『老人と海』(The Old Man and the Sea) は、アメリカの作家アーネスト・ヘミングウェイによる短編小説。1951年に書かれ、1952年に出版された。世界的なベストセラーであり、1954年のヘミングウェイのノーベル文学賞受賞に寄与した作品でもある[1]。
本作品はヘミングウェイ生前最後の刊行作品であり、1952年9月に雑誌『ライフ』に全文掲載の後に同月スクリブナーズ社より単行本化された短編小説である。ヘミングウェイは、1936年に『エスクァイア』にて物語の骨子であるキューバの老人とカジキの死闘の話を実話として「青い海の上で―メキシコ湾流便り」と題して寄稿しており、作品テーマ自体はかなり前から保持していたと判断される[2]。ヘミングウェイは当初、陸海空をテーマとした全三部の大作を構想しており、『老人と海』はそのなかの海を舞台とした作品の一部分をなす予定であった[3]。本人の没後、海の部の残りに相当する遺稿が妻であるメアリ・ウェルシュ・ヘミングウェイの手によって編集され、海洋画家トマス・ハドソンを主人公とする悲劇として1970年に『海流の中の島々』という作品名で出版されている。1950年に刊行された『河を渡って木立の中へ』とは対照的に大好評を博して、1953年にピューリッツァー賞を受賞し、1954年のノーベル文学賞受賞のきっかけとなった[4]。
あらすじ[編集]
キューバに住む老人サンチャゴは、漁師である。助手の少年と小さな帆かけ舟でメキシコ湾の沖に出て、一本釣りで大型魚を獲って暮らしを立てている。あるとき数ヶ月にわたり一匹も釣れない不漁が続き、少年は両親から、別の船に乗ることを命じられる。助手なしの一人で沖に出た老人の針に、巨大なカジキが食いついた。
老人は魚のかかった糸を素手であやつり、獲物が弱るのを忍耐強く待ちながら、むかし船員だった若い頃にアフリカの岸辺で見たライオンの群れのこと、力自慢の黒人と演じた一晩がかりの腕相撲勝負のことなど、過ぎた昔のことをとりとめもなく思い出す。3日にわたる孤独な死闘ののち、老人はカジキを仕留めるが、獲物が大きすぎて舟に引き上げられず、横に縛りつけて港へ戻ることにした。しかし、傷ついた魚から流れる血の臭いにつられ、老人の舟はアオザメの群れに追跡される。
舟に結びつけたカジキを執拗に襲い、肉を食いちぎるサメの群れと、老人は必死に闘う。しかし鮫がカジキに食いつき、老人が鮫を突き殺すたび、新しく流れだす血がより多くの鮫を惹きつけ、カジキの体は次第に喰いちぎられていく。望みのない戦いを繰り返しながら老人は考える。人間は殺されることはある、しかし、敗北するようにはできていないのだと。
ようやく漁港にたどりついたとき、仕留めたカジキは鮫に食い尽くされ、巨大な骸骨になっていた。港に帰ってきた老人の舟と、横のカジキの残骸を見た助手の少年が、老人の粗末な小屋にやってきたとき、老人は古新聞を敷いたベッドで眠っていた。老人はライオンの夢を見ていた。
日本語訳[編集]
- 福田恆存訳(1953年、チャールズ・E・タトル商会)、新潮文庫(改版2003年)
- 野崎孝訳(1977年、集英社『世界文学全集 第77巻』収録)
- 中山善之訳(2013年9月、柏艪舎<シリーズ世界の文豪>)
- 小川高義訳(2014年9月、光文社<光文社古典新訳文庫>)
- 吉田愛一郎訳 (2019年、オルタナS)
- 高見浩訳(2020年6月、新潮文庫)新訳
映画化[編集]
コミック化[編集]
- ^ “老人と海”. 2016年9月7日閲覧。
- ^ 野崎孝訳『老人と海他』解説p.348
- ^ 野崎孝訳『老人と海他』解説p.348
- ^ 野崎孝訳『老人と海他』解説p.348
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
毎日映画コンクール 大藤信郎賞 |
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