親子の子を「養親」という。は未成年の子に対して親権をもつ。

実親子(自然親子)[編集]
実親子関係訴訟[編集]
  • 嫡出子の否認の訴え
  • 認知の訴え(民法787条
  • 認知無効の訴え・認知取消しの訴え(民法786条
  • 父を定めることを目的とする訴え(民法773条
  • 実親子関係の存否の確認の訴え(戸籍法第113条)
養親子(法定親子)[編集]

養親子とは一定の要件を満たした場合に、ある者と、ある者との間に生物学上の親子関係がなくても、法律上の親子関係を生じさせる養子縁組制度によって親子となった者を指す。養子縁組には、養親子関係と実親子関係の併存を認める普通養子縁組と、養子縁組がなされた場合には実親子関係は終了する特別養子縁組がある(ただし、6歳未満のみで達したものは普通養子縁組だけしか認められない)。

生物一般における親子[編集]

生物において生殖が行われた場合の、元になった個体と新たに生まれた個体の両者をまとめたものである。前者を、後者をという。親子は生命の連続性の基礎である。たとえば子が親に似る現象を遺伝という[5]

ただし、このような親子がそれ以外の同種個体間とは異なる特別な交渉を持つ例は多くない。親は子を、具体的には幼生種子胞子を生み出すにあたって、何らかの形でそれらがうまく生存できるような方策を講ずると考えられ、これを広い意味で親による子の保護という。

出典[編集]

  1. ^ 広辞苑第五版
  2. ^ a b デジタル大辞泉
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 平凡社『世界大百科事典』【親子】
  4. ^ 平凡社『世界大百科事典』【親子成り】
  5. ^ 古澤(1974)p.146

参考文献[編集]

  • 古澤潔夫編、『生物学一般』、(1974)、芦書房

関連項目[編集]

関連書籍[編集]

  • 樋口範雄『親子と法: 日米比較の試み』弘文堂、1988
  • 竹田旦, 長谷川善計『擬制された親子・養子』三省堂, 1988、ISBN 4385406162
  • 湯沢雍彦『親子関係の日本的特性』安田生命社会事業団, 1990
  • 曽我猛『農村における擬制的親子関係: 法社会学的研究』御茶の水書房, 1992 ISBN 4275014561
  • 中里富美雄『古典の中の親子像』渓声出版, 2002
  • 松倉耕作『概説オーストリア親子法』嵯峨野書院, 2003、ISBN 4782303726
  • 中川淳『夫婦・親子関係の法理』世界思想社, 2004、ISBN 479071070X
  • 奥田安弘『国籍法と国際親子法』有斐閣, 2004、ISBN 4641046255
  • 津留宏『親子関係:(幼児・児童教育講座第三)』日本図書センター, 2007 ISBN 428430187X
  • 松川正毅『医学の発展と親子法』有斐閣 2008 ISBN 464113524X
  • 広井多鶴子, 小玉亮子『現代の親子問題:なぜ親と子が「問題」なのか』日本図書センター, 2010 ISBN 4284304410